表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
中央大陸編
19/184

緊急指令!死亡フラグを回避せよ!

昨日の飛行が大変で成長したせいか、それとも単に今日は距離が短かったせいか、目的地であるムガサリには思ったよりも早く二時間もかからずに到着した。

リンももう飛ぶだけなら問題がないように見える。

これなら海を渡るのも余裕に違いない。

というか、ぶっちゃければこのまま飛んで西の大陸に渡っても良いくらいだ。

でも俺たちの中に西の大陸に行った事のあるヤツはいないし、国境の港町で情報収集しておいた方がいいだろう。

そんなわけで今日一日此処で情報収集をして、明日西の大陸に渡る事にしていた。

ムガサリの町は西園寺領の港町で、本来なら西の大陸との玄関口として交易の盛んな町である。

しかし西の大陸側のキトキトの町は伊集院領の港町なので、多くが伊集院統治のヌッカの町へと行ってしまうのだ。

別に交易が全く無いわけでもないのだが、他の港町と変わらない町となっていた。

「とりあえず西の大陸の情報収集だ。誰も行った事がないし、魔物が増えているという情報の真否も確かめておきたい。どんな魔物が出るのかも一応知っておいた方がいいだろう。まあ何が出た所で俺たちの敵ではないだろうがな」

「わしは早く強いヤツと戦いたいのぉ」

「俺だってそうだ!まだ里を出て戦闘してないからな」

環奈と悟空は血の気が多いな。

「わ、わたしもまじゅう倒せるようになるために特訓してたんだよ!」

「そうなのかみゆき?何処でそんな特訓を?」

「私が‥‥教えた‥‥アル。イメージトレーニング‥‥したアル」

「そう言えばあんたたちなんかやってたわよね。虫も殺せないみゆちゃんがどうしたら攻撃できるようになるのかって」

そんな事できるのかね。

「僕は戦うの専門外だから特に戦いたいとか思わないですよ。でもいざって時の為に僕もイメージトレーニングはしています」

草子が意外と戦いたそうに見えるのは俺だけだろうか。

「うちはこんな小さい体では戦えまへんなぁ」

「大丈夫だ陽菜。今の体でもそんじょそこらの魔物には負けんぞ?羽はあらゆるものを斬り裂く刃になるし、体は世界最強の強度を誇るダイヤモンドミスリルだ。魔物が出てきたら試してみたらいいさ」

「ほんまですかぁ。うちもなんかワクワクしてきましたわ」

「じゃあとりあえずギルドに行きましょう。ご飯食べながら冒険者の話を盗み聞きよ!」

「そ、そうだな‥‥」

まあ悪くない方法だけど、一国の王女の口からは聞きたくなかったセリフだな。

俺たちはギルドへと入っていった。

中はヌッカの町ほど賑やかでは無かったが、この時間にしては結構人が多い印象だった。

「僕はそんなにお腹空いてないし、軽くおやつでも食べますか」

「私は食べるわよー!美味しそうなの結構あるみたいだし」

「リンは出発前かなり食ってなかったか?」

「いいのよ。デザートは別腹だし、何かあってもトイレに行く必要もないし」

自動排泄の常態魔法は、全てのパーティーメンバーの住民カードにセットしてある。

そして陽菜には不要と思いつつも、体にデフォルトで機能を付けてあった。

ついでに乱馬もね。

テーブルに着いた俺たちは、結局ガッツリと注文をして食事をしていた。

そして食べながら、当然他の冒険者の話を盗み聞きしていた。

主に俺と環奈と陽菜だけどな。

俺は能力としてデビルイヤーを持っているし、環奈は元々五感に優れている。

そして陽菜は、人間の耳では聞き取れない音まで拾えるよう、高性能な受音能力を持たせてある。

今後はこの三人で状況監視をする事になるはずだ。

「僕は無料端末でニュースを確認してきますね」

「じゃあ私も」

「じゃあじゃあわたしも見る!」

みゆき。

そこは二人の邪魔をしちゃいけないよ。

でもそんな事言っても分からないよね。

見た目は女と女だし。

リン、みゆきを許してやってくれ。

「私も行って‥‥いいアルか?」

「俺もなんかそれ興味あるぞ?」

結局お前たちも見に行くのか。

まあいい、

そんな日もあるさ。

俺たちは俺たちの任務を全うするだけだ。

広いテーブルに俺と環奈が、隣り合って座っている。

ふと状況を確認した。

これはマズイ。

チャラオが環奈に声をかけてくる可能性がある。

俺は大至急テーブルの下で霧島を召喚し、俺たちのテーブルの席に座らせた。

二手に分かれる時はまだまだ霧島が必要だったか。

さて情報収集に集中しなくては。

いくつも思考がある俺だから、ずっと何人かの話は聞いてるんだけどね。

「西の大陸はかなり魔獣が増えてそうじゃの」

「そうみたいだな。こちらから西の大陸に渡る人もほとんどいなくなっているとか」

「わしは楽しみじゃわぃ。ドラゴンもおるらしいぞぃ」

ドラゴンならこの辺りの北の山を越えた向こう側で何度か戦ってるんだけどな。

俺のゴーレムたちでも勝てるレベルだから、ドラゴンの中では弱い方かもしれんが。

魔王の復活や勇者についても話しているのが聞こえた。

「今、この世界には勇者が誕生していないのか。一人いた勇者も去年亡くなったとか」

「過去四回魔王は復活しとるんじゃろぅ?その全てで勇者が魔王を倒したらしいが、今回はどうなるんじゃろうのぅ」

「本来なら勇者がいない時に魔王が復活するなんてあり得ない気もするが、むしろそのタイミングを狙って今回は復活するのかもしれない。まあ勇者がいなくてもなんとかなるだろ」

魔王の復活は、草子や弥栄が言う所によればおそらく確実だ。

そしてその為の対応も既にしている。

ならばおそらく大丈夫なのだろう。

でも大丈夫なのはこの世界であって俺じゃないんだよな。

俺の能力判断だと俺が魔王に負ける事はあり得ない。

でも能力だけで勝敗が決まるわけではないから、不安が全くないと言えば嘘になる。

不老不死はおそらく魔王も同じで、魂だけがこの世を彷徨うなんて事もあり得るし、地球外に飛ばされて虚無の宇宙を彷徨う事になるかもしれない。

死ぬよりも辛い事になるかもしれないわけで、相対して見るまでこの不安はぬぐえそうになさそうだ。

聞こえてくる情報はどれも似たようなものだった。

西の大陸の特に魔物が多くなっている北側のエリアは、ほとんどが伊集院領である為町の守りも堅く、とりあえず人が住めないなんて事にはなっていないようだ。

ただ町の外へ行けば魔物に出くわす可能性が高く、物資食料の輸送が困難になっている。

しかも多くの食料は町の外で作られている為、貯蓄されている物が無くなれば町を捨てて他の地に逃げなければならない可能性がある。

その期限は三ヶ月ほどで、それまでに今の状況をなんとかする必要があるって事だった。

そしてこの事態は、魔界の扉がどこかで開かれた事によるものだという見方が大勢で、表立って魔王の復活を確信して口にしている者はいなかった。

しばらくしてみゆきやリンたちが戻ってきた。

「ただいまぁ~」

「おかえりみゆき。何か情報はあったか?」

「わたしにはよくわかんないけど、勇者のダンジョンがどうとか話してたよ」

「勇者ねぇ」

「私が話すわよ。西の大陸は今のままだと結構まずいわね。魔物が増える一方だって。そこで冒険者に『勇者の洞窟』探索と『魔界の扉』の捜索が発令されたんだってさ」

「勇者の洞窟ってのは、既に場所が分かっているのか?」

「ええ。伊集院領内のほぼ中心よ。ここで見つかる鉱物資源なんかも伊集院を大きくしているわ。ミスリルは腐るほど取れるし、宝石類も多いわね」

そんなおいしい場所があるのか。

「しかし何故そこの探索が?」

「普段は十階層くらいまでしか行かないし、マスタークラスが揃ったパーティーでもせいぜい二十階層までが限界って言われているの。でも今回の事態に対処するのに、勇者の遺産を掘り起こしたいみたいね。実際に人が入ったのは二十五階層までらしく、それよりも下にもぐれる人を探しているようよ」

「もしかしてそこに聖剣エクスカリバーがあるんじゃないのか?」

「その可能性はありそうですね。ただハッキリとした情報はありません」

まあ行ってみるしかなさそうだな。

「もしかしたらそこに魔界の扉があったりするかもだしな」

「無いとは言えませんが、情報によるとダンジョンの魔物の数は別に変わっていないようです」

「となると、俺たちが西の大陸に渡ってやる事は、とりあえずその勇者の洞窟とやらに向かいつつ、魔界の扉を探すって感じになるのかな」

「それで良いと思います」

「魔界の扉を見つけたらどうするんじゃ?」

「そりゃ見つけたら扉を閉めるって事になるんじゃないか」

「なんじゃつまらんのぉ。魔界とやらを冒険してみたかったのぉ」

いや環奈、お前のご先祖はきっとそっち出身だと思うぞ。

里帰りという意味では、行ってみたいって気持ちは理解できるのか。

「いずれ魔界へも行ってみるか。でも今はとりあえず、こちらの世界が落ち着いてからだな」

「それは楽しみじゃ」

「私は行かないわよ。魔界なんかに行って生きて帰れる気がしないわ」

「わたしは策也が行くなら行くよ!世界中見てみたいから」

「俺もちょっと興味あるな。俺たちオーガは悪魔に似ているらしいし、実際に会って確かめたい」

「魔王が復活すれば‥‥見られる‥‥はずアル」

「なんだと!?」

「魔王は悪魔ですからね。悪魔のボスって所です」

「そうだったのか。俺たちに似たそいつが悪い事するから俺たちまで悪いヤツに思われちまってるんだ。会ったらぶん殴ってやる!」

そもそも悟空は俺が無理やり連れて来たわけだが、こうして目的ができたのは良かったな。

新しい里を作るってのも一応目的なんだろうが。

この後俺たちは情報を整理し、当面の目的と目的地が決まった。

「西の大陸に渡ってからの予定はそんな感じだ。そしておそらく最後には魔王と命がけの戦いが待っている。成り行きでそうなったが、俺は最後までできる事をやろうと決めた。無理やり連れてきたヤツもいるが、みんなついてきてくれるか?」

「私は一国の王女としても、総司と結婚する為にも必要だから当然よ」

「これは僕が持ち込んだものだし、むしろ協力してもらって感謝しています」

「わしはドラゴンでも悪魔でも、強いヤツと戦えるのなら喜んでついて行くぞぃ」

「俺も望む所だ!里で里長やってるよりずっと面白れぇ」

「私は‥‥邪鬼くんについていく‥‥アル」

「わたしも策也についていくよぉ~!それで魔王を倒したら策也と結婚式をあげるんだぁ!」

「おいみゆき!」

なんて事を言うんだこいつは。

結婚式は『時期が来たら』って言ってたけどさ、勝手にそのタイミングと決めないでくれ。

そしてみんな。

俺が照れて動揺していると思っているようだが、違うんだ!

これから戦いに向かおうという時に、全てが終わったら結婚とか結婚式とか、そんな事言ったらそれは『死亡フラグ』なんだよ!

これはきっと、俺かみゆきが死ぬルートに入ってしまったぞ?

不死だから魂が彷徨う生き地獄確定だ。

このままではまずい。

不安だ!

不安過ぎる!

なんとか死亡フラグを解消しなければ。

「いや、みゆきとの結婚式は今からやるぞ!戦いに行く前にやるのが定石だ。リン!此花の姫の権力を使ってどこかの教会をこれから押さえて来い!金ならいくらでも出す!」

「いきなり何言ってるの?意味が分からないんだけど?」

「俺の生まれ育った場所ではな、結婚式をする話をしたら、その時に結婚しろって教えがあってな。俺の掟なんだ。これは絶対だ。結婚式をしなければ西の大陸には渡れない!」

「そうなんだー!もう結婚式ができるなんて嬉しいよ!」

軽くいってくれるな。

でも可愛い。

この子の為なら死んでもいいが、この死亡フラグは言ったみゆきの可能性の方が高い。

絶対式をあげなければ!


そんなわけで夕方、リンがなんとか教会を押さえてくれたおかげで、どうやら死亡フラグは回避できそうだ。

衣装は俺が適当に魔法で作った。

転生前の結婚式では、妻にはウエディングドレスを着てもらったので、今回は日本風衣装に近いものにした。

白無垢(シロムク)の細かな所は覚えていないので、なんとなくで作った。

少し違うかもしれないが、みゆきの元々の服装が神服っぽいので、それをそのまま生かして良い感じにできたと思う。

男性用羽織袴も正直うろ覚えなので、ちゃんとできているかは分からない。

こちらもそれなりにそれらしいものができたので良しとしよう。

これらを着て教会で結婚式ってのもなんか変だが、神社っぽい施設は、ゴーレムで色々見て回ったけどまだ見つかっていない。

もしかしたらあるかもしれないが、とりあえず今日はこれでいいのだ。

またいつか、そうだな、俺たちが見た目で十五歳になったら、その時はもう一度改めて、しっかりと結婚式をすればいいさ。

「汝みゆきは、この策也を夫として愛する事を誓うかのぅ?」

「はーい!誓います!」

「汝策也は、このみゆきを妻として愛する事を誓うかのぅ?」

「誓います」

「じゃあ誓いのチューじゃ!」

俺はなんだかメチャメチャ照れたが、みゆきは普通にキスしてきた。

うぉー!

なんだこの破壊力は!?

魔力の巡りが三倍早くなった気がする!

もう今の俺は無敵だ!

なるほど、このパワーアップが無ければ俺は魔王にやられていたかもしれないって事か。

だがこれで勝った。

今この時俺の明るい未来が確定したのだ!

「ほい。これで結婚式は終了じゃ!」

「やけにアッサリね」

「でもそれなりに伝わるものもあった気がするよ」

「結婚か‥‥俺はもう二十二歳なのにまだなんだよな」

ほう。

悟空は二十二歳だったんだ。

カードに設定してあった年齢と一致していたんだな。

「オーガは長生きだし‥‥急ぐ必要もない‥‥アル」

ほうほう。

長生きだったのね。

平均寿命はどれくらいだろう。

つか今更だが、風里は俺の言った事マジで守り続けてるよな‥‥。

「おめでとうさん。僕まで呼んでもらっちゃって‥‥一瞬でおわっちゃったけど」

一応乱馬も無理やり連れて来た。

「ピヒィー!ピヒィー!」

陽菜は偶に何を言っているかわからん。

とにかく!

「みんなありがとう!これでなんの不安もなく西の大陸に行けるぜ!出発は明日の朝!今夜はホームで宴会だ!」

「やった~!」

「お酒飲みすぎて明日飛べなくならないようにしないと」

「僕はのまないよ」

「わしはいくら飲んでも大丈夫じゃ」

「俺も問題ない。ヨコシマだからな」

「うん。邪鬼くん邪アル‥‥」

「僕も参加させてもらえるのね。じゃあこれまでの冒険の話でも聞かせてもうらおうかな」

「うちも喋ってええかな?」

こうして俺とみゆきは結婚式を挙げ、新たな冒険の旅に向けて気持ちを高めるのだった。

2024年10月1日 言葉を一部修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ