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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
暗黒界編
137/184

有栖川の王クトゥルフ

暗黒神の話によると、輪廻転生は全ての魂が等しい条件で転生すると言う。

それに納得いかなかった暗黒神は、自ら暗黒界という世界を作ったのだそうだ。

そこで自分なりの転生を確立していった。

良い行いをした者、或いは人々の尊敬を集めた者は強力な魔物へ転生させ、悪い行いをした者は魂をリセットしてモブの魔物とした。

平等という意味では輪廻転生の仕様は当然なのだろう。

でも公平という意味では暗黒神のやっている事の方が正しいように思える。

どっちが善でどっちが悪か、なんて事は簡単には言えない。

でも『死んだらみんな一緒』ってのよりは『死んだら生前の行いが重要』って方が人間界は良くなる気がする。

だから俺は、暗黒神のやっている事を支持したいと思うよ。

ただ、混沌除ノ異子とかデイダラボッチとかで魂を集めるのは怖すぎるからやめてほしいけれどね。


俺が人間界に戻ってから三日が過ぎた。

その間とにかく皆で薬を作り続けた。

その甲斐あって薬の量は十分と言える所まで増やす事ができた。

病原体を見分ける人員が不足している問題に対しては、ドラゴン王国に住む元ドラゴンの人々に助けを頼んだ。

手が空いている人は少なかったが、これで多少薬の回りは良くなる。

更に俺は暗黒界で集めた堕天使たちの魂を人間として蘇生していった。

魔物は概ね魔石が無くなるとおとなしくなり、蘇生によって結構従順になるから問題はほとんど無かった。

まあ中にはイレギュラーでヤンチャな奴もいない事はないけれど、そういう奴も含めパイモンの『洗脳』の能力で人を無暗に殺せないようにしておいた。

殺し以外で悪い事をしようと思えばできなくはないけれど、殺さなければなんとかフォローはできるだろうからね。

グラーキの『奴隷』の能力を使う事も考えたけれど、そこまでは必要ないだろ。

こうして蘇生した堕天使たちは、リンとミケコに分けて預けておいた。

リンに預けた堕天使は比較的おとなしい連中で、直ぐに村々へと派遣された。

もちろん患者の病原体を見分ける役割としてね。

こうして完璧な体制は、まもなく整っていったのである。

俺はようやく落ち着いたので、改めて手に入れた魂を蘇生する事にした。

堕天使は蘇生しまくったけど、名前も適当に付けたただのモブキャラ状態だからな。

此処からは俺らの中で対等とはいかないまでも、仲間になれそうな奴らの蘇生だ。

正直もうどんなキャラにすればいいのか思いつかない。

出番もどれだけ作れるか分からない。

いやこっちの話なんだけど、そんな訳で軽く名前と紹介だけしておこうかな。

一応全部魔砂ゴーレムとする。

俺はドラゴン王国の地下実験場へと移動した。

今回蘇生する者は全員リンの防衛隊に預けようと考えていた。

遊撃隊よりも防衛隊を強化しておきたいからね。

俺は昔から守りを重視するタイプなのだ。

攻撃は最大の防御なんて言葉もあるし、ゲームだとたいてい攻撃する側の方が強いのは知っている。

でもこの世界はゲームじゃないのだ。

俺には単純に人を数字では見られなかった。

さてまずは最も魔力レベルの高いベリアルの魂から蘇生する。

今までで最高レベルの部下となりそうで、『熊王邪無(クマオウジャム)』と名付けた。

見た目は魔王主人公系のかっこいい感じに決めた。

特に特技は無いが、闇魔法全般を得意とする強力な奴である。

次はグラーキの魂を蘇生する。

名前は『醍醐棲湖(ダイゴセイコ)』とし、見た目は清楚系黒髪ショートボブの女の子にした。

天然で賢い感じに仕上がった。

特殊能力は触手攻撃と棘で、棘で刺した者を奴隷にする事ができる。

この子が更に強くなれば心強い味方となるが、逆に怖さもあるよね。

次はアイホートの魂。

名前は『醍醐迷神(ダイゴメイシン)』とし、見た目は諸葛亮孔明っぽくした。

賢い軍師タイプで、瞬間移動では無いもののワープゲートを作って同じ世界の中なら何処でも移動ができる。

雛を召喚し攻撃させたり、相手を食べれば体を乗っ取る事もできるのは強力だ。

テレパシーで誰とでも会話ができる。

割と使い道はあるだろう。

次はセーレの魂。

名前は『熊王美談(くまおうびだん)』とした。

悪魔だから一応熊王と付けたけれど、佐天や邪無と比べると圧倒的に力は劣る。

見た目は美形の殿様のような感じだがちょんまげはない。

運気上昇や運送、盗みや紛失物探索ができる。

盗みと運送を合わせて相手を強制的に移動させたりも可能。

あまり戦闘向きではないように見えるが意外と戦える奴だ。

最後はムナガラーの魂。

名前は『醍醐テティス』とし、見た目は猫獣人系の少女な感じ。

ただし人間の耳も普通にあって、猫耳はあくまで飾に近く隠す事もできる。

一応音を聞く事もできるので、ただの飾ではないけどね。

尻尾は触手で、数を増やす事も可能。

元々人間なんかを食料としていた肉食の邪神だが、生まれ変わってデザートを主食にするよう言い聞かせた。

悪い奴なら食うのもしゃーなしだけどね。

本能とかって逆らえない事もあるからさ。

とにかく動きが速く、猫獣人のような子だ。

こいつらが活躍する事はあるのだろうか。

乞うご期待と言った所かな。

蘇生も終わって俺はガゼボに戻った。


ガゼボで薬作りをする五人は、談笑しながら楽しそうに薬作りをしていた。

こういう雰囲気の職場って最高だよな。

やっぱ仕事なんてこれくらいの気持ちでやらないとね。

「策也おかえりなのだ」

「見てください策也さん。もうこんなに薬を作ったのです。褒めてくれてもいいですよ」

「ただいま。おー凄い凄い。流石だな」

俺は兎白の頭を撫でた。

「わふぅ~‥‥」

こいつ頭撫でると喜ぶよな。

でもすぐに手をどけさせようとするけどさ。

「はっ!兎白は子供じゃないんですから、頭を撫でたりしないでください」

「そうか。悪かったな」

で、こうして引き下がると少し寂しそうな顔をする。

意表を突いてまた頭を撫でると喜ぶ。

「わふぅ~‥‥はっ!撫でないでくださいと言ってるじゃないですか!」

「そうだったな。悪い悪い」

「全く、油断も隙もないのです」

まあこの辺にしておくか。

しかし短時間によくこれだけの薬が作れたな。

妖凛の力が半端ないのもあるけれど、賢神の能力も凄まじいし、七魅だってだんだん魔力コントロールが上手くなってきている。

ゆかりもまだまだ成長しているし、こりゃ俺が頑張らなくてももう大丈夫そうだな。

「策也も一緒に作らないのか?」

「いや、みんなの能力が凄まじくてな。俺は別の作業をしようかと思っていた所だ」

「だったらここでやるのだ」

(コクコク)

ぶっちゃけ作業なんて何処でやっても同じだし、此処でやるか。

情報チェックして召喚と転移のリングを作る訳だし。

「ならそうするか」

俺はそう言って席についた。

するとその時ゆかりのマジックボックスから、メール着信を知らせる音が聞こえた。

それに反応してゆかりが作業を止め、マジックボックスを操作する。

直ぐに確認できるようにしてあったようで、目が左右左右に動くのが見えた。

「策也総統とうとう来たであります。九頭竜領イラチの町の上空で、病原体をばら撒いていると思われる者を発見。直ちに捕獲、或いは排除するとの事です」

やはり病原体はばら撒かれていたのか。

それにしてもまさか上空からとはな。

普通そんな所から病原体をばら撒いても、風に流され霧散する。

効果は大して期待できないはずだ。

そう思う事を見越してあえて空から撒いているのだろう。

そして当然それなりに効果があるように工夫はされているはずだ。

「ゆかり。他に情報はないのか?」

「情報は汽車総督によるものですが、相手はニャルラトホテプでかなりの強者との事です」

ニャルラトホテプだと!?

邪神の中では最強レベルに近く、かなり狂った性格のヤバい奴と言われている。

あらゆる手段を用いて混乱を作り出すので、敵にしたくないという意味では最高レベルだと本には記されてあった。

「おそらくミケコたちではどうにもならない敵だろう。ちょっと助けに行ってくるよ!」

俺はミケコの目をリンクして自分の視界として取り込む。

こうすればすぐに同じ場所へと飛ぶ事ができるのだ。

すると妖凛がミンクのマフラーへと変化して、俺の首回りに取り付いてきた。

なんだかこいつも一心同体少女隊の仲間に入りそうだな。

影にも入る事ができるし。

俺は瞬間移動魔法でミケコの元へと飛んだ。

俺たちは空高くにいるミケコの横へと着いた。

「兄上様、残念ながら生け捕りにする事はできませんでした」

逃げられたのか。

とは言え特に誰かが殺られているといった雰囲気はない。

ならば問題ないだろう。

まずはみんな元気でいる事が大切なんだから。

「そうか。でもみんなが無事ならそれでいいよ」

「ありがとうございます。ですが倒して魂だけは確保しておきました」

「えっ?ニャルラトホテプの?」

「はい。なかなか手ごわい敵のようでしたが、炎魔がアッサリと殺してしまいました。できるだけ殺さないようには言ったのですが‥‥申し訳ありません」

「全然いいよ‥‥」

おいおいマジかよ。

炎魔が倒せたの?

あっ、そうか。

確かニャルラトホテプってクトゥグァが苦手だったな。

つかむしろそれ以外が倒すのはかなり難しいとか。

「いやぁ~僕は我慢しようと思ったんだけどね。ついつい食らってしまったよ。魂は残しておいたし、別にいいよね?」

「ああ。炎魔がいてくれて良かったよ。つか炎魔、お前なんかメチャメチャ強くなったよな」

「僕はニャルラトホテプを食らう事で本来の強さになるんだよ。でもこれでも策也には勝てる気がしない‥‥というか更に強くなってるよね、策也」

危ない危ない。

炎魔は割と危ない奴だから、こいつよりは強くいないと駄目なんだよな。

半年前の俺なら魔力で抜かれていたかもしれないぞ。

「まあな。炎魔に負ける訳にはいかないし」

「流石兄上様です。ではこれが魂です。ミケコ的には可愛い女の子としての蘇生を希望します。必殺技は這い寄る攻撃なんてキャラはいかがでしょうか?」

「そうだな。著作権違反にならないギリギリの所まで這い寄ってみる事にするよ」

つかミケコって実は俺と同じ転生者だったりしてな。

ミケコだけじゃなく、他にも色々とそんな奴がいたりするけどさ。

「ついでに炎魔も女の子にするのはどうでしょうか?」

「それだけは可哀想だからやめておくよ」

一瞬炎魔の顔が閻魔大王かと思うような怖い顔になってたぞ。

ちょっと半泣きっぽかったけど。


こんな感じでずっと追い求めていた犯人を捕まえる事ができた。

俺は早速ドラゴン王国の地下実験場へと移動した。

「早速ニャルラトホテプに事情を聞いてみるか‥‥」

此処まで魔砂ゴーレムにして失敗もないし、いきなり蘇生しても大丈夫だろう。

俺はまず魔砂で可愛い女の子型のゴーレムを作った。

這い寄る感じの女の子だ。

想像できる人はきっと想像できるだろう。

名前も先に決めておくか。

この魔力は我が陣営トップレベルに強いから『咲耶』の苗字を与えてやろう。

名前はニャル‥‥ニャル‥‥駄目だ。

どうしても這い寄るイメージに引きずられてしまう。

此処は発想の転換だ。

全く別のイメージから名前を考えてみよう。

『猫蓮』と書いてニャンパスとかどうだ?

結局かなりひきずられてはいるが、全く別とも言える。

ちょっと面白いな。

それでいこう。

這い寄るキャラは確かオタク系だったような記憶があるし、そんな感じを願っておこうかな。

俺は魂とゴーレムを繋いで水の蘇生魔法を発動した。

蘇生はすぐに完了した。

さあどんなキャラになるか楽しみだな。

上手く這い寄る感じになっていたらいいけどね。

猫蓮はいきなり起き上がった。

そしてロボットのような動きでこちらを見た。

しばらく見つめ合う。

うんうん可愛くできたじゃないか。

蘇生されて少し驚いているようだな。

今度は自分の体を見た。

更に驚いて立ち上がった。

自分の体をペタペタと触り出した。

俺は異次元収納から鏡を取り出し、顔が見えるように向けてやった。

「どうだ?可愛いだろ?気に入ってくれたか?」

そう声をかけると、満面の笑みを浮かべて目を輝かせた。

メッチャ嬉しそうだな。

こりゃきっといい子に仕上がったに違いない。

「すっごく可愛い女の子になってるんだお!もしかして貴公が転生させてくれたんだお?」

ちょっとまてー!

オタクイメージってそっちじゃないし。

つかニャルラトホテプって男だったのかもしれない。

何やら転生したと思っているみたいだし、女の子に生まれ変わったって事で押し通そう。

「ああそうだ。お前は生まれ変わったのだ!名前は『咲耶猫蓮』と名付ける!」

あ、この名前じゃ流石に嫌がるか?

転生オタクなら割と受け入れる可能性もあるが‥‥。

「おお!名前まであるんだお!猫蓮ってちょっと可愛いんだお」

可愛いけどオッサンいいのか?

「そうか。喜んでもらえて何よりだ。俺の名前は策也だ。此花策也。よろしくな」

「策也殿、よろしくなんだお」

「それで猫蓮にはちょっと聞きたい事があるんだが」

「なんだお?こんなに可愛い女の子にしてくれた策也殿になら何でも話すお」

「お前生まれ変わる前、空から町に病原体をまき散らしていただろ?アレは誰の命令だったんだ?」

有栖川か?九頭竜か?それとも‥‥。

「命令と言うか、あれはそれがしの趣味なんだお?」

「趣味だと?」

「そうなんだお。それがしは世界を狂気と混乱に満ちた混沌へと誘うのが生きがいなんだお」

なんだそれは?

結構危ない奴かもしれない。

「では一人で人間界にやって来て勝手にやっていたと?」

「ん~‥‥この世界に連れて来たのはクトゥルフなんだお。それで遊びの方法を教えてもらったんだお」

クトゥルフか‥‥。

クトゥルフと言えば邪神の頂点に位置する奴だ。

そんな危ない奴が人間界に来ているというのか。

「そのクトゥルフは今どこにいるんだ?」

「有栖川旧神という名前で王様をやってるお」

やっぱり有栖川だったか。

つまりこいつはクトゥルフである有栖川旧神に上手く使われていたわけだ。

「そうか。でもお前はもう猫蓮に生まれ変わった。今からお前の生き甲斐は民の幸せの為に働く設定になっている」

「確かに、こんなに可愛い子が混沌を求めたりしないんだお。当然の設定だお」

「だろ?これからは世界平和と民の幸せの為に共に励んでいこうではないか!」

「なんだかテンションが上がってきたんだお!それがし頑張るんだお!」

よしよし、なんかと上手く初期設定ができたみたいだ。

「ではこれから俺の右腕である此花麟堂にお前を預ける事になる。まずはそいつから色々と教えてもらってくれ」

「麟堂殿。可憐な女の子の匂いがするお。萌えてきたお!」

リン、悪いが頑張って育ててくれ。

役には立つはずだ。

ただちょっと冬が近くなるかもしれないけどな。

うー‥‥しばれるなぁ。

この後俺は猫蓮の記憶を拝借した。

色々と世間に晒すにも証拠がいるからね。

そいて猫蓮をリンの元へと送った。

こうして新たに、ニャルラトホテプの猫蓮が仲間に加わった。

活躍するかはこうご期待。


それからしばらく猫蓮の記憶から映像を編集した後、大ニュースとしてネットに公開した。。

『新たな有栖川の王である旧神は邪神のクトゥルフであった。そして病原体を撒いていたのは、クトゥルフによって暗黒界から連れてこられた邪神である事が分かった。別に邪神が王をする事に問題はない。しかし病原体をまき散らし薬を売るなどやってはいけない事だ』

さてこれで世間はどういう反応をするかな。

そして有栖川はどう出てくる?

とりあえず少しだけばら撒かれた病原体には、猫蓮から情報を聞いてすぐに作り始めた薬で対応は可能だろう。

まだイラチの町以外では撒かれていないようなので、拡散を抑えられればこれでこの疫病騒ぎも収まるはずだ。

とはいえ此処まで広まってしまった病気はもうしばらく続くだろうし、これから民の生活が苦しくなるのは目に見えている。

薬はタダで配る訳にもいかなくて、これからどうその利益を還元していくかも頭が痛い。

タダで配るとアホみたいに貰おうとする者がいたり、上手く分配ができなくなるからね。

経済的に薬を買えない人へは、教会や役所から最低限行くようにはしているんだけどさ。

それでこれからは利益還元していこうと思うのだけれど、なかなか皆が納得いく方法って無いものなんだよね。

転生前の世界では既得権を作ってしまって最悪だったけれど、お金が集まるとそうなってしまうのは仕方がない所なのだろうな。

実際こうやって金が集まると、どうしても分配には歪が出てくる。

政府として金を使うのがこんなに難しいとは。

低所得者中心に配るシステムなんか作ったら、人は働かなくなるだろう。

かといって一律にばら撒けば公平性に欠けるし理由付けが難しい。

だから最初から税金はなるべく取らない方がいいのだけれど、今回のは民を救う為の国家戦略で偶々お金が儲かってしまっただけなんだよね。

今回は主に村人から多くお金を集める事になってしまった訳だし、村の農業支援辺りが一番いいかな。

それで少しでも収穫量を増やす事ができれば、世界の為でもあるのだから。


ガゼボに戻った俺は、三種の病原体に効く薬を作っていた。

するといつものように金魚がやってきた。

「策也さん、ニュースを見るんだよ!有栖川が降参したんだよ」

「何!?マジか?」

俺はマジックボックスを操作してニュース映像を出した。

『まさかニャルラトホテプが殺られるとは思ってもみなかった。そういえば以前記憶映像を上げていたな。あれでクトゥグァが生きていると気が付かなかった俺の負けか。でももう十分に利益は得たし、多少シェアも伸ばせた。また次の手を考える事にするさ』

この戦いは此処までという訳か。

本来なら世界会議で有栖川への責任追及とかあるはずだけれど、邪神のトップを相手に世界はどうするかね。

とにかく疫病騒ぎはこれから収束へと向かうだろう。

だけど有栖川旧神がクトゥルフだったという事で、世界は何かしら動いていくはずだ。

これはドラゴン王国の王がヴリトラだとかその次元の話ではない。

人類の存亡に関わる大きな話と考える者も大勢いるだろう。

今の俺はこれだけの仲間もいるし、ある程度対応できると思っているから慌てはしない。

では伊集院はどうだろうか?

九頭竜はどうだろうか?

その他小国はどう考えるだろうか。

「金魚はこのニュースを見てどう考える?」

「単純に怖いんだよ。悪い事をしたと思ってないんだよ。クトゥルフだってのもそうなんだけど、人間界も実は別の何かに支配されているんじゃないかとか考えるんだよ」

別に人間が世界を支配しなければならないって道理は無いと思っている。

良い統治をしてくれるのなら別にクトゥルフだっていいのだ。

ただ、病原体をまき散らして薬を売って儲けようとか、それで商人ギルドの覇権を独占しようなどと考える奴だから困るんだよな。

そしてそれを悪だとは思っていない。

そんな奴をのさばらしてはおけない。

でも有栖川と戦争をするのか?

相手は邪神のトップだ。

町一つ破壊するどころではない攻撃力を持っている。

転生前の世界で言えば、核保有国同士の争いになる。

こちらから戦争にはできない。

でも向こうから仕掛けてくるなら、俺は可能な限り民を守りたい。

堕天使の魔石を沢山手に入れたのだから、これを使っての防御結界の設置をやっておかないとな。

「此花としてはとりあえず静観だ。ただしいつかはクトゥルフともやり合う事になると思う。その時の為に準備をしておくぞ」

俺はそこにいたメンバーに考えを伝えた。

こうして俺たちはとりあえず、この件に関しては様子を見る事に決めた。

そして世界もまた同じだった。

この件で世界会議を開こうと声を上げる者はいなかった。

ただ、二人だけ有栖川に対して文句を言った者がいた。

『有栖川は今回、世界の人々を沢山殺したのに『俺の負けだ』とか『また次の手を』とか言ってるんじゃないわよ!今は疫病の収束が大切だし、おそらく今後起こるであろう食料危機への対応で忙しいから見逃してあげるけど、今度こんな事やったらただじゃおかないから!』

『わたくしはアルカディアの総帥ミケコだ。今回は他国へ進攻した訳ではないから見逃してやるが、こんな事が何度もできると思うなよ。今回ニャルラトホテプを屠ったのは我々だという事を覚えておいてもらいたい」

もしも誰も言わなければ、俺が何かしらメッセージを出すべきかと思っていたけど、流石はリンとミケコだ。

多少無謀ではあるけれど、正義を曲げない心は素直に尊敬するよ。

俺が言わなくて済んでホッとしていたりするからな。

その後有栖川からの返答等は無かった。

世界は少し緊張状態を保ったまま、次のステージへと移っていくのだった。

2024年10月11日 言葉を一部修正

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