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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
魔王編
23/184

魔界の扉とフェンリルと総司

朝には全てが完成していた。

まずは俺の新しい家。

此処は『家族の家』とでもしておこう。

ホームはナンデスカの町で使い慣れているからな。

一階には廊下を作り、ドラゴンたちが住む家と繋げておいた。

そしてその途中に地下へと降りる階段を作って、その先にはホームへと繋がる転移ゲートを設置しておく。

此処は土足移動の場所なので、ホームの作業小屋の地下に、秘密の転移ルームを新設しておいた。

家族の家の二階には、ホームと同じような転移ルームを作った。

そこからは、ホームの三階とヌッカの店舗の住まいに繋がるゲートも作っておいた。

当然そこを通れるのは仲間と認めたパーティーメンバーと乱馬、七魅だけで、其の他フレイムドラゴンは一階の転移ゲートだけにしておく。

他のフレイムドラゴンたちの事はまだよく知らないからな。

仲良くなってくれば個別に開放していく予定だ。

「じゃあ俺たちはそろそろ魔界の扉へ向かうぞ」

「もっと人間の話を聞かせてほしかったのだ」

話を聞かせるだけならエアゴーレムを置いて行くという手もあるが、夜通し作業をしていたし魂が疲れているからな。

今日は勘弁してもらおう。

「まあ話がしたかったら、ホームに転移してくればセバスチャンがいる。人間社会の事もそこで聞いてくれ。それと家は全部魔力制御されているから、みんな最低でも一ヶ月に一回は魔力供給してくれよ」

ちなみに家族の家の方もドラゴンの家の方から魔力を貰う仕組みにしているので、自分たちで魔力供給する必要は失くしておいた。

これくらい良いよね。

「分かったのだ」

「じゃあみんないくぞ一旦山の麓に転移するから集まってくれ!」

「はーい!」

ドラゴンの子供と遊んでいたみゆきが少し離れた所から走ってきた。

それだけの事だけど、やっぱりみゆきは可愛いなぁ。

皆が集まったのを確認して、俺は瞬間移動魔法でドラゴンの里を離れた。

「本当にこの転移魔法ってのはすげぇな」

「少しへんな感じがするアル」

「一瞬死んだかと思ってしまうのぉ」

「実際死んでいるのかもしれませんよ。一瞬ですがこの世界から消えてるんですから」

「そう考えるとあまりお世話になりたくないわね」

「わたしはなんか面白い!」

みゆきは大抵の事はポジティブだった。

俺は術者本人だから、あまり変だとか感じないんだよな。

少し疲れるかなってくらいで。

「じゃあ今日これからだけど、二手に分かれようと思う。俺と何人かは全速で魔界の扉へと向かう。他はこちらに来ている魔物を倒しながらだ」

「どういう風に別けるの?」

「チーム分けだが、とりあえず飛行速度が比較的遅いリンと草子は後からだな。それとみゆきはいざって時の為に俺とは別行動してもらう‥‥けどいいか?」

「うん。大丈夫だよ!」

「一応不動をつけておくから俺に何か話があるなら不動に言ってくれ」

「分かったよ!」

不動もそろそろダイヤモンドミスリルゴーレムにしたい所だが、昨日は家を建てるのに忙しく間に合わなかった。

エアゴーレムだと俺にとっては微量だが、やはり魔力を使い続けるのはどこか疲れるからな。

「陽菜もそっちで索敵役を頼む。昨日のダークドラゴンの群れのようなのがいたら、逃げられるようにな」

「了解どす。みゆちゃんがおるんやったら大丈夫やと思いますけどな」

確かにみゆきはダークドラゴンをものともしない強さを見せていた。

だけどまだまだ戦闘経験がない。

「みゆき。油断はするなよ。クラーケンを持ったみゆきがやられる事は万に一つもないだろうが、他はわからんからな」

「うん。みんなは私が守るよ」

まあなんとかなるだろう。

不動もいるし、最悪どんな状況だろうと俺が瞬間移動魔法で助けに行けばいいわけだからな。

「悟空はどうする?どっちでもいいが?」

「俺は魔界の扉にはあまり興味がないからな。魔物と戦闘している方がいいぜ」

「そっか。じゃあ風里もそっちだな」

「私は邪鬼くんと一緒アル」

風里の喋り、すっかりはまってきたようだな。

良きかな良きかな。

「じゃあ後の環奈と洋裁は自動的に俺と一緒だ」

洋裁はしばらくは人間の姿でいてもらう事にした。

本人は面倒くさがっているので、何時ナイフに戻るか分からんけどね。

「分かったのじゃ」

「了解したよ」

「ところで洋裁は飛べるよな?ドラゴンだったわけだし」

「問題ないよ。それにこの体、昨日も言ったけど無敵だから」

俺はオリハルコンになった事がないからハッキリとは分からないけれど、色々と想像はできる。

洋裁がどんな行動をするのか、少し楽しみではあった。

洋裁に渡したダイヤモンドカードは、人間の体じゃないので左手には収まらなかった。

でもよく分からない方法で上手く体に取り込んで持つ事ができている。

洋裁は洋裁でも生まれ変わって知能指数は人間の約三倍。

俺が参考にできる事もこれから多々あるだろう。

洋裁をオリハルコンにしたのは正解だったな。

「最後に、今回別行動をとるのは、一刻も早く魔界の扉を閉めたいからだ。昨日少し乱馬の所に行ってきたんだが、八割方魔王復活には早乙女が絡んでいそうなんだ。それでおそらく魔界の扉の解放が関係している。これを閉じる事で魔王復活を阻止できる可能性もある。そんなわけで急ぎ扉を閉める事にした」

「そういう事ね」

「どっちにしても開けっ放しだと町や村に被害も出ますからね。早いに越した事はありません」

「その通りだな。では俺たちは先に行く。扉を閉めたら戻ってくるから!」

俺はそう言いながら上空へと舞った。

環奈と洋裁も後を追ってくる。

そしてある程度上昇した所で、俺たちは高速でその場から西へと向かって空を駆けた。

流石に環奈と洋裁、楽に俺のスピードについてくる。

これはもっとスピードを上げても良さそうだ。

俺はスピードを上げた。

「なかなか速いのぉ。じゃったらわしも本気になるかのぉ」

そういって環奈は黒死鳥の姿になった。

「じゃあ自分も‥‥」

今度は洋裁が姿を変えた。

ドラゴン‥‥じゃなくて、小さな鳥のような、飛行機のような形になっていた。

おそらく速く飛ぶ為に最も良い形を探っているのだろう。

「あー‥‥こりゃ楽だぁ~‥‥」

楽に飛べる形を見つけたのかな。

ついてきているからなんでもいいんだけどね。

みんなで来ていたら二時間近くかかる距離だけど、このメンツだけなら一時間どころか三十分もかからないだろう。

魔界への扉の閉め方さえ分かれば、直ぐに終わって合流できそうだな。

俺は更にスピードを上げた。

二十分を過ぎた頃、既に俺たちは目的の場所近くまで来ていた。

「そろそろだな。左に見える高山沿いにあるはずだから、此処からは山に沿って探しながらいくぞ」

俺は少し左へと進路を変えた。

すると視界に、山の一部が燃えているのが見えた。

「探す必要はなさそうじゃのぉ」

環奈はそう言って人間の姿になった。

「あれはなんだ?自分にはでかい魔人のようなのが暴れているように見えるけど‥‥」

洋裁も人の姿に戻って、両手を剣の形へと変えた。

「おいおい。ありゃイフリートじゃないか?」

近づいていくとハッキリ見えるそれは、炎の魔獣イフリートだった。

ちなみにこの世界では、イフリートは魔人ではなく魔獣の扱いになる。

魔人は魔界に住む人の事、つまりは悪魔であり、俺たち人間と同じで魔石を持たない。

しかしイフリートには魔石があるので魔獣なのだ。

そして魔獣の中では超レアで強力な部類であり、伝説の魔獣の一種でもある。

中でも攻撃力は最強クラスで、クラーケンやなんかと並べて扱われるとんでもないヤツだ。

大きさは二十メートルを超え、黒死鳥姿の環奈よりも大きい。

「一発お見舞いしてやるのじゃ」

環奈は人間の姿のまま、オウムビームを発射した。

黒死鳥の時に発射するそれよりも威力は落ちるが、発射までの時間が短い。

ビームはイフリートに命中したが、全く効いている様子はなかった。

「こりゃたまげたのぉ」

「じゃあ今度は自分が‥‥」

洋裁も同様に口からドラゴンブレスを吐いた。

威力はおそらく環奈のオウムビームよりも上だが、やはりこちらも効いている様子はなかった。

「高熱系のビームや炎ではイフリートは倒せないな。やっぱりコールドの魔法でしょ!」

俺は絶対零度の吹雪をイフリートめがけて飛ばしてやった。

それに対してイフリートは高温の火炎放射で応戦してくる。

しかし魔力の高い俺の魔法がイフリートの魔法を押していた。

「行けるか?」

「攻撃魔法じゃ‥‥コールドは分が悪い‥‥」

最初押していた俺の魔法が逆に押され始めた。

「まっ、常識か」

温度を下げる場合、絶対零度という限界点があるのに対して、温度を上げる場合には限界がない。

俺がどれだけ大きな魔力を持っていたとしても、これ以上のコールド系魔法は使えないわけだ。

しかしイフリートは何処までも温度を上げてくる炎の魔獣。

この戦い方では勝ち目がなかった。

仕切り直したい所だが、この炎を止めるのをやめると、俺の背後数キロ、或いは数十キロが焼け野原になってしまう。

多分村もあるだろう。

避けるのは簡単だけど、さてどうしたものか。


一方その頃リンやみゆきたちは、森の中で大量の魔獣と戦っていた。

不動である俺も一緒に戦っているが、かなりレベルの高い魔獣で簡単に討伐とはいかなかった。

「こいつは灰色赤目狼だ!気を付けろ!まともに攻撃を食らったら死ぬぞ!」

「へっ!こんなヤツに俺様が負けるかよ!」

「邪鬼くん流石!」

いや、その余裕で戦っている風里の方が流石ですよ。

「ダリアぱーんち!あーん!クラーケンさん。そんな風に殺しちゃ駄目だよ!」

とりあえずこの三人は大丈夫だな。

問題は‥‥。

「阿虎ナイスよ!これでとどめだわ!」

リンも阿吽の腕輪を使いこなし油断せずに戦いってる。

吽龍の鎧なら致命傷は避けられるだろうし、リンも大丈夫だろう。

となると後は草子だが‥‥。

「僕だってこれくらいの魔獣ならもう楽勝だよ。打ち出の大槌!」

攻撃は最大の防御。

一撃で倒してしまえば問題はないか。

直ぐに上空へ離脱すれば攻撃も受けないしな。

これでは俺の出る幕はないかもしれない。

そう思って油断した一瞬だった。

いや、油断したつもりはなかったが、想定外の事が起こった。

灰色赤目狼の中に別の魔獣が紛れ込んでいたのだ。

フェンリルだった。

フェンリルは灰色赤目狼に似ているが、一回り大きくその力は桁違いだ。

伝説の魔獣としては弱い部類に入るが、それでも一応伝説の魔獣に分類されるだけあって、平均的な強さはドラゴンよりも上。

そんな魔獣が攻撃のチャンスを陰から窺っていたのだ。

ヤバいと思った。

攻撃直後の草子は無防備だった。

今攻撃を受ければ回避は不可能。

俺がなんとかしなければ。

しかしエアゴーレムの不動よりもフェンリルの方が圧倒的に力は上。

本体を呼ぶか?

いや今はイフリートの攻撃を防いでいる途中で呼べない。

なんとか草子を守らないと。

不動の俺は身を投げ出して草子とフェンリルの間に入った。

しかしフェンリルの攻撃は思った所からは来なかった。

上空から雷が落ちて来るようにやってきて、少し上空で二つに分かれ、俺と草子へと命中してた。

直後大きな爆発と爆炎が二人を包み、一瞬にして跡形もなく消し去っていた。


「くっそ!ヤバい!不動と草子がやられた。早急にイフリートをやるぞ!環奈と洋裁はできるだけ離れろ!」

「恐ろしい事になりそうじゃのぉ」

「無敵の自分でも死にそうだ‥‥」

俺は一気に魔力を高め、絶対零度の魔法は続けたまま、もう一つ魔法を発動した。

終末闇裁断(デスカーニバル)!」

この魔法は、この世界の闇魔法で最上位に位置づけられるものだ。

頭上から十三本の巨大な槍が対象を貫き、ほぼ全てのモノを死に至らしめる。

その衝撃は辺りを大きく揺らし、突風が辺りのモノを吹き飛ばしていった。

それでもイフリートはまだ生きていたが、俺の魔法を止めていた火炎放射が止まった事で絶対零度を受け、イフリートは氷漬けとなって死んだ。

俺はそれを異次元収納に回収すると同時に仙人を召喚し、瞬間移動魔法でみゆきたちの元へと移動した。

残された仙人は告げた。

「環奈と洋裁はちょっとまっててね」

「うむ」

「はぁ‥‥」

俺は最後に不動が見た景色の場所へと移動した。

既にそこにみんなの姿はなかった。

何処だ?何処にいる?

するとすぐ近くから声が聞こえた。

少しそちらに行くと、和やかな雰囲気でみんなが話していた。

「まさかフェンリルを使役できるなんて思わなかったわ」

「僕も死んで生き返ったら元の男の姿に戻るなんて考えてもいなかったよ」

「いやマジなんかすげぇな」

「うん。邪鬼くんの本気も凄かったよ。みゆきが蘇生する間の戦いっぷりはかっこよかった」

「蘇生できてよかったね。あの状態からだと神の加護による蘇生しか無理だったから、魔獣さんの死体が沢山あって良かったよ」

ああ‥‥。

どうやらそういう事らしい。

あの後みゆきは草子の蘇生を試みたんだ。

でもフェンリルがいて、そんな余裕はなかったはずだ。

なのにおそらくリンがどういうわけかフェンリルのテイムに成功して、他は蘇生中のみゆきに邪魔が入らないように魔獣から守った。

蘇生が成功したら女になっていた草子が男の総司に戻ったと、そういうわけだろう。

理屈としてはそうなるんだろうな‥‥。

「あれ?どうしたの策也?」

「策也だー!もう扉は見つかったの?」

「いや、草子が死んだから急いで助けにやってきたんだけど‥‥必要なかったみたいだな」

どう考えてもこんな結果は予想できんだろ。

フェンリルは今見ても、俺以外此処の誰よりも強いように見えるわけで。

「まさか私もフェンリルのテイムに成功するなんて思ってなかったわよ」

「すんませんなぁ。うちもフェンリルには気づけませんでしたわ」

「いや、まああの中じゃ気づかなくても仕方ないけど‥‥つかなんでリンはテイムしようなんて思ったんだ?」

それが気になる。

普通に考えてそんな発想にはならんだろ?

「それは、此花の家系は基本テイマーなのよ。ユニコーンはその代表なんだけど、過去にフェンリルを使役していた王様もいてね。だったら私もできるかなって思って。阿虎と吽龍も力を貸してくれたみたいで、見事にこうなったわけ」

「はぁ‥‥なるほどね」

とはいえまさかリンがフェンリルをねぇ。

思った以上にこいつは大物なのかもしれん。

「で、草子‥‥じゃなくて総司か」

「ようやく戻れましたよ。予言ではその内戻れるという風には聞いていましたが、これでスッキリしました。基礎能力も元に戻ってこれからはもっと戦えそうですよ」

「そうだ!住民カードの名前とか、元のに戻しておかないとね。私がやってあげるわ」

なんか、やっぱこのパーティーチートだわ。

俺は嬉しくてにやけていた。

「おっと、じゃあ俺はソロソロ戻る。魔界の扉はもうすぐ見つかるだろう。閉めたらまた戻ってくるな」

俺はそう言うとみゆきにウインクとサムズアップを残して、改めて不動を召喚してから環奈たちの元へと瞬間移動した。

「お待たせ!」

「大丈夫じゃったか?」

「ああ。草子は一度死んだが‥‥まあ後は会ってからのお楽しみという事で」

「妖精にでも生まれ変わったんかいのぉ」

「逆かもな」

しかしちょっとパーティーがむさ苦しくなってきたな。

みゆきは天使だから別格として、他では一番の美少女だった草子が総司になっちまったんだ。

リンには期待できんから、これからは風里に頑張ってもらわんとな。

「その話は置いといて‥‥おそらくアレが扉じゃね?」

洋裁が指さす方向には、確かにそれらしきものが見えた。

正に扉だった。

「でもこれ、かなり距離なくね?」

「そうじゃのう。ここからじゃと数キロは離れておるじゃろうのう」

「バカでかい‥‥と自分は思うっす」

そりゃそうか。

あんなでかいイフリートが出てくるくらいだ。

アレくらいないと出ては来られないだろう。

俺たちは再び空へと上がって扉へと向かった。

と言ってもほんの十秒ほどだけどね。

上空から見る扉はやはり大きかった。

そして地上には数多くの魔物がひしめき合っていて、今も扉から魔物が続々とでてきていた。

「こりゃ早く閉じないと後が面倒だな」

「どうやって閉めるのじゃ?」

「とりあえず力任せに押してみるか。その前に扉の前の魔物を全部処理してからか」

「分かった。ちょっと自分の無敵の力‥‥試してもいい?」

「あんまり広範囲に被害が及ぶのは無しだぞ?」

「分かった」

大丈夫だろうか。

元はダークドラゴンで知能は高いから、良い感じの結果になるようにやってくれるとは思うけどね。

でもなんか不安だ。

「‥‥ん~‥‥」

「どうした洋裁?」

「なんかいい掛け声ないかな。ヨイショ―!みたいな‥‥」

そんな事で悩んでたんかい!

いいけどね。

「じゃあ『チェスト―!』ってのはどうだ?」

「あ、うん‥‥凄くしっくりくる。それいただくっす」

「おっ、おう」

なんか洋裁と喋ると時の流れが少し遅くなる気がするな。

「じゃあいくよ!チェスト―!」

洋裁はそういって、ナイフに変えた両手を扉の上空から振り下ろした。

すると剣の波動が大きくなりながら地表へと飛んでいく。

一瞬のうちに波動は扉よりも大きなものとなり地面にいた魔獣を亡きモノへと変えていった。

しかし波動の端が少しだけ扉の下の方に命中し、次の瞬間扉の一部に亀裂が入り崩れていった。

「ちょっ!洋裁!」

「あっ‥‥ゴメン。当てるつもりなかったんだけど‥‥でもアレくらいなら大丈夫だよね‥‥」

大丈夫じゃないような気もするが、まあでもこれで扉は閉めやすくはなったかもしれない。

下の魔獣が邪魔だったけれど、その部分に扉は無いのだから閉められる。

下だけ少し開いてるトイレのドアみたいな感じかな。

魔界の扉は両開きの引き扉だけど。

「よし!俺は左の扉を押してみるから、お前らは右の扉を押して閉めてみてくれ!」

「分かったのじゃ」

「承り」

俺たちは扉の裏側へまわると、全力でそれを押してみた。

すると思ったよりも軽く、扉はすぐに閉まった。

そして崩れたはずの扉の下の方も、自動修復魔法が働いたようで、扉は綺麗に閉じられた状態となった。

「はは‥‥なんかアッサリだったな」

「自分、計算通りですから」

「ふぉっ!ふぉっ!ふぉっ!案ずるより産むが易し、じゃのぅ」

環奈の言う通りの結果だな。

扉の大きさを見た時はどうなる事かと思ったけれど、やってみれば案外簡単に閉まったわけで。

「じゃあこの扉、二度と空けられないようにドアノブに鎖でもかけておくか」

俺は両方の扉の取っ手を繋ぐように、ミスリル製の鎖でグルグル巻きにした。

そして俺にしか開けられないように魔法ロックをかけた。

俺以上の魔力を持った者がいれば、強引に開けられるだろうけれど。

これで魔王が復活しなければ、もう二度と魔王が復活する事はないだろう。

扉を開けないと魔王が復活しないのだとしたらね。

「よし、じゃあみゆきの所に戻るぞ。あっちは結構今も大変そうだから‥‥そうは見えないかもしれないけれどね」

俺は空中に瞬間移動魔法のゲートを開いた。

環奈と洋裁が飛び込んだ後、最後に俺が入った。

みゆきたちの元に戻ったらすぐに不動を回収し、みんなの戦闘に加わった。

まあ不動では主に倒した魔獣の回収をしていたわけで、俺も普段通りみんなの様子を見ながら魔獣を回収していった。

改めて見ると、みんな強いし強くなっている。

リンはフェンリルを手に入れて、総合力では一番になったのではないだろうか。

というかフェンリルだけで一番なんだけどね。

次は洋裁か。

実際戦闘をすれば最終的には洋裁が勝つだろう。

なんせ無敵だからな。

みゆきとやればみゆきが蘇生解除で勝つわけだが、普通に戦えば今のみゆきでは勝ちはない。

次は環奈。

環奈が負ける所は想像できない。

魔力の総合力ではリンに負けるし、無敵の洋裁を倒す方法も見えないが、なんとなく負けないように思えるから不思議だ。

次はみゆきか。

現在風里と力は互角だが、直ぐにもっと強くなるだろう。

魔力コントロールの指輪がバージョンアップするだけで格段に強くなる。

ただ戦闘って事だと風里の方が上だが、直接対決したらみゆきに軍配が上がると予想。

風里の次は悟空。

とはいえ風里はきっと悟空には勝てない。

そういう意味では悟空が上と言えるかもしれない。

ただこの二人はまだ、出会った頃からそんなに変わらないな。

男に戻った総司は、格段に強くなっている。

か弱い乙女から力強い男になったわけで、その差は大きい。

フェンリルにやられてしまったが、今の総司なら違う結果になりそうだ。

陽菜はまあ強くなりようがないが、今も空で空行く鳥獣を倒してくれているし、これで十分かな。

こうして見るとマジでチートなパーティーだ。

最初はハーレムを作るのが目的だったけれど、今はなんだかとても今の状況に満足していた。

2024年10月2日 言葉を一部修正

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