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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
中央大陸編
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クエスト完了報告と町での生活スタート!

夜中ではあるが、俺は特に休む事もなく、『ナンデスカ』の町を目指して歩いていた。

一番近い町は、最初に見つけた湖から続く川の河口にある『ソヤサカイ』という町だった。

なのに何故俺がソヤサカイではなくナンデスカを目指しているかと言えば、ゴブリン討伐のクエスト達成をギルドに報告する為だ。

ギルドのクエスト完了報告は、別に受けたギルドでなくてもいいので、わざわざ遠くの町のギルドに行く必要はない。

いやむしろこのクエストを受けたギルドはソヤサカイのギルドであり、ナンデスカのギルドで報酬を受け取るとなると少し手数料まで取られてしまうから無駄な行為だ。

でも、四人は既に死んでいて、俺がその一人を演じて報酬を貰う事になるわけで、知り合いが多そうな町よりも別の町の方が良いという判断だった。

もちろんナンデスカにも知り合いがいて、別人じゃないかと疑われる可能性はあるが、変な言い訳をしなければならない可能性をできるだけ避ける為に、俺は知り合いのおらなさそうな町を選んだ。

道中では既に総司ゴーレムは使わず、四人の冒険者ゴーレムと俺の五人パーティーだった。

俺の能力ならゴーレムを九十九体まで作る事が可能だ。

それで素材集めを真面目にやれば、かなり効率的かと思わなくもなかったが、既に集められる素材はほとんど集めきっており、四人の冒険者ゴーレムだけでも余るくらいになっていた。

そんなこんなで夜通し歩いていたら、陽が昇る頃ナンデスカの町が見えてきた。

村とは違い、町は防壁に囲まれている。

町に入るには住民カードが必要のはずだ。

そしてその後ギルドでは、ゴブリンを倒した証拠として魔石の提示が求められる。

俺は異次元から、収納してあったゴブリンの魔石を全て取り出し、それを適当な袋に入れた。

「確か依頼を受けていたパーティーのリーダーは『太郎』だったな」

俺は太郎ゴーレムに魔石を渡した。

そして各々住民カードを渡しておく。

カードは左手の袖の中に隠し持った。

準備を整えてから俺は町の入り口となる防壁門へと歩み寄って行った。

「おっとその前に‥‥」

俺は御伽総司の住民カードを取りだし、登録してあった写真を消した。

一度ゴーレムを作って姿形は完璧に記憶にあるし、必要ならいつでも総司ゴーレムは作れる。

写真を残しておくメリットはもうなかった。

ただ、写真を消した所で、おそらく年齢に関しては聞かれる事もあるのだろうな。

不老の呪いを解くまでは、色々と面倒がありそうだとため息が出た。

門の所では三人の門番の姿が見えたが、朝も早いからだろうか、二人は門の中の壁際にもたれて座って寝ていた。

俺たちは起きている一人の門番に挨拶した。

「おはようございます」

「おはよう。早いな君たち」

起きている門番も少し眠そうな目をしていた。

「ご苦労様です」

「この町は初めてかい?そこの石板に住民カードをタッチしてくれ。問題が無ければそこの宝石が青く光る。光らない場合は問題があるからカードを確認させてもらうぞ」

この確認方法はほとんどの町で採用されている方法だ。

偶にカードの中まで確認する町もあるが、基本的には本人がカードを持ってさえいれば魔力によって身元がハッキリするので、それ以上の確認はいらない。

カードは常に触れている本人から微量の魔力を吸収して動作するのだから、機能していれば本人で間違いないのだ。

しかしゴーレムを使っている場合は、微量の魔力をこちらから送る必要があるかもしれない。

俺はまず太郎で、何もせず試してみた。

するとすぐに宝石が青く輝いた。

どうやらゴーレムを構築する魔力から微量の魔力を吸収しているようだ。

心配する必要はなかった。

五人全て町の中へ問題なく入る事ができた。

さてこれからギルドを探すわけだが、大抵町の入り口に近い所にそれはある。

ただ問題は、この町には入り口が二ヶ所あるって事だ。

おそらくどちらかの入り口に近い所にあるはずだが、こちらがハズレだとしばらく歩かなければならない。

俺は探索魔法で町を見渡した。

割と広い町で隅々まで完璧にとはいかないが、ギルドらしき建物は見つかった。

反対側の入り口近くに冒険者が集まっている場所があったので、おそらくそこで間違いないだろう。

ギルドでの仕事は早い者勝ちである。

ギルドの開店と同時に行っておいしい仕事を得ようとするのは、冒険者なら当然だ。

時間を考えれば、遠い所にあって良かったかもしれないと思った。

俺は‥‥いや俺たちは、町を散歩しながらゆっくりとギルドへと向かった。


ギルドに到着した頃には、既にギルドはにぎわっていた。

仕事の取り合いや喧嘩なんかは無かったが、とにかく騒がしかった。

とりあえず太郎ゴーレム以外はギルドの外で待機し、太郎ゴーレムだけがギルドへと入っていった。

初めて入るギルドだが、ゲームやアニメの世界そのままだった。

入口正面の受付カウンターには三人の受付嬢が立っていて、冒険者の対応をしていた。

右奥は酒場が併設されていて、そちらでは朝の食事をしている冒険者が何人かいた。

ただ酒を飲む者はいないようだった。

まだ朝だしな。

俺は入り口近くで受付が空くのを待っていた。

太郎ゴーレムである俺を気にする者はほとんどいなかった。

少しだけ視線を送ってくる者はいたが、声はかけてこなかった。

三分ほどで受付が空いたので、俺はそこへ行って受付嬢に挨拶をした。

「おはようございます」

「はい、おはようございます。どのようなご用件でしょうか?」

対応はマニュアル通りといった感じで、少し硬さのある対応だった。

おそらく新米受付嬢なんだろうと俺は勝手に理解した。

「えっと、別ギルドでのクエストなんですが、こちらで達成確認できますか?」

こういう真面目な喋りは大概疲れる。

この太郎という人物がどういう人だったかは全く分からないが、顔は割とイケメンで穏やかな感じだから、こういう時は礼儀正しく対応していたように思う。

そんなわけでなんとなく俺はなりきって話した。

「はい。カードをお願いします」

受付嬢に言われ、俺は上手く左掌にカードを取りだし、笑顔でそれを渡した。

受付嬢はそれを受け取ると、パソコンのようなマジックボックスという魔法機器にセットし、何やら操作を始めた。

新米受付嬢の割には、操作はキビキビと早かった。

単純に接客が苦手なのかもしれないと思った。

「確認項目は倒したゴブリンの魔石と、依頼主の確認となっています。魔石は今お持ちですか?」

「はい、これです」

俺は右手に持っていた袋を渡した。

魔石は多分これで大丈夫だろう。

ただ依頼主の確認ってのはなんだろうか。

このクエストを依頼した者がオッケーを出せばと言った所か。

「凄い魔石の量ですね。これは完全にゴブリンの群れです。ゴブリンキングやクイーンの魔石もあります。四人パーティーとありますが、よく倒せましたね」

「ええまあ‥‥」

確かにこいつら四人が手も足も出ず、巣に到着する前に殺された相手だから、流石におかしいと思っても無理はない。

でも強さなんてのは隠している者も多いだろう。

堂々としていれば問題ない。

「魔石は確認し全て登録しました。おそらく大丈夫だとは思いますが、依頼主とソヤサカイギルドの確認案件になってますから、クエスト達成と報酬はおそらく一週間後くらいになるでしょう。それとカードのランクアップもありますね。全部自動で行われます。万一クエスト未達の場合は、現在確認中となっているクエスト表示が再び継続中に戻りますので、速やかに期間内のクエスト達成をよろしくお願いします」

「はい。了解しました」

そういう話ね。

同じ魔石を使いまわしできないように登録もされるのか。

全く同じ魔石ってのは二つとないらしい。

そしてこの魔石を使って悪さをすれば、当然太郎が調査対象にもなりそうだ。

こういう魔石は冒険者ギルドで売るか魔砂にした方が良いかもしれない。

住民カードを返してもらって確認すると、クエスト表示欄に『ゴブリン討伐(確認中)』となっていた。

魔石も全て返してもらって、俺は受付カウンターを離れた。

するとギルドを出る前にいきなり声をかけてくる者がいた。

「シタッケネ学園の太郎、久しぶりだな。何やら結構な大仕事をしたみたいだな」

見た目は太郎と同年代に見えるその男は、当然俺の知らない奴だった。

太郎の知り合いがいたか。

面倒だな。

ただそれほど面識があるようには感じない。

学生時代、別の学園の顔見知り程度と判断する。

ココは適当にごまかしてみよう。

「おお。久しぶりだな。何か用か?」

これじゃちょっとよそよそしすぎたか?

「ああ‥‥太郎?お前、そんなキャラだったか?」

ヤバい違ったか?

「あれ?俺ってこんなもんじゃね?」

「いやいやいや、もっと真面目で、誰にでも礼儀正しいヤツだっただろ?俺にだって敬語だったじゃねぇか」

おお!

俺の最初の印象通りだったか。

「まあそうなんですがね。戦いの中でこの喋りでは連携に支障をきたしましてね。だからフランクに喋るように変えたのですよ。まあそういうこった」

「お、おうそうか。という事はあいつらも元気なんだな」

あいつら?

他のパーティーメンバーかな。

「全員死んでるぜ」

やべっ!

本当の事を言ってしまった。

「その言い方だと元気そうだな。まあ俺たちに勝ったパーティーだからな。ゴブリンも敵じゃないか」

いやメッチャ敵だったわ。

こいつ別人と勘違いしてねぇか。

いやでも太郎って言ってたし、こいつに間違いはないだろう。

こいつがこの太郎の事をちゃんと理解していないか、或いはゴブリンがただの雑魚、スライム程度だと思っているかだけど、どっちにしてもこいつの未来はもう無いな。

その程度の力量で魔物相手を続けていたら、近い内に死ぬだろうと俺は思った。

「じゃあな。急いでるんだ」

「おおそうか。俺も次はお前に倣ってゴブリン殺りにいくわ」

「頑張れ!」

こりゃ、本当に未来はなさそうだな。

あの世で太郎と再開してくれ。

俺は何となく胸の前で十字を切ってからギルドを出た。


さて、次はとりあえず住む所を確保したい。

最悪な事に俺は六歳の子供の姿をしている。

一々何かあるたびに『不老の呪いがぁ』とか『子供の姿に変えられてぇ』とか説明するのも面倒くさい。

子供一人で宿泊を続けるわけにもいかないだろう。

常にゴーレムを連れて行くのも面倒だし、落ち着ける本拠地は確保しておきたかった。

「で、一応総司が物件を所持しているんだよな」

使える住民カードの中にいくつか家を持っている者がいた。

で、狙ったようにこのナンデスカの町に物件を持っていたのが総司だった。

本拠地登録を確認すると、それも此花領ナンデスカと書かれている。

知った顔がいると厄介だが、とりあえず家を確認する事にした。

俺は四人の冒険者ゴーレムを戻して、一応総司ゴーレムを作った。

そして二人で記載された住所の方へと歩く。

北にある山に近く、領主の屋敷が割と傍にある場所だった。

千里眼で確認した所、庭も広く建物も大きい。

十人くらいが一緒に暮らしても大丈夫そうな大きな屋敷だった。

おいおい、こりゃ流石にお手伝いさんとかいるだろ。

今のところ人の気配は感じられないが、割と庭の整備もしっかりとしてあるようだし、正直ここでは暮らせないような気持になっていた。

しかしいざ到着してみると、屋敷は俺に『ココに住め』と言っているようだった。

門に鍵は掛けられておらず、玄関の鍵がドアノブに掛けられてあった。

不動産屋がずっと管理をしていて、最近になって入れるように準備しておいてくれていたみたいだ。

何かしっくりこない所があるものの、本物の御伽総司は死んでいるはずだ。

仮にこれが御伽総司がやった事だったとしても、それなら何故住民カードの再発行をしないのだ。

既に俺の持つカードが機能してるわけで、再発行を依頼してもできないわけだが、一応その場合には確認のメッセージが届く仕様になっている。

そういったメッセージも届いていない。

つまり御伽総司本人は、死んでいるか、生きているとしても今もギルドにすら顔を出せない状態のはずなのだ。

そんな人が家を空けて俺を迎え入れたり、不動産屋に頼んで開けておいてもらうなんて事は考えられない。

予言でもされていない限りあり得ない話だ。

そんな予言に俺がかかわっている?

そもそも俺は転生者でイレギュラーな存在であるから、この世界の予言に何かしらかかわっていても不思議ではないだろう。

それなら遠慮なく使わせてもらっても問題がない。

よくよく考えたら、俺は前世での性格からか、色々と慎重になり過ぎている気もする。

俺はこの世界じゃチートで、ほぼなんでも思い通りにできる力があるのだ。

ゲームは最初から順に楽しむ主義だが、多少雑にやってもいいだろう。

俺は自分を納得させ、屋敷の中へ入ってみる事にした。

中は思った通り何もなかった。

誰かが住んでいた気配はまるでなく、完全な新築物件だった。

「御伽総司名義の家だし、今は俺が御伽総司なんだから、使わせてもらって問題ないだろう」

俺は自分に言い聞かせてから、家の中を探索していった。

一通り建物内を確認すると、俺は自分の好みで改造していった。

魔法を使えば簡単である。

俺に使えない魔法は、不老不死の呪いを解くのと姿を変える魔法だけなのだ。

他、あらゆる魔法とスキルは使えてしまう。

リフォームなんてお茶の子さいさいなのだ。

そんなわけでその日の内にあっという間にできた。

部屋はそれぞれワンルームマンションのようにし、建物は魔石に貯めた魔力によって制御されるオール家魔(かま)

俺自身はトイレが不要だが、全室トイレも完備した。

誰かが来ても対応できるようにね。

風呂も全室あるが、共用の大浴場も二階に作り、後は一階に共用の台所、食堂、応接室も作った。

一階は洋式で土足だが、二階と三階は靴を脱いで上がる和式にした。

水道は地下水をくみ上げて、蛇口をひねれば水が出るようにした。

「あっという間にできてしまったな」

とりあえずここでしばらく生活する為の基盤はできた。

俺は住民カード十一枚分のゴーレムを作り、これから四人の冒険者パーティーには家の事をさせ、他の七人には冒険をさせる事にした。

させると言っても意識は俺なので、俺がやっているも同然だが、この程度ならほぼ疲れないし、ゴーレムを操作しているような感覚なので、ある意味家でRPGのゲームをしているのと変わらない。

これからしばらくは、本体である俺を家に残し、十一人を操るゲームをするような感覚で金と情報を集める事にした。

「とりあえずこの大陸の情報と、クラーケンの情報を集めつつ、金も集めて住民カードをプラチナにするのが目標かな」

俺は作ったばかりの応接室のソファーに座って、十一人のゴーレムでそれぞれの役割を実行していった。

2024年9月30日 言葉のおかしな所を修正

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