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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
完結編
181/184

VS伊集院独尊!世界の始まりの日

攻撃は最大の防御なり。

一般的には、攻撃する事が最大の防御と成り得るという意味だ。

しかし最大の防御により攻撃するという意味もあるらしい。

鉄壁の守備を見せる事で、敵に勝てないと思わせ戦意を喪失させるのだそうだ。

ただどちらにも言える事だが、勝つ為には敵以上の圧倒的戦力をぶつける事が大切と言える。

俺たちは現在専守防衛でやっているが、圧倒的戦力があるからそれが可能。

戦力も無いのに専守防衛とか言っている何処かの国は、単なるアホとしか言いようがないよ。


此花領内のあちこちで戦闘は起こっていた。

しかしリンの敷いた防衛体勢は完璧で、伊集院の軍勢は全く成す術がないといった様子だった。

「まさか洋裁が島津領の防衛を進んでやるとは思わなかったな」

今しがた島津領に伊集院が侵攻してきたのを受け、洋裁は進んで防衛の為に出陣していた。

「洋裁さんは死ぬ事以外もできる人なんだよ。偶にはやるんだよ」

必至に旦那をヨイショする金魚だが、ぶっちゃけ馬鹿にしているようにしか聞こえない。

でも金魚の愛は伝わってくるので、俺たちはただ笑顔でそれを聞いていた。

「とにかく南の大陸も西の大陸も余裕だな。こちらは転移ゲートで瞬時に最大戦力を集める事が出来る。しかも伊集院の戦力は邪神や悪神レベルを超えない。このまま引いてくれればいいんだけどな。今なら別に金や領土を要求したりもしないからさ」

とは言えもしも神が伊集院と関係があるのなら、このまま終わったりはしないだろう。

「借地は全て取り戻したわよ。万一戦争になったら返してもらう約束だったからね」

「そうか‥‥」

伊集院は一体何の為にこの戦争を始めたのだろうか。

むしろ此処までは此花の方に利がある。

電波魔法がバレて焦ったのが戦争理由なら、マジで伊集院ヤバいぞ。

「マスター!たった今エルグランド様から連絡が入りました。伊集院がエルフ王国スバルへの侵攻を開始したそうです」

「神功。ありがとう。リン、聞いた通りだ。スバルはどうなってるんだ?」

「スバルは基本エルフだけで守っているわよ。必要なら向こうから連絡があって、直ぐに遊撃部隊が出撃できるようになっているわ」

「連絡がありましたマスター!遊撃部隊がスバルに赴いたようです」

やっぱすぐにそうなるよな。

俺たちにとって邪神や悪神レベルは楽勝でも、エルフにとっては強敵だ。

「マスター!更に神武国へも敵が向かっているようです。救援依頼が海神様から来ています」

「アルカディアに救援を要請してくれ」

「イエッサー!」

急に伊集院の侵攻が増えてきた。

今までは手を抜いていたのだろうか。

更にその後も南の大陸の西と東と続いて、西の大陸の中央へも伊集院は攻めてきた。

どういう事だ?

結構な戦力が一気にやってきたぞ。

まだ余裕はあるけれど、同時に十ヶ所も二十ヶ所も攻められたら対処が難しくなってくるな。

「私もそろそろ行く事になりそうね」

「数が増えてきたら守っていると不利だな。どうしても主導権は攻撃側にある」

それにこちらは村人一人たりとも殺させない体勢をとっている。

だから実質敵の何倍もの戦力が必要になるのだ。

それは十分にあると思っていたのだが、どういう訳か敵の数が想定よりも多い。

「スバルに行っていた音羽様からの報告です。敵の指揮官を倒したが魂は確認できず。操られたゴーレムという感じもしなかった。戦闘力は邪神や悪神の平均レベル。との事です」

ファイブジーと同じような敵という事か。

これがもしも劉邦の能力に近いものだとして、無限にコピーを作り出せるとしたら‥‥。

そのうちこちらは対応できなくなるかもしれない。

俺が劉邦の能力を使ってコピーを作ったとしても、そこまで強くならないんだよな。

もしもこれが悪い神の仕業だとしたら、単純に俺よりも強いって事になるのか。

「マスター!更に南の大陸に三ヶ所、西の大陸に二ヶ所敵が侵攻してきています」

「私も出撃するしかなさそうね。一応抑えるだけなら大丈夫だとは思うけど、倒すとなるとミケコちゃんの支援が必要だわ」

「分かった。神功!ミケコに連絡。リンの指揮下に入って防衛を全面的にサポートするように伝えてくれ!」

「イエッサー!」

楽勝だと思っていたら、案外戦力を持っていたか。

「どうするんだよ?」

「金魚も人手が足りなくなったら頼むな」

「分かったんだよ」

「七魅は戦力的に負けている所があればそこを助けてやってくれ」

「分かったのだ。頑張るのだ」

ガゼボに今いるのはこれだけだ。

総司と千えるは戦闘員って訳じゃないからね。

二人にはこういう時も、ちゃんと民の生活を守ってもらわなければならないのだ。

後は資幣と劉邦、或いは大帝や霧島もいざって時には出てもらう。

そして俺は、伊集院領内へ攻め入る事にしよう。

防戦だけじゃ、おそらくこのままだと押し切られる。

最大の防御を攻撃にする事はできなかったのだ。

攻撃して相手から主導権を奪わないと勝てない。

俺たちの勝利条件は、全ての民と領地を守る事だから。

その為に攻撃が必要というのなら、俺はそうしなければならないのだ。

「仕方ないな」

俺は瞬間移動魔法で伊集院領内へと入っていった。


早速俺は伊集院領内の町を制圧していった。

制圧した町には堕天使部隊の人員を数名置いて次へと向かう。

これで伊集院側は取り戻しに来たり、俺を止める為に動かざるを得ないだろう。

そうすれば此花への侵攻が続けられなくなってくるはずだ。

「策也様。防衛の方は多少落ち着き始めました。まだ油断できない状況ですが、着実に敵を殲滅できています」

「そうか。リンには引き続き頼むと言っておいてくれ。駈斗もリンの事をよろしくな。俺はこのまま伊集院をかき回し続けるよ」

「承りました」

防衛隊は再び落ち着き始めたか。

かといって俺が手を緩めると再び防衛隊が大変な事になるだろう。

ずっと戦闘を続けられる訳でもないし、俺が頑張る事で休憩も取ってもらいたい。

流石に二十四時間戦えませんわ。

そんな訳で俺は、町をはしごして占領を続けていった。

「次は『リッパカ』の町か。王都だな」

「そうなのね。王都を落とせば勝利なのね」

「王様が守っているのです。頂上決戦なのです」

「いや流石にそれはないだろ。伊集院の王は過去に何度か探した事があるけど、王都にはいなかったからな」

独尊に会ったのもあの三国会談の時が初めてだし、それまでに何度も探した事がある。

だけど見つけられなかった。

王都だからと言って王様がいる場所という訳でもないのだ。

今回もおそらく独尊は見つけられないだろう。

「いやまさか此花の王が一人で侵攻してくるとは思わなかったよ」

そっちから来るんかーい!

空を行く俺たちの前に、突如一人の男が現れた。

それは紛れもなくヤツだった。

「コブッ!じゃなくて独尊!」

「やあやあ。なかなか攻めてきてくれないから、来ないかもしれないと焦っちゃったよ」

「俺たちの国は専守防衛が基本だからな。行動する時は大抵一人だよ」

でも少女隊プラスは一緒だけどな。

「でも丁度良かった。これで此花と一対一の戦いができる。提案なんだけど、俺と君との戦いで、勝った方が伊集院と此花の領土を全て手に入れるって事にしないかい?」

「断る!」

こんなのには即答だろう。

別に負けるとは思わないけれど、こういうメリットの無い提案は受けない事にしている。

アニメの主人公なら受けるのかもしれないけれど、俺は別に面子やプライドなんて持ち合わせていないからな。

「そうかい?それは残念だなぁ。じゃあこうしよう。君が勝ったら伊集院の領土は全て此花に任せる事にする」

「そうかい。それで俺がもしも負けたら?」

「特に何もないよ。あえて言うなら、その時は停戦でもお願いしようかな」

どうしてそうなる?

「停戦したければ今すぐ停戦もアリんだが?」

「君も鈍いね。俺たちの狙いは君だけなんだよ。君さえ死んでくれれば戦争する必要も無かったのさ」

「あーはいはい。なるほど」

これはアレか。

悪い神様が平穏にこの先もこの世界の神でいる為には、俺だけが邪魔って事なのかな。

それはつまり、やはり伊集院と悪い神との間には何か関係があると。

「分かってもらえたならそういう事でいいかな?」

「そうだな。一応そのようには伝えておくよ」

俺が死んだところで霧島や大帝は生きるからな。

戦わずに済むならその方がいいさ。

もちろん負ける気は全くしないけどね。

「じゃあ行くよ!」

言い終わる前に独尊が魔法を放ってきた。

様子見だろうか。

まずはそこそこの攻撃魔法が飛んでくる。

俺は適当にそれをかわした。

「今のをかわすんだね。流石だよ」

こいつふざけているのか?

今のは邪神や悪神の平均値以上の力があれば余裕でかわせるものだぞ。

なんだか嫌な予感がするな。

俺は嫌な予感を確認する為に、軽~く魔法を放ってみた。

「ダイヤモンドソード!えーんど!ルビーファンネル!」

一太刀のダイヤモンドソードが独尊へ向かって飛び、複数のルピーファンネルが空に展開される。

直後ダイヤモンドソードが独尊を貫き、複数のルビーファンネルから発射されたビームが全て奴に命中した。

「うっ‥‥流石に強いね‥‥。俺も強くなっていると思っていたけれど‥‥全く勝てる気がしないや‥‥。約束通り‥‥伊集院の全ては君のものだ‥‥。この世界を頼んだよ‥‥」

そう言って独尊は落ちていった。

嫌な予感が的中してもうた。

国家同士の争い最後の頂上決戦がこれでは、話が全然面白くないじゃないか!

もしもこの話を映画館で見ていたら、入場料返せと殴り込まれるだろう。

「おい独尊!こんなに簡単にくたばるなよ!嘘だろ?!目を開けてくれよ!」

俺の言葉は届かず、独尊は地面にたたきつけられ木っ端微塵となっていた。

「策也タマの勝利なのです」

「これで世界は此花帝国なのね」

(コクコク)

嘘だろ‥‥。

これじゃ普通に世界を統一して終わりな展開じゃないか。

しかも全然面白くない終わり方になっちまう。

視聴者にも申し訳なくて泣けてくるよ。

つか俺このままじゃ神になれずに終わるのか?

この弱い独尊が神って事ないよな?

みゆきとのマッタリライフはどうなるの?

『お兄ちゃん!伊集院から終戦宣言が出されたよ!伊集院は全面降伏して領土は全て譲渡するとか言ってるよ!』

対応が早いな。

これはもしかして、こうなるように最初から仕組まれていた?

俺にこうやって侵攻させ負ける計算だったとしたら、狙いはなんだっていうのだろうか。

伊集院領を此花に吸収併合させて、何をしようというのか。

民主主義国家なら乗っ取りとか考えられるんだけどさ。

少なくとも今の此花帝国ではそんな事できないよ。

『ありがとう禰子。戦いは終わったよ。とにかくその通りだから、ミケコたちにも連絡よろしく』

『分かったよ。た、戦いが終わって良かったね!』

『そうだな』

本当に良かったのだろうか。

何にしてもとにかくこれからが大変だよ。

伊集院の一族が全て素直に受け入れているとも思えないし、領主たちもそうだ。

やっぱ独尊って、本当の伊集院王じゃなくね?

とりあえず俺はリンにも状況を伝えて、処理はすべて任せた。

その後俺は独尊の魂を回収してから、一応リッパカの町にある王の屋敷へと入って行った。

すると既に連絡がされているらしく、新しい皇帝として歓迎されてしまった。

えっ?マジで?

こんなに簡単に受け入れられるの?

王族貴族の今後について色々と聞かれたが、今すぐに変更するつもりがないと伝えておいた。

この場所を抑えておけば伊集院領の統治はしやすいだろうな。

とりあえずしばらくは、劉邦にここを任せる事にしよう。

「ちょっと待て!何かが違わないか?これは夢なんじゃないのか?まさか独尊が悪い神だったって事はないよな?」

「心配なら南に聞いてみるのね」

「これで終わりならハッピーなのです」

いや確かにハッピーエンドだけどさ、スライム倒したら実はそれがラスボスでしたとか言われてもさ。

それってどんなクソゲーだよ。

これは違う。

こんな終わり方は絶対にあり得ない。

絶対なんてものはあり得ないが、こんな終わり方は絶対にあり得ないのだ。

俺は南にテレパシー通信を入れてみた。

『とぅるるるるー!とぅるるるるー!とぅるるるるー!』

妖凛が何やら呼び出し音的な声を発してみたが、南とは連絡が付かなかった。

どうしたのだろうか。

何か取り込み中なのかもしれない。

仕方がないので、俺は片っ端から全ての町を回ってみた。

しかし何処も反応は同じで、新しい皇帝として全ての町で歓迎されてしまった。

「どうなっているんだ?もしも独尊が悪い神だったとしたら、今までの俺の苦労が水泡に帰した気がするよ」

「もう一度南に聞いてみるのね」

「聞けば早いのです」

そんな訳で俺は再び南にテレパシー通信を入れてみた。

『おっ!南か?』

『あっ、策也さん。さっきは対応できなくてすみません』

『どうかしたのか?』

『はい。実は神の居所が掴めそうになったと言うか、一旦掴んだのですが、残念ながら逃げられてしまいました』

良かった‥‥。

俺が倒すべき悪い神はまだ生きていたよ。

あれ?倒せていた方が良かったんじゃね?

『そ、そうなのか。つまり俺が倒した伊集院独尊は、悪い神では無かったって事でオッケーなんだよな?』

『はい。全く違います。というか、おそらく彼は悪い神に操られていたんじゃないですか』

あーはいはいなるほどそうだったのね。

まあ人間にしては半端なく強かったもんな。

俺に取ってはゴキブリレベルだけどさ。

伊集院に関係していたってのは当たっていた訳か。

『でもこれで、手掛かりは無くなったって事か』

『そうですね。ただどういう人物なのかは分かりましたよ。銀髪で割としっかりとした少年と言った感じでした。名前は「守死(シュシ)」です』

守死だと!?

あの三国会談の時に独尊や貂蝉と一緒に来ていた奴じゃないか。

『「守」は「カミ」って読めますよね。そして「死」は「デス」。つまり神です』

まさかそんな所にヒントが隠されていたとは。

三流作品にありがちなヒントをくれていたのに、気が付けなかったのはショックと言わざるを得ない。

『ありがとう南。また一から悪い神の事は探してみるよ』

『大丈夫ですよ。まだ八十六年ありますから。それにいずれは出会う事になります。今回の件はこの世界の神がやった事ですし、何も意味が無かったとは思えません』

そう言われればそうだな。

伊集院の件は全く意味がなかったように思えたけれど、これは悪い神の意思によって起こされた戦争だった。

ならば何か意味があったのだ。

これで俺が倒せるなどと思ってはいなかっただろう。

思っていたのか?

だとしたら馬鹿だから簡単に倒せるはずだ。

倒せると思っていなかったとしたら、この戦争には何か意味があったに違いない。

きっと悪い神に近づいているはずだ!

「そう思わないとやってられないのです」

「たぶん一ミクロンくらいは近づいたのね」

(コクコク)

励ましてくれるのかお前たち。

でも微妙過ぎる数字だな。

『南、ありがとう。また何か分かったら教えてくれ』

『分かりました』

それにしても戦争ってさ、こんなに軽いものだったかなぁ。

やっぱりリアルとは少し違うんだよな。

でも本当はこんなものなのかもしれない。

日本で暮らしていたら戦争なんて夢の世界だもん。

だから平和ボケって言われるんだけどさ。

何にしてもまた一から出直しだ。

その前に伊集院領の処理だな。

そう思っていた夜、千えるから突然の提案があった。

『愛洲も此花の傘下に入る』と‥‥。

これで世界は此花と皇しかなくなった訳だ。

そして俺が神になる事で皇も傘下みたいなものとなる。

争いなんてものが全くない世界は無理としても、これで大きな戦争は起こり得ないだろう。

俺の理想はもうすぐか。

八十六年も猶予があるけどさ。

とにかく今は、目の前の体制作りに頑張る俺だった。

2024年10月13日 言葉を一部修正と追加

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