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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
中央大陸編
17/184

飛行訓練と魔獣の魂

邪鬼と羅夢が仲間に加わる事が決まってから、俺たちは数日オーガの里に滞在した。

その間に今回の一件、誰かがオーガを討伐させようとしたこの事件の解決に手を貸していた。

でもあまり深入りはしない方が良さそうなので、全解明とはいかないけれど、そこそこの所で決着をつける事になった。

ドサの領主は不用意に騎士隊を動かしたという事で解任され、東雲の親族が新たな領主に収まった。

これでオーガと再び争いが起こるような事はないだろう。

東雲の王妃であるみそぎの事は仲間には話さなかったが、みゆきには会いたいという事で会わせてあげた。

みそぎとみことが姉妹であるという事を知っているのは、俺とリン、そしてみゆきの三人という事になる。

もちろん皇皇帝や東雲王は知っているのだろうけれどね。

他には特に話す必要もないし、話さなくていいだろう。

一応秘密の事だしな。

「じゃあ新たな仲間も加わって旅を再開させるわけだが、その前に邪鬼と羅夢のそのツノをなんとかせんとな」

「どういう事だ?このツノは折ったり取ったりはできんぞ?」

「そんな事は分かっている。だけどそのままだと町にも入れないからな。そこで俺は用意した。ジャジャーン!」

俺はそれを手に取って掲げた。

頭に付ける輪っかで、見た目は西遊記の孫悟空が付けている『緊箍児(キンコジ)』そのままだった。

「何それ?」

「見た所、頭に付けるもののようじゃのぅ」

「頭に付けるの?わたし付けてみたい!」

みゆきにそう言われては断れまい。

俺はそれをみゆきに渡した。

「こっちのグニャってなってる所を前にして被るんだよ」

「うんわかった」

この輪っかは、少し大きめに作られているので誰にでも被る事ができる。

そして被ると輪の大きさが調整されピタリと頭に固定されるのだ。

「うわっ!ナニコレ?」

みゆきの髪が全て重力に逆らって上向きになっていた。

「その輪っかは魔法のアイテムでな。髪の毛を逆立てる事ができるんだ。それを邪鬼が被れば、ツノは隠せるってわけだな」

「ぐへっ~もしかして俺はそんな髪型にせにゃならんのか?」

「人間の町に入るには仕方がないだろ?」

「仕方ねぇなぁ~」

みゆきが取り外した輪っかを受け取って、今度は邪鬼が付けてみた。

みゆきほど髪が長くはないし、体全体が大きいから、案外バランスよく似合っていた。

「思ったよりも似合ってるな」

「そうじゃのぉ。体がでかいから目立たんのじゃ」

「そうか?」

「うん‥‥邪鬼くん‥‥かっこいい‥‥」

羅夢がそういうと邪鬼は納得したようで、まんざらでもない様子だった。

「次は羅夢だな。おまえはツノが短いからこれで大丈夫だろ?」

俺は魔法で髪をコントロールし、ツノを隠すようにお団子を二つ作った。

「何‥‥この髪型‥‥」

「可愛い!何それ?」

「本当ね。羅夢ちゃんの為にあるような髪型にも見えるわ」

「好評のようだな。それでついでと言ってはなんだが、羅夢にはこの服を着てもらう」

異次元収納から取りだしたそれを、俺は羅夢に渡した。

オーガの里で滞在中、セバスチャンを使って輪っかや二人の衣装を作っておいたのだ。

俺が渡した服は、お団子頭にピッタリのあの衣装だ。

「羅夢!女の子なんだからいきなりこんな所で着替えないで!」

その場で着替えだした羅夢を、リンが阿虎を使って隠した。

「うおっ!なんだその魔獣は?」

「これは私の相棒の阿虎よ。魔獣名は白虎ね」

邪鬼は一瞬ビビッていたが、羅夢は着替えに夢中だったからか度胸が据わっているのか分からないが、特に動じなかった。

着替えはすぐに終わった。

この辺りは温暖と言うよりはやや暑い地域で、元々着ているものも少ないからね。

「着替えた‥‥」

「可愛い!何それ?」

「見た事ない服ね。子供っぽい見た目の羅夢でも色気を感じるわ」

羅夢に渡したのは真っ赤なチャイナ服だ。

「当然自動温度調整機能があるから、暑い地域から寒い地域までその服でやっていけるぞ」

「マジかよ。すっげぇなぁ~‥‥」

邪鬼が見とれているのが分かった。

こいつら、実は元々超絶好き合ってたんじゃないだろうか。

どうでもいいけどね。

「邪鬼にはこの服な」

邪鬼にも用意していた。

邪鬼の武器は如意棒‥‥じゃなくて如意槍(ニョイソウ)?で、頭に輪っかを付けているとなれば、だいたいどんな服装か想像つくよね。

チャイナ服を短くしたような柄の赤い服に、下は黒いズボン。

中国の暗殺者とか飯屋の大将とか、そんな雰囲気を持った服にした。

「邪鬼くん‥‥なんか‥‥お揃い‥‥みたいだね‥‥」

「お、おう」

概ね好評のようだった。

「まだあるぞ。羅夢にはこの武器を渡す。そして邪鬼には邪斤斗雲(ヨコシマキントウン)だ。これは俺が金儲けの旅をしていた頃に見つけたネタアイテムだが、邪鬼なら使えるだろう」

「どうやって‥‥使う武器‥‥かな‥‥」

「俺なら使えるって、まあ俺様はどんなものでも使いこなしてみせるがな」

「まず羅夢の武器だが、それはスォードトンファ―だ。長い槍の先のような刃が有って、内回転外回転両方の刃で攻撃できるように作られている。俺のオリジナル武器だ。もちろん素材はダイヤモンドミスリル使用。羅夢なら使えるだろ?」

使えるかどうかは分からないが、是非使って欲しい。

チャイナ娘の武器はやはりトンファ―でしょ。

「分かった‥‥」

いきなりビュンビュンと回転させ、軽々と近くの木で試し切りしていた。

こいつ、俺の思った以上にやる子かもしれん。

「邪鬼のそれは、空を飛ぶ乗り物だ。邪な心を持った者しか扱えないから、多分お前にピッタリだと思う」

「なんで俺が邪な心を持ってるって決めつけるんだよ!」

「名前からそんな感じじゃん?とりあえず乗ってみろよ。全てはそいつが判断してくれる」

俺がそう言うと、邪鬼は恐る恐るヨコシマに乗った。

ちなみに邪斤斗雲には、『ヨコシマ』って名前を付けている。

アイテムだけど意志があり、生物のようでもあるからね。

「乗れた‥‥なんかすげえ!これで空が飛べるのか?」

「ああ。でも最初はバランスをとるのが難しいから練習だな」

「しかし本当にこれ、邪なヤツしか扱えないのか?」

「そうだな。みゆき、それに乗ってみな」

「いいの?!わーい!乗っちゃうよ!」

みゆきはジャンプして乗ろうとした。

しかし気が付いたら黒い雲のようなそれを突き抜け、地面へと落ちていた。

「乗れない‥‥ぐすん」

みゆきは心が綺麗だからな。

絶対に乗れないと確信していた。

「わしは乗れるかのぉ?」

環奈が飛び乗ると、アッサリとそれを受け入れた。

「ふぉっふぉっふぉっ!わしは邪らいしぞぃ!」

「そういう事だな。じゃあそういうわけでそれらはお前らにやる。そしてだ。まだあるぞ。これが一番大事なんだが、住民カードだ。人間の町に入るにはこれがいるからな。使い方は空いた時間にでも誰かに聞いてくれ。それでお前らの名前もこれからは変わる事になる。邪鬼は『悟空』、羅夢は『風里(カザリ)』だ。みんなも基本そのように呼ぶように」

尤もリンに頼めば名前くらい合わせられるのだが、邪鬼はどう見ても悟空になったし、羅夢は著作権の問題が出てきそうだしな。

それに俺は仲間に『里』の付いた女の子が欲しいのだ。

よって悟空と風里で決定した。

そして風里には一つお願いがあった。

「羅夢‥‥改め風里!お前って喋るの苦手なのか?」

「え‥‥うん‥‥苦手というか‥‥どういって良いか分からない時‥‥あるから‥‥」

「そっか。そこで俺が魔法の言葉を教えてやろう。会話の最後に『アル』を付けるんだ。例えば『遊びたいアル』とか、『何するアルよ?』とか、『そうアルか?』とかだな」

せっかく此処までチャイナっ子にしたんだ。

こんな陰キャではなく、誰もが認める可愛い子になってほしい。

「分かった‥‥アル‥‥」

「そうそうそんな感じ!」

「これでいい‥‥アル‥‥か?」

「うまいうまい!」

なかなかの破壊力じゃないか!

可愛さが一点五倍マシだぞ?

悟空もヨダレをたらして見ておるわ。

俺の妄想内でな。

「じゃあみんなそんなわけでソロソロ行くぞ!次の目的地は西園寺領ムガサリの町だ」

「オー!」

「出発じゃのぉ」

「楽しみ‥‥アル」

「‥‥」

「ムガサリですか」

「一気に遠くまで行くのね?」

「既に西の大陸では魔物が増えているって話だし、魔王復活も近いかもしれないからな」

「でも町を経由していってもそんなに大して日にちは変わらないわよ。舗装された道はどうせ町を経由しているんだし」

「だから早く行く為に、今日は空を飛ぶ特訓を皆にしてもらう。どうせ海を渡る時にも必要になるし、魔王と戦闘する事になっても空中戦が中心になるだろうからな」

本当はゆっくりと旅を楽しみたい所だが、魔王の復活がどういうものなのか分からない。

ゆっくり行って着いた頃には『大陸全部が焼け野原でした』とか洒落にならん。

「空飛ぶの?私まだ吽龍の翼を出せるようになったばっかりよ?」

「そこまでできれば後は気合だ。飛べると信じれば飛べる!他の皆はどうだ?」

「俺はこのヨコシマを乗りこなせるようになればいいんだな?」

「そういう事だ」

「私は‥‥飛べる‥‥アルよ?」

「羅夢、マジかよ!?」

「うん。飛ぶ必要‥‥無かったから‥‥飛んでなかった‥‥だけ‥‥アルよ」

「僕は飛べませんが、空中に足場を作って走る事はできますよ。このスーナシリングのおかげで、本気を出せば飛ぶよりも早く移動できるかも」

「そんな事ができるなら問題ないな」

草子はこれでも一応正当なマスタークラスの能力者だからな。

普通のパーティーにいたら当然リーダーだったに違いない。

「わしは当然飛べるで問題ないのぉ。むしろ元の姿に戻ってみんなを運んでやる事もできるぞぃ?」

「環奈は心配してない。俺とみゆきがいるから異常さが目立たないけど、元々規格外だからな。みゆきはどうだ?飛べそうか?」

「ん~分からないよ」

「魔法は想像の具現化だからな。飛び方は色々あるはずなんだ。自分が飛ぶ所をイメージして魔力を使えば、みゆきならすぐに飛べるようになるよ」

「分かった。頑張ってやってみるよ」

「よし!じゃあどこか特訓しやすそうな広場を見つけたら開始だ。いくぞ!」

こうして俺たちは、しばらく行った先にあった草原で、空を飛ぶ特訓をする事になった。


まず問題がなさそうなのは環奈、風里、草子だ。

この三人はかなりのスピードで空を移動できる。

次に悟空は、バランス感覚さえ覚えれば、後はヨコシマが連れて行ってくれるわけで、悟空の運動神経を考えればすぐに乗りこなせるようになるだろう。

問題はリンとみゆきだが、みゆきは最悪俺が運んでいけば済む事だし、今は霧島を付けて教えているから問題ない。

今日の特訓のポイントはリンだ。

リンが飛べるようになりさえすればいいのだ。

空を飛べる青龍が憑いてるんだから、自信さえ持てれば飛べるはずなんだけどね。

もしかしたら高所恐怖症なのかもしれないな。

とりあえずリンの事はリンに任せよう。

そんな事よりも俺はこれを試す時間が欲しかったのだ。

ジャジャーン!

魂ボール!

このボールは、ぶつけた対象の魂を捕獲し所持しておくためのアイテムだ。

使い方は簡単。

死んだ人の体か魂に投げつけるだけで、その人の魂をボールに閉じ込める。

閉じ込めた魂は自由に出し入れができる。

俺がセバスチャンで地道な研究を続けて作り上げた一品だ。

何故このようなアイテムを作ったかというと、一つは誰かが死んですぐに蘇生ができない状況でも、とりあえず魂を確保しておく為。

これが有れば安心感が倍増する。

もう一つの目的は、誰かの強力な魂を確保する為。

いい加減霧島だの不動だの、自分の魂で扱うのが疲れてきたのだ。

疲れるというか、色々な映像を同時に見せられる酔いのような感じなんだけど、まあとにかくそのような状況を少しでも緩和できればと思ったわけだ。

この世界には時々強力な魔力を持った魂が浮遊している。

おそらく魔王の復活なんかも、魔王の魂を蘇生する事の誤植と言えるかもしれない。

そんな強力な魂を見つけ俺が蘇生やゴーレム化する事で、俺に従順な世話係や部下を作れたらと、まあそういう事だ。

エアゴーレムを作って、『君に決めた!』なんて言いながら魂を宿し召喚すれば、なんかのアニメのようで楽しそうでしょ。

とりあえず鳥の魔獣でも狩ってきて試してみるか。

「策也殿は何をしとるんじゃ?」

一人あぶれていたのか、環奈が寄って来た。

「ああ。新しいアイテムを作ってみたんだ。魂を確保するボール。環奈も一緒に来るか?」

「なんか面白そうじゃのぉ。見せてもらうぞぃ」

「じゃあちょっと森まで行くぞ!」

「了解じゃ」

俺と環奈は、超猛スピードで近くの森まで一瞬で移動した。

「魔獣がいたら倒す。その魔獣の魂をとりあえずゲットしてみよう」

「どんな魔獣がええのんじゃ?」

「そうだな。とりあえず魔力が強くて空を飛べる‥‥」

「それ黒死鳥じゃのぉ?」

「そうだな。でも黒死鳥は魂を確保する意味がないな。環奈のように普通にコミュニケーションがとれるからな。もう少しアホなヤツでいいんだ」

「となるとあんなヤツかのぉ?」

話をしていたらおやつらえ向きの魔獣が出てきた。

「プテラノ魔鳥か。鳥獣の中ではかなり上位の魔獣だけど、なんでこんなヤツがこんな所にいるんだ?」

「季節によって住まいを変える魔獣じゃが、偶に面倒になってやめるはぐれプテラノがおるって話じゃ。そやつはおそらくそれじゃろうなぁ」

偶に渡り鳥のくせして渡らないヤツがいたりするが、魔獣にもそんなヤツがいるんだな。

プテラノ魔鳥は見た目はプテラノドンに似ていて、黒死鳥よりも圧倒的に小さいが、それでも体長は三メートル以上ある。色は茶色で、黒死鳥の子供と言っても信じるヤツがいるくらいには似ているかもしれない。

「じゃあ環奈、ヤツを殺ってくれ!そしたら俺がボールをぶつける」

「分かったのじゃ。あの程度なら一瞬じゃ!」

環奈の言葉通り、プテラノ魔鳥は何も反応する事なく首を一瞬で斬られていた。

アレでも一応人間でいえばマスタークラスの魔獣なんだけどな。

「いけぇ!魂ボール!」

俺はそう言ってボールをプテラノ魔鳥の屍に投げつけた。

すると命中した途端に、プテラノ魔鳥の魂が一瞬にして魂ボールの中へと吸い込まれた。

俺はそのボールを拾い上げて言った。

「プテラノ魔鳥、ゲットだぜ!」

「なんじゃそのポーズは?」

「いや、一度やってみたかったんだよ」

あのアニメの決め台詞を言いながらポーズを決めてみたいと思っていたけど、割と恥ずかしかった。

「さてここからが本番だ。この魂を使って、エアゴーレムを作ってみる」

俺は魔砂と空気を使って、カラスのような鳥のゴーレムを作った。

そして今捕らえたばかりのプテラノ魔鳥の魂を操作して、ゴーレムに宿した。

一応体は魂の魔力に負けないよう、俺が魔力を送って形を維持しておいた。

さてどうなるか。

カラスゴーレムが動いた。

こちらを見た。

そして言った。

「うち、どないしたんや?」

「おっ!一応喋れるように作ってはおいたが、マジで喋りやがった。しかも何故か関西弁!」

「ほう。プテラノ魔鳥も言葉を喋れるくらいの知能はあったんじゃのぉ」

「なんやあんさんたち。うちになんか用かえ?」

この魂、どうやらメスのようだな。

「お前さっき、死んだんだよ。ほら、あっちにお前の体があるだろ?」

俺は指をさして教えてやった。

「うわっ!ほんまや!うち死んだんかえ?そやのになんで今、あんさんたちと話してるんや?」

「そりゃ、俺がお前の魂と喋れるようにしたからだけど?」

「そうどすか。おおきにね。それでうち、なんで死んだんや?」

「そりゃ、俺たちが殺したからだが?」

「そうかそうか。あんさん方がうちを殺して‥‥ってええっ!なんて事してくれはりましたんや!」

なかなか愉快な鳥獣だな。

「そりゃお前ら、殺さないとこっちを殺しにくるだろ?」

「せやな。正当防衛っちゅうヤツですかえ。でもなんでやろ?今はさっきと違って心がスッキリしてるわ」

そうなのか。

死ぬとみんな穢れは祓われ天国に行くって話もあるけど、死んだ事で心が変わる事もあるのかね。

何気なしに死体を見ると、禍々しい魔力がそこにはまだ残っていた。

「環奈、死体からの魔力を感じるか?」

「ふむ。そうじゃの。禍々しく結構懐かしい感じがするわぃ」

もしかして魔獣が無条件に人間を襲うのって、魔獣の体にある魔力が原因なのではないだろうか。

今魂となった魔獣と話しているが、普通の人間と変わらない気がするし、魂はそんなに穢れているわけでもない。

「それであんさん方、うちをどないする気や?この体、なんか不安定な感じしますし、とにかく妙に疲れよります」

「そうか。じゃあお前をまともな強力な体にして蘇生してやるから、俺たちの仲間にならないか?俺の子分でもいいけどな」

「子分は無理ですわ。うちらプテラノ魔鳥が従うんは黒死鳥様くらいですわ」

フーン‥‥。

「環奈、こいつに命令してやれ!」

「そうじゃのぉ」

環奈は黒死鳥の姿になった。

「なんと!これは黒死鳥様やありまへんか!」

「そうじゃ。わしのいう事なら聞くんじゃな?」

「そりゃもう尊敬する黒死鳥様のいう事ならなんでも」

「じゃあわしらの仲間になって、こちらの策也殿のいう事も聞くんじゃ」

「承りました。策也殿とやら、これからうちの事、好きにつこうておくれやす」

「よし。じゃあお前にピッタリの体を用意してやる。あんな鳥獣だとみんなを怖がらせるからな。愛される方がいいだろ?」

「それはもう」

「そんなわけでこれだ!」

俺は異次元収納からジョウビタキゴーレムを取りだした。

オスタイプで中身と逆にはなるけど、オスの方が綺麗だしいいよな。

「どうだ可愛いだろ?ダイヤモンドミスリル製で少々の攻撃じゃ壊れる事はない。しかも羽は武器にもなる。俺の自信作だ」

「えっ?ほんまにそんな小さい体に?」

「大きい方がいいってわけじゃないぞ?ほら環奈も普段は小さな人間の姿で行動している。その方が良い所もあるんだ」

まあやっぱり強さを求めるなら大きい方がいいかもだけどな。

「そうどすか。うちはもう仲間になると決めましたし、全部受け入れますわ」

「よし!」

俺はジョウビタキゴーレムを目の前に置いた。

そしてカラスエアゴーレムの魔法を解いた。

直ぐに魂をコントロールしてジョウビタキゴーレムにくっつける。

そして此処からは蘇生だ。

鳥獣だしやっぱり風の癒し魔法で蘇生するべきだろう。

俺は魔力を送った。

するとすぐに蘇生は完了した。

プテラノ魔鳥は、ジョウビタキ鳥獣に生まれ変わった。

「ほんま、こりゃまた小さい体やねぇ」

「でもさっきよりもいい気分じゃないか?」

「そうどすなぁ。体の不安定だった所が解消された感じですわ」

「よし!上手くいったな」

これで俺が生まれ変わり蘇生ができる事も確認できたし、空から偵察できる仲間もできた。

魂ボールの確認もできたし、これは大量に作っておこう。

「ところでお前、名前はあるのか?」

「うちですか?魔獣にそんなもんありゃしまへん」

「そうか。じゃあ俺が名前を付けてやる。そうだな‥‥『陽菜(ヒナ)』ってのはどうだ?生まれたばかりだしな」

「陽菜どすか‥‥なんか凄い嬉しいですわ。目からなんか水が出てきましたわ」

そんなに喜ばれるとアレだな。

ちょっと冗談半分で付けたのに、なんだか申し訳ない気分になる。

「わしも環奈って付けてもらった時は嬉しかったのぉ」

「そうなのか?黒死鳥も名前無いのか?」

「呼び名はあるにはあるんじゃが、わしの場合産まれた時から王じゃったじゃろ?だから呼ばれる時も『王』とか『親分』とか『大将』とか『長』とかじゃったからのぉ」

なるほどな。

偉い人は名前で呼ばれない事もあるんだよな。

それで名前で呼ばれるのが嬉しかったり。

前の世界でも、俺は結構そういうとこ気にして、社長の事を名前で呼ぶようにしていた。

喜ばれていたかどうかは、今となってはもう分からんけどな。

「じゃあ陽菜。お前の事をみんなに紹介したいし‥‥ソロソロ戻ってみるか。どうやらリンもなんとか飛べるようになったみたいだし、みゆきも‥‥あ、うん。大丈夫だ」

「みゆき殿がどうかしたんかいのぉ?」

「見れば分かると思う‥‥」

俺たちは来る時の百倍遅い足取りでみんなの所へと戻った。

皆の所に近づいた時、俺の素の目でもハッキリと確認した。

みゆきが飛ぶ所を。

足の裏から水を勢いよく発射して飛ぶ、なんてネタは結構見るんだけど、みゆきはそれとは少し違っていたが‥‥。

「水蒸気じゃの」

「人間って空を飛べたんですねぇ。陽菜は知りませんでしたわぁ」

「飛べるのは極一部だけどな。そしてあんな飛び方をするのはみゆき、あの子だけだけどな」

鉄腕なんちゃらのようだった。

みゆきが真っ先に俺たちが帰って来たのに気が付いた。

「策也ー!飛べたよぉ!」

「すげぇな!流石みゆきだ!」

本当に流石だよ。

リンや草子、悟空や風里も気が付いて、俺たちの方へと集まって来た。

「俺はもう大丈夫だぜ!ヨコシマを完全に乗りこなせる!」

「やれると思っていたよ」

「流石邪鬼くん‥‥アル」

「私だってなんとか飛べるようにはなったのよ!」

「まだ自由自在って訳にはいかないけどね」

「わたしはもう大丈夫だよ。急降下も直角ターンもできるよ!」

おいおいみゆき、それはデキ過ぎだよ。

「ところで何?環奈の肩にいるその子?可愛い鳥だけど策也が捕まえてきたの?」

「あ、こいつはさっき仲間にした陽菜だ」

「そうなの?可愛いー!」

リンはそう言って、環奈の肩から陽菜を両手で救いとるように胸元に寄せた。

「可愛い!わたしにも触らせてぇー!」

ん~‥‥みゆき。

多分触っても想像とは違うと思うよ。

「えっとこの子もしかして、ゴーレムか何か?」

「ああ。俺がダイヤモンドミスリルで作った体に、鳥獣の魂を蘇生させたジョウビタキゴーレムだ」

「あ‥‥固い‥‥」

リンから陽菜を受け取ったみゆきは少し残念そうだった。

「ちなみにそれ、見た目はオスのジョウビタキだけど、中身は女だからな。レディーとして扱えよ」

「うちがレディですかぁ。なんかええ響きやねぇ。そんなわけで皆さんよろしゅう頼みますわぁ」

「うわっ!喋ったぞ!」

「邪鬼くん‥‥驚き過ぎ‥‥アル」

「喋れるんだぁ。やっぱり可愛い!」

みゆきはご満悦だった。

その後、皆は陽菜に自己紹介していた。

さあこれでいよいよ、ムガサリの町へ向けて空の旅が始まる。

でも今日はもういいか。

新たに仲間も増えて、話したい事もあるだろうからな。

今日はこの場所に移動用の家を出して、俺たちはゆっくりと休んだ。

2024年10月1日 一部言葉の修正

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