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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
呪い解除編
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ドワーフ鍛冶職人ドズル

俺たちは再び旅に出ていた。

次に目指すは、新しく王国として認められた『ドワーフ王国パナ』だ。

武器や防具の生産が盛んで、そのクオリティは世界一と云われている。

ドワーフたちのおかげで有栖川が力を持った部分も大きく、両者の関係は良好である。

俺の有栖川の印象は最悪なので、ドワーフたちには是非縁を切ってもらいたい所だけどな。

『有能なドワーフを何人か神武国に引き抜けたら』なんて思いながら、俺はパナの町を目指した。

途中七月七日を迎えた。

俺の十九歳の誕生日だ。

でも見た目は六歳のまま何も変わらず、少しむなしい気分も味わったが、みゆきが祝ってくれるだけでいい誕生日になったと思った。

もちろん、他のみんなにも感謝しているよ?

本当だよ?

パナの町に到着したのは次の日だった。

今まで見て来たどの町とも違った雰囲気があった。

「ここは冒険者の町って感じだな」

「ある程度強くなった冒険者が、此処に武器防具を買いに来るアル」

風里は結構勤勉で、空いた時間には本を読んでいる事が多い。

本が読みたいというから俺が色々貸してやっているのだ。

だからこの世界の事もかなり知るようになっていた。

まずはいつも通り冒険者ギルドに寄った。

俺たちはドワーフたちにも有名で、結構話しかけられた。

「その武器見せてもらえないか?」

「なんじゃ?これが見たいのか?ええぞぃ」

「お嬢さん、その武器は珍しいね!見せてくれないか?」

「いいアルよ」

ドワーフたちは俺の作った月の刀とスォードトンファ―が気になるようだった。

ふっふっふっ!

俺の作ったものを皆で拝むがよかろう!

俺は少し鼻高々になっていたのだが、ドワーフの言葉にそれはへし折られた。

「わしならまだもっと強くできるぞ!」

「ダイヤモンドミスリルとか、加工しがいがあるでしょうねぇ」

俺の技術に興味があるわけではなく、ダイヤモンドミスリルへの興味だった。

まあ俺の技術でもないんだけどね。

魔法で作ってるんだから。

しかし完璧な仕上げをするはずの魔法なのに、それ以上の武器が作れるってどういう事だろうか。

俺は気になった。

「あんた、これをもっと強くできるって、いったいどうするんだ?」

「ははは。それは教えられないな。仕事として依頼が有ればやってやるけどな」

なんか悔しいな。

何度も言うけど、やったのは俺の技術じゃなくてチートな魔法だ。

それでもやっぱり悔しいんだよな。

これは見てみたい。

「環奈、風里!強くできるっていうんだからやってもらおう。壊されるような事が有っても全く同じものなら俺は作れる。やらせてみたい」

「ふむ。ええじゃろぅ。わしも気になるしのぉ」

「うん。どんな仕事をしてくれるのか気になるアル」

「というわけだドワーフのおっちゃん!この武器を今以上に強くしてみてくれ!」

「金は貰うぞ?」

「仕事相応にはちゃんと払うよ!その代わり、できない時は払えないよ!」

「ガキが偉そうな事を言ってくれる。いや、悪い悪い。お前はただのガキじゃないな。俺には分かるぜ!」

この人、環奈や風里の事は知っているみたいだけど、俺の事は知らないようだな。

それでも俺の中身を見抜ける人は良いヤツだしデキるヤツに違いない。

こうして俺は、ギルドで出会ったドワーフに武器の強化を任せたのだった。


そのドワーフは、冒険者ギルドからかなり遠い町の端で鍛冶屋をしているオヤジだった。

「こんな場所に店を構えてるって事は‥‥どうなんだ?」

「当たりかハズレのどちらかじゃのぅ」

「たぶん全部そうだよー‥‥」

「すぐに仕事に取り掛かれる辺り、暇な人アル。ハズレの可能性が高いアル」

確かに風里の言う通りだよな。

仕事もしないで冒険者ギルドにいるとか、鍛冶屋としての腕を疑われる。

でも‥‥この仕事場。

凄くしっかりとした使われ方をしていて美しくも感じるじゃないか。

「言いたい事をいってくれるな。まあ可愛いお嬢ちゃんたちが言う事だから、わしは気にしないけどな」

ヤバい、聞こえていたか。

「でもこの仕事場を見て俺はあんたが超一流だって確信したよ。いやマジで」

「そうか?やっぱりお前はただのガキじゃなさそうだ。せっかく仕事を見せてやるんだから、ようく見ておけよ」

「お、おう」

仕事を見せてくれるってのも、自信がなきゃできない事だろう。

オヤジはまず、三日月刀の状態を確認していた。

そしてチラチラと環奈の方を見ていた。

俺が刀を作った時のようにサイズを確認しているのだろうか。

俺もその辺りしっかりやったと思うんだけどな。

五分ほど確認した後、オヤジは刀の強化作業に入った。

ダイヤモンドミスリルを叩くのは、もちろんダイヤモンドミスリル‥‥じゃない?

ただの鉄のハンマーだ。

そんなもので調整ができるのか?

俺はただオヤジのやる作業を見ていた。

延々と同じ作業を続けるオヤジ。

いい加減見ているのも飽きてくる。

環奈とみゆきは何処かに遊びに行った。

風里も一人本を読んでいた。

俺も正直見るのをやめたくなってくる。

でも、どこかで見逃したら困るので、俺は我慢して見続けた。

三日月刀を叩き始めて五時間が経った。

いい加減マジで辛い。

我慢の限界が近づいた頃、作業はようやく終わった。

「できたぞ!」

「えっ?それで終わり?」

「そうだ。ちゃんと見てたか?これでこの刀は更に強くなったはずだ」

見た目何が変わったか分からない。

俺は邪眼で確認してみた。

このオヤジの魔力が、ハンマーで叩いたいくつかの場所に残っていた。

でもこれで強くなるとも思えない。

とりあえず俺は刀を受け取った。

「試してきていいか?」

「試すなら、ちゃんとあのお嬢ちゃんに使ってもらえよ」

「分かった」

今の言葉でなんとなく分かるのは、その人にあった物にしたという事か。

でもほとんど何も変わってないだろ。

俺は鍛冶屋から出ると、風里を置いて環奈を探しに行った。

千里眼もあるのですぐに見つかる。

「環奈!今から試し切りにいくぞ!みゆきも来るか?」

「うんいくー!」

「ほう。これがあやつの仕事かのぉ」

俺から刀を受け取った環奈は少し感心しているようだった。

「分かるのか?」

「いや分からんのぉ」

紛らわしいな。

でも何かが違っている事は環奈も感じているようだった。

町を出て近くの森へと入っていった。

そんなに強い魔物はいないようだが、斬れば何かが分かるだろう。

俺は環奈に注目していた。

魔獣が現れた。

野生のガルムか。

この辺りでは強い方かもしれない魔獣だな。

環奈はいつも通りガルムを斬り裂いた。

「なんだ?」

いつもと何かが違う。

「こりゃ面白いわぃ」

環奈は再び別の魔物を斬った。

やっぱり違う。

環奈の刀捌きに無理な力が入っていない。

最もやりやすいやり方で最高の力が出せている、そんな感じだ。

そうか。

普通の刀の形は、全ての人が使いやすいように作られているんだけど、オヤジの強化で環奈専用になったわけだ。

専用になれば強くなるのは、某ロボットものアニメに出てくるあの三倍速い赤いヤツを思い出せば理解できるだろう。

しかしそんな微妙な調整よくできるな。

だからただの鉄のハンマーだったのか。

これはアレだ。

自転車の調整に似ている。

自転車は乗っていると、その人にあった形に微妙に変化していく。

だから他人の自転車に乗ると変なクセがあって乗りづらい。

でもダイヤモンドミスリル製の刀は、その程度の力では全く変化しないから、自分用にはならなかったのだ。

それをあのオヤジがじっくりと叩いて変化させた。

俺は震えが止まらなかった。

知ればその凄さが分かる。

そんなのどうやったらできるんだ?

長年の積み重ねがないとできる技じゃない。

俺の魔法は完璧な汎用タイプを作れるに過ぎなかったんだ。

俺は魔法を一度見れば、或いは感じれば完璧にコピーできる。

でもこの技術はどうにもならない。

俺はあのオヤジが欲しくなった。

「環奈、戻ろう。あのオヤジは本物だ。いや、そんな言葉で表せないくらいの一流だ。俺は残りの仕事も見ておくぞ!」

「こりゃ凄いわぃ」

「なんか刀も嬉しそうだねー」

みゆきの言う通りだな。

刀が喜んでいる気がする。

自動車に無理をかけずに運転した時のエンジン音が心地いいような、そんな感じが伝わってきていた。


全ての仕事が終わった時には、次の日の朝になっていた。

オヤジは夜通し残りの朔刀とスォードトンファ―を叩き続けていたのだ。

俺も眠らずそれを見続けた。

見たいのもあったが、これは敬意の表れでもあった。

「ようも最後まで見ていたもんじゃな」

「いや。オヤジの仕事が凄すぎて目が離せなかった。マジで凄いよ」

「それが分かるお前も凄いわ。お前名はなんという?」

「俺は策也。此花策也だ。それであんたは?」

「ほう。王族なのか。そういえば聞いた事があるかもしれん。わしは『ドズル』だ」

ドズルか。

体は少し人間よりも小さいが、名前通りの大きな男に見える。

俺はやっぱりこの男が欲しい。

「なあドズル。神武国に来ないか?あそこで今日のような仕事をしてほしいんだ」

ドズルは俺の言葉に少し驚いた表情を見せてから、しばらく考えていた。

「しかし有栖川に何かされんかな?」

「もうここはドワーフ王国だ。有栖川に遠慮なんてしなくていい。それに何かあったら守れるだけの準備がある国なんだ」

「わしはもう引退を考えておった。流石に今日みたいな仕事はそんなにできんぞ?」

「構わない。やりたいだけでいいし、やりたい仕事だけでいい。金が必要なら言ってくれ」

「金か‥‥正直金に興味はないが、いくらくらいくれるんだ?」

「十億でも百億でもいいぞ!」

正直ドズルの技術対価としてなら安いもんだ。

「いやいや、そんな額言われても想像つかんわ。でもそこまで評価してもらえるなら、タダで行こうじゃないか。仕事に対してはちゃんと金を取るがな」

「マジか!?サンキュー!」

よっしゃキター!

なんていうの?

あの三国志ゲームで諸葛亮孔明を引き抜いた時のような嬉しさだよ。

「それで一つお願いがあるんだが、弟子を三人ほど連れて行ってもいいか?神武に行けば今日のような仕事をさせてもらえるんだろ?ダイヤモンドミスリルも叩かせてもらえると考えていいんだよな?」

「もちろんだ。ミスリル、アダマンタイト、他にも作ってみたいものが有れば言ってくれ」

「そうかそれは良かった。最近東の山で希少金属が根こそぎ取られたみたいでな。アダマンタイトが叩けたらいい方だったんだ。職人としてはやはり最低でもアダマンタイトを叩きたいからな」

あ、やべぇ。

その山で希少金属集めまくったの、仙人たち傭兵隊の奴らなんだ。

それ全部神武国で叩かせてやるから許してね。

こうしてまた、俺に仲間が増えた。

ドワーフ鍛冶職人のドズルとその弟子たち。

武器ももちろんだが、俺の狙いはゴーレムの体だ。

アレに関してはほぼ俺のオリジナルで、本当にそれでいいのか自信が無かったんだよね。

ドズルならどうしたらいいか、駄目な所は何処か見つけてくれるだろう。

直ぐに分からなくても、ずっとやらせていたらやってくれるはずだ。

ついでにゴーレム作る手間も省けるなぁ。

悪魔の魂を使ったゴーレム、ガンガン作れそうだぜ。

2024年10月4日 言葉を一部修正

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