表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
別れ編
114/184

ブレイブ爆破の犯人を捜せ!

災害は、忘れた頃に、やってくる。

結構これって当たってるよね。

だから転生前の俺は、毎日のように災害への備えを確認する事にしていた。

逆に言えば、忘れていなければ災害は起こらない訳だからね。

でも俺は傷心の中、スッカリ忘れてしまっていた。

地震の事を。


まだ陽も出ていない時間だった。

突然揺れを感じた。

「おお!かなりの地震だぞ?」

転生前の世界で云う所の震度三から四くらいの揺れだった。

一歳の菊花は突然泣き出す。

「よしよし、大丈夫でちゅよー」

みゆきが子供をあやしていた。

六華は少し怖がって俺にしがみついてきたが、間の長男である桐也はグースカ寝ていた。

「結構揺れたな」

「この辺りはそんなに揺れないんだけどね」

そんなには揺れないが、フレイムドラゴンの里は中央大陸に近い事から、震度一程度の地震は結構ある場所だった。

それが震度三から四となれば、俺は何か嫌な予感しかしなかった。

ブレイブの町爆破の件が無ければ、まだまだ地震に対して警戒していたはずだったからね。

『忘れていたから地震がやってきた』

なんとなく俺はそう思った。

しばらくみゆきと喋りながら起きていたが、誰からも連絡はなかった。

急ぎ対応のいる場合は、睡眠中でも連絡をくれる事になっている。

便りの無いのは無事な証拠だ。

俺たちは改めて睡眠を続けるのだった。


朝起きていつも通り庭に出ると、いつも通りの光景が目に飛び込んできた。

「策也さん、大変なんだよ!ニュースを見るんだよ!」

今日の金魚を見るに、大変だけど急ぎではなく、俺たちの大切にしている人たちにも特に影響がないといった所だろうか。

だいぶ金魚の観察ができるようになってきたな。

もしかしたらナマズみたいに地震予測もできるようになったりして。

六華が学園に通うようになったら、夏休みの宿題では金魚の観察日記を勧める事にしよう。

ちなみに現在のナンデスカの学園では、俺が国王になった事で再び資幣が教師に復活していた。

此花の未来を担う人を、ちゃんと育てたいからね。

「大変な事ねぇ。どれ、見てみるか」

俺はいつもの椅子に座りながらマジックボックスを立ち上げた。

金魚もいつもの席に座る。

割と大きな六角形のガゼボには、大きな十二角形のテーブルが置いてある。

周りには十二個の椅子が置かれているが、だいたい座る場所は決まっていた。

マジックボックスを操作しやすい場所に俺が座り、右隣の席は概ねみゆき専用、左隣は何故か大抵金魚が座る。

映像はだいたい俺の正面に表示されるから、真っ先に来る金魚が見やすい位置に座っていたらそうなったみたいだ。

軽い気持ちでニュースを表示すると、ライブ映像がいきなり流れ出した。

『見てください。火山の噴火は今も続き、この辺りは大変な事になっています』

「えっ?ナニコレ?現実か?」

「現実なんだよ。場所は早乙女領内の越えられない山なんだよ。世界三大山の一つなんだよ」

先日有栖川であった地震はこれの前触れだったか。

或いは大量破壊魔法の実験で大きな地殻変動を誘発したか。

場所は割と遠いけれど、上杉辺りは結構影響を受けるかもしれない。

それにここまで大きな火山の噴火があると、気温が大きく下がる可能性がある。

これは軽く見ているとマズい事になるぞ。

つかなんでこのクソ忙しい時にこんなのが起こるかねぇ。

今はトンネル爆破の犯人を見つけて天誅を食らわせてやりたいのに、こっちの対応も必要になってくるだろう。

普通アニメなんかだと一話ずつちゃんと話を解決させるよね?

同時に二つも持ってくるんじゃないよ全く。

「策也。早乙女がかなり大変な事になりそうね」

そう言いながらやってきたのはリンだった。

ちなみにリンは、いつも金魚の左横に座る。

今日もやっぱりそこに座った。

「早乙女だけじゃないよ。おそらく世界中何かしら問題が起こるぞ」

「そうなの?」

「これだけの規模の噴火だ。火山灰なんかが太陽の光を遮ったりして世界の気温が下がる。当然作物なんかにも影響が出るだろうしな」

作物に関しては有栖川対策として、今年はかなり生産準備をしてきたからまだマシだろう。

でも地域によっては壊滅的な打撃を受ける。

戦争の多くは食料を確保する為に行われてきたわけで、こういう所から戦争は始まるのだ。

「策也さんって本当に何でも知ってるんだよ」

「いやまあ転生する前の世界じゃ常識だったって言うか」

転生する前の世界では温暖化がどうとかって言われていた。

でも火山の噴火により、成層圏の気温は実は下がっていたというデータもあったんだよね。

それで覚えていただけなんだけどさ。

ちなみに俺が転生者だってのは、話しても大丈夫そうな所には既に話してある。

「此花としては何か対応するの?」

「そうだなぁ~‥‥」

支援金とか出しても今は無意味な感じがしてるしさ、助けを求められれば助けに行けるんだけどこちらからは動きづらいよな。

冒険者の頃なら好きに動けたんだけど、王様になったら動きづらくて仕方ないわ。

冒険者部隊ってのを作って、そいつらに動いてもらうってのはアリかもな。

そう考えると、汽車かうららは冒険者パーティーに入れたい。

蘇生と瞬間移動が使えるのは重要だ。

でも両方ミケコに預けてあるし、ミケコには自分の判断で動いてもらいたいし、便利な能力者ってのはなかなかいないものだよ。

一応打ち出の小槌の丸薬は、希望者には全員行きわたらせる事ができている。

後は覚えるだけなんだけどね。

「乱馬にも意見を聞いてみるか」

「そう思って意見を言いに来たよ」

「乱馬!此処に来るなんて珍しいな」

乱馬は日頃、此花領内東にあるゴブリン洞窟で魔法の研究をしている。

だからここに来る事は滅多にない。

「流石に早乙女があんな状態だと、おそらく皆その話をしているだろうと思ったからさ」

「その通りだよ。それで今、俺たちはどう動いたらいいのか話してたんだけどさ、乱馬はどう思う?或いはどうしてほしいってのでもいいぞ」

そうだ。

仲間が助けてくれというのなら、それは俺が動くのに十分な理由になる。

でも乱馬はそれを望んではいなかった。

「いや、策也は下手に動かない方がいいよ。おそらくだけど、この火山の噴火で早乙女は弱るでしょ。そうなったら、今までやられていた国々が一斉に反撃にでるだろうからね。早乙女を助けたら多くの国を敵に回す事になると思うよ」

なるほど、そういう見方もあるのか。

早乙女って俺が転生してくる前は結構ヤバい国だったみたいだからな。

常に領土拡大を目論んで勝てる戦争をしてくる。

理由なんてなんでもいいんだ。

目的はただ領土を拡大する事。

そんな国だから、魔王を復活させて伊集院に対してすら戦いを挑んだ。

今は少しおとなしくなっているが、今までイジメられてきた国から見れば、今は絶好の仕返しチャンスって訳なんだよな。

「そうか。それで具体的にはどの辺りの国が早乙女にやられてきたんだ?」

「大陸中央の国々はほとんどだよ。桂や飛鳥だって例外じゃない」

「中央っていうと、上杉もそうなのか?」

「そうだよ。ある意味一番の最前線は上杉だったからね」

あの上杉が負けるのは考えづらいな。

ああ、そういえば三十年くらいずっと武田と戦っていたって言ってたな。

両面だとそりゃきついだろう。

相手は早乙女と武田なんだから。

でもそれを知ったら、俺はどちらにも力を貸せないじゃないか。

それに止めるだけでも難しい。

何を理由に止めればいい?

長年恨みを増やし続けるような事をしていた早乙女が悪い訳だし、ある程度やられてきた側が納得できる所までは仕方がないと思える。

ミケコが俺の立場なら迷わず止めに行くのだろうか。

転生前の世界だったら、大国が間に入って戦争を止めるってのはよくあった話だ。

それでも言う事を聞かずに戦争が続く例はいくつもある。

なのに大国でもない此花が入った所で、より大きな国を止める事は不可能と言えるだろう。

力か‥‥。

俺は皆に認められる力を持つべきなんだろうか。

でもそう思って力を持ち破滅していった人は過去に沢山いただろう。

何が正解なのか俺には分からなかった。

「ああぁー!!色々悩んでも仕方ないな。とりあえず俺は勇者たちと天照兄弟の仇を撃つ!」

「そうね。まだ何も動いてないし、とりあえず情報が出てくるまで待ちましょうか」

「そんな訳で俺は薩摩の蘭堂梨衣を探してみる」

とは言ったものの、この世界で人を探すのってメチャメチャ大変なのだ。

定住しているような人はいいけれど、特に悪い事をしてそうな人に関してはなかなか見つけられない。

俺は伊集院や有栖川、九頭竜の主要人物がどういった人物なのか、少し話せないかと思って探した事がある。

でも血縁者すらなかなか会う事は難しいのだ。

大抵大国の交渉は付き従う貴族が行っている。

九頭竜に至っては大事な交渉さえ偽名を与えられた者が行うとか。

最近でこそ黒死鳥王国で王族同士が会ったりもしているらしいが、それも世界会議本部と店を馬車で往復するわけで姿を見るのも難しい。

予言魔法を覚えてから、なんとなく結果が分かるようになっている気がしているが、このまま探しても無駄だって感じている。

何か見つけられそうな方法は‥‥。

予言魔法が駄目なら、四十八願の危機回避能力なら何か分からないだろうか。

人探しはともかく、この後トンネルが再び攻撃されるような危機が有るのか無いのかが分かるだけでもいい。

四十八願の婆ちゃんもみゆきに会いたいだろうし、二人で会いに行ってみるか。


そんなわけで早速俺は夏芽に連絡を入れた。

次の日には四十八願の王都である『コジョヤカ』の町で会えるよう取り計らってくれた。

「久しぶりー!お婆ちゃん!」

「ああ‥‥みゆきさん。それに策也さんも、会えて嬉しいわ」

「元気そうだな」

四十八願の婆ちゃんはもう七十近い年で、そろそろ王位継承が噂されていた。

後を継ぐのは宮音(ミヤネ)とかいう娘だとか。

その継承が済めば、俺とみゆきは婆ちゃんをみそぎやみことと会わせようと考えていた。

立場があると色々自由にはいかないし、継承問題ってのも絡んで王族ってのは大変だろうからさ。

スッキリ継承が終わった後なら、個人として俺たちが婆ちゃんの事を引き受ける事もできるかもしれない。

そんなに簡単な事ではないかもしれないけれど、そんな話をみゆきとはしていた。

「今日は四十八願の助言を聞きにいらしたのでしたよね」

「そうなのっ!お願いできるかな?」

「もちろんですとも。それでは早速やりますか?」

「先にやってくれると助かる。その後しばらくみゆきは置いていくから、ゆっくり話をするといいよ」

ぶっちゃけ俺はいても話す事ないしな。

孫と水入らずの方がいいだろう。

「そうですか。ならば先にやってみましょう。此花にとっての危機と回避でいいんでしょうか?」

「うん。それと策也がこれからやろうとしている事が上手く行くかどうか。酷い事にならないかどうか見てほしいんだ」

「私の能力は危機があるかどうか、あるならそれを回避できるかどうかしか分かりませんから、何処まで満足できる助言ができるか分かりませんが‥‥やってみますね」

四十八願が行う危機回避の予言は、かなり信頼できる。

それはこの国が現在早乙女に次ぐ世界ランク六位の大国である事からもうかがえる。

その順位なのに他の大国にあるような武力を持っていないからね。

そういう意味では此花も予言教団の力で七位にある訳で似ていた。

「まず‥‥此花はしばらく安泰でしょう‥‥みゆきさんも策也さんも健やかに過ごせます‥‥ただし‥‥辛い事や苦しい事は受け入れるしかありません。その中に‥‥そうですか‥‥」

四十八願の婆ちゃんはそこまで喋ると黙ってしまった。

何か嫌な未来でも見えたのだろうか。

そんな風に感じたが、表情は穏やかだった。

「お婆ちゃん、どうかしたの?」

「いえ‥‥なんでもありませんよ。それで策也さんですが、思うままに行動してください。その目的が達成できるかできないかではなく、それをする事に意味があると出ています」

「そうなんだ‥‥」

見つからないかもしれないけれど、梨衣を探す事に意味があるのか。

なんだかよく分からないな。

まあでもそうした方がいいってならやるだけだ。

四十八願の能力は信頼できる。

「策也さん。すぐに行動した方が良いかもしれません。私としてはもう少しお話したかったんですけれどね」

何処か婆ちゃんの表情は寂しそうだった。

俺と話したいとか奇特だな。

でも王位継承したらゆっくり話す機会もできるだろう。

その時は相手してやるか。

「分かった。じゃあ早速やるか!婆ちゃんサンキュー!迷いが吹っ切れたよ」

「力になれたのなら良かったです」

「策也!無理したら駄目だよー!」

「分かってる!じゃあ行ってくる!」

俺はそう言って瞬間移動魔法でその場を離れた。

移動した先は謎乃王国にある転移航路のある島の上空だ。

薩摩の王都である『エフリコギ』の町に近い、俺が最初に思いついた場所だ。

此処からなら飛んで三十分もかからない。

つっても三十分かかるんだよな。

転生前の世界で暮らしていた頃は、通勤にかかる三十分の時間が億劫だったものだ。

いくらでも時間のある今は凄く短く感じる。

知らない空を飛ぶ訳で、それはそれで何かしら刺激が有ったりもするからな。

そんな事を考えていたら三十分はすぐだった。

俺は上空からエフリコギの町を見た。

「とりあえず姿は消して、高度を下げてから探してみるか」

俺は透明化の能力を使ってから一気に高度を下げ、建物の屋根の上へと着地した。

それから千里眼と邪眼を使って町の中を調べる。

結構魔力の高い奴が多い。

十年前は町で見つかる強い奴なんてそうそういなかったんだけど、最近は明らかに多い。

俺がドラゴンや黒死鳥なんかを人間蘇生してきたのもあるけれど、大国もきっと強力な魔獣や闇の神を蘇生して戦力を集めているんだろうな。

ん?この魔力は知ってる奴だな。

確か民間軍事連合海の嵐のリーダー、だと俺が勝手に思っているサモナーだ。

バジリスクとコカトリスを同時に召喚する奴ね。

ミケコに奪った領地を全て譲ると言った奴でもある。

そして結構察知能力が高い。

見つからないように気を付けないとな。

つかあいつ何してるんだ?

何かを探っているようだが‥‥。

サモナーの視線の先には馬車があり、その馬車は大きな建物の前で止まっていた。

建物は薩摩の政府機関か。

さっき町を調べた時にかなり魔力の高い奴がいた建物でもある。

サモナーよりも上だぞ。

神クラスだからおそらくは闇の神を蘇生した奴に違いない。

こんな奴がアッサリ見つかるとか、この世界もかなりヤバくなっているよなぁ。

建物の入り口が開いた。

中からそこそこ大きな、畳を二・三十枚重ねたほどの荷物が運び出されてきた。

布に覆われているのでそれが何かは分からないが、運ぶ者たちはかなり慎重に見えた。

大切な物であるのは間違いないだろう。

人が集まってきた。

まずまずの能力者だ。

サモナーの部下たちかな。

馬車を取り囲むように近づいてきた。

「その荷物、調べさせてもらうぞ!」

「なんだお前たちは?」

「民間軍事連合所属、海の嵐だ。依頼があってその荷物を確認に来た」

「なんの権利があって?黙って許可する訳がないだろう!」

建物内からもまずまずの能力者がゾロゾロと出て来る。

そして最後に、神クラスと思われる奴が出てきた。

女じゃないか‥‥。

結構年配の爺さんで、俺が探していた梨衣ではなかった。

でもかなりヤバそうな奴だぞ。

海の嵐じゃ相手にならない。

町の中で戦闘が始まってしまった。

神クラスの奴は荷物を守りつつ積み込みを指示しいてる。

そこへサモナーが向かっていった。

お前じゃ勝てないだろ。

急に辺りが何かに包まれた。

これは魔力、いや邪神の能力だ。

あいつの力だな。

何をしたのか分からないけれど、解析している間にサモナーが殺られてしまうだろう。

助けるのか?

俺別にあいつの事知らないし、特に味方って訳でもない。

おそらくは伊集院との繋がりが強い奴だし、助ける義理もないだろう。

でもこのまま見てるのもなんだかムニョムニョして嫌だ!

俺は気が付いたらサモナーを押しのけ神クラスの奴のパンチを受け止めていた。

「大丈夫かサモナーの人。流石に町中じゃコカトリスも召喚できないよね。助けてやるよ」

「此花策也?」

助けるっていうか、この馬車に積もうとしている何かも気になるからな。

それにこいつの能力もコピーしたかったし。

ほうほうなるほど、『シアエガ』って闇の神だな。

邪神の中ではそんなに強い方じゃないけど、こんな能力もあるのかぁ。

まあ俺には全く通用しないけどな。

「菜乃、妃子、出てきてその荷物を影の中に回収しろ!」

「策也タマ、他人の物を勝手に奪うのは強盗なのね」

「とうとう犯罪者になったのです」

そんな事を言いながらも、二人は周りにいた奴らを蹴散らして荷物を回収した。

「それは!」

「後であんたに渡してやるよ。アレが欲しかったみたいだからな。でも此処にあると邪魔だから一旦どけさせてもらった」

「アレが何か知っているのか?」

「いや?ただでかくて邪魔だっただけだ」

なんだろう。

サモナーのあの驚いた表情は。

おっとそんな事よりもこの強敵をさっさと片づけてしまうか。

つかこいつ、怒りに我を忘れているぞ。

触手攻撃は割とヤバいし、普通の肉体を持つ者が捕まったら即死だろうな。

こりゃ早く鎮める為には殺っちゃうしかなさそうね。

人間じゃなく闇の神だし、どうせ俺の駒にするんだから問題ないでしょう。

さてどうやって倒すかなぁ。

アレを試すチャンスだけど、この程度の奴で試すのもなぁ。

それにサモナーたちにも見られているし、ここはまだアレを使うタイミングでもないだろう。

「だったら、デイダラボウシのエア神通力!」

俺はシアエガの周りにある空気を操作し圧力をかけていった。

動きは止まった。

「デイダラボウシのエア神通力強いな。流石闇神(アンシン)の力」

とは言え長くは持たないか。

触手が長すぎで結界は無理、となると使ってみようこの技を!

「レッドブルーライトニング!」

これはクトゥグァの能力を魔法化したものね。

空から赤と青の稲妻が落ちてきて、一瞬動きを止めていた敵を貫いた。

能力を魔法化すれば、使用エネルギーを格段に増やせるので威力も半端なく上がるのです。

シアエガは一瞬にして消し炭になり消滅した。

俺はコッソリと魂を回収した。

『策也タマ、魂ゲットだぜ、なのね』

『なのです』

俺の代わりに菜乃と妃子が決め台詞を言ってくれていた。

その瞬間、シアエガの能力によってこの辺りに立ち込めていた何かが晴れた。

「ん?どうして此花策也がこんな所に?あれ?馬車の荷物は?」

あらら、こんな風になるのか。

俺の記憶は常に他と共有していてバックアップ取りまくりだからすぐに元に戻るわけだけど、シアエガの能力、割と使えるかも。

簡単に言うと、能力を発動している間の出来事は、能力を解除した時に全て無かった事になるのだ。

無かった事になると言っても別に時が戻る訳ではなく、記憶と痕跡が消えるだけ。

『策也タマ!影の中に何かがあるのです!』

『策也タマが入れたのね?」

あいつらも記憶を失くしているのか。

『とりあえずそこに置いといてくれ』

それよりも一旦この場から離れるべきだろう。

「海の嵐の!一旦ここから離れるぞ」

「えっ?あ、ああ」

とりあえず狙っていた荷物が無くなっていたので、サモナーたちは俺の言う通りその場を離れてくれた。

町の端まで来ると、サモナーが話しかけてきた。

「一体何があった?急に時間が飛んだような感じになって、気が付いたら目の前に此花王がいた訳だが‥‥」

「お前が殺られそうだったから助けたんだが、相手の能力でその辺りの記憶がみんな奪われたみたいだぞ。俺は記憶に関してはバックアップを持ってるから全て覚えているがな」

「なっ‥‥そうなのか。だったら、馬車の荷物、アレがどうなったのかも分かるのか?!」

なんかメッチャ焦っているな。

そんなに重要な何かだったのだろうか。

「馬車の荷物は俺が預かっている。お前、海の嵐のサモナーだよな。どうしてあの荷物を追ってたんだ?」

「荷物は此花王が持っているんだな。俺は海の嵐のリーダー『孟徳(モウトク)』だ。あの荷物はかなりヤバい物なんだ。できれば俺に、こちらに渡してもらえないか?」

名前は孟徳って言うのね。

「それは構わないが、何かは聞いても教えてもらえないのか?」

「俺の口からは無理だ。仕事だからな」

記憶に聞く方法もあるけれど、こうやって普通に話せる奴にそんな事はしたくないよな。

まだ俺自身何か見ていないし、見てから決めても遅くないだろう。

「分かった。とりあえず荷物は今直ぐには渡せないから、今日の夕方に町の外で渡すって事でどうだ?」

ぶっちゃけ影から取り出すだけなんだけど、調べる時間が欲しいからね。

「町の外か。だったら北に五キロ行った所に森がある。そこで受け渡しという事でいいか?」

「分かった。では孟徳、今日の夕方陽が沈む前に森で待っている!」

俺はそう言って一気に上空へと上がった。

そしてそこから北へと飛んだ。

先に近くまで行っておこうと思うのは、転生前からある俺の(タチ)だよな。

電車が止まったりして遅れる可能性とか、考えなくていい事まで考えてしまう。

間に合う時間に出ればいいだけなんだけどさ。

直ぐに森が見えて来た。

真ん中にぽっかり穴が空いているので、あそこで待ち合わせと考えていいだろう。

場所を確認できたら安心できる。

さて、少し離れた場所であの荷物の確認だ。

俺は地上へ下りるとすぐに影に潜った。

「策也タマ。これ、なんかヤバそうな気配がするのね」

「そうなのです。気味が悪い音がするのです」

「気味が悪い音?」

俺はデビルイヤーで聞いてみた。

カチ‥‥カチ‥‥カチ‥‥カチ‥‥。

「えっとこれは‥‥」

転生前、テレビドラマでよく見た事があるぞ。

だいたい残り二秒とかで止める事ができるアレだ。

いやまさかね。

俺は布を取って確認してみた。

無数の魔石が仕込んである魔導具に見えるな。

この数だと相当大きな魔法が発動すると考えられる。

つかどんな魔法にしても、普通此処まで魔石は使わないだろう。

それになんだこの大きな魔石は。

魔物の中にも神と呼ばれる存在がいくつかあるが、実際に神クラスまで成長した魔物のモノなのか。

「策也タマ?何か分かるのね?」

「策也タマなら分かるのです」

「そうだな。可能性があるとしたら‥‥魔法通信ネットワークの鯖か、もしくは何処までも威力を上げるのにこだわった爆弾か‥‥」

俺たちは影の中で一瞬距離を取った。

影の中で爆破は流石にないだろう。

俺は再び近づいて邪眼を使って確認した。

間違いない。

これは時限式の設置型爆破魔法装置だ。

つか複雑に魔力が絡み合った作りをしている。

解析には少し時間がかかりそうだ。

精霊魔法が多く使われているのは分かるから、やはり影の中での爆発はなさそうでまずは一安心。

「菜乃、妃子、大丈夫だ。とりあえずここで爆発する事はない」

「そ、そうなのね」

「知ってたのです。全く問題ないのです」

菜乃はそう言ってポンポンと装置を叩いた。

「おいやめろ菜乃!爆破はしないが影から取り出せなくなるじゃないか!」

影の中で爆破が起動すれば、当然取り出した瞬間に爆発だ。

今のショックで起動してたりしないよな?

しかしこの流れだときっと、俺たちのドキドキワクワクな爆弾処理が始まるんじゃね?

菜乃と妃子が一緒な辺り、俺は不安しかなかった。

2024年10月10日 言葉を一部修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ