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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
魔王編
28/184

滅びゆくオーガの里を守れ?

エルフ王国軍事同盟が発表されてしばらくの間、俺たちはスバルに滞在していた。

どういう風に伊集院や世界が動くか、確認が必要だったからだ。

しかし表向き大きな動きはなかった。

魔王復活が近いとの予言は多くの王族貴族が知る所であったし、エルフ王国軍事同盟はあくまで復活した魔王に対する守りの同盟だったので危機意識は最小限で済んだようだった。

伊集院は流石に面白くなかったようで全ての王族に打倒を訴えたが、戦いが好きな早乙女も、悪の大国と噂の九頭竜も動かなかった。

むしろこの二国は同盟各国を味方につけたいようで、色々な所で連絡手段を探っていたらしい。

エルフ王国のエルグランドにも、仲良くやって行こうというメッセージが届いていたとか。

仲良くしようと言われて断る必要もなく、当然だけど平和にやって行こうという趣旨のメッセージを返しておいたようだった。

この一件の解決を見届け、俺たちは再び聖剣エクスカリバーを求めて冒険の旅へと出発した。

とりあえず目指すのは勇者の洞窟だ。

聖剣エクスカリバーが存在しそうな所は、今のところ此処しか考えられないからね。

とは言え先を急ぐ事はせず世界に住む人々の為に魔物を狩りながら、今日でスバルを出発してから四日目を迎えていた。

「なんだかまた魔物が増えてきてやしないか?」

「邪鬼くんの言う通りだと思うアル。そんなに強い魔物じゃないけど数が増えてるアル」

魔界の扉から出た魔物が、エルフ王国スバルをスルーしてこちら側に来ていたならそうなってもおかしくはないが、普通そんな事はあり得ない。

それにスバルを過ぎてからは、壊滅した村も無かった。

でもむしろ進めば進むほどそこにある村の被害が大きくなっているような気がする。

この辺りの魔物は、俺たちが進む方向から来ているようだった。

そんな風に思った時、空から陽菜の声が響いた。

「前方に人がおりますえ。魔物と戦闘してはりますけど、殺られそうやわ」

京都弁のような柔らかくゆっくりとした喋りなのだけれど、音量は大きくハッキリと聞こえた。

俺はマスクをして千里眼と邪眼を発動し確認した。

「オーガの女の子が戦っているな」

「なに?オーガの女の子だと?!」

悟空はそう言うと、ヨコシマにのって先行した。

「邪鬼くん‥‥」

風里は、別の女の所に向かう悟空を寂しく思っているのかと思ったが、表情は『惚れ直した』といった感じだった。

自分を放ってよその女の所に行くとしても、助ける為に真っ先に動く悟空がいいのだろう。

少し風里が可哀想に、そして可愛く見えた。

あの悟空の様子は、助ける為ってんじゃなくて、下心満載だったぞ。

俺たちが悟空に追いついた頃には、既に戦闘は終わっていた。

「人間?人間に助けてくれなんて頼んでないぞ!」

魔物と戦っていたのは、完全に人間を嫌っていそうな教科書通りのオーガの女性といった感じだった。

風里と違って筋肉隆々で、いかにも肉弾戦が得意そうに見える。

気が強そうな顔には、赤みがかった髪が逆立っていた。

「なんか怖そうな人‥‥」

洋裁がいつの間にか人間の姿になっていた。

本当に気まぐれなヤツだ。

今にも襲い掛かってきそうな女性の前に悟空が立った。

「待て!俺はオーガだ!」

悟空はそう言いながら頭の輪っかを外した。

髪は垂れ下がり、二本の角があらわになった。

すると先ほどまで鬼の形相という言葉がピタリと当てはまるような表情だったその女性の顔は、みるみる変化して恋する乙女のようになっていた。

「そうでしたのね!すると他の皆さまもオーガなのですか?」

女性の顔は期待に胸がいっぱいといった感じだった。

「私もオーガアル」

風里がそう言っても、女性は何も言わず笑顔を崩さずただ頷いていた。

そこで少し沈黙が続いた。

仕方ないな。

「オーガはその二人だけだぞ。他はまあ人間とか色々だ」

俺がそう言うと、あからさまにその女性はがっかりしていた。

「そうなのか。じゃああんた、人間と一緒に冒険とかしちゃってるわけ?」

女性は突然、風里に敵対心を持っているような態度をとった。

もうハッキリと分かるが、悟空に惚れた悪役令嬢メスブタのようだった。

でも風里は気にせず普通に返答していた。

「そうアル。でも目的は邪鬼くんと一緒に新たな里を作る為の旅アル」

「なんですってぇ!」

その女性の表情は、好きになった男が既婚者と知ってショックを受けた時のそれだった。

そうと分かると、今度は悟空に対しても態度が冷たくなった。

「何あんた人間なんかと一緒にいるわけ?頭おかしいんじゃないの?」

その対応を受けて、少し浮気心で我を忘れていた悟空の顔は、ノーマルポジションへと戻っていた。

悟空が何か良い事言いそうな雰囲気だ。

皆が息をのんだ。

悟空が口を開けたその時だった。

「見損なわないでほしい。自分、オリハルコンナイフですから‥‥」

洋裁がその場でナイフの姿に戻った。

「えっ?何?どういう事?」

驚く女性に対して、更に環奈が追い打ちをかけた。

「そうじゃそうじゃ。わしだって黒死鳥じゃぞ!」

環奈まで周りの木々をなぎ倒して、元の黒死鳥の姿をあらわにした。

「ひぃー!ま、ま、魔獣?こんなのに勝てるわけない!」

女性は腰砕けになってその場にへたり込んだ。

「まあそういうわけでな。俺は人間だけじゃない、色々なヤツと一緒に旅をしてるんだ」

悟空がなんか、ちょっと大人の良い男に見えた。

「そ、そうなのね。なんだかすごいわね‥‥」

女性は少し涙目になっていたが、深呼吸をして徐々に落ち着きを取り戻していった。

「私はオーガの里『夕暮(ユウグレ)』の『弁天』っていうの。よろしくね」

「俺は『(アカツキ)』の‥‥邪鬼だ。今は悟空って名前でいろんなヤツと一緒に旅をしている。里作りの為にな」

お互い自己紹介を終えると、弁天はチラッと風里の方を見て申し訳なさそうな顔をした後、いきなり自分の住む里へと誘ってきた。

「ねぇ邪鬼?えっと‥‥仲間も一緒に、ちょっと夕暮の里に寄っていかない?ちょっと見てもらいたいものがあるのよね」

何かあったのだろうか。

人間が一緒でもいいというのだから、よっぽどの事があるのかもしれない。

少し気になった。

そんな訳で俺たちは、その夕暮の里にお邪魔する事にした。

人間も一緒にという事で、一旦弁天が先に里に入り、皆に確認をとっていた。

話によると夕暮の里は、悟空たちがいた暁の里と比べると規模も小さく、だから確認に時間はかからなかった。

「どうぞ。こちらが私たちの里、夕暮よ」

森の中の細い獣道を進み、茂みの中へと入ったら、そこは小さなオアシスのような美しい所だった。

「オーガの里ってイメージじゃないな」

「なんだかとっても素敵な所ね」

「あの人達泳いでるよ!わたしも泳ぎたーい!」

「でも何か引っかかりますね‥‥違和感と言いますか‥‥」

総司の言う通り、確かに何か想像とかけ離れすぎている気がした。

「これはどういう事アルか?‥‥」

「ああ?この里、女しかいねぇじゃねぇか!!」

ああ!

そう言えばそうだ。

何か変だと思ったら、オーガらしいむさ苦しい男がいないんだ。

「気が付いたか。その通り。この夕暮の里には男のオーガが一人もいない。少し前まではまだ三人はいたんだがな。その三人もこのあいだ魔界の扉を閉じに向かったっきり帰ってこなかった」

魔界の扉?

「そうなのか‥‥いやでも少し前に俺の仲間の策也たちが魔界の扉を閉じたはずだぞ?」

「何?それは何時の事だ?」

「確か一ヶ月近く前だったと思うぞ?」

「それはおかしい。私たちが最後に確認したのは二週間ほど前だ。遠近の魔法による確認だったが間違いない」

俺たちは何か大きな勘違いをしていたかもしれない。

魔界の扉が一つだなんて誰が言った?

複数あったって何も不思議じゃないじゃないか。

「扉はどんな大きさだった?私たちが確認したのは高さ三メートルにもなる大きなものだったぞ」

いやそれ小さいだろ。

「策也。どうだったんだ?」

「俺たちが閉じた扉は、優に三十メートルはあったが?」

「なんだと!そんなに大きな扉を?いや、今はそこは問題じゃない。つまり邪鬼の仲間が閉めた扉と、私たちの言っている扉は別って事だな」

これで魔王の復活がまだ止まっていない理由もハッキリしたな。

やはり扉を閉じると復活は止められる可能性が高い。

しかし扉がいくつあるかは分からないわけだ。

「自分思うんだけど、とりあえずその扉、とっとと閉めに行った方が良くない?」

また洋裁は、突然話に入ってくるヤツだな。

でもその通りか。

この辺りに来て再び魔物が増えている事、そして閉じに行った三人が帰ってきていない事を考えると、扉はまだ閉められていないのだ。

魔王の復活を阻止する意味もあるが、時間が経てばその分魔物退治に時間がかかるし、望みはほとんどないけど急げばその三人を助けられる可能性もワンチャン微レ存(ビレゾン)あるだろう。

ちなみに微レ存ってのは、微粒子レベルの確率で存在するって意味ね。

天文学的確率っていうのに近いかな。

「そうだな。とりあえず閉じるか。そのついでにその三人がまだ生きていたら助けるとしよう。弁天!場所は地図で示せるか?」

「多分‥‥」

ちょっと不安になる返事だった。

一応地図を見せてみる。

‥‥。

駄目だな。

「俺たちが一緒に行けば大丈夫だ。案内してくれ」

「分かった。任せてくれ!」

こうして俺たちは弁天の案内の元、魔界の扉二号を閉めに行くのだった。


俺はメンバーを厳選し、実際に閉めた事のある環奈と洋裁、それに悟空を連れていった。

オーガの男三人の捜索と魔物狩りをしながら弁天について行く事二時間。

ようやく千里眼で魔界の扉が確認できる所まで到着した。

出てくる魔物は移動スピードを全く落とす事なく、俺が妖糸で瞬殺していったから、ここまでそれなりの距離があったと言える。

その間オーガの男三人に関する手掛かりはなかった。

「ありゃ確かに小さいな。俺たちが閉じた扉とは全然大きさが違う」

とはいえ形は同じものだった。

「じゃあとっとと閉めようぜ!」

「一応警戒はしたほうがええかものぉ」

「うん。自分たちが閉めた時はヤバいのもいたし」

俺たちはそこから慎重に魔物を狩りながら近づいて行った。

此処までも近づくにつれ魔物は強くなっていた。

流石にイフリートのようなのは出ないと思いたいが、魔界と繋がっている状態なのだから、油断はできなかった。

しかし割とあっけなく魔物の扉がある(ヒラ)けた所まで到達した。

「大したの‥‥いなかったね‥‥」

「残念じゃのぅ。強いのを期待しておったんじゃが‥‥」

そんな話をしながら魔界の扉に近づいて行くと、扉の向こうに人が三人倒れているのが見えた。

千里眼の捜索魔法に引っかからなかった所から、既に死んでいるものと思われる。

邪眼で確認しても魂は見つけられなかった。

「死んでるな‥‥」

弁天は三人の所に駆けていった。

「ちょっと待て!」

俺はそれを慌てて止めた。

三人が倒れた場所の少し向こうから、まだ魔物の反応があったからだ。

そしてその魔物は俺たちがよく知る魔物だった。

「黒死鳥だと?」

「でもあれ、子供だよね‥‥」

「子供っちゅーても黒死鳥じゃしな。それにアレは王子かもしれん。体も魔力も普通の子供よりも一回り大きいのじゃ」

「くっそ!あいつが仲間を!」

弁天は黒死鳥へ向かって攻撃を仕掛けようとした。

「駄目だ!お前がかなう魔獣じゃない!」

そうは言っても、俺には止められなかった。

弁天の思いがあまりに強すぎたから。

そんな弁天の前に出て止める影がった。

弁天が突き出した拳を、右掌で受け止めていた。

環奈だった。

「弁天殿。あやつは見逃してやってはくれんかのぅ。わしも一応黒死鳥でのぉ。仲間が殺されるのを黙っては見ておられんのじゃ」

「しかし‥‥仲間を殺されて‥‥」

弁天の体にあった力は、ゆっくりと抜けていった。

黒死鳥の子供は、弱っているとは言え強い。

それくらいは弁天も理解していたし、このまま攻撃に行っても自分がやられる事は想像できた。

自分を助ける為にそう言ってくれているようにも捉えられた。

弁天は拳を下した。

「ありがとう。あやつの事はわしに任せてほしいのじゃ。この先、こいつを助けて良かったと思えるくらいには罪滅ぼしさせてやるつもりじゃ」

環奈は振り返り黒死鳥の子供に話しかけた。

「『おまえ、わしと一緒にくるのじゃ。わしは黒死鳥の里の元王じゃ。悪いようにはせん』」

環奈がそういうと、黒死鳥の子供は張り詰めていたものが解けたようにその場に倒れた。

「策也殿。お願いがあるんじゃが、こやつを黒死鳥の隠れ里まで連れて行ってはもらえんかのぅ」

「ああ分かった。その前にまずは魔界の扉が先だがな。まあすぐには死なんだろ?」

「助かる。ついでと言っては何じゃが、その後鯉も大量に捕まえてきてほしいのじゃ」

「悟空と洋裁にもやらせて一気に集めるさ」

「えー‥‥」

「なんだ?恋を捕まえる?ガールハントか?」

俺は二人の言葉を無視して、魔界の扉の中を邪眼で確認した。

魔界はどうやらこの世界と並行した所に存在し、妖精界と違って完全に隔絶した世界のようだった。

なるほど、これなら転移できるな。

しかし魔素も濃いし、長く見ていると気が狂いそうになるような空間だ。

あまり行きたいとは思わないけれど、行きたいヤツもいたし一応この場所を記憶しておこう。

俺は転移ポイントを確認してから魔界の扉を閉めた。

「ん?何か空気が変わったな」

「そうじゃのぅ。魔素が洩れているのが止まった感じじゃな」

魔素が洩れていた?

何かが引っかかる。

そういえばこの所、想定以上に空の魔素が濃い気がしていた。

魔王の復活は、魔界の扉の開閉が問題じゃなく、もしかしたら魔素が関係しているのかもしれない。

まあそれが分かった所で、今までと何かが変わるものでもないのだけれどね。

「じゃあとりあえず黒死鳥の里に行くか。弁天は不動を召喚してオーガの里に送り届ける」

不動もようやくダイヤモンドミスリル製になっていたので、魔法も自由に使えるようになっていた。

俺は黒死鳥の子供を結界で包み、環奈と洋裁と悟空を連れて、黒死鳥の里へと瞬間移動魔法で移動した。

里につくと、まずは子供の黒死鳥の傷を癒やした。

魔物の蘇生は不可能と聞くが、死んでいなければ回復は可能だ。

ただ意識はすぐには戻らなかった。

その後は必死に川で鯉を捕まえた。

洋裁も悟空も文句を言っていたが手伝ってくれた。

「鯉を食うと、黒死鳥は精神が落ち着くのじゃ。そうなればちゃんと考えて行動ができるようになる。ただ人間に対して好戦的なのは、わしの経験上五十を超えてこないとなかなかなくならんがのぅ」

黒死鳥だけの話かもしれないが、この話を聞いて魔物の事が少しわかったような気がした。

魔物は死んだ人間の魂を持って生まれ変わって来る存在のようだが、どういうわけか人間に対して大きな敵意を持っている。

でも長く生きしている魔物、環奈や七魅なんかは、それが無くなっている。

環奈の話をそのまま受け止めるなら、おそらく五十年ほど生きればそうなるようになっているのだろう。

別の言い方をすれば、五十年以上生きた魔物となら、人間は分かり合えるのかもしれないな。

なんて思っていたのもつかの間、俺が回復魔法で元気にしてやった黒死鳥は、意識が戻ってから鯉を食いまくって冷静になった事もあり、何故かスッカリ俺になついてしまった。

「助けてくれてありがとう!」

人間の言葉も、簡単な言葉ならすっかり喋れるようになっている。

賢過ぎるぜ黒死鳥!

「おっ、おう。良かったな」

人間の姿にもなって、それは今の俺と同年代に見えた。

人間なら六歳くらいな感じか。

「それでじゃ策也殿、こやつをあのオーガの里夕暮で用心棒をさせるのはどうじゃろぅ?ゆくゆくはあそこを黒死鳥とオーガが共に暮らす里にしたいと思っておるのじゃが」

「えっ?マジで?オーガが了解すればそれもありかな。まだまだあの辺りには魔物がいるし、オーガだけで放っておいたら壊滅は確実だろうしな」

「用心棒!やりたい!」

おいおい、なんか変な展開になってきぞ。

「それと策也殿、お願いついでじゃ。こやつに名前を付けてやってはくれんか。それと一緒に連れて行く女の黒死鳥、こやつにものぅ」

えっ?女の黒死鳥も連れて行くのか?

「よろしくお願いしますね。私、一度人間と一緒に暮らしてみたかったのです」

オーガは人間じゃねぇけどな。

ヒューマンではあるけど。

「分かったよ。じゃあ黒死鳥だから『国士』な。そっちの子は環奈の子供みたいなもんだから『可奈』だ!」

「おお!国士!」

「ありがとうございます。可奈ですか。なんとなく可愛い名前な気がします」

ちなみにこの可奈、歳は五十歳を超えているんだろうな。

でないと人間への敵意が残っているだろうからね。

黒死鳥は五十歳程度の歳の差婚など当たり前で、長生きだし百歳でも卵は産めるらしいし、こういうカップルもアリなんだよな。

黒死鳥なんかすげぇ。


その後オーガの里に二人を連れていったわけだが、人間の姿だったからか、人間ではないからかよく分からないけれど、アッサリと受け入れられてしまった。

まあ悪いヤツには見えないし、何といっても守ってくれるというのだから助かるといった感じだったかもしれない。

まともに戦えそうなのは弁天だけだからな。

弁天だってちょっと強い魔物が出てくればやられるだろうし、黒死鳥の王子がいれば今までよりも圧倒的に安心だよな。

可奈も黒死鳥相応に強いわけだし。

とりあえずなんとか上手く行きそうで安心した。

このオアシスというか、でっかい池には鯉もいるし、黒死鳥も定住が可能な場所みたいだしな。


それから三日間は、オーガと黒死鳥が共に暮らせるか様子見もあり、この辺りの魔物討伐も一応やっておいた方が良いという事で、オーガの里夕暮に滞在していた。

そしてなんとかなりそうだと確認できた俺たちは再び旅に出ようとしていた。

「悟空さん!ここに残ってください」

「子供を作りましょう!」

「男がいないのです。頼みます!」

悟空は此処へ来てからはずっとモテモテだった。

本人も割と嬉しそうで、まあこの三日間は結構お盛んだったと思われる。

風里の事を考えると可哀想にも思うわけだが、風里自身に気にする様子はなく、オーガってこんなものなのかもしれないと考えるのをやめた。

「今はまだ無理だ。とりあえず魔王を討伐したら一度戻ってくるから、その件はまたその時にな!」

悟空、また戻ってくる気満々かよ。

でもこの里の命運がかかっているとなれば、普通に考えればそうするよな。

「じゃあ国士も可奈も元気でな」

「ちょっと悲しい。でも頑張る!」

「はい策也さん。行ってらっしゃい」

こうして俺たちは、再び旅に出るのだった。

2024年10月2日 言葉を一部修正

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