表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
血統編
107/184

此花策也の憂鬱

魔物や闇の神、或いは各血筋に連なる能力は、魔力を必要としないモノが多い。

例えばイタクァであるうららの瞬間移動魔法、正確には瞬間移動能力は、不安定だけれど魔力を消費しないという利点がある。

バクゥの深淵の闇だったり、シャドウデーモンの影に入る能力も魔力は不要だ。

逆にバクゥのタイムストップのように、魔力を桁違いに消費するものも有ったりする。

俺はチートだから普段はあまり意識していないけれど、魔力が吸収されたり封じられた時には魔力を必要としない能力が重要になってくる。

だから俺は日々そういった能力をコピーして集めるのが趣味のようになっていた。

ただし魔力を消費しない能力は、自身の中にある魔力のような生命エネルギーが必要になるんだけどね。


俺はリンたちやみゆきに、織田家であった事を全て話した。

それですっかり忘れていた。

金魚が大変だと言ってやってきていた事を。

俺が再び信長に会いに行って帰ってくると、リンたち皆が庭で俺を待っていた。

「あれ?どうしたの?」

「策也さん大変だって言ったんだよ!」

そういえば金魚はそう言ってやってきてたんだよな。

「それで何が大変なんだ?」

「とにかくニュースを見てみなさいよ」

「そうだな」

嫌な予感もするけれど、みんな落ち着いているしそう大した事でもないだろう。

「どれどれ‥‥えっ?」

『わたくしたち謎乃王国は、伊集院より工事の手伝い等を正式に依頼されました。困っている人がいたら助けるのが人というものです!兄上様からそう教わりました。だからわたくしたちは依頼を受ける事にいたしました」

「へぇ~正式に依頼を受けたのか。立派な判断じゃないか」

「この後の映像を見てもそう言えるかしらねぇ‥‥」

えっ?何かあるの?

別に工事を手伝うくらい‥‥。

「ブッ!」

おいおい、コーラを飲んでたら吹いてる所だぞ。

つかなんで夕凪や駈斗に月詠三姉妹、家郷ファミリーに青い三連星までいるんだ?

青い三連星とか出てきちゃったら、黒死鳥王国との繋がりがバレちゃうよな。

更に山女ちゃんはまあいいとして、死志が忍者部隊とヴァンパイア部隊を率いて参加しているのはどういう事?

ヴァンパイアたちはこの太陽の下で働く事をよく了解したな。

しかしこいつら好き勝手しやがって。

しかもお前ら全力で魔法ブッパして気持ち良さそうだし、ちょっとうらやましいぞ。

じゃなかった。

「今まで隠してきた戦力が半分近くオープンにされてしまったな」

「いいの?こんなにも情報を与えちゃって」

「まあ大丈夫っしょ。参星と海神は此処にはいないし、打ち出の小槌も手に入ったからな。今の戦力は一ヶ月後にはもう更新を必要とするだろうし」

「でもこれを見たら、各勢力慌てて主力を出して妨害に来るんじゃないでしょうか」

「逆にもう止められないとあきらめてくれればいいんだけどさ」

どっちの可能性もあるんだろうな。

でもなんだろうか。

俺はなんとなく来てほしい気がしている。

そしたらこっちも向こうの情報が得られる訳だしね。

今のままだとただの知られ損だよ。

とりあえず敵が来たら知らせるようミケコには伝えておいた。

それ以外はすべてミケコにお任せする。

神武国と全ての戦力は流石に任せられないけれど、それ以外なら特に問題ないだろう。

駄目な時だけ止めればいいさ。


そんなわけで、俺は朝倉の刺客を蘇生してあげる事にした。

女性らしいから適当に服も着せて上げて‥‥。

「ん‥‥俺は‥‥どうしたんだ?」

そいつは目を空けて俺を見た。

ちょっと男っぽい見た目のヤツだな。

「俺を殺そうとして逆に死んだろ?その後少しだけ話もしたよな」

「あれ?そうだ。俺は逆に殺られた。それでその後よく分からないけど話をしたんだ。何が起こった?」

「ちょっとお前の魂と話をしただけだよ。それでまあお前を殺すには惜しいから、ちゃんと今蘇生したんだ」

「えっ?蘇生してくれたのか?俺、お前を殺そうとしたんだぞ?」

「あの程度俺にとっては子供の遊びだよ。それでどうだ。お前の能力はそのまま死なせるには惜しいと思った。これからは俺の為に働いてみないか?俺一応織田家の人間らしいし、信長には許可を得ている」

「なんだとー!」

あれ?これ言うの逆効果だったか?

織田家には仕えたくないのだろうか。

「信長以外に織田家の人間がいただと?そんなバカな」

「さっきまで信長と話していたけど、間違いなさそうだぞ」

「そうなのか‥‥でもあまり似て無いな?」

「俺は母親似なんだよ」

知らんけど。

「とりあえず理解した。策也に蘇生されたんだから、逆らえばどうせ俺は死ぬんだろう。だったら働いてやるよ」

「そうか。なら決定な。お前の名前は?」

「俺は『城戸音羽(キドオトハ)』だ」

「あれ?朝倉じゃないのか?」

「実は朝倉に生まれた女は、何故かみんな城戸家とならなければならないんだ。それが嫌だったんだけど、一度死んだらもうどうでも良くなったよ」

なるほどな。

その辺りで信長と上手く行ってなかったのか。

でも朝倉の能力を守る為には、女性は家を出て行ってもらう必要があるのだろう。

そしてその理由が言えないから問題になった。

「そっか。じゃあお前は神武国で働いてもらうぞ。あそこには瞬間移動魔法が使えるのが今いなくてな。東征や参星の護衛兼付き人として働いてくれ」

「なんで神武国なんだ?それに織田家なのに此花ってのもおかしいよな」

「おかしいな。でも知らないうちに此花を継承しちゃってたから仕方がないだろ?神武国は元々俺の国だし」

「そうなのか?一体どうしたらそんな事になるんだ?」

「さあ?俺にも分からん」

なんでこうなったんだろう?

なんで神武国とか作ったんだっけ?

覚えているんだけどさ、なんだか不思議だよな。

まさか織田家まで継承しろとか言われたりしないよな?

「とにかく分かった。神武国なら一度行った事があるから行けるよ」

「そっか。じゃあ東征と参星には今から伝えておくから、直ぐに行っていいぞ。まあ気楽にやってくれればいいよ。友達みたいな感覚でさ」

「本当にそれでいいのか?」

「大丈夫だろ。ただ参星にはあまり逆らうなよ。あいつ結構ヤバいかもだから」

「脅かさないでくれ」

「とにかくよろしく!」

「分かったよ‥‥じゃあな!」

音羽はそう言って瞬間移動していった。

会話の間に、既にテレパシー通信が通じる奴らには伝えておいたし大丈夫だろう。

話した感じ普通だったしさ。

さて次は、今晩工事の邪魔がくればいいなぁ。

本音ではそう思う俺だった。


そして夜、期待通りにやってきましたよ。

覆面した奴がたった三人で。

こりゃ完全に本気だな。

全員神クラスって事は、おそらく闇の神を蘇生した奴らなんだろうな。

今は人間だから能力が分からないよ。

ただ魔力的にはうちの陣営の闇の神三人よりも上ぽいか。

あくまで合計だけどね。

でも三対三でやればこちらが負けるレベルだ。

多分負けないけど。

何故なら、夕凪、駈斗、うららはみんなオリハルコンの体だからさ。

「あの三人は桁違いに強いぞ。前衛は夕凪・駈斗・うららで対応する。ミケコと山女はスピードで優るなら援護だけしてやってくれ。ただし直接攻撃する必要はない。遠距離からの牽制だけで十分だ。後は俺がフォローする」

「兄上様、ようやく少し楽しめそうな相手ですね」

「そうだな。特にあの真ん中のヤツは今までとレベルが違うぞ」

「おそらくですが、アレはわたくし以上のスピードがありそうです。残念ですが、今回はお任せします」

「いい判断だ」

ミケコは何気に判断が的確だよな。

よく敵を見抜いているよ。

伊達に長く暗殺をやらされていた訳じゃないか。

「汽車は見てれば映像は記憶できるだろうから、こっちにいる連中の守りは任せるぞ」

「はい兄さん!任せておいて!」

頼もしい弟ですなぁ。

「山女ちゃんは命を大事にね」

「はい。多分大丈夫だと思います」

実は全く心配してないんだけどね。

今回のヤツでも山女ちゃんにはついていけないと思うから。

「ああぁ!僕も戦いたかったですよぉー」

「あの真ん中のヤツ以外なら好きにしていいぞ」

「本当ですか!?」

「多分一瞬で基地送りになると思うけどさ」

みんな死にそうになったら基地に自動で送られるようになっている。

これがあるから安心して戦えるんだけど、場合によってはそうならない事もあるからその時は助けてやらないとな。

「来たか」

敵が一気にこちらへと向かってきた。

さて最初はどんな敵なのか確認だ。

俺は姿を消してまずは記録に残らないようにする。

敵は姿を消したくらいじゃ何処にいるか分かるだろうし、戦闘では意味がないけどね。

とりあえずは一番強そうな奴の後ろへまわってから肩をポンと叩いた。

そしてすぐに離脱する。

思考を増やしているのでこれで理解できるのだ。

アザトースか。

能力は変化と時空移動ね。

戦闘で時空移動はあまり使えないな。

瞬間移動的に使うか、妖精界に逃げたりするかだし。

でもこれで移動が楽になりそうだ。

魔法は全属性使えてバラエティに富んでいる。

でもこの能力ならうちの三人には誰にも勝てない。

負けもしないだろうけれどね。

「うらら!とりあえずこいつはお前が止めておけ!」

「はあい!うらら頑張りまーす!」

次に強そうなヤツは‥‥。

俺はそいつの後ろに回って同じように肩を叩いた。

シュドメルか。

こいつ強いな。

下手したらアザトースよりも厄介な敵になる。

全てを溶かす酸の攻撃に、核兵器でも死なない強力な体。

触手での攻撃は変幻自在で、精神干渉されれば気が付いたらまともに戦えない状態にされているだろう。

ただし弱点があって水に弱いか。

人間蘇生されているからその部分そんなに期待できないが、水が有効なら夕凪で勝てるか。

俺は夕凪にテレパシー通信でメッセージを送った。

『こいつの相手は夕凪だ。水による攻撃を優先してみてくれ!それと精神攻撃をしてくるからその部分はしっかりとガードしておけ』

『うん。妄想してるから大丈夫‥‥』

『そ、そうか‥‥』

妄想最強伝説が始まりそうだ。

次へいくぞ。

次は‥‥ダゴンか。

不死とは厄介だな。

完全に消滅させる必要がある。

しかもウロコによって強力なガードもあるな。

負ける事はなくても倒すのは大変そうだ。

こういう奴は精神攻撃からの捕縛がいいだろう。

「駈斗!お前はこいつを押さえておけ。力はお前の方が上だ!」

「それでいいなら楽勝です!」

『死志、お前はこいつを毒と恐怖に浸けてやれ』

『ジワジワやりますよぉ。フフフフフ‥‥』

『山女ちゃんは隙ができたら拘束だ』

『分かりました。任せてください』

「ふぅ~‥‥」

後はうららを少し助けてやればその内引いていくだろう。

俺は姿を消したまま、押されるうららを妖糸で援護した。

流石にこのクラスに妖糸は効かないけれど、蜘蛛の糸に絡まれたら戦いにくいでしょ。

ほんのわずかなマイナス効果でも、力量の差は埋まるのです。

まあ俺の攻撃は僅かなマイナス程度ではないんだけどね。

敵もできれば有利な相手と戦いたいようだけど、既に俺たちの方が場を支配していた。

早く撤退しないとダゴンは捕まえちゃうぞ!

相手も当然捕縛できるならそうしたいと思っているわけで、こちらの手はバレバレだったようだ。

間もなく敵は引いていった。

「駄目ですよ。僕じゃ力で完全に負けてました。もっと強くならないとなぁ」

「今回は相手が悪かったな」

死志も別に弱い訳じゃないし、むしろあれだけの格上相手によくやった方だ。

でもこれからの相手だと最前線は厳しいだろうな。

「お疲れ様でした」

「山女ちゃんもお疲れ。まだ余裕そうだね」

「そうでもないですよ。うららさんが相手していた人からずっとプレッシャーを受けてました」

「あの状況で山女ちゃんに目を付けたか‥‥」

アザトース、かなりやりおるわい。

「兄上様、戦いも終わったので、わたくしは作業に戻ります」

「おう。大変だけど自分で決めた事だ。最後まで頑張れよ」

「もちろんです。今日は助けてくれてありがとうございました」

俺はミケコが下げる頭をポンポンと叩いた。

「じゃあ夕凪、俺は一旦帰って寝るから、何かあれば呼んでくれ」

「はい。多分今日はもう‥‥来ないと思う‥‥妄想だけど」

「俺もそう思うよ」

こうして期待通り敵がやってきて、期待通りの結果でこの日の戦いは終わった。

そしてこの後はもう、運河造りを邪魔しようとする者は現れなかった。

あの一回で力量を測り、これ以上は無駄だと判断したのだろう。

そういう意味で言えば、ちゃんとした戦力を出した事は間違いではなかったと言える。

もしもミケコが仕事を請け負わなかったら、もしかしたらずっと邪魔を続けられていたかもしれない。

結果を見れば、ミケコは伊集院にとってはいい事をしたと言えるのだ。

そして俺も評価したい。

例え此花に多少の損失が出たとしても、きっと世界にとってはこれで良かったと思うから。

しかし伊集院もよくやったよな。

運河はほぼ真っすぐに陸地を貫いている。

おそらく村や田畑があったに違いないのだ。

それをちゃんと立ち退きさせたんだからな。

不満の声は聞こえてこなかったし、しっかりと対応したのが窺えるってもんだよ。

脅されている可能性も無いとは言えないけどね。


何にしても本日三月二十日に、伊集院航路開通の祭典が行われていた。

そこには何故か俺も呼ばれていた。

「だりぃ~なぁ~‥‥メッチャ憂鬱だよ」

「兄上様、そうおっしゃらずに。皆が称えてくれるのですから、素直に受け入れましょう」

「そうだな。でもほとんどはミケコの功績だよ。お前が動かなければ、この航路は無かったかもしれないんだからな」

「いえ、全ては兄上様の教えです!称えられるべきは兄上様なのです!」

俺別に何も教えてないんだけどね。

ただ蘇生する時に俺の意思がそれなりに伝わっただけでさ。

そういう意味では半分は俺が称えられていると受け取ってもいいのか。

称えてくれるのが伊集院ってのは嬉しくないけど、民も喜んでくれているし良しとしよう。

つかこういう時も伊集院の人間はだれ一人顔を出さないんだよな。

リンたちを称えたあの時は、親族が何人か来ていたけどさ。

俺が信長の所に行った時、やたらと警戒していたのを見れば分からなくはない。

この世界はそういう世界なのだ。

顔を知られるくらいならまだいいが、公の場に出るのは危険なのだろう。

国王の中でこうやって公の場に出るのは俺とミケコだけなのかな。

東征の話によると皇皇帝の継承の儀ではかなりの顔が集まっていた訳だが、アレは一般人には公開されていなかったし最高レベルの厳戒態勢が敷かれていたようだしねぇ。

まあ仲間も来てくれているし、今回に関しては問題はないと思うけどさ。

伊集院の威信にかけて警備は厳重みたいだし。

しかし警備には結構強いのが集まっているな。

こんなのがいるならミケコに頼まなくても楽勝だっただろう。

おかげで伊集院は、戦力を見せる事なく温存できてしまった訳だ。

これが後に悪い事に繋がらなければいいけどね。

何にしても祭典は無事終了し、一番の船が運河に入っていった。

「終わったか。所でこの運河の通行料っていくらに設定されたんだ?」

「一番大きな船で一億二千万円と聞いております」

「えっ?マジで?それは高過ぎないか?有栖川の運河は五千万円だったろ?」

「ええそうですが、どうやらそちらも値上げが予定されているようです」

これは失敗したか。

今までは有栖川が独占していた航路だから、世界全てが価格を抑えるように圧力をかけていた。

しかし伊集院も運河を作った事で、有栖川は伊集院と手を結び価格を自由に設定しやすくなったわけだ。

それにこれらの航路が使えない方が自分たちの利益に繋がる国もあるわけで、そういった国は高い価格設定の方が望ましい。

例えば碓氷なんかはそうだろう。

東側航路はほぼ碓氷が独占しているのだからね。

更に東西に港を持つ早乙女だって、運河はない方が良いと思っていたかもしれない。

だったら何故工事の邪魔は行われたのだろうか。

誰が邪魔をしていたというのだろうか。

そういえばこの件で死者ってどれくらいいた?

一人も死んでいない可能性もあるぞ。

少なくとも俺が見ている中で死んだ奴はいない。

唯一俺が捕らえた汽車が行方不明になっているくらいの認識だろう。

もしかしてこの争いは出来レースだったのではないだろうか。

だったらその目的は何か。

もしかしたら俺とミケコは上手く持ち上げられただけかもしれないな。

真相は伊集院に聞いてみないと分からないが‥‥。


思った通り、後日有栖川の持つ運河の通行料も、最高が一億円まで引き上げられた。

ほぼ倍の価格だ。

世界中から批判の声が上がったが、皇、九頭竜、早乙女という伊集院と有栖川以外の三大国はそこに加わってはいなかった。

そもそも航路が使えないからと言って問題は少ないからだ。

逆に最も被害が大きいのは神武国、そして愛洲王国、新たにできた薩摩王国。

更に中央大陸の中央から南の国々は大きなダメージを負う事になった。

自由競争と言っても、こういった参入が限られたものでは市場の原理は働かない。

俺は大きな見落としをしていたようだった。

「どうすんのよ、これじゃ世界的に見ても良くなるどころか最悪よね」

「益々伊集院と有栖川の力が大きくなるばかりです」

総司の言う通り、俺がこの世界に来てから色々変化があった中で、伊集院と有栖川の勢力は大きくなっていた。

俺の持つ勢力も五大国に迫る勢いだけれど、それに近い分この両国は大きくなっている。

薩摩王国の国王、伊集院の元王子が離反していなければ、むしろ近づく事すら敵わなかった。

「俺たちは伊集院に、そして有栖川たちに利用されていただけかもな。でも反撃してやるよ。こんな事をしたらどうなるか思い知らせてやる。倍返しだ!」

ちょっと言ってみたかっただけね。

でも反撃は必ずする。

「どうすんのよ?」

「それは今考えている」

「このままだと領民が徐々に減っていくわよ」

確かに対応するまでに領民が減っては困るな。

直ぐになんとかするって言っても、それなりに時間は必要だろうし。

つかリンは領主の仕事もしないで毎日ここにいるよな。

ぶっちゃけこの世界の領主なんて国防と治安維持以外にする事なんてそうないのだ。

領民ギルドが色々な相談も受け付けているし、税はむしろ余っていると言っていい。

それが証拠に近衛王国では税をばら撒く事で人口を増やしてきたのだ。

とりあえずこの手で領民を押さえておくか。

「うん。なんとかなるだろう」

「何か思いついたのね?」

「いやまだだ」

後は運河の値上げに対抗する手段だな。

転生前の世界なら、航路以外にも陸路と空路で大量輸送が可能だった。

空路は速いがあまり大量輸送には向かず、この世界にも合っていない気がする。

陸路もそういう意味では今のままの方が良い気がするな。

俺が鉄道を作れば独占してしまうわけだし、魔物の出現なんかで線路が壊される事も多いから事故が多発するだろう。

となると別の航路を作らないと駄目なわけか。

俺は地図を広げた。

現在の勢力図で俺が航路を作れる可能性があるのは、謎乃王国の北側から入って、四十八願領へ抜けるルートが最短。

しかしこの航路だと三千メートル級の山すらぶち抜かなければならない。

距離も半端ないし現実的ではないな。

となると方法はアレしかないか。

俺は静かな闘志を燃やして立ち上がり、行動を開始するのだった。

2024年10月9日 言葉を一部修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ