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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
中央大陸編
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生まれ変わり作戦開始!そしてドサの町へ!

人が思いを込めて何かを作ると、そこには魂が宿ると言われている。

本当にそんな事があるのかどうかは知らないけれど、魔力が宿るのは実証済みだ。

俺はこちらの世界に来てから、家のリフォームをしたり、作業小屋を作ったり、三日月刀や朔刀を作ったりしてきた。

その時に気がついたんだが、それら俺が作ったモノには、どうも俺の魔力が僅かに残っているようなのだ。

この世界にある人が作ったものには、よく調べればわずかだが製作者の魔力が残っている。

ほとんどが確認困難ではあるけれど、力を入れて作られたものや、おそらくだが俺のように魔力の大きい者が作ったものには、十分確認できるだけの魔力が宿っていた。

そこで俺は考えた。

魔力を与え続けなくてもいいようなゴーレムを作った時、或いはそこから人そのものを作った時、それらにも魔力が宿るのではないだろうかと。

実際、俺が空気を使って作るエアゴーレムは、最低限形を維持するだけの魔力を供給しているにも関わらず、魂の全魔力を注ぎ込まなくても崩壊したりはしない。

だから僅かではあるけれど、低レベル魔法が使えるのだ。

例えば百の魔力を持った魂がゴーレムに入れば、百の強度を持ったゴーレムでないと崩壊してしまう。

俺の作るエアゴーレムは、何もしなければそもそも崩壊するものだから、崩壊しない最低限の魔力ってのは必要になってくる。

だから、それはそれで俺は何時も魔力供給している形だ。

しかしそれでも強度はほぼゼロだから、魂が入ってゴーレムを維持しようとすれば、魂が百の魔力でそれをしなければならない。

理屈を考えればそうなるし、実際そうしているはずだった。

そのはずなのだが、実際は少し魂の魔力が残り、故にライトの魔法や高度だけど魔力消費の少ない異次元収納の魔法は使えてしまう。

つまりゴーレムには、それだけの魔力が何故か存在するという事だ。

作られたものには魔力が宿るわけで、おそらくそれが理由なのではないかと考えられた。

今回の早乙女相馬生まれ変わり作戦では、実はその辺りを確かめる意図もあった。

これが本当にその通りなら、みゆきの体が消滅するような問題が起きたとしても、ゴーレムとして蘇生するという選択肢ができる。

尤も、相馬の生まれ変わりがギャンブルかと言えばそうではない。

俺の魂がゴーレムを操っているように、魔力コントロールが可能な相馬なら、ゴーレムに憑依するという方法で生まれ変わりが可能だ。

ただし魔法がほとんど使えなくなるデメリットが存在するわけで、今回この蘇生をするのは、そのデメリット克服にチャレンジする事でもある。

みゆきは魔法コントロールが弱いから、ゴーレムに憑依はできない。

でも俺が蘇生という形で手助けをする事でゴーレムの体で生まれ変わりできるとなれば、これは大きな安心感につながるのだ。

ただどうして今回蘇生を担当するのがみゆきなのかと言えば、魔力の大きさもあるけれど、質を重視している。

生まれ変わっても相馬の魔力が以前とあまり変わらずトゲトゲしたものだとしたら、もしかしたら相馬なのではないかと疑われるかもしれない。

そこでみゆきだ。

肉体にみゆきの魔力が残り中和されれば、おそらく肉体と魂が一体化した新たな早乙女相馬の魔力は、何処にでもある普通の魔力に近いものになるのではないかと考えられるからだ。

みゆきの魔力は色で言えば白。

そして相馬は黒。

一般的な魔力はその中間、灰色のような感じだから、生まれ変わった後の事を考えれば、みゆきの魔力を宿せる方が良いわけだ。

おそらく俺の魔力だとそんなに今と変わらない結果になる。

ほとんど俺の憶測の域かもしれないけれど、蘇生さえ上手く行けば思い通りの結果になると俺は確信していた。


作戦決行の時が迫っていた。

ポイントはいくつかあるが、まず一つは、相馬が二十五歳になる前に死なない事だ。

二十五歳になる前に死んでしまったら、この兄との殺し合い自体が無効どころか、誰が早乙女相馬を殺したかで問題になり、早乙女王国が何をしでかすか分からない。

だからそれまでは元気に生きている事をハッキリさせておく必要がある。

二十五歳になればとにかく相馬を殺し、俺が魂を確保して持ち帰る。

それを用意しておいた新たな肉体となるゴーレムと繋ぎ、後はみゆきに水魔法で蘇生させるという流れだ。

今相馬は、九頭竜領内にあるイラチの町にいる。

俺たちと別れた後、俺は『とにかく離れた町』、できれば『九頭竜領内の町』まで行くように指示した。

早乙女の力があればなんとか行けるだろうという事だったので任せた。

どうして九頭竜領内を指定したかと言えば、他の領内で殺されたら領主に何かしらの責任を追及しかねないのが早乙女だからね。

九頭竜だったらその辺り問題になる事はないだろうという考えだ。

その後の連絡は、個人番号だけ教えておいてもらって、後でそこに連絡すると伝えておいた。

俺たちはその場から一旦ホームへと戻った。

誰にも監視されていなかったとはいえ、ドサとバッテンダガヤの町の間で誰かと会っていなかったか、後で調べられる可能性があったからだ。

その後俺は冒険の中で新たに手に入れていた住民カードの一枚をゴールドまでランクアップさせ、それを使ってメール連絡をとった。

これで万一魔法通信記録が残っていて調べられたとしても問題ない。

むしろ後でばらすつもりだしね。

その住民カードの持ち主はおそらく死んでいて、しかも過去に暗殺を生業にしていた天涯孤独の人物だからだ。

相馬に指示したのは一つ。

二十五歳になる早乙女王国時間の零時、九頭竜王国の時間で五時、指定する場所に来いというシンプルなものにしておいた。

俺はゴーレムでの金儲けの中で、九頭竜王国のイラチの町には行っていた。

その町の中で、相馬を殺しやすく、尚且つ魂を持って逃げやすい所を指定しておいたわけだ。

既に今回限りのゴーレムはその場所を確認できる場所に待機し、俺自身も姿を消して近くに潜んだ。

相馬が歩いてくるのが見えた。

時間を間違ってはいけないので、多少は余裕を持たせて殺るつもりだ。

しかし既に相馬の周りには、殺気を持った奴らが潜んでいるのが分かる。

おそらく兄である第一王子の刺客だろう。

殺し合いが始まる前に動いてはいけないルールだが、それが目的でなければ刺客を近づける事はできる。

例えば相馬の護衛という事で相馬が許可すれば、それは問題ない。

俺たちと会う時は単独行動だったが、それ以外で護衛をつれているのなんて当然と言えば当然だ。

その中に監視役や刺客がいたとしてもそれは問題にならない。

少しどうするべきか考えるな。

時間になって刺客がすぐに任務を成功させてくれればそれはそれでいいが、兄に弟殺しをさせてしまう事になる。

もしかしたら兄も、相馬の兄なのだから同じような気持ちを持っているかもしれない。

だったらこっちで殺ってしまった方がいいのではないだろうか。

余計なお世話かもしれないが、相馬を殺すのは俺がゴーレムでやろうと思った。

相馬が指定の場所へと到着した。

時間まで残り一分を切っている。

相馬が誰かを探すようなしぐさをしている。

メールでは一応待ち合わせのような感じにしておいたので、この動きは問題ない。

ただ護衛の者には警戒心をより強めさせる結果になってしまったかな。

残り十秒を切った。

皆動かない。

残り五秒で動く者があった。

反則は仕切り直しか、犯した方の負けになる。

当然負けたら命はない。

動いたのは隠れて護衛していた何人かで、相馬を取り囲むように襲撃に備えた。

護衛が護衛の行動をするのはセーフだ。

そして時間になった。

時間になった瞬間、護衛の為に集まっていた中の一人が、振り向きざま剣で相馬を斬りつけた。

それを別の護衛が止める。

今度は相馬の後ろ側から別の刺客が襲い掛かった。

更には別の刺客も一斉に襲い掛かる。

どうやら護衛の半分以上が刺客のようだ。

死ぬのが目的だから、大して調べず全て護衛を受け入れたのだろう。

このままでは相馬が殺られる。

いや、殺られていいはずなのだが、俺は咄嗟にゴーレムで刺客の剣を止めた。

やはり身内殺しはさせてはいけない。

俺は最初の予定通り、ゴーレムで相馬の首を刎ねた。

すぐさまゴーレムは逃亡をはかる。

皆には奇妙な行動に映ったかもしれないな。

追ってくる者、殺られた相馬を見て呆然とする者、冷静に遠くから見ている者と色々いたが、相馬への注意は分散していた。

俺は魔法で姿を消したまま瞬時に相馬に近づき、魂をもぎ取って近くの建物内へと身を隠した。

そして直ぐに瞬間移動魔法で、蘇生を行う場所へと移動した。

そこはあのゴブリンが住んでいた洞窟だ。

この中にみゆきたちと、相馬の新たな体となるゴーレムが用意してある。

相馬を殺した一回限りのゴーレムは、河の中に飛び込んだ後その魔法を解いた。

痕跡は残せないので、残った魔砂を流してくれる河を選んだ。

ただそこには、連絡に使ったゴールドカードを置いていった。

上手く見つけてくれれば、相馬を殺した犯人はこの川で死んだという事になるだろう。

「さて蘇生するぞ!まずは捕まえた魂をゴーレムに繋ぐ!」

「そこに魂があるのね?」

「全く見えんのぉ」

「でも命を感じる気がするよ」

どうやらみゆきには魂を感じる能力があるようだ。

「よし繋いだぞ!みゆき、水の蘇生魔法だ!」

「分かった。頑張っちゃうよ!んー!生き返れー!」

みゆきの魔力が癒しの水となってゴーレムを包んだ。

元々生きたものではない人形が、魂を繋いだだけで蘇生の対象になるのかどうかは分からない。

でも理屈では可能なはず。

駄目な場合は俺が相馬の魂に指示を出すつもりだ。

自分の魔力でゴーレムに憑依せよと。

洞窟内をみゆきの膨大な魔力が漂う。

なんとも言えない穏やかな空間だ。

閉鎖空間では魔力を感じやすい。

なるほど、相馬が洞窟を指定したのはその為だったか。

小さな魔力変化も気づきやすそうで、魔法研究にはもってこいだ。

「生き返れー!動けー!」

しかしなかなか横たわるゴーレムは動き出さない。

魂とゴーレムを繋ぐ俺の魔力は、既に俺の手から離れているから、魂はこのゴーレムを自分の体と認識しているか、或いはそうしようとしているはずだ。

魂の声は聞こえないから判断できないが、相馬がそう認めているのは分かる。

みゆきの蘇生魔法も間違いはないし、蘇生が可能なら後は時間の問題だ。

相馬の魔力はマスタークラスの草子以上なので、その魂を支える肉体を作るには相当の魔力が必要になる。

虫を蘇生させるのとはわけが違うから、やはり時間はかかるようだった。

それでも徐々に蘇生へと近づいている事が分かる。

ゴーレムに魔力が付いてきているのが俺の目には見える。

「もう少しだ。頑張れみゆき!」

「うん。大丈夫!頑張っちゃうよ!」

みゆきがそう言って間もなく、生まれ変わりの蘇生は完了した。

「動いた!」

「おっ!」

「本当にこんな事ができるとは思わなんだのぉ」

「凄いですね」

「よく分からないけど、策也ができるっていうんだからできると思っていたわよ」

俺たちが囲む中心で、早乙女相馬の生まれ変わりである『乱馬』が目を開けた。

「僕、生まれ変われたみたいだね」

「ああ成功だ。いやぁできて良かったぜ。可能性としては五分五分かと思っていたからな」

「なんだよそれ。失敗したらどうするつもりだったんだよ」

「いや、別の手もあったから、一応生まれ変わり自体は必ず成功させるつもりだったさ」

「そっか。つか、なんか僕の声、女の子みたいな感じなんだけど?あれ?体も小さいく感じる」

乱馬はそう言いながら体を起こし確認した。

「なんじゃこりゃー!僕女になってるじゃん!話だとダンディな男性アンドロイドな感じって言ってなかったけ?」

「いやそのつもりだったんだけどさ、やっぱりもっと人間に近い方が良いと思ってさ。でも新たに作るには間に合わなかったから、以前に作っていたメイド用ゴーレムを使う事にしたんだ」

本音は、実験としてよりこちらの方が良いと判断したからなんだけどね。

もしかしたらいずれみゆきに使う事になるかもしれないから。

間に合わなかったってのは本当の事だけど。

「それ約束が違うよね」

「まあ嫌なら改めてゴーレムを作って、もう一度同じ事をするよ」

俺がそういうと、乱馬は少し考えていた。

そしてすぐに納得したようだった。

「まあいいや。これはこれで完全に僕とは思われないだろうし、女になるのも興味はあったし」

「そうか?ならこれで約束は果たした事になるな。それでこれが乱馬の新しい住民カードだ。一応限りなく人間に近いゴーレムだが、住民カードを左手に収められるかどうかはわからんぞ」

「乱馬?それは僕の新しい名前か?」

「ああ。色々考えたが俺の一存でそう決めた。異論は認めない」

「‥‥元の名前にも近いし、なんとなくしっくりくるから問題ないけどさ」

そんなわけで、俺たちが早乙女相馬から受けたミッションは、全てコンプリートできたのだった。

乱馬の体からはもうトゲトゲした魔力も感じない。

予想通り体に宿ったみゆきの魔力が混ざり合い、新たな乱馬の魔力となっていた。

ちなみに容姿は、一本おさげの赤茶色の髪で、みなさんご想像の通りかと思う。

服装はメイド服だけどね。

「おっ!住民カードもちゃんと左手に収まったぞ!」

「可能性はあると思ったけど、かなり人間に近いゴーレムにできたな。ただ、食事はしてもトイレには行く必要がないし、歳も取る事がない。子供も作れないし、その辺りは普通の人間とは違うから勘弁してくれ」

「いやむしろそれでいいよ」

「で、ここは俺が用意した洞窟の中だ。場所は此花領内。一番近い人が住む場所はカタス村だ。農地が広がっているからこの近くまでは人も来るが、此処を見つけられる事はまずないだろう。洞窟の入口付近は住まいに改造してあるが、奥はこのように洞窟そのままだ。更に最奥に転移ゲートが作ってあって、俺のホームの一室に繋がっている。普段はそこを使ってホームへ行き、町で買い物などしてくれればいい」

転移ゲートはホームの三階、転移ルーム内へと通じている。

ホームはナンデスカの町の中にあるから、直ぐに町に行けるようにしておいたというわけだ。

当然この転移ゲートが使えるのは此処にいるメンバーだけにしてある。

「そこまでしてもらって助かるよ」

「その代わり研究頼むぞ?金も十億は返しておいてやる。色々とモノがいるだろうしな。ただそれ以上の生活費が必要なら自分で稼げよ」

「分かった」

こうして俺の仲間?に、又男か女か分からないヤツが加わった。


乱馬にホームでの事など色々と伝えた後、俺たちは元の冒険の旅へと戻った。

早乙女相馬と会ったあの場所だ。

そしてそこからは、穏やかな道を行くのではなく、再び魔獣の出る山道を進む事にした。

みゆきは既に魔法が扱えるし戦闘も問題がない。

仮に万一殺られるような事があっても、復活させる方法は実証済みだ。

俺さえ殺られなければ何とでもなる。

それに仲間も頼もしいからな。

戦闘ではみゆきが無双していた。

というかクラーケンだな。

流石に伝説の魔獣だ。

ベルトから出てくる足だけとはいえゲッソ強いのだ。

それはみゆきの魔力を吸収しているからでもある。

襲い掛かる魔獣は全て瞬殺されていた。

「わたし殺すつもりないのに殺しちゃってるよぉ」

みゆきは少し涙目だった。

「これは仕方ないんだよ。奴らはみゆきを殺そうと襲い掛かって来てるからクラーケンが殺してしまっているんだ。相手に殺す気がなければクラーケンはそこまでしない。正当防衛だよ!」

「でも血とか変な液とか気持ち悪いよぉ」

「そっか。ならば襲い掛かってくる魔獣を凍らせるんだ!クラーケンの属性は水だ。氷の魔法は簡単に使える!」

「分かったよー」

みゆきが魔獣に手をかざすと、次々と魔獣が氷漬けになっていった。

「いきなりそんな魔法も使えるのね」

「わしも危うく一緒に氷漬けにされるとこじゃったわぃ」

「環奈も魔獣だからな。クラーケンが敵と判断したのかもね」

「みゆきちゃん、クラーケンさん。環奈さんは黒死鳥だけど敵じゃありませんから、攻撃はしないでくださいね」

「ごめんなさい」

「大丈夫だよみゆき。少々攻撃しても死ぬような奴じゃないし。でも魔獣はおそらくそのまま蘇生させられないからな。今のうちに不老不死魔法かけとくか?」

「わしはこのままでいいぞぃ。ドラゴンと同じ条件で戦いたいからのぉ」

「じゃあくれぐれも巻き添えくらわんように気を付けてくれ」

「大丈夫じゃ」

まあいくらみゆきの魔法やクラーケンが強いと言っても、本物のクラーケンほどではない。

環奈なら対応できるだろ。

こんな風に戦闘をしながらドサの町へ向かっていたら、結局到着までには三日もかかってしまった。

それでも普通はそれくらいかかる道のりなんだけどね。


ドサの町についた俺たちは、当然まずは腹ごしらえだ。

情報収集もあるし、目指すはこの町の冒険者ギルド。

でもその前に、みゆきの要望で少しだけ散歩する事になった。

「凄いね。人がいっぱいだね」

これだけ大きな町にみゆきが来るのは初めてだった。

俺たちのホームであるナンデスカの町もそこそこ大きな町だが此処ほどじゃない。

それにホームに戻っても家からはあまり出ないし、家は町のはずれにあるからあまり人もいないのだ。

「本当に人が多いな。でも此処は東雲の直轄地だろ?どうして王都よりも活気があるんだ?」

「実はこの町は何年か前まで西園寺領だったんだよ。そして今も領主はその頃の人なんだ」

そうなのか。

それにそもそも東雲だからと言って駄目だというのも違う気がする。

ショーシィの町は普通の町だったし、王都に暗い雰囲気があったのはみゆきの事が何か関係あるようにも思う。

そもそも何故みゆきの母は子供をワザワザ東雲に託したのか。

「それと北にある有栖川との交易は、主にこの町なんだよね。何故かバッテンダガヤは避けられているの。東雲の要望という話も聞くけどその辺り色々とあるみたいよ。お父さんはもしかしたら聞いてるかもね。東雲との関係が急速に良くなったのもここ最近だし」

話を聞くとますますみゆきが関係ありそうな気がする。

それを今話す意味もないから話さないけどね。

「そっか」

「そうそうそれとね。ドサの町の北側に、オーガの隠れ里があるのよね。西園寺はオーガが嫌いだからドサの町を東雲に譲ったって話もある。昔からオーガとはトラブルはあったみたいよ。ただドサの町は有栖川領にも近いから、オーガの里の近くでも人口は多いけどね」

有栖川は商人ギルド連盟のトップだ。

世界の流通を仕切っていると言ってもいい。

その有栖川との繋がりを捨ててまでドサの町を東雲に渡すとか、オーガの里に近いのが理由だなんて到底思えなかった。

話しながら歩いていたらいつの間にか冒険者ギルドの前まで来ていた。

「とりあえずギルドに入って食事しますか」

「わしはもうお腹ペコペコなのじゃ」

「わたしもだよぉ」

みゆきが散歩したいって言ったから食事が遅れたと思わなくもなかったが、お腹を空かせているみゆきも可愛いので俺には何も問題がなかった。

「みゆちゃん‥‥」

リンやその他メンバーは『まったく仕様が無いな』という顔をしていた。

俺はいつも通り不動にそのまま町を歩かせ、霧島を先頭に冒険者ギルドへと入っていった。

これだと誰か嫌なヤツから何かを言われる事は少ない。

でもいい加減霧島と不動を使うのに疲れて来たな。

ホームのセバスチャンはやる事もないし、昼寝か人形作りの工作だから良いんだけど、同じ景色を複数の視点で見るのは疲れる気がする。

他にも本体が休む時間の間、北へ金儲けの冒険に出したりしているゴーレムはいるが、やはり特に疲れた気がするのは霧島と不動だ。

そろそろパーティーに男を入れても良いかと思えていた。

俺たちは情報収集よりも先に、当然だけど飲み屋の席についた。

パーティーメンバーもなんだかんだ五人まで増えたし、霧島も立たせておくから大きめのテーブルを囲った。

しかしちょっと広く感じた。

やっぱり内二名が幼い子供となると、場所が広く感じる。

次からはもう少し小さめのテーブルでも良いかなと思った。

俺たちが食事に夢中になって無言になった頃、俺たちのテーブルに一人の男が笑顔で近寄ってきていた。

俺は霧島で少し威嚇したが、ニコニコとした顔を崩す事なくそのまま更に近づいてきた。

霧島圧力をものともしないその男は、直ぐに俺たちの傍までやってきた。

「何か用か?」

霧島の問いに対して、その男はテーブルにつくメンバーの顔を確認してから話し始めた。

2024年10月1日 言葉のおかしな所を修正

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