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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
有栖川編
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旧神急襲!タイムリミット残り三分!

『悪名は無名に勝る』

悪評によって有名になったとしても、無名よりはいい。

有名にさえなれば、必ず味方はできるからだ。

何処かの国の民兵組織がたとえ他国へのテロを起こしたとしても、その対象の国を嫌う者たちには支持されたりする訳で。

これとは別の言葉として『やらない善よりやる偽善』というのがある。

善人として良い事を言うよりも、たとえ偽善とののしられても行動を起こす人の方が尊い。

助けられた人がどちらに感謝をするのかと言えば、偽善でも助けてくれた人なのだ。

正しいか正しくないかは、時代によっても見る人によっても変わってくる。

ならば行動する人こそが正義と言えるのかもしれない。

なんにしても行動を起こして目立てば味方は増えるのですわ。

でも、テロは駄目だよ。


皇帝自らの防衛戦は、世界に大きな衝撃を与えた。

相手がクトゥルフという最高レベルの邪神だしね。

『此花策也ってやっぱり強いんじゃないか?もう少しの所までクトゥルフを追い詰めていたぞ?』

当然だけど、俺たちの戦いっぷりは全世界の人が見られるようにネットにアップされていた。

伊集院の魔法通信ニュースでは、ライブ放送もされていたとか。

記者たちも命がけで凄いよねぇ。

それにしても‥‥やっぱり自分の名前を背負って戦えば味方も増えるんだな。

コメント欄を見る限り、此花に味方する声が大きくなっていた。

『この前クトゥルフに勝ってほしいって言ったけどさ、やっぱ俺人間だし此花を応援するよ』

『俺は最初からそう言っている』

『それにしても此花策也の魔法ウケるよね。「リア充死ね!」とかw私割と好きだよ』

『確かにリア充ウザいよな。爆発してほしい気持ちも分かるわ』

『自分リア充だから複雑。でも此花策也には頑張ってほしい。皇帝自ら最前線で防衛とか、なかなかできるもんじゃない。ほとんどの国のトップは表にすら出てこないんだから』

『でもそれ、有栖川旧神も同じじゃね?』

『人外乙』

『でも此処までかもしれないぞ。あれだけやって倒せない相手、どうにもならないだろ‥‥』

その通り、正直倒せる気がしない。

今日も魔界に修行に行くつもりだけれど、完璧な状態で今攻めてこられたらお手上げだろう。

また同じ所から攻めてきてくれるとも限らないし、領土を守らなければならないのも足枷となっている。

転生前の世界。

日本では『専守防衛』なんて言って敵基地攻撃能力も持たずにいたけれど、そんなので守り切れる訳がないと今になって思う。

どう考えても無理ゲーだ。

俺たちの力を単純に軍隊として考えてみた場合、敵の戦力の分散が勝利の必須条件になってくる。

分散させるには敵へのアタックを分けるしかない訳で、日本がどれだけ無理ゲーに挑んでいたかがよく分かるよ。

いかにこちらの戦力を一つにまとめ、敵を分散させるかが勝利の鍵だ。

でも敵を分散って言っても、クトゥルフは一人で我が軍全体を上回っているかもしれない。

みゆきに戦場に来てもらう事も考えないとな‥‥。

それでも勝てる気がしないけどさ。

考えても勝利への道は見えなかった。

そんな俺の考えている事が分かったのか、俺と共に早くからガゼボに来ていた七魅が声をかけてきた。

「策也。クトゥルフに勝つ方法が見つからないのだ?」

「そうだな。だいたい力は戻ってきているんだけど、元々それじゃ駄目だったって事だ」

もう少しなんとかなると思っていた。

せめて俺に今のみゆきくらいの魔力があれば‥‥。

「策也は‥‥もう少し魔力があればなんとかなるのだ?」

七魅は俺の心が読めるのかよ!

「ま、まあな。みゆきくらいの魔力が有れば、俺とみゆきでなんとか倒せる可能性はある」

「だったら方法はあるのだ。あたしの魔石を使うのだ!」

「いや、それは‥‥」

確かに七魅の魔石を使えば、大神クラスの魔道具が作れる可能性は高い。

そしたら今のみゆきとほぼ同じくらいの魔力を得られる超再生のベルトが作れるだろう。

でもそれって、七魅を殺すって事だぞ?

七魅、それは死ぬって事だぞ?

「それで世界が救えるならやるのだ。どうせ蘇生もできるのだ。魔石が無くなるくらいどうって事ないのだ」

確かにすぐに蘇生もできるし、大きな問題はないかもしれない。

でも流石に違う気がするよ。

どうせ怪我しても治るのだからと、友達を斬りつける奴なんていないだろう。

それにな七魅。

お前は気が付いていないかもしれないけれど、七魅の魔石は人間と魔物を繋ぐ架け橋なんだよ。

一度死んで蘇生した魔物は、魔石と共に激しく荒い気性を失う。

それは近年、この世界で常識になってきている。

でも魔石があると『仲良くやるなんて無理』というのが一般的な考えなんだ。

そうではないと証明しているのが七魅、お前のその魔石なんだよ。

だから絶対にその魔石は失う訳にはいかないんだ。

そして世界の為とは言え、俺の魂がそれは違うと告げている。

「それは駄目だな。でも気持ちはありがたく受け取っておくよ。やっぱ七魅はいい奴だな」

「あたしは本気なのだ。世界の為なら一度死ぬくらい大丈夫なのだ」

「分かっているよ。でもそんな事をしなくてもなんとかなるさ。俺の未来を見る能力でも、世界が壊れる未来なんて見えないからな」

そうなのだ。

そんな事をしなくても別に方法はある。

きっと俺はそれを見つけるのだ。

気楽に行こうぜ。

俺はなんとなく席を立って七魅をハグした。

「な、な、どうしたのだ?策也?」

「いや、七魅はいい奴だと思ってな。気にするな」

「き、気になるのだ。離れるのだ!」

全く、照れ屋め。

俺は七魅を開放して元の席へと戻った。

その後続々と何時ものメンバーがガゼボに集まってきた。

そしていつも通りの四阿会議をしてから、俺は再び魔界へ修行に出かけた。


クトゥルフと戦ってから三日が過ぎた。

どうして奴は攻撃を仕掛けてこないのか。

勝つのが目的ならば、どこからでも此花領を攻撃する事は可能だろう。

あいつの魔力なら千キロ先からだって攻撃が可能だ。

町や村を破壊するのは本意じゃないとしても、それをためらうような奴なのだろうか。

キレた時はそれをしようとしていたが‥‥。

クトゥルフって本当に悪い奴なのかね。

尤も百パーセントの悪も百パーセントの善も、俺はあり得ないと思ってはいるんだけどさ。

そんな事を考えていた朝、禰子から久しぶりにテレパシー通信が入った。

『お兄ちゃんおはよう!元気?!』

『おお禰子か。おはよう。ボチボチでんな』

『そっか。ボチボチかぁ』

『で、どうしたんだ?何かあったのか?』

『うん。これと言って大した事はないんだけどね、ちょっとだけ気になる情報があるんだよ』

『気になる情報?』

なんだろうか。

正直今はクトゥルフを倒す方法を考えるのに手いっぱいで、あまり他は考えたくないだけどね。

『うん。イテコマスの町・イキリの町・キトキトの町・ギョウサンの町・シットーの町‥‥他にもあるんだけどね、この辺りで何者かが何か情報収集しているらしいの』

伊集院と島津の国境に近い町ばかりだな。

まさかまたこの両者の仲が悪くなったとか?

こんな時期にマジ何考えてるんだ。

『伊集院や島津には構ってられないよな』

『ん~‥‥そういうのじゃない気がするよ』

『どういう事だ?』

『情報収集をしている人はみんな「魔力を感じなかったか?」って尋ね歩いているようなの』

『魔力?市井の町民に尋ねているのか?』

『そうだよ。諜報員は一般人として町にいるからね』

魔力を感じなかったか?か‥‥。

一般人が魔力を感じるとしたら、当然大きな魔力に限定されるだろう。

それも半端ない大きさだ。

もしかしてこの辺りにクトゥルフが来ているのを誰かが察知しているとか?

伊集院がクトゥルフを警戒しているとか、そんな感じだろうか。

でもなんで島津領との境なんだろうな。

『ありがとう禰子。クトゥルフがこの辺りに来ているのかもしれないし、一応頭に入れておくよ』

『うん。百ある禰子の目が何かがあるって感じてるから気を付けて』

『分かった』

『じゃあまたね!』

『おう!』

禰子は百目鬼だ。

百ある目はあらゆるものを見通すと言われている。

俺の邪眼とは違うが、その目が何かを見ているとするならきっと何かがあるのだろう。

一応思考の一つでこの件については注意しておこう。

俺は何かがあるとは思いながらも、今はクトゥルフを倒す方法の方が重要だからと、その程度にしか対応はしなかった。


更に三日が過ぎた。

禰子の話は思考の一つで考えてはいたものの、だからと言って何かをするでもなかった。

俺はただひたすら魔界で修行を続けていた。

するとまた禰子からテレパシー通信が入った。

『お兄ちゃん、やっぱり変だよ。きっと何かあるよ』

禰子よ、いきなりだとお兄ちゃんもビックリしちゃうんだよ。

つか何かと言われてもねぇ。

『もう少し禰子の思う所を詳しく話してくれないか?』

『う、うん。情報収集は伊集院領と島津領の国境に近い所が中心になっているんだけどさ。特に内容は伊集院や島津には関係が無いよね』

『そうだな』

『となると残るはドラゴン王国ヴリトラって事だよね』

おお、そう言えばヴリトラはこの辺りだったんだよな。

移動は転移ゲートか瞬間移動魔法ばかりだから、位置をあまり意識していなかった。

『それで情報収集をする人は「魔力を感じなかったか?」って尋ねて来るらしいんだけど、それで「感じた」って答えると今度は「何時どっちの方向から感じたのか?」って聞いてくるんだって。色々な町で魔力を感じた方角を聞くなんて、誰かを探しているとは思えないでしょ?』

『確かに‥‥』

色々な町で感じた魔力を総合して考えるのなら、それはおそらく人ではなく場所を特定する為だ。

場所だと?

『禰子!この話が出始めたのは何時頃だ?』

『結構前だったと思うよ。最初の情報は多分三週間くらい前じゃないかな。一ヶ月前にはなかったはず』

やっぱり‥‥。

これはおそらくあの時のみゆきの魔力の事だ。

みたまにクラーケンのベルトを渡す時、一時的にみゆきの魔力が全て解放された。

あの時の魔力はかなり大きく、広い範囲で感じた人も多かったはず。

つまりその者はみゆきの場所、更にはフレイムドラゴンの里を探していた事になる。

そこが俺たちのアジトとは考えないまでも、力のある者なら何かがあると考えても不思議ではない。

俺だってそんな魔力を感じたら、何があるのか調べたくはなるよな。

そしてそれを探していたのが有栖川だとしたら、何時俺たちの楽園が見つけられてもおかしくはない。

俺が嫌な考えに至った時、みゆきからテレパシー通信が入った。

『策也!クトゥルフが来ちゃったよ!防衛の結界は発動したけど、それだけじゃダメみたい!』

気づくのが僅かに遅かったか。

『分かった!今すぐ戻る!』

『禰子!クトゥルフがフレイムドラゴンの里に現れた!戦える奴は全員集まるように通達しておいてくれ!』

『分かったよお兄ちゃん!』

クッソ!

せっかく禰子がおかしいって教えてくれていたのに、俺の頭が悪いせいで対応が後手になってしまった。

みゆきは既に防衛の結界が発動していると言っていた。

ならば里の中への瞬間移動は無理だ。

俺はまず悪魔っ子たちの集落へ瞬間移動し、そこからヴリトラの地下へと移動する。

更に瞬間移動魔法でフレイムドラゴンの里の上空へと出た。

既に旧神とヨグソトースが、里へ向かって魔法を放ち攻撃していた。

「こんな所に隠れていたのか!いつまで耐えられるかな!?」

千里眼で見ると、防衛結界を支えていたのはみゆきだった。

『みゆき大丈夫か?』

『策也。まだ大丈夫だけど、もって五分‥‥頑張っても十分が限界かも』

となるとそれまでにこいつらを止めなければならない。

俺は旧神に向けて魔法を放つ!

「手加減なんてしている場合じゃないな。ロイガーツアール!グホッ」

最強のカマイタチが旧神に向けて放たれた。

しかしその前にヨグソトースが立ちはだかりそれを止めた。

マジかよ。

最強魔法がアッサリと止められた。

こりゃ詰みじゃね?

そう思った時、仲間が続々と集まってきた。

「はははは!策也!何絶望した顔をしておるのだ!勝負はこれからぞ!」

「夕凪も‥‥手を貸す‥‥」

「私もいますよ。死なない私たちは最前線で良かったですよね?」

「ああ、そうだな駈斗」

「うらら、頑張りまーっす!」

こいつら‥‥。

オリハルコンの体でも、クトゥルフがマジになったら死ぬ可能性も考えられるんだぞ。

「自分もやるしかないっすね‥‥」

「金魚だってやるんだよ」

島津夫妻まで‥‥。

「おう!」

みんなが里を攻撃する旧神に対して攻撃を開始した。

頼もしい仲間たちだね。

しかしみんなの攻撃はヨグソトースが阻む。

『隆史!劉邦は来ているか?』

『今フレイムドラゴンの里に到着したところだぞ』

『ならば早速で悪いが、劉邦にはヨグソトースの時間操作を止めるように言ってくれ!そして他の連中にはみゆきを助けて結界を支えるようにと』

『承知した』

今なら旧神は手を離せないし、ヨグソトースも守りに集中する事になる。

時間の制限はあるけれど、これは大きなチャンスだ。

「みんな!畳み掛けるぞ!」

俺たちは全力で旧神を攻撃した。

「無駄だ!その程度の攻撃、食らってもどうってことはないが、世愚でも全て受け止める事ができる!」

旧神の言う通りなんだよな。

どの攻撃も通る気がしない。

「リア充爆発しろ!グハッ!レッドブルーライトニング!グホッ!アザブジュバン!グフッ!」

ヤベェ‥‥。

デカい魔法を連打して反動が来るのが快感になってきてやがる。

俺はもしかしてドエムだったのか?

意識が少しずつ薄れて行くな。

少し酒に酔ったような、酸欠になったような感じだ。

夢の中でみんなが戦っている感じ。

あらゆるものがスローに感じる。

ずっと魔法を放ってはいるが、もう反動も感じなくなってきたか。

それでも俺は魔法を放ち続ける。

タイムリミットは後どれくらいあるだろうか。

最悪深淵の闇でみんなを精霊界に退避させないと‥‥。

本気でマズいぞ。

意識が飛ぶ‥‥。

こりゃ駄目かな?

全てが真っ白になって意識が飛びそうになった時、金魚の悲鳴が聞こえた。

「うほわぁー‥‥」

金魚の悲鳴を聞いて俺は我に返った。

おいそれ悲鳴か?

全くこんな時までふざけやがって。

でもおかげで意識がハッキリと戻ってきたぞ。

つか金魚を助けないと!

幽霊化できていない。

このまま落ちたら結界と旧神の魔法の間で消滅する。

「大丈夫です。金魚さんの事は任せて下さい」

「山女ちゃん!」

山女ちゃんにはいつも助けられているな。

天才サポーターの称号を与えてあげないと。

しかしピンチは続くのだ。

既に時間はみゆきの言っていた十分を過ぎている。

旧神だけの攻撃になっているし、仲間が助けに来てくれているからまだしばらくは持つだろう。

でもおそらく後十分は持たない。

『みゆき、まだいけるか?』

『あと少しなら。わたしでもそろそろ限界が近づいてるよ』

防御結界の維持は大変なのだ。

攻撃側は手を抜いたり強めたりも可能だもんな。

しかもこの結界は、魔法と物理攻撃両方に対応するものだ。

攻撃の倍は魔力を消費しているだろう。

考えろ俺のスーパーコンピュータ。

何か突破口を見つけないと、この里は今日で終わる。

そしてこの魔法の威力から考えて、ドラゴン王国ヴリトラにいる全ての人が死に絶えるだろう。

そこまで俺の力では助けられない。

タイムリミットは後三分といった所か。

俺たちはただ、必死に攻撃を続けるのみだった。

2024年10月12日 言葉を一部修正

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