表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
別れ編
122/184

ドラゴン王国ヴリトラの誕生と早乙女王弟の進攻

血の繋がりというのは結構重要だ。

遠くても親戚と言うだけで身近に感じてしまう。

転生前の世界で日本人に協調性があったのは、皆が遠い親戚だったからかもしれない。

日本人のほぼすべてに、天皇の血が流れていると云われていた。

そりゃ人口の少ない時代から二千年以上出入りの少ない国ならば、そういう事にもなるだろう。

日本人は本能でそれを感じ、家族と認識していたに違いないのだ。

そしてそれは、全員が神の子であるという証。

神話の時代から続いている国なんて、世界中で日本しかなかったんだよな。

そう考えるとマジで日本すげぇよ。


そういえば日本も地震大国だった。

丁度プレートがぶつかり合う場所に国があって、だから地震への備えも世界一だったのだ。

そんな俺だから、地震程度では大して驚きはしない。

みんなが怖がる中でも、多少なりとも揺れる原理を知っているのは強みになる。

さてこの揺れはどれくらいの規模かな。

又も火山の噴火に繋がるのだろうか。

揺れは怖くなくても不安は大きかった。

ニュースが上がってきたのは、俺がたちがガゼボに集まってから十五分後だった。

これでも思ったより早い。

流石は伊集院の記者だな。

直ぐに盗賊報道にもニュースが上がり、差がなく我らがマイチューブにもニュースが上がってきた。

うちが一番遅いか。

諜報員も兼ねてるから、段取りが悪くなるのかもしれない。

でもうちは完全無料だし、これくらいの差なら十分だな。

さてニュースの内容は‥‥。

俺はマイチューブのニュースを見た。

『再び火山が爆発。規模は前回よりも大きい模様。場所は前回と全く同じで、現在の上杉領と織田領に近い越えられない山』

こりゃピンポイントで俺が狙われている気分だ。

今は此花の王だけどさ、なんとなく上杉や織田の方が身近に感じてしまう。

俺は一番に此花の事を考えなければならない立場だ。

だけど、本能と感情には嘘は付けないよなぁ。

尤も、今回の事で織田が侵略されるなんて事はないだろうし、上杉に喧嘩を売る奴もいないと思う。

それに有栖川じゃなく上杉や織田なら、此花からの援助も素直に受け入れてくれるだろう。

俺は此花王として上杉と織田への援助を決めた。


さて次の日、俺は以前から計画していた事を実行に移す。

神武国天王を東征から海神に変更し、海神の苗字も神武へと変えた。

そして東征はフレイムドラゴン王国の王とし、国の名前も『ドラゴン王国ヴリトラ』とする。

ヴリトラなら全てのドラゴンが納得できる王だろう。

文献によればヴリトラは神クラスまで成長が可能なようだし、そろそろ交代してもいい時期だと判断した。

これでようやく七魅を開放してあげられる。

結構無理やり王様をさせていた所があったから、ほんのチョッピリ申し訳ない気持ちもあったんだよね。

「七魅、お疲れさん!今までありがとうな。嫌な仕事押し付けちまって」

「改まってお礼を言われると照れるのだ。王もそれなりに楽しかったのだ。いい経験をさせてもらってこちらこそありがとうなのだ」

俺たちはガゼボに集まって、七魅の引退パーティーを開いていた。

昼間っから酒をかっ食らっているので、集まるメンバーは限定的だ。

麟堂夫妻と氷菓夫妻は仕事でいないし、洋裁も引き継ぎで仕事に出ていた。

ちなみに洋裁も今日で仕事は最後だ。

これからは七魅共々、俺が新たに立ち上げる『四阿会議(アズマヤカイギ)』と言う名のシンクタンクに参加してもらう予定。

シンクタンクとは、政治や経済などの課題や事象を対象とした調査や研究を行い、対応を検討する研究機関って感じかな。

ただそこまで堅苦しい組織ではなく、ガゼボに集まってするミーティングの延長のような感じ。

ガゼボを日本語にして四阿、そこで行う話し合いだから四阿会議だ。

まあぶっちゃけると、マッタリタイムをみんなで楽しもうって事なんだけどね。

俺は七魅と肩を組んで動きを封じ、ドンドン酒を飲ませた。

「まあ飲め!今日は無礼講だ!」

俺がそう言うと、菜乃と妃子がやってきた。

「今無礼講と言ったのです!」

「何をしても許されるのね。えい!なのね!」

妃子が俺の嫌いなイクラ寿司を口に突っ込んできた。

酔っているとは言え不覚だ。

しかも七魅の動きを封じていたつもりが、俺の動きも封じられていた。

「七魅、反撃するぞ。奴らの鼻にアスパラを差し込んでやるのだ!」

「う~ん‥‥策也が三人いるのだ。どの鼻に入れるのだ?」

「違う違う!ターゲットは少女隊の二人だ!」

「そうなのだ?食らえアスパラミサイル!」

七魅の放ったアスパラミサイルは、何故か離れた所で一人妄想していた夕凪の鼻に突き刺さっていた。

「当たらないのね」

「私たちはそう簡単にはやられないのです」

いやそんな事よりこういう場合の夕凪のリアクションが気になるぞ?

どうする夕凪!?

すると夕凪の鼻に刺さっていたアスパラが一瞬にして消えた。

消えた?何処にいったんだ?

夕凪の口が咀嚼しているー!

食べたんかーい!

暴れ出したらヤバかったけど、とりあえず夕凪がいい子で安心したよ。

しかしこのままでは許さない。

「七魅、もう一度だ!今度はこの禁断のウンコ味ミートボールを少女隊の口に入れてやれ!」

「う~‥‥分かったのだ。必殺ぅ~‥‥鹿の糞!」

これはまさにそのままだー!

しかし又も少女隊にはかわされ、ミートボールは夜美ちゃんの口にストライクだった。

これはヤバいだろ?

夜美ちゃんが睨む目にはフリーズの効果があるのだ。

七魅が完全に動きを封じられてしまった。

「チャンスなのね!」

「二人は動けないのです!」

「ヤバいぞ七魅!」

このままでは奴らに負けてしまう。

菜乃と妃子は俺と七魅の鼻にフライドポテトを突き刺そうと迫ってきた。

七魅を捨てて逃げるか?

いやしかし今日の主役を放っては逃げられない。

万事休すか!

「兎白をおいて何か楽しそうな事をしているみたいですね。仲間に入れてほしいのです!」

「良かったな兎白。鼻の中まで入れてくれるみたいだぞ!」

俺は兎白を生贄に差し出した。

菜乃と妃子の持つフライドポテトが、兎白の鼻に突き刺さった。

良かったな兎白、願いが叶ったじゃないか。

「はっ!どうして兎白の鼻にフライドポテトが?犯人は策也さんですね?」

「違う違う!お前見てなかったのかよ。少女隊の二人が‥‥」

あいつら、何時のまにか影の中に逃げてやがる。

「人のせいにしたら駄目なのです!」

兎白のピースした指が二本、俺の鼻に突き刺さった。

今日は俺たちの負けだよ。

敗因は七魅に酒を飲ませ過ぎたって所か。

まあでも偶にはこういう日もいいよね。

俺と七魅はガゼボの外に飛ばされて倒れた。


祭りの後、山女ちゃんが散乱したアレやコレやを片付けてくれていた。

「悪いな山女ちゃん、みんなはもう帰ったか?」

「はい、皆さん楽しそうでしたね」

俺はどうやら芝生の上で寝ていたようだ。

まあ楽しかったよな。

山女ちゃんが見てもそう見えたなら良かったよ。

世界の情勢はなんだかんだと問題ばかりだから、なかなか皆で騒げる日なんて少なくて。

俺も今日は休んだけれど、やる事はごまんとあるんだよな。

「山女ちゃん、あれから何か新しい情報は出てるか?」

「そうですねぇ‥‥火山の噴火規模は前回よりも大きく、被害は主に南側だそうです。風向きも南から南東に吹いていて、上杉領では対応が大変みたいですね。それと地震の被害も大きいようです」

「そっか‥‥」

一応リンには援助部隊を出させておいたけど、明日は俺自身も行ってみるか。

となるとやりたい事がまた先延ばしになるな。

だったら今できる事は先に片づけるか。

俺は立ち上がった。

「ありがとう山女ちゃん。俺はこれからヴリトラの地下実験場に行くから、みゆきには先に休むように言っておいてくれ」

「無理しないでくださいね」

「大丈夫だよ。じゃあね!」

俺はそう言って魔法実験場へと移動した。

やっておく事。

それは沢山手に入ったヒドラの魔石を使って、強化ベルトを作る事だ。

強化ベルトとか、仮面なんちゃらみたいだな。

変身とかできる仕様にするのも面白いかもしれないが、それはいつか時間と余裕のある時に作る事にする。

今はとにかく、身近な人の命を守るのを優先するのだ。

リンは不老不死とは言え戦場に出るわけだし、タナトスのような魂を成仏させる能力を持っている奴もいる。

絶対に殺されないという保証はない。

ならばできるだけ死なないようにアイテムで強化しておくに限る。

今回手に入ったヒドラの魔石は、レベルも高くてうってつけの能力を持っている。

超再生能力だ。

そんな魔石をいくつも組み合わせれば、瞬間再生だって可能になる。

あの大量破壊魔法にだって再生対応が追いつく可能性は高い。

俺は既にヒドラから能力をコピーしてあるので問題はない。

まずはリンの分、後は金魚と望海には必須だな。ミケコに汽車、兎白ももう少し強くあってほしいし、七魅もその内なんやかんや連れて行く事になる予感がする。

タナトス相手でも大丈夫なくらい強化できないだろうか。

計算だとだいたい四十個の魔石でいける計算なのだが‥‥。

「上手くいかないんだよな」

どうも魔導具や魔道具には限界があるようなのだ。

おそらく神クラスのアイテムを作るには壁がある。

でも、先日手に入れたヒドラを生む魔生の魔石は、神クラスの魔導具だったにも関わらずちゃんと効果を発揮していた。

だったら魔道具だって作れるはずだ。

ちなみに魔導具と魔道具の違いは、魔導器具と魔法道具の違いだと考えてもらえれば分かるかな。

主に装置として使うか、身に着けて使うかの違いだと認識していれば大丈夫だろう。

それで神クラスの魔道具を作る為には、おそらく神クラスの魔石が必要と思われる。

前に見た設置型爆破魔法装置にもそれらしき魔石が使われていたからね。

魔界に神クラスの魔物を探しに行くか。

せめて前線に出る奴の分だけでも確保したい。

とりあえず海神やヴァンパイアクラスの奴が見つかれば、丸薬を食わせてパワーアップしてから狩るという方法も使えるかもな。

丸薬は限界突破と魔法習得能力を向上させるが、それ以外に魔力をアップする効果もある。

神レベル寸前の魔物なら、丸薬で即神レベルにする事も可能と見た。

しかしやる事が多すぎる。

上杉領への視察、神レベル魔物の狩り、魔生の魔石集め、そして解読、衣服の生産体制拡充に、農作物の増産。

目玉商品の掘り起こしや開発もある。

商人ギルドの件は総司と千えるに任せてあるのでまあなんとかなるとは思うけれど、月詠三姉妹には時々魔法通信ネットワーク関係の知識を教えにも行かなければならない。

博士の記憶を伝えないとだからね。

それにくだらない問題が色々な町で起こっている。

コチョビテの町で起こっているのは、その中でも実にくだらなかった。

ある商人が、公園を勝手に私的利用していたとか。

小屋を建てて倉庫にしていたんだよな。

公園はみんなの場所で、誰もが自由に使える。

だからと言って個人が占有してもいい訳がないだろうが。

だけど禁止する法律もルールも無ければ、やっていいと考える馬鹿がいるんだよな。

法律ってのはなるべく少なくする方がいいから、当たり前の事は法制化しないんだよ。

その理由は、法律が多すぎると民が理解できなくなるからだ。

それは潜在的に民を締め付け、自由を感じられず窮屈で面倒な社会へと変えて行く。

そこで、なるべく少ない法律で国家統治する方法が選ばれる訳だ。

『文化統治』だね。

皆が共有している同じ考えを受け継いでいく事で、それに関しては法を決めなくてもいいようにする。

例えば転生前の日本で言えば、困っている人がいたら助ける文化があった。

だからわざわざ国が困っている人を助ける為の法律を作る必要なんて無かったんだ。

でも徐々にその文化は失われていった。

外国から人が入ってきて、困っている人のフリをして利益を得ようとする者が現れたのだ。

そんな人がいたら、助けたくても助けられなくなる。

結局本当に困っている人が放置されるようになって、法整備して助ける必要がでてきた。

法律ってのは、馬鹿や悪人が増えれば一緒に増えるものなんだよね。

今回のコチョビテの問題に対しては、本来なら公園の独占利用を禁止する法律を作る必要が出てくる。

でもそしたら今度は、公園ではなく道に小屋を建てる馬鹿が現れるだろう。

そしたらまた法律が追加される。

道も勝手に利用してはいけないってね。

すると今度は、馬車も止められないのかって文句が出るから、例外規定を作らなければならなくなる。

こうやって馬鹿の数だけ法律が増え続ける。

でもこういう分かりやすいものなら法も理解されやすいからいいんだけどさ。

転生前の世界ではもっと酷い法律もあったんだよ。

消防法とかマジで面白い。

例えば階段や避難通路に物を置いて通行の妨げになるような事はしてはいけないとある。

これは火災になった時など非常時に、逃げ遅れ等が起こらないようにする為の法律だ。

まあ言ってみれば自分の為であり、一緒にその建物を使う人の為だったりする。

普通はそんなの言われなくても分かろうものだけれど、馬鹿は結構いるんだよね。

それで逃げ遅れたら責任とれるのかって思うけど、馬鹿はそこまで頭が回らないし、火災なんて起こらないと勝手に決めつける。

だから時々問題になったりするわけだけど。

で、ビルの部屋を貸している方としてはそんな人に貸したくない訳だけど、どうしても借りてる側が立場的に上になってしまう。

出て行かれると収入が無くなる訳だからね。

結局ビルのオーナーは注意ができない。

そこで法律の出番だ。

法律でそう定めてあるおかげで、避難訓練とかビルのチェックの時に代わりに注意してもらえる。

馬鹿を直接注意して出て行かれても困るから、代わりに注意してもらう為に法律があるのだ。

こんなバカバカしい事、馬鹿がいなければ必要ないのにね。

そんな訳で、住み良い国や町を造る為には、馬鹿を失くす必要がある。

それは民だけでなく行政側も含めてね。

その為に教育が重要になってくる。

でもこの世界は割と出入りが激しいから、それだけでは難しい。

だから王国という国家形態をとって、馬鹿を強制的に排除するのが一番いいのだろうな。

転生前の世界でも、国民に馬鹿が多い国は独裁やらそれに近い国家形態をとっていたわけでさ。

例外ももちろんあるけどね。

民主主義にしろとかって話も結構あったけど、その前に民をしっかりと教育する事から始めないと無理なんだよ。

まあ結論としては、この世界から馬鹿を減らすのは一国だけでは無理だから、今の所王国の特権をフルに活用する事になるのです。

つまりそんな馬鹿は強制的に排除するしかない。

でも民主主義国家で産まれ育った俺にしてみれば、どうも気が引けてしまうよ。


そんな事を考えながら『超再生のベルト』を作っていたら、とりあえず七つのベルトが出来上がっていた。

「ひとまずこれでいいか」

他にもやる事はあるけれど、全部を自分でやろうとしても無理だし、任せられる事は出来るだけ任せていこう。

既に起きる時間まで二時間を切っていた。

俺は二つのベルトをミケコと汽車宛てに秘密基地に送ってから、マイホームに戻って眠りについた。

そして一時間半後、起きたらガゼボに行って残り四つのベルトをそれぞれに渡す。

「このベルトはヒドラの魔石を三つ使って作った超再生のベルトだ。不老不死の再生よりも圧倒的に早く体が再生する魔道具だな」

「へぇ~これを付けていたら本当に死にそうにないわね」

「ありがとうなんだよ」

「霧島以外のプレゼントは受け取らないのだけれど、策也は特別なの」

「あたしにもくれるのだ?嬉しいのだ!」

「兎白、感激しました!少しは策也さんの事、見直してあげます」

とりあえずみんなに喜んでもらえたか。

夜なべをして作ったかいがあったな。

「じゃあ今日のニュースのチェックだな」

俺はマジックボックスを操作してニュースを確認した。

するととんでもないニュースタイトルが目に飛び込んできた。

『早乙女が逆襲?!上杉領「ワッゼ」の町を襲う!』

俺は目を疑った。

そんな馬鹿な事、あいつらがさせる訳がない。

俺は他の記事も確認した。

『早乙女の王弟殿下「冬馬(トウマ)」がワッゼを急襲!』

『末の王弟殿下の武装組織がワッゼを奪う!』

確か乱馬の話だと、末の弟がかなり好戦的な奴って事だったよな。

伊集院の王子が勝手な行動をした例もあるし、これで早乙女がワッゼの町を襲ったと結論づけるのも尚早か。

「まだそうと決まった訳じゃないが、これじゃおそらく早乙女がやった事になるんだろうな」

「王弟だからね。私が勝手に他国に攻め入っても、それは此花だと見られるでしょうし」

「このままじゃ早乙女と上杉の戦争になるんだよ」

「しかしこれが仮に早乙女の意思だとして、上杉相手に勝てると思っているのだろうか‥‥」

今回の戦い、もしかしたらミケコも動く可能性がある。

勝てる可能性なんてほぼない。

だったら何が目的なのか。

早乙女を潰す?

あり得ないだろう。

ならば何が目的なのか。

「これ多分、王弟の独立なの。自分なら勝てるんだと見せたいのだと思うの」

「望海、なんでそう思うんだ?」

「私も第四王女なの。優秀な姉がいると存在を示したいと思う事があるの」

優秀な兄弟か。

早乙女の長男はそこそこだし、むしろ今回行動を起こした末の弟の方が圧倒的に評判は高い。

逆に無能な兄の下でいるのが嫌になったと考えた方が分かりやすいな。

しかし望海がそんな事を考えているとはね。

お前の方がよっぽど凄いんだけどな。

まあその能力を本人は聞かされていないのかもしれないけどさ。

ただこの考えは割と説得力あるんだよ。

実際に行動を起こした末っ子が、俺の冒険の最初の仲間だった訳だし。

俺は本人を見た。

「何よ?」

「いや、リンも最初姫様とは思えない無茶をしたよな。男を探す為に冒険の旅とか」

「そんな事もあったわね。私も若かったのよ」

過去を振り返ってそう言うって事は、リンももう中身はおばさんか。

「なんにしても止めるしかないんだよ」

「あたしには本当に分からないのだ。どうしてみんな戦おうとするのだ。平和が一番なのだ」

「その通りです!兎白は七魅さんの考えを支持します!」

それは希望であって、対策にはならない。

四阿会議では『どうするのか』という結論を出したいんだけどな。

転生前の世界でも、『政治家が悪い』とか、『その認識は間違っている』とか、そういう反論や批判をする人は多かった。

だけど、ならば『どうするのがいいのか』って答えを言える人は少なかった。

そこが最も大切な所なんだよね。

批判だけなら誰にでもできるわけだし。

つまり『なんにしても止めるしかない』と言った金魚が一番マシな事を言っていると言える。

でも止め方が難しいんだよな。

仮に俺が力ずくで止めようとすれば、最悪早乙女との全面戦争に発展するかもしれない。

或いは此花の町を襲い出すかもしれない。

それに相手は乱馬の弟だからな。

此処でこれ以上話し合っていても答えは出ないだろう。

何故なら情報が足りなさすぎるから。

「なんにしても戦いは止めないとな。その為には状況を確認し情報を集める必要がある。俺はちょっくら見て来るよ」

「止めるのはかなり大変だと思うの」

「そうね。簡単に辞めるつもりでこんな事はできないものね」

それでも俺は、早乙女と上杉で戦争はしてほしくない。

俺はなんとなく、不安そうな顔でいる七魅に笑顔を向けてから、瞬間移動でワッゼの町の上空まで移動した。

町は思った以上に酷い状況だった。

地震で家が倒壊しまくっているせいで、武装集団が攻め入った時も民は避難場所が無かったのだろう。

外にいる民は当然戦いに巻き込まれるわけで、死体があちこちに転がっていた。

いくら賢神が強くても、全ての町を守る事は不可能だよな。

しかし早乙女の王弟はヤバいだろ。

どう考えてもこれが早乙女の意思とは思えない。

大魔王たちに助けられ、特に早乙女と魔人との間に問題も出てきていない。

だとするなら、早乙女王国を名乗るテロ集団って感じがする。

或いは大魔王との関係を知って、王弟は何かを思ったのだろうか。

半壊した町を見て、俺は嫌な戦いの予感しかなかった。

2024年10月10日 言葉を一部修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ