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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
呪い解除編
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有栖川の陰謀を阻止せよ!

資幣の元へ迅雷がやって来た。

「準備はできてますよ」

「よし、ついてこい」

これからオーガの里曙を襲撃に行く訳だが、傭兵隊の者たちにも既に作戦は伝えてあった。

昨日里へ入った俺たちは、代表と話をした。

襲撃の事を伝え、その対応方法も話した。

そしたら又俺たちの強さが疑われ、代表と手合わせする羽目になったりもしたが、同じように納得はしてもらえた。

後はみんなが作戦通り上手くやれば、とりあえず当面の危機は回避できると思う。

上手く行けばいいんだけどね。

町を出た資幣の俺と傭兵隊のメンバーは、迅雷に案内されて曙の入り口に来ていた。

「では仙人、行ってください」

「了解じゃ。みなの者いくぞ」

まずは仙人が里に入り、その後を傭兵隊のメンバーが付いてゆく。

里にはオーガの姿がありこちらに気が付いた。

気が付いたオーガは、『何故人間がこんな所に?』とか『出ていけ!さもないと攻撃するぞ!』とか言っている。

でも、凄く台詞が下手でちょっとヒヤヒヤするな。

「黙るんじゃお主ら!」

仙人はオーガを攻撃する。

当然手加減して上手く外す。

「うわっ!こいつ強いぞ!逃げろ!」

オーガたちは走っていった。

「手ごたえのない連中じゃわい」

「楽勝のようだな。さっさと制圧してこい」

「分かったわい」

仙人たちが逃げたオーガの後を追う。

その後ろを迅雷と共に資幣の俺は歩いて向かった。

歩いてゆくと仙人たちが行く手を阻まれるように立ち止まっていた。

「どうした?さっさと制圧してこんか!」

「そうもいかんのじゃ。アレを見るのじゃ」

仙人たちの先には、俺の本体である策也や英雄風里の姿があった。

「どうしてあなたたちがこんな所に!?」

「俺たちか?世界ルールが廃止されたからな。オーガと仲良くしようと思って遊びにきてたんだ。お前たちはなんだ?襲撃か?いくら世界ルールが破棄されたからといって、オーガとの約束もあるはずだぞ?仲良くしようってんなら別だけどな」

「ルールはもう無くなったんだ!襲撃しようとお前たちには関係ないだろ?!」

「そうか。もうこいつらとは友達になったんでな。俺たちはこいつらに助太刀するぜ」

一人二役は大変だな。

まあ思考が別だから余裕ではあるけれど気持ちが悪いぞ。

「生きて返すな!」

「みんなは下がってて!俺たちがこいつらを倒す!」

俺と環奈と風里は、資幣と仙人と傭兵隊を相手に戦っているフリをした。

でも多少はやらないと迅雷にバレるので、軽くパンチを当てて吹き飛ばし、再起不能にしたように見せる。

すると資幣の俺は焦ったようにセリフを発した。

「兎束迅雷様!お逃げください!時間を稼ぎますから早く!この者たちは魔王を倒した人たちです!勝ち目はありません!」

兎束迅雷は邪眼で確認した所かなり強い。

魔王クラスで資幣と魔力に差はない。

尤も資幣はオリハルコンの体でほぼ無敵だから、戦えば資幣が勝つだろうが、迅雷は人間の中ではトップクラスの使い手と思える。

逃げずに向かってくるかな?

「くそ!俺は一旦引くぞ!」

逃げるか。

まあ判断は間違っちゃいない。

でもどちらにも対応できるようにしてあるんだよな。

俺たちはしばらく戦うフリを続けて、迅雷が逃げる時間を作ってやった。

しばらくしてから資幣の俺は言った。

「我々も撤退するぞ。兎束迅雷様は逃げられたはずだ!」

「了解したのじゃ」

資幣の言葉に、傭兵たちも皆四散して逃げて行った。

「追わなくていいぞ!逃がしてやれ」

姿が見えなくなるのを確認してから、俺は勝鬨を上げた。

「作戦は成功だ!」

「良かったー!」

「ありがとうございます!」

「本当に強かったよ風里さん!」

オーガたちも皆喜んでいた。

「それであ奴は捕らえられたんじゃな」

「みゆきがしっかりと確保してこっちに向かっている。環奈の目ならそろそろ見えるだろ?」

「ほう。クラーケンの足で完全にあ奴は身動きできん状態じゃ」

「あの人強そうだったけど、みゆきなら余裕アルね」

「さあ、こっちからも迎えにいくぞ!」

俺たちは里の入り口の方へと走っていった。

里の外で俺たちは合流した。

「あんた兎束迅雷だってね。確か有栖川のもんだよね」

「知らん。くそっなんでこんな子供にわしが捕まるんだ?!」

あー‥‥やっぱ悔しそうだなぁ。

こいつもかなり強いからな。

こんな子供に捕まるなんて思ってなかっただろう。

でもみゆきは一寸(チート)チートが行き過ぎてるんだよ。

本来はその魔力で死んでしまうくらいにね。

だからあんたじゃ全く歯が立たなくて当然だ。

「魔法で全部はかせる事もできるんだけど?」

「貴様みたいな仲間に恵まれただけの此花のガキにそんな事ができるわけ‥‥」

「あ。俺の事知ってるんだ。確かにあんたの言う通りかもしれないけれど、自分の立場考えた方がいいよ?」

「くっそ‥‥此花麟堂がいなければ此花なんぞに‥‥」

確かに今のリンはこいつよりもかなり強いな。

功績は全部リンに押し付けてきたけど、それに見合うだけの強さをもう持っているわけか。

「何か勘違いしているみたいだけど、俺の苗字は此花だけど全然関係がないんだよね。今は神武の国ドラゴン王国に所属しているし」

「神武関係だったのか?!」

「いやそれも違うな。俺はただの冒険者でどの国にも属さない。ただお前みたいな悪いヤツは許せないだけだよ」

できるだけ他との関係は見せない方がいい。

俺のせいで何かあっても嫌だから。

「もう何も喋らんし、殺してもええかのぅ」

「どうしよっか?殺したら全部はかせる事も可能だけど‥‥そうだ。アレを使うかな。アレは使いたくなかったんだけどなぁ~」

俺は不敵な笑みを浮かべて迅雷を見た。

マスクしてるから効果は半減だけど。

少しビビったようだが、やはり口を割りそうにないか。

奴隷の首輪をつけて命令を聞かせる事もできるけど、これ以上は俺たちの役割じゃないだろう。

「今回の事は世界ニュースで流す。お前の今の姿や名前も含めてな。そして此処は愛洲領内だから、お前の処遇は愛洲に任せるさ」

「やっぱり殺した方がええと思うがのぉ」

「こいつ結構強いから、愛洲からなら逃げるかもしれないよな。よし、この魔力制御の首輪をつけておこう。これを付けた者は魔力が使えなくなる。ただしこの首輪に込められた魔力と同等か、或いは大きな魔力を持っていたら首輪を外す事も可能だ。さて付けられるかな?」

「そんな首輪、わしに付けられるわけ‥‥」

「あっ!付いた!」

「何故だ?わしよりも魔力の強いヤツがこの首輪に魔力を込めたというのか!?」

はい。

俺なんだけどね。

「鍵は一応愛洲に渡しておくよ」

確か折太郎が神武の国の愛洲大使館にいたよな。

津希にでも持っていかせよう。

俺は鍵だけを異次元収納へとしまった。


この後俺たちは、愛洲領内にある『スイショ』の町へと迅雷を連行し騎士団へと引き渡した。

罪人はギルドへ渡した方が金にはなったりするんだけれど、伊集院の息のかかった場所に渡すよりも直接愛洲の者に引き渡した方が良いと判断した。

「さて、せっかくだし温泉にでも入っていくか!」

「ここ温泉の町なんだよねー?!」

「そうじゃぞぃ?一緒に入るかのぅ?」

「駄目アル。みゆきは私と一緒に入るアル」

「環奈は男の姿になって俺と一緒だ」

この後俺たちは温泉を楽しみ、その後魔法通信にニュースを流した。

兎束迅雷はもちろん、有栖川を責める声はかなり大きかった。

流石にこれでオーガの里をどうこうしようとするヤツはしばらくでないだろう。

ただ、愛洲には迅雷に対してもっと大きな罰を与えてほしかったな。

鍵が届くまでの僅か三日間の拘束と、有栖川からの謝罪の現金のみで解放してしまったようだ。

この程度じゃまた何かを企むに違いない。

資幣でしっかりと監視していく事にするか。

尤も、今回の事で私設民間傭兵隊は有栖川との準専属契約を破棄という事になり、外からの監視という事になる訳だが。

貰った拠点は返さないけどね。


さて俺たちは迅雷が釈放される頃には、既に有栖川領内の『フウタン』という町を目指して旅に出ていた。

フウタンは、名産のフワフワパンがほっぺが落ちるほど美味しいと言われている。

そのパンが食べたいばっかりに、俺たちは有栖川領内を西に向かう事にしたのだ。

本当は有栖川領内から出たかったんだけどね。

どうせなら自由の国愛洲領内を西へ向かいたかったんだ。

スイショの町は本当に良かったからね。

有栖川や伊集院の町ほど人は多くないけれど、人々が生き生きとしていた。

やはり愛洲は好きになれそうだと思った。

「フワフワパンはまだかのぅ」

「結構距離があるんだよな。この辺り魔物もいないしどうもペースが上がらん」

魔物がいた方が移動ペースが上がるというのも変な話だが、戦っている時の方がみんな生き生きするんだよね。

ゆっくり歩いている方が元気なのはみゆきくらいだ。

全てが楽しいみたいな感じで、マジ癒されるわ。

俺がこんなだから移動ペースが上がらないのは理解しているよ。

でもみゆきが楽しそうだから、俺も楽しいんだよ!

ただそんな楽しいマッタリ旅も、少しずつ砂漠化していく景色によって終わろうとしていた。

いよいよ何もなくなってきた頃、先に駒形の立札『駒札』が立っていた。

それを駒札と表現していいのかは分からないが、転生前の世界にあるのと似ているのでとりあえずそう表現しておく。

駒札にはこう書かれていた。

『これより先は危険。情報を持たない者は入るべからず』

「情報を持たない者は入ってはいけないって‥‥」

「知らないとヤバいという事じゃろうが、何が危険なんじゃろうのぅ」

「北の方からまわるように書かれているアル」

これだけじゃよく分からないな。

それに知らないと危険なら、何がどう危険なのか書いてくれてあっても良いはずだ。

普通危険を知らせる看板には、『崖崩れ危険』だとか『熊に注意』だとか書かれている。

それが書かれていないという事は、あまり知られたくない何かがあるのだろうか。

「遠回りするの?」

「ん~‥‥フワフワパンも早く食べてみたいからな。何が危険か分からないけれど、この辺り空から行けば大丈夫だろう。軽く危険地帯だけでも飛んで通過しよう」

「空に何か危険があるようには見えんのぉ。それでいいじゃろぅ」

「じゃあ飛ぶアル!」

風里が一気に空へと上がった。

風里は普段から歩かずに飛んでいる事も多く、飛行魔法に関しては優れている。

寝ながらでも飛ぶ事が出来るらしく、時々ベッドの上に浮かんで寝ている事もあるくらいだ。

環奈は言わずもがな黒死鳥なので飛ぶのは得意だし、俺やみゆきは超絶魔力を持った人間だから、飛んで越えれば大丈夫だと思っていた。

四人は空へ上がると、一気に危険地帯とされる場所を抜けようとした。

「あれ?あそこに町があるな」

「地図には載ってなかったよねー?」

「それだけじゃないぞぃ。町の手前、アレは魔界の扉じゃないかのぅ?」

千里眼を使うまでもなく、それは魔界の扉に見えた。

「なんでこんな所に?今回の魔王復活で有栖川領内では魔界の扉は開かれていなかったはずだ」

「なんだかあの扉、ちょっと古く見える‥‥アル?あれ?飛行魔法が上手く使えなくなってきたアル!」

「大丈夫か風里!って、俺もだ!うわー!どうなってるんだ!」

俺と風里は落下を始めた。

「わしは大丈夫じゃぞぃ?」

「わたしも大丈夫みたい」

「だったら風里を助けてやってくれ!なんじゃこりゃー!」

とりあえず俺は落ちても大丈夫なはずだ。

体は魔法によって常に強化‥‥アレ?

強化の魔法も解けている?

俺このまま落ちたら死ぬんじゃね?

いや、不死だから体がボロボロになっても再生して復活すると思うけど、なんか嫌だ。

とはいえ全ての魔法が解けている訳じゃなさそうだな。

もしも解けるなら不老不死だって解けるはず。

みゆきも何事もなく飛べているし、もしかしたら‥‥。

俺は体の中に眠る妖精霧島の力を借りて妖精魔術を使って飛翔してみた。

すると体は落下を止め空中に静止した。

「やっぱりか。精霊魔術が使えなくなっている」

向こうでは環奈が風里を受け止めようとしていたが、その前にキャッツが羽に姿を変え風里の背中に張り付いて空へと上がっていた。

みゆきは俺の下で俺を受け止めようとしていたのか待ち構えていた。

「あれ?落ちてこないね?」

「ありがとうみゆき。俺は大丈夫だ。どうやらあの表札の意味が分かったぞ。環奈!風里!一旦下に降りるぞ!」

俺はそういうとみゆきの手を引いて地面まで降りていった。

直ぐに環奈と風里もついてきた。

「ちっ!残念じゃったのぉ。もう少しでお姫様だっこしてあげられたのじゃ」

「あたいが風里様には触れさせないのよ!」

よくぞ環奈のセクハラを防いでくれたな、キャッツ。

俺は心の中でキャッツに拍手をした。

「あの立札に書かれた危険ってのは、精霊魔術が使えなくなるって事だな」

「なるほどのぉ。それで策也殿と風里殿だけが落ちたんじゃな」

環奈の飛行は当然だけど、自らの能力で精霊魔術ではない。

みゆきもクラーケンの力を借りて飛んでいるから、落ちる事はなかったという訳だ。

「しかし、どうして精霊魔術が使えないのか気になるな」

「こんなことってあるの?」

「そうじゃのぅ。まるで聞いた事のない話じゃのぅ」

「死ぬかと思ったアル。私も聞いた事無いアル」

「ちょっと調べてみるか。ギルドじゃないから金はかかるけどな」

俺は異次元収納から捨て垢用ゴールドカードを取り出し、そういう話があるのか調べてみた。

「正式な資料やニュースとしては無いな。でも個人のニュースにはいくつかそんな話がある。ただどれも有栖川領内の某所って情報だけだ」

「つまり世界でおそらくこの場所だけって事じゃな」

世界でここだけ精霊魔術が使えない場所。

気になる。

大いに気になる。

これはちょっと調べてみるしかないだろう。

「ちょっと調べてみるか。おそらくあの地図に書かれていない町か、魔界の扉が何か関係しているんだとは思うんだが」

「おそらくそうアル」

「風里は大丈夫か?精霊魔術が使えなくて戦えなくても、何かあった時は守ってやるが」

「大丈夫アル!私にはこのスォードトンファ―があるアル!」

風里はトンファ―をグルグルと回して見せた。

「無理はしなくていいからな。じゃあとりあえずあの町へ向かうぞ」

「強い魔物はいるかのぅ」

「町だからいないんじゃないかなぁ?」

「でもあの町、人が住んでるようには見えなかったアル」

こうして俺たちは、精霊魔術が使えない謎を調べる為に、地図に無い町へと向かうのだった。

2023年8月21日 脱字を修正

2024年10月3日 言葉を一部修正

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