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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
魔界編
58/184

魔素問題解決!魔界で新たにゴミ問題?

思い込みは良くない。

見た目で判断するのも間違いだ。

確かにその通りだと思う事もあるけれど、例えば野良猫は目つきが鋭く怖い顔をしている。

しかしその猫を飼い始めると穏やかで可愛い顔に変わってくる。

良い人は良い顔になるし、悪い人は悪い顔つきになるのは事実としてあるわけで、やはり見た目ってのは大切だよね。


魔物たちの後を追っていると、魔素は益々濃くなってきた。

魔素対策の指輪を用意していなかったら、結界が無いと耐えられなかったに違いない。

俺たちは山を一つ越え、更にもう一つ越えようとしていた。

するとその先に更に魔素の濃いエリアが広がっており、広大な草原になっているその場所には、沢山のミノタウロスの姿が確認できた。

ミノタウロスというのは、一説には特別な牛とヒューマンの間に産まれた二足歩行の魔物だそうだが、本当の所は分からない。

そのミノタウロスが目の前に数えきれないほどいて、俺の見ているものが間違いで無ければ、そのミノタウロスが魔素を絶えず吐き出していた。

「魔素の原因が分かったな」

「まさかこんな事になっているとは‥‥」

「信じられない光景なんだよ。どうしてこんなに魔獣がいるんだよ」

理由は何となくわかる。

千里眼と邪眼で見ると、このミノタウロスがいる場所の周りには、ミノタウロスが此処ら辺りから出られないように結界が張ってある。

つまりこいつらは誰かに管理され飼われているという事なのだろう。

「魔界の牧場だな」

そういえば転生前の世界でも似たような話はあった。

確か牛の吐くメタンガスが問題視されていたんだよな。

全く問題の規模は比較にならないけどね。

魔物たちが向かう先に城が見えた。

どうやらあそこに悪魔王サタンがいるのだろう。

そしてこの状況から、おそらくこのミノタウロスを飼っているのはサタンと考えられた。

魔物たちが先に城へと降りて行った。

俺たちも後に続いた。

先を行く魔物たちは、後から俺たちが付いてきている事に気づかず、ただ焦っている様子で城へと入っていった。

城の中は何処か寂しい感じがした。

なんというか、人が住んでいる感じがしないというか、いつだったか俺が一人で暮らしていた部屋の雰囲気がした。

魔物たちについて行くと、広い食堂のような部屋へと入っていった。

その部屋の真ん中には大きなテーブルが置かれており、その一番奥の席で魔物たちの中では一番大きな魔物が、テーブルに置かれたミノタウロスの丸焼きのようなものをナイフで切り分けて食べていた。

いや、ようなものっていうか、完全にミノタウロスの丸焼きだな。

「なんじゃお主ら?お前たちも食べにきたのか?」

「いえ。人間と思われる者たちからある情報を得まして。悪魔たちが亡くなった原因がもしかしたら分かったのです」

「なんじゃと?!それでその人間とやらは、お主らの後ろにおる者たちの事かの?」

おそらくはサタンであると思われる魔物の言葉に、俺たちを案内してくれた魔物たちが俺たちを振り返った。

「ええっ!付いてきていたのか?」

「人間は飛べないと聞いていたぞ?」

「もしかして人間じゃないのか?」

「それとも飛べないってのは嘘なのか?」

いきなりそんな事を言われてもねぇ。

「人間は普通飛べない。でも俺たちのように飛ぶ能力を持っている者も少数ながらいるんだよ。で、そっちのミノタウロスを食ってるのがサタン様でいいのか?」

「いかにも。我こそはサタンであるぞ」

思ったよりも怖くないというか、魔力は確かに大きいが、敵意や殺気を全く感じないから、案内してくれた魔物同様に良いヤツに感じた。

ただ見た目は恐ろしい化け物と言えなくもなくて、子供が見たら裸足で逃げ出すレベルではあった。

現に金魚は少し震えているようだしな。

寒いからじゃないの分かって~♪ね!

「一応確認するけど、外のミノタウロスはお前が飼っているのか?」

「そうじゃ。美味そうじゃろう?いつでも美味しいミノが食えるように繁殖して育てておるのじゃ」

まあ家畜を育てるなんてのは普通の事なんだけど、数と規模、そしてどうしてこんな事ができるのか諸々異常を感じずにはいられなかった。

「特にやっている事自体は間違いじゃないかもしれないが、ちょっとやり過ぎだろ。それにな、悪魔たちが亡くなったのは、おそらくミノタウロスが増えすぎたのが原因だ。こいつらはどうやら魔素を吐き出すようでな。それが濃い環境では悪魔も人間も生きられはしないんだよ」

「なんじゃと!?でもお主らは生きておるじゃないか?」

また同じ質問か。

「俺たちは対策用のアイテムを持っているし、強い魔力を持っているから多少は対応できるだけだよ。ぶっちゃけ少し気分が悪くて、早くここから離れるかミノタウロスを全部燃やし尽くしてやりたいくらいだ」

俺たちが普通の人間や悪魔ならとっくに死んでいる。

エルでも魔素対策の指輪が無ければ一日と我慢できないかもしれない。

「まさか‥‥それは本当なのか?だとするとみんなが死んだのは‥‥」

「いや。これは事故だよ。俺たちも牛を飼って数を増やすし、野菜や果物なんかも育てる。もしもそれに問題があったとしても、問題が起こるまでは気づかないものだ。今やるべきは対応だよ。早急にどうにかすればいい」

こんな当たり前の事をやって責任を感じる必要はないはずだ。

偶々運が悪かっただけなんだから。

それでもやはり責任を感じてしまうもので、サタンは少し動揺して震えていた。

「責任を感じる必要はないぞ。それよりもこの後どう対応するかだ。ミノタウロスを処分するなら手伝うぞ?」

「お主は簡単に言うけど、アレはそんなに弱い魔物じゃないのだぞ?」

「サタン!お前なら楽勝だろ?それに俺たちにとってもあの程度の魔物は楽勝だ。お前が許可してくれたら今すぐ作業に取り掛かるが、どうだ?」

「い、一応確認させてくれ。ミノタウロスがそのようなものを吐き出しておるのか。あ奴らは食べる為に育てたので無暗には殺したくないのじゃ。食べる時もちゃんと感謝して食っておるしの」

へぇ。

なんか日本人の心を持ってるかのようなサタンだな。

悪魔王サタンなんて云うからとんでもないヤツかもしれないと思ったけれど、やはり良いヤツな気がする。

「ミノタウロスの首だけ落としていってくれれば、後は俺がそのままの状態で保存しておいてやる。食べたい時にはいつでも食べられるようにな」

「そんな事ができるのか?分かった。では確認に行くぞ!」

サタンは食事を中断して、部下の魔物たちを連れて外へと向かった。

「俺たちも行こう。かなりの重労働になるぞ」

「そうですね。首を落とさなくても、電撃で即死させたり水で窒息させるのもいいですよね」

「そうだな。とにかく体をできるだけ傷つけないで殺れればオッケーだろう」

「金魚は冷凍していくんだよ」

「毒や石化は使うなよ。分かっているとは思うが」

「も、もちろんだよ」

ちょっと怪しい返事だったな。

毒辺りは使おうとしていたのかもしれない。

俺たちが城から出ると、サタンが待っていた。

「確かに、何かをミノタウロスが吐き出しているのじゃ。アレが人間や悪魔には良くないのじゃな?」

「そうだ。少しは魔法を使う為に必要だから完全に失くすのも駄目だけど、多すぎたら毒になるんだ」

「分かったのじゃ。皆の者!ミノタウロスをできるだけ傷つけずに倒していくのじゃ!」

サタンが声をかけると、どこから湧いてきたのか分からないが、十人を超える魔物たちがミノタウロスへと向かって行った。

「俺たちも手伝うぞ!」

「かたじけないのじゃ」

「任せてください!一気に倒していきますよ」

「大丈夫なんだよ。すぐに終わるんだよ」

さて、俺もやるか。

妖糸を使えばそんなに時間はかからないだろう。

百万匹くらいいるから大変は大変だけどね。

それと、流石に無理だけど一応魂も集めておいてやるか。

人間界で蘇生したらどんな人間になるのか分からないが、そうしてやればサタンも納得するかもしれない。

一応マスタークラスくらいの強さもあるから、兵力にできなくもないからね。

ただ百万人を食わせていくのは大変だな。

金はなんとかなるけれど、住まいがな。

とにかく今はさっさとやる事やるだけだ。

こうして俺たちはミノタウロス狩りをするのだった。


数時間で作業は終わった。

正直な話、しばらく牛は見たくない気持ちだった。

ダンジョンや旅の途中多くの魔物を狩りまくって来たが、これだけ多くの魔物を、しかも同じ魔物を狩り続けた事はなかった。

「サタン!一応ミノタウロスは全て預かっている。それと魔石はどうする。合計百十一万六千二百九十五個集まったんだが」

「魔石か。それは情報料と手伝ってくれたお礼にプレゼントするのじゃ。ミノタウロスだけでいいのじゃ」

「そうか。だったら貰っておく。しかしミノタウロス、俺が預かっているがどうするかなぁ‥‥」

必要な時に取り出す事は簡単だが、俺は別にサタンと行動を共にしているわけではなかった。

だとすると異次元収納のマジックアイテムが必要になる。

しばらくは住民カードに入れて定期的に渡すか。

一日あれば作れる気もするが‥‥。

「ところでお主、名はなんという?」

「あっ?俺か?俺は策也だ」

「策也か。所で策也、人間界にはミノタウロスよりも美味い物が沢山あると聞くがそれはまことか?」

ミノタウロスの美味さなんて知らねぇよ。

でも多分牛肉のようなもんだろう。

「多分沢山あると思うぞ。好き嫌いがあるから絶対とは言えないけれどな」

「だったらわらわを人間界に連れて行っては貰えぬか。もうここには何もなくなってしもうた。ここにいるのも辛うての」

ミノタウロスの事もあるし、人間界に来たいというなら連れて行ってもいいが‥‥。

「人間の姿に変化したりとかできるか?」

「多分できるぞ!見ておるのじゃ‥‥」

サタンはそう言うと魔力を高めた。

そしてすぐに人間の姿へと変化した。

その姿は今の俺と同じ年くらいの女の子だった。

ゴスロリファッションな感じで髪はロングの金髪縦ロール付き。

お嬢様姿だけどちょっとヤンチャな感じがした。

『わらわ』なんていうから予想していたが、やはり女だったか。

しかも子供。

今の俺と同じくらいって事は、みゆきとも同じくらいか。

だったらみゆきと同じ学園に通わせるのも面白いかもな。

「その姿なら人間界に連れて行ってやるよ」

「本当か!嬉しいのじゃ」

「それで人間界に行ってどうするんだ?人間の子供として学園に通ったりしたいならそれでもいいぞ。俺たちと一緒に旅をするでもいいし、町に住んで美味しいものが食べたいならいくつかの町は紹介できるが、その場合は働いてもらう事になるかな」

「わらわはまだ六歳だが頭脳は立派な大人じゃ。学園なんぞには通わんぞ。働くのも嫌じゃ」

「だったら俺たちと一緒に旅をする事になるが」

「そうするのじゃ」

丁度パーティーメンバーを増やしたいと思っていたし、これはこれでアリなのかな。

悪魔王サタンだから結構強いだろうし。

尤も事実としてはまだ子供のようだから、本来のクラスまで強くなるには十年以上はかかりそうだけどな。

こうして俺たちに新たな仲間が加わった。

「しかしお前、女の子だったんだな。元の姿だと完全にオッサンかと思ったわ」

「なんじゃと!?見た目で判断するでない。でもなんとなくこっちの格好の方がしっくりくるな」

それは多分、お前本来の資質はこちらに近いという事だと思うぞ。

つまり可愛くて割と愛される性格をしているって事だな。

「でもサタンって名前はちょっと似合わないな。人間界での名前を別に付けてやる」

「似合わぬか?凛々しく強いわらわにピッタリじゃと思うが?」

「いや、サタンってのは、性格悪くて暗くて人を見れば斬って捨てるようなイメージなんだよ。それだと合わないだろ?」

「そ、そんなイメージが!是非名前を付けてほしいのじゃ」

サタンなんて格好いい名前、こいつには似合わないからな。

名は体を表すって云うし、もう少し面白い名前の方が‥‥。

悪魔王サタンか。

この響きは割と悪くないんだよな。

よし決めた。

「お前の名前を決めたぞ。苗字もついでにな。悪魔王サタンだから‥‥」

「悪魔王サタンだから?」

熊王佐天(くまおうさてん)だ!」

『あ』を抜いて抜けてる感じを表現し、サタンの一文字違いで微妙に締まらない感じを表現してみました。

「熊王佐天かぁ。なんかいいのじゃ」

あ、喜んでくれている。

「ならば決定だな」

俺はすぐに大聖のダイヤモンドカードで、持ってる住民カードの情報を書き換えた。

そして俺はそのカードを異次元収納から取り出した。

「これは佐天にやる。このカードが有れば人間として色々な町に出入りが可能になるんだ」

「おお!それは嬉しいのじゃ」

「使い方は旅の中でおいおい教えるから」

「分かったのじゃ」

またこれでパーティーもにぎやかになりそうだな。

俺は正直嬉しかった。

「サタン様!俺たちはどうなるんですか?」

「あっしらも付いていきとうございます!」

佐天が俺の顔を窺ってきた。

そういえば魔物悪魔たちが十数人いたな。

「お前らも人間に変化はできるのか?」

変化ができるなら、流石にパーティーメンバーとして連れて行くのは無理でも、人間界で自由に暮らすようにはできる。

こんな何もない薄暗い所で生きていくよりはいいはずだ。

「残念ながら変化はできないんだ‥‥」

「こんな姿じゃ人間界には行っては駄目なのか?!」

「そうだなぁ‥‥」

駄目ではないけど普通にみんな怖がるだろう。

おそらくだけど、こいつらが古い時代から云われていた本来の悪魔なんだろうな。

そもそも魔王が誕生する以前から悪魔は恐れられていたし、話が合わない所もあった。

そこにヒューマンがやって来て魔界に適応する中で少し姿が似てきた。

それを誰かが悪魔と呼び始めた。

だとするとやっぱりこいつらがこのままの格好で人間界に来たら当然騒ぎになるわけで。

でも魔物とも一緒に暮らすと宣言している神武国ならどうだろうか。

こいつらなら民も話せば分かるのではないだろうか。

「人間と共に暮らしてみたいっていうなら、暮らせる場所はある。ただ人間界で生きるには働いてお金を稼がなくてはならないぞ?」

「野菜を育てたり、家を建てたり、手伝う事はできても、そういうのは得意じゃないんだよな」

「俺も無理だ。細かい事は悪魔たちにやってもらっていたからな」

お前たちが本来の悪魔なんだろうけどな。

「いや、別に不向きな仕事をしてくれとは言わない。お前らは戦うのが得意だろ?だったら戦闘訓練を手伝ったり、町の警備をしたり、できる事をやってもらう」

こいつらが軍にいると宣伝すれば、おそらく恐れて他国も手を出しづらくなるだろうし、警官にすれば抑止力も高まるだろう。

「それならできるぜ!」

「ああ。俺たちはずっと悪魔たちを守る仕事をしていたんだからな」

「守る対象がその町の人間って事になるわけだ。お前たちの行い次第では、いずれ人間界でも自由に暮らせるようになるかもな。しかしお前たち魔物だよな?なんで人間に対する敵意がないんだ?長く生きるとそれが消えたりする話は知っているんだけどさ」

サタンはまだ六歳だと言っていたが人間に対する敵意は全く感じられない。

むしろ悪魔たちと仲良くしていたのだから不思議に思っていた。

「よくは分からん。ただ産まれたばかりの頃、悪魔に助けらたような記憶が残っておる。乳ももろうた。その辺りが関係しておるかもしれんのぉ」

そういえば国士も俺になついていた。

そして人間への敵意が無くなっていた。

助けられると敵意が消えるとかそういうのだろうか。

「じゃあこいつらもか?」

「ん~‥‥こやつらは特に助けられたわけじゃないな。最初は悪魔たちに襲い掛かろうとしておったぞ。それをわらわが止めてたのじゃ。でもしばらくすると敵意は無くなっておったようじゃの」

黒死鳥は鯉を食べると落ち着く、なんて話もある。

「何か特別な食べ物を食べたりはしなかったか?鯉を食べると割と落ち着く魔物もいるからな」

「鯉は食べてないのぉ。ただ悪魔たちと一緒の物を食べるようにはなったかの。野菜とか果物とか」

「ふむ」

魔物によって落ち着く食べ物が違うか。

或いは野菜や果物にも鯉と同じような、或いはそれ以上に落ち着くよう作用する何かがあるのかもしれない。

この辺りは今後の研究だな。

秘密基地に魔物研究機関も作るか。

俺はなんとなくそんな事を思った。

「じゃあそろそろ帰るぞ。って、お前たちの体の大きさだと扉を通れないんじゃないか?」

俺が手に入れた魔界の扉も、地下訓練場に置いてあるものも、どちらも身長二メートルまでの人間がギリギリ通れるサイズだ。

何人か特に体の大きなヤツもいるし、通れないだろコレ。

「人間界に行く扉ならあるぞ?」

「そうなのか?それは何処にあるんだ?」

「こっちの方へ十分ほど飛んでった先じゃったかと思うぞ」

ここから西か。

それくらいの距離なら当然有栖川領内だな。

一体どれだけ魔界の扉を持ってるのだろうか。

直ぐに廃棄処分がルールのはずなんだけどねぇ。

「じゃあ取に行こう。他の者たちは待っててくれてもいいが?」

「わたくしたちも行きますよ」

「おいて行かないでほしいんだよ」

エルはともかく、金魚はこんな所ではぐれたら人間界に帰れなさそうだもんな。

本当は一番楽勝なはずなんだけど。

「それではいくのじゃ」

佐天は空へと上がった。

続いて魔物悪魔たちも空へと上がる。

その後に俺たち三人も続いた。

空に上がると、まだまだ魔素は濃かった。

ミノタウロスを処分したとはいえ、今ある魔素を減らす為には『素』というものが必要だ。

確かにこちらの世界ではほとんど『素』らしきものは感じられない。

魔界が暗い雰囲気なのもそのせいかもな。

それにしても、この辺り本当に何もないな。

「魔界ってのは何処もこんなに何もないのか?南の方はもう少し草木が生えていた気がするんだけど」

「この辺りはミノタウロスに食わせる為に植物はだいたい狩り尽くしたんだ」

「そうなのか」

転生前の世界では、森林伐採で二酸化炭素が増えて問題になっていたんだよな。

こちらの世界でもそれに似た問題が起こらないのだろうか。

そういえば『素』は森林に多かった気もする。

妖精がいる所だからかもしれないが‥‥。

俺は気になって妖精霧島を召喚してみた。

そして妖力というのか、妖精の持つ力を少し出してみた。

すると霧島の出す妖力が濃い魔素と反応して少し光を発していた。

「もしかしてコレが『素』なのかもな」

「可能性はありますね。人間界には妖精はいませんが、でも何処にでもいる世界ですから」

妖精霧島は濃い魔素を吸収し、少し力が上昇している気がする。

妖精ってのは草木そのものと考える人もいるわけで、だとするなら、魔界に魔素が多いのは草木が少ないからかもしれないな。

俺はしばらく様子を見る為、妖精霧島を召喚したままにした。

十分と少し猛スピードで飛び続けた先に、魔界の扉が見えてきた。

大きさは五メートルほどの少し大きめのサイズで、あれなら十分皆が通れる大きさだった。

とりあえずこれでみんなで人間界へと帰れる。

しかし喜んでばかりもいられなかった。

魔界の扉に近づくにつれ、何やら禍々しい気配がドンドン大きくなってきていたのだ。

「なんだこの気配は?」

「よく分からないけど怖いんだよ」

「嫌な感じですね。扉の向こう、山になっているのはなんでしょうか?」

とりあえず俺たちは佐天に続いて、魔界の扉近くへと降り立った。

俺は千里眼と魔眼を使って、山になっているモノが何かを確認した。

「あれは‥‥マジックアイテムの残骸か?どれも壊れているものだな」

「それはまずいですね。策也はマジックアイテムについてのルールはご存じですか?」

「ルール?いや聞いた事がないけど」

「マジックアイテムは世界ルールで処分の方法が定められているんだよ。ちゃんと魔石を取り外したりして完全に機能を停止させて捨てなきゃならないんだよ」

なるほどなぁ。

でないとこうなるってわけか。

先に見える壊れたマジックアイテムの山からは、とにかく禍々しい気配が伝わってくる。

正直いつ何が起こってもおかしくない感じだ。

爆発するのか、それとも魔物が現れるのか。

それはバクゥのようなイレギュラーな魔物かもしれない。

或いは白玉のようなのも考えられる。

とにかくヤバそうだ。

「この辺りは有栖川領地ですよね。おそらく処分に困って魔界に捨てているのでしょう」

「金魚も知らなかったんだよ。やっぱり有栖川から出て正解だったんだよ」

またとんでもないものを見つけてしまったな。

しかし黙って見過ごす事もできないだろう。

これが魔界にどんな災いを起こすかもしれない。

「とりあえず一度人間界に戻るぞ。このゴミの対応はそれから考えよう。佐天!この扉の向こうがどうなっているのか知っているか?扉を開けていきなり襲われても困るからな」

「わらわならこの先を見る事ができるぞ?」

「そうなのか。ちょっとどんな感じになっているか見てみてくれ」

「分かったのじゃ」

俺はチートで何でもできる能力者のはずだが、あくまで一般的な人間のレベルなんだよな。

オリジナル魔法、固有魔法や能力、そして魔物やその他異種族の魔法や能力は持ち合わせていない。

ただ、一度自分で体験したりしたものはだいたい自分のモノにできてしまうというチート能力はあるけどね。

「この先はゴミ処理場のようじゃの。人が結構おるようじゃ。出て行くとすぐに見つかるじゃろうな。それに武装した人間も多いぞ」

「こちらからは誰も出させない感じか。だったら‥‥」

俺は魔界の扉の下に異次元収納への入り口を作り、その中へ魔界の扉を収めた。

「どこかに持って行けばいいだろう。突然扉が消えて向こうでは慌てているだろうな」

「これでゴミを捨てなくなればいいんですけれどね」

「とにかく人間界へ戻るぞ。まずはみんなで俺たちが来た魔界の扉の所に移動する。全員集まってくれ!」

「何をするのじゃ?」

「瞬間移動だよ」

俺はそう言いながら全員を移動させた。

「おお~‥‥いきなり遠くに飛んだ気がしたぞ?」

「わたくしはやっぱり慣れませんね」

「とりあえずこの扉から出られるヤツは出てくれ。出られないヤツはこっちな。金魚は悪魔っこたちの集落へ行って、魔素の件はとりあえず片付いたと伝えてきてくれ」

「分かったんだよ」

俺はその場に先ほど失敬してきた魔界の扉を取り出した。

そしてドアを開けると、初めて悪魔っこたちに出会った人間界の森の中へと繋がった。

「出たらそこで待っていてくれよ」

「分かったのじゃ」

俺は大きい方の扉から人間界へと戻った。

そして魔物悪魔が全員出て来た事を確認すると、魔界の扉を再び閉じて異次元へと収納した。

「此処からもう一度転移する。みんな集まってくれ」

こうして俺は全員を炎龍王国の地下訓練場へと集め、そこからもう一度瞬間移動魔法で神武国へと移動した。


この日神武国では、佐天のパーティー加入パーティーをして、美味しいものをたらふく食べてもらった。

そこにはドズルたち町の者も集めて、魔物悪魔たちが俺たちの仲間に加わる事を伝えた。

見た目に驚く者も当然いたが、喋ってみれば普通に話せる訳で、此処に来た者たちには納得してもらえたようだ。

明日以降には国民全てに紹介していき、防衛隊に入ってもらう事になるだろう。

さて、明日はセバスチャンの話によると、何やら世界会議において有栖川から提案があるらしい。

それを確認してから、もう一度魔界に戻って捨てられたアイテムをなんとかしないとな。

こうして俺たちの『魔素が濃くなる原因を突き止める旅』は一応終了した。

2024年10月4日 言葉を一部修正

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