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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
KAMI編
172/184

八身合体?UMA戦士大アマテラス見参!

核抑止力という言葉がある。

核を持っている事で抑止力が働き、戦争に巻き込まれたり攻められたりする事が無いって話だ。

確かにそれは云う通りだと思う。

なんせ第二次世界大戦で原爆が試された後、世界大戦は起こっていない訳だしね。

そして核保有国が侵略される事もない。

でもそれは、果たしてこの世界でも通じるのだろうか。

町を壊滅させるような攻撃は、大量破壊魔法が使われた後でも使われ続けている。

旧神は町どころか、辺り一帯が焼け野原になるような攻撃をしてきた。

全く抑止力になっていないのだ。

では何故抑止力とならないのか。

もしかしたら放射能汚染がないからかもしれないね。

核兵器はその場所が焼け野原になるだけでなく、地球全体を汚染しかねないからさ。

そうすると核ってのは、平和の象徴と言われても良い物なのかもしれない。

あまりに酷い兵器だから、みんな使わせないように必死になって対応する訳で。


「お前たちはずっと俺が来るのを待っていたのか?」

武尊は俺をバカにした目で見ているようだった。

そりゃね。

ずっと待たせてやったって思えば、馬鹿にしたい気持ちにもなるよな。

巌流島の宮本武蔵と佐々木小次郎じゃないけどさ。

でも別に俺はいらだってもいないしむしろ逆にしてやったりだ。

「待ちくたびれたよ。正直逃げたんじゃないかとハラハラしたわ」

「俺が逃げるだと?俺はこの世界を手に入れる男だ。いや既に俺の世界と言ってもいい。どうしてそこから逃げる必要がある」

この前は逃げたじゃねぇか。

「(プ!」

俺は口に手を当てて笑いを我慢するフリをした。

武尊の表情が強張る。

効いてる効いてる。

戦いは冷静さを欠いた方が負けるのだ。

まあ圧倒的力の差があるとどうにもならないけどさ。

武尊は前回の戦い以降力は変わっていないように見える。

特訓の成果を見せれば勝てるだろう。

「ではそろそろお前には死んでもらうぞ」

「嫌だ!」

「くっ!」

効いてる効いてる。

ドンドン怒るがいいさ。

「フゥー‥‥。まだ余裕があるみたいだから先に見せてやろう。これを見ると冷静ではいられなくなるぞ?」

「ん?何か見せてくれるのか?卑猥な物は見せなくていいぞ?残念なくらい小さいと俺も反応に困るからな」

「お前の狙いなど分かっているわ!」

武尊はそう言って魔力を高めた。

えっ?あれれ?

前よりも魔力上がってないか?

『お兄ちゃん!碓氷が九頭竜の傘下に入るって今発表があったよ!』

『マジか‥‥ありがとう禰子』

つまり武尊の魔力をアップさせる要素が今増えたって事か。

テレパシー通信で指示してるんだろうなぁ。

つかなんだよその能力。

マジでそんな事で強くなれるんなら、スポーツジムは全部倒産するわ!

まあ温泉に浸かるだけで強くなった俺が言えた事でもないかもしれないが。

「驚いて声も出ないようだな」

「認めるよ。楽勝かと思っていたけど、こりゃ結構いい勝負になりそうだ」

全く油断できない。

とにかく集中していかないと殺られる。

もう相手を怒らせて戦いを有利にしようとか、小手先の策略では駄目なレベルだ。

俺たちの間に緊張が走った。

辺りの音が全て消える。

視界は武尊以外すべて真っ黒になった。

昔から集中するとこうなるんだよな。

でもこうなった時の俺の集中力は凄いよ?

昇り始めた太陽が、今俺の背中を押した。

レディー‥‥ゴー!

俺は超高速魔法を放ちまくった。

それに合わせて武尊も魔法を放ってくる。

奴の魔法は全てかわす。

或いは無効化できれば劉邦と妖凛がそれを行ってくれるはずだ。

お互い魔法をかわしながら魔法での攻撃を繰り返す。

手数は俺の方が圧倒的に多いが、食らっても全く問題ないものばかりだ。

武尊がそれに気が付いたようで、かわすのをやめていた。

その隙に俺は本丸であるスティール魔法を放つ。

しかしアッサリとかわされてしまった。

「お前のやる事などお見通しだ。俺には当たらんよ。そして俺の攻撃はいつかお前を捉えるだろう」

そして捉えられた時が俺の死ぬ時か。

おそらく暗黒神の子供たちが使っていたような魔法なんだよな。

食らったら死だよ。

一方俺は当ててもアーマーを剥ぐだけ。

なんだか思いっきり不利な戦いに思えてきた。

『大丈夫なのです』

『私たちがついてるのね』

むしろそれが不安だよ。

でもだからこそ頑張れるのかもしれない。

こいつらとの生活は割と楽しいからな。

絶対に失いたくないんだよ。

俺は今度は遅い魔法を放ちつつ、そこにスティールの魔法を隠す作戦に切り替えた。

最初に山女ちゃんを剥いだ作戦だ。

しかしこれも全く通用しなかった。

「どれがどういう魔法なのか、俺にはすぐに分かる!意味がないぞ?」

武尊はそう言って、わざと魔法を食らいながら空を掃除しているようだった。

まぎれる事も無理か。

次は全てスティールの魔法だが、遅いスティールを沢山放って行った。

これも武尊には通用しない。

というか空は三百六十度全方位移動が可能なのだ。

地上で、しかも魔法実験場という限られた空間とは訳が違う。

逃げる場所が沢山あるんだよ。

駄目だ。

こいつのフルプレートアーマーは盗めない。

なんとかしないと、いずれやられてしまうのは俺だよ。

何か良い作戦はないのか?

思いつかない。

駄目だこりゃ。

ずっと特訓して自信をつけても、相手がそれ以上にパワーアップしてちゃなぁ。

マジ反則だよ。

勢力イコール自分の魔力の強さってさ、設定おかしいだろ?

そんな事言ったら俺は設定を超えておかしいんだけどさ。

諦めちゃダメだ。

みゆきの為にも、子供たちの為にも、みたまの為にも‥‥。

ん?みたま、昨晩色々とおかしな寝言を言っていたよな。

そうか!

この手、使えるかもしれない。

俺は使える思考全てを総動員して、新しい魔法の構築を考えた。

南に教わった事で魔法の術式に関してかなり分かるようになってきたからな。

来た来た来たキター!

行けそうだ!

「そろそろ終わりにしてやるぜ!妖精魔術版ダリアぱーんち!」

これはかわすのが困難な技だ。

近づくにつれドンドン大きくなるからな。

そしてかなりスピードも速い。

「面白い技だが、この程度のものでは俺には傷一つ付ける事はできないぞ?」

武尊はかわそうと思えばかわせたかもしれない。

しかしどんな魔法か分かるが故に、それを止める為に手で払った。

「引っかかったね武尊くん」

俺が放った魔法は妖精魔術版ダリアぱんちで間違いはない。

しかしそこに別の術式(コード)を隠して追加しておいたのだ。

その術式はもちろんスティールである。

名付けて『エスケープ爆弾式スティール』だ。

或いは『スティール埋め込み型ダリアぱんち』と呼んでもいいぞ。

「何?どういう事だ?鎧が無くなっている?今の魔法がスティールだったというのか?」

「おっと話してる間に逃げようとしても今日は逃がさないぞ?」

町を守る結界担当が、俺たちを包む大きな結界を展開した。

この程度はすぐに破られるだろう。

でも破る間に俺はヤツを斬れる!

「逃がさないだと?それは俺のセリフだ!」

武尊がそう言うと、辺りの空気が一変した。

一体何が?

『お兄ちゃん!大変だよ!伊集院が、伊集院が九頭竜武尊の傘下に入るって発表をしたんだよ!』

何を言っている禰子。

そんな訳ないだろ?

伊集院が?

この所ずっと味方だったじゃないか。

いや、小国を此花や皇の傘下国にするきっかけを与えたのは、伊集院の発表だった。

結果的に九頭竜武尊へのアシストになったじゃないか。

あれもわざとだったのか?

どうしてそんな事をする?

そんな事をするメリットなんてないじゃないか?

分からないが、これで斬る事も難しいくらいに武尊はパワーアップしてしまった。

逃がさないとか言ってる間に斬れば良かった。

今更後悔しても仕方がない。

なんとか、なんとかする方法はないか。

「もう色々と面倒になった。これで終わりにしてやる」

武尊はそう言って振りかぶった。

特大の破壊魔法を放つ気だ。

そんなのが放たれたらおしまいじゃないか。

『策也タマ!私たちと合体するのです!十倍なのです!』

『そうなのね!一心同体になるのね!三人で三十倍なのね!』

『コクコク』

『ちょっと待て!それは吸収するって事か?でもそんな事をしたらお前たちが消滅してしまうかもしれないんだぞ?』

吸収すれば、魂はおそらく俺の意識に染められてゆくだろう。

戦いの後分離させる事が出来たとしても、それはもうこいつらじゃないかもしれない。

『ゴチャゴチャ五月蠅いのね!』

『据え膳食わぬは男の恥なのです!』

『タマー!ゴチャゴチャ五月蠅いぞ!』

えっ?妖凛?そんなキャラだったのー?

『八身合体!ゴッドコロナ!なのね!なのです!』

『コクコク』

『なんでコロナなんだよー!』

『それはなのね‥‥』

『コロナウイルスにはマーズって種類があるのです』

それ以上もう言わなくていいぞ!

『チェーンジ!』

『ダンエース!』

これもきわどいな、おい!

ちゃらっちゃっちゃらーちゃっちゃっ!ちゃらっちゃっちゃらーちゃっちゃっ!

ちゃららららーん!ちゃららららーん!たとえ嵐が荒れるとも~♪

とりあえず合体シーンは一分ほど、BGMと共に行われた。

でも実際の合体は、時間にすると一瞬の出来事だった。

「UMA戦士!大アマテラス!見参!」

間に合うか?

「世界もろとも死にさらせー!」

武尊は地上へ向けて超絶特大の攻撃魔法を放った。

それが地上に到達すれば、地球に絶大なダメージを与える事となる。

半径何千キロにもなるクレーターができ、世界は大きなダメージを受けるだろう。

もしかすると人類が全滅するような事にもなるかもしれない。

俺は瞬時に魔法と地上の間に入った。

異次元収納から、いつの間にかあった『なんでもできちゃう謎のバット』を取り出し構える。

魔力では既に俺の方が上回っている。

大丈夫だ。

必ずやれる。

振り子打法‥‥いや、一本足打法だ!

「ピピルピルピルドリミンパ!」

俺はなんでもできちゃう謎のバットで魔法を打ち返した。

やればできるもんだね!

「なにぃ!!」

武尊は自分の放った超絶特大攻撃魔法に飲み込まれた。

「うごぉ!」

やったか?やったのか?

いや、自分の魔法程度で死ぬ奴じゃない。

俺はまだ超絶特大攻撃魔法が残る中に飛び込んでいって、武尊の魂をヤマトタケルの剣で切り裂いた。

「えい!えい!えい!えい!」

何度も何度も切り裂いた。

流石にこれだけ切り刻めば、魂は‥‥もう存在しないな。

俺はホッとした。

だけど‥‥だけどさ‥‥。

ホッとしたと同時に、少し涙が出てきた。

そうか俺、意外と少女隊たちを気に入っていたんだな。

意外でもなんでもないか。

大切な奴らだって自覚していた。

でももう‥‥。

「策也!奥歯を噛め!」

突然大きな魔力が急接近してきた。

見るとそれは賢神だった。

自由行動にしていたけれど、何をしていたんだ?

つかなんで俺に襲い掛かって来てるんだ?

とにかく言われるまま俺は奥歯を噛んだ。

すると賢神は、思いっきり俺の腹を殴った後、顔に思いっきり蹴りを入れてきた。

なんでだ?

「グハッ‥‥」

「ははははは!まだ完全にはくっついておらなんだようだぞ!」

どういう事だ?

俺の口から何かオリハルコンの液体のようなものが、戦い前に食べた魚やテキーラと一緒に流れ出た。

「ぐえぇ~‥‥ゲロゲロゲロ~‥‥」

ゲロは三つに分かれて、それぞれを賢神が受け止めた。

次第にゲロは人の形を成してゆく。

ゲロゲ~ロ!

気持ちわりぃ‥‥。

「合体は成功なのね!」

「分裂も可能だったのです!」

(コクコク)

お前たち‥‥元に戻れて‥‥良かった。

「どうだ策也!お主の望んでいる事はお見通しだぞ!」

「そうだな賢神。ありがとう」

でもこいつらゲロまみれだぞ?

今後ゲロにしか見えなくなりそうだ。

もんじゃ焼きを食いに行く時は、こいつらとは一緒に行けないかもしれない。

俺もんじゃ焼き好きなのに。

俺たちの勝利を確認できたみんなは、俺への魔力供給をストップしていった。

町の結界も解かれ、元の状態へと戻ってゆく。

雪が降ってきた。

「ホワイトクリスマスなのね」

「綺麗なのです」

だからゲロまみれでそんな事言われても、まるで感動が伝わってこないんだけど。

でも勝ったんだな。

これで俺の戦いは終わるのだろうか。

KAMIは神だったのだろうか。

なんかそんな気がまるでしないし、南も違うような事を言っていたよな。

まあでも今は、この勝利の余韻に少しだけ浸っていよう。

ちょっとゲロ臭いけどさ。

俺たちは空の上で、少しの間落ちて来る雪をただ眺めていた。

2024年10月13日 言葉を一部修正

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