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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
血統編
106/184

此花策也の家系

転生前の世界では、学校で歴史を教えられる。

でも事実と異なる印象を与えらえる事も結構あるとか。

例えば第二次世界大戦は、日本は負けた事になっている。

それは事実として正しいけれど、戦争目的という面から見れば間違っている。

日本はたとえ建前だけだったとしても、『アジア植民地の解放』を目的として戦争を始めたのだ。

其の実は違うかもしれないけれど、そう宣言して戦争を始めたのだからそれもまた事実と言える。

そして結果、欧米支配から植民地は解放されて行った。

戦争目的を成し遂げたという意味では、日本は戦争に勝ったとも言えるわけだ。

このように歴史は、一言では言い表せなかったり間違った印象を与えるものも多い。

あの有名な歴史上の人物も、もしかしたら作り上げられた偶像や虚像の類なのかもしれない。


昨晩は運河建設を邪魔しに来る者はいなかった。

一昨日の夕凪に恐れをなしてくれたかなぁ。

これでしばらくは邪魔も来ないと希望的観測を持った俺は、織田の王様を訪ねる事にした。

「此処が王都か。毎回思うけど普通に人を訪ねるのってなんだか嫌だよな」

「だったら突撃あるのみ!」

「杏奈、それは駄目だよ。泥棒や刺客じゃないんだから」

御伽洞窟は小さな洞窟だと聞いたので、今日は子供サイズの家郷兄妹を連れてきていた。

一応中身はリヴァイアサンとシーサーペントなので、本当に子供という訳ではない。

その方が便利な時もあるから、その時の為に用意した人形たちだった。

「少し離れた所に下りてから屋敷に向かうぞ」

俺たちは空から町へと下りると、織田の屋敷の柵門の所まで歩いた。

当然そこには門番が立っている。

現在のこの世界では、これが標準的な王族の屋敷の在り方だった。

「こんにちは!俺々!此花策也だけど、織田家の当主に会いたいから取り次いでくれるかな?」

こんなんで良かったっけ?

「ん?此花策也!王が自ら来られるとはどのような用件でしょうか?いえ、直ぐに対応を聞いてまいります!」

「はいはい~」

あらあら、やっぱりいきなり来るのはマズいのかな。

でも王様がどういう行動したらいいのかなんて俺知らねぇし。

少し待っていると、門番が走って戻ってきた。

ちなみに門番は何人かいて、その内の一人が対応してくれている。

「すみません。はぁ、はぁ‥‥どういったご用件でしょうか?はぁ、はぁ‥‥」

「用件か。御伽洞窟の件で話がしたい、かな?後は朝倉家の者についても少々」

「かしこまりました。もう少々お待ちください」

門番はまた走って屋敷へと向かっていった。

しばらく待っていると、門番はまた走って戻ってきた。

「はぁ、はぁ、はぁ‥‥お会いになられるそうです‥‥はぁ、はぁ、はぁ、こちらへどうぞ‥‥」

「そこまで走らなくてもいいよ。別に慌ててないからさ」

「そうですか‥‥はぁ、はぁ、はぁ‥‥ありがとうございます」

今更言っても遅かったな。

俺は屋敷の中まで案内されると、そこからは別の執事のような男に付いて行く事になった。

建物の中は、他の王族や貴族が住む屋敷と似ていた。

こういう形がこの世界の標準的な屋敷なのだろう。

ちなみに俺が住んでいる屋敷も似てるが、二階以上の部屋は土足厳禁にしているので少し違う。

だけど一階は何処も似たようなものだった。

応接室に通され、俺たちは中へと入っていった。

応接室内は結界によって真ん中で分けられていて、向こう側には沢山の騎士が後ろに並んでいた。

その前のソファーに、織田家の当主らしき人物が座っていた。

なんかメチャメチャ警戒されいているな。

他の王族に会いに行く事なんてほぼ無いから知らなかったけれど、こういうのが標準なのかもしれない。

俺が部屋に入ると、その当主らしき人物は立ち上がった。

「よ、よく来たね!ぼ、僕が織田家の当主、信長だ」

「初めまして。俺は此花策也だ」

なんかメッチャ警戒され過ぎなんですけど。

というかあの第六天魔王と同姓同名なんだけど、そう呼ばれた歴史上の人物とは大違いな印象だな。

でも実際は結構ちゃらんぽらんな虚け者だったと云われていて、そっちの印象に近い感じか。

「ま、まあ座ってくれたまえ」

「おう。失礼するよ」

俺がソファーの真ん中に座ると、おならの音がした。

「ぷっ!あ、いや失礼した。おもちゃをそのままにしていたようだ」

俺がソファーを探ると、どうやら中にブーブークッションのようなモノが仕込まれているようだった。

こいつ、なかなか面白い事をしやがるな。

「いや別に構わないよ。こういう遊び心は好きだからな」

「そうか!そう言ってもらえると嬉しい」

信長の表情が少し柔らかくなった気がした。

俺の両脇には愛神と杏奈が座った。

ソファーの端の方は音が鳴らないようだった。

「それで話なんだけど、先に質問させてもらってもいいかな?いや駄目と言われてもするんだけどさ、何処で御伽洞窟の事を知ったんだい?」

信長がそう言うと、後ろに並ぶ騎士が警戒しているのが分かった。

おそらく御伽洞窟の事は国家機密的なものなのだろう。

つかよく見るとこいつ、なんとなく汽車に似ているな。

歳も同じくらい若く見えるし、兄弟と言われても全く違和感がないぞ。

「御伽洞窟の話は、織田家に仕える朝倉家の者から聞いたよ」

「なんだって?!朝倉家の奴が喋ったのか!?」

信長は驚いていた。

裏切られてショックって感じかな。

「いや、順番に話すとだ、自称朝倉家の奴が俺を暗殺しようと攻撃してきたんだ。毒が塗られた吹き矢だろうな。飛んできたから咄嗟にそのままそれを返したら、そいつ死んじまってさ」

「死んだのか!?」

今度はえらく喜んでいるみたいだな。

しかし一転不安な表情に変わる。

感情表現が忙しい奴だな。

「死んだんだけどな、まあ蘇生したっていうか、それで魔法で強制的に話を聞いたら教えてくれた訳だ」

「蘇生されたのか‥‥」

仲間が蘇生されたのに残念そうだな。

いや、ホッとしているようにも見えるが‥‥。

「心当たりがあるみたいだな。もしかしてそいつ、裏切り者か何かなのか?」

「まあね。いう事聞かないから破門にしたんだけど、そしたら僕の命を狙いに来やがって。でも返り討ちにして色々と嫌な魔法をかけといてやったんだけどなぁ。蘇生されたら全部解除されてるじゃないか!」

事情はよく分からないけれど、仲間という訳ではないのかな。

でもあいつ、情報を喋らないようにしようとしてたし、気持ちとしてはまだ織田の家臣だったのかもしれない。

「話をしてもいいか?」

「えっ?ああ、どうぞ」

「それで洞窟の中にある打ち出の小槌の話を聞いて、それをちょっと使わせてもらえないかと思って来たんだ」

「あいつそんな事まで喋ったのか‥‥」

「いや、俺が強制的に聞いただけで、あいつは喋らないように耐えていた感じだったぞ」

「えっ?じゃあ裏切った訳じゃないのか‥‥」

「さっきからそう言っている」

表情が読み取れない。

喜んでいるようでホッとしているようで、何か怒っているようで残念そうで。

「それでどうだ?一応その洞窟に潜る気満々で来たんだが、許可してもらえないか?こっちは織田家の家臣に暗殺されそうになった訳だし、少しくらい何か返してくれてもいいだろ?」

破門した奴かもしれないけれど、なんとなく完全に破門した訳ではなさそうに見えるからな。

すると信長は少し笑みを浮かべた。

「だったら賭けをしないか?君が洞窟に入るのは許可するよ。それで中にある打ち出の小槌を持ち帰ってきてもらいたい。それが出来れば打ち出の小槌は君に上げよう」

「マジか!」

「でもそれが出来なかった場合は、家の者の不始末は完全に水に流して、御伽洞窟の事は全て忘れてもらう。更にゲーム挑戦の代金として百億円払ってもらう」

別にどの条件も俺にとっては大した事がないものばかりだな。

仮にすべて忘れるってのが記憶を奪うって事であったとしても、俺にとっては大した事がない。

でも愛神たちの事もあるから、一応確認しておくか。

「忘れるってのは、二度とこの件は持ち出さず喋るなって意味でいいんだよな」

「それはどうかな。僕さ、相手の記憶の一部を奪っちゃったりできるんだよねぇ。それで御伽洞窟に関する記憶だけ消させてもらうよ」

「そうか。俺も記憶に関しては似たような事ができるんだ。もしもそれ以外の部分が消されていたりしたら、その時は相応に対処させてもらうよ」

一応脅しておく。

「君も?いや、僕はちゃんとやるよ。脅かさないでよ」

「まあいいや。じゃあゲームはこれから一週間以内って事でいいか?」

「構わないよ。どうせ無理だからね」

「そんなに攻略が複雑なダンジョンなのか?」

「能力があれば攻略自体はそんなに難しくないし、打ち出の小槌も簡単に見つけられるだろう。でも君では決して打ち出の小槌を持って帰ってくる事はできない」

やけに自信ありそうなんだよな。

例えば打ち出の小槌の大きさが百メートルあるとか、重さが総司の打ち出の大槌のように重いとか、そういった何かがあるのだろうか。

あれ?そういえば総司も持ってたんだよな。

しかも元の苗字である御伽と、この洞窟の名前が同じなのもただの偶然なのだろうか。

何かありそうだけど、その辺りは追々調べるか。

今はとにかくダンジョン攻略だ。

「じゃあ場所を教えてくれないか?」

「おい、お前連れて行ってやれ」

「よろしいのですか?」

「大丈夫だろう。此花王なら約束は守りそうだ。守らないなら所詮はその程度の男って事だよ。プププププ」

そうやって煽って約束を守らせるか。

ちょっと虚け者の織田信長って感じに近いけれど、こいつ頭は良さそうだ。

とはいえ一週間もあればきっと攻略はできる。

俺には賢い仲間も沢山いるのだから。


さて御伽洞窟の入り口へと案内された。

立ち入り禁止区域に入ってすぐだった。

「おいおいおい、これはちょっとあり得ないだろ‥‥」

俺は洞窟の入り口を見て、驚いたというよりは呆れた。

云われていた通り、本当に小さかった。

それも想像していたのとまるで違う。

子供なら入れそう?

この大きさだったら子猫ですら入れないわ。

半径五センチの半円状の入り口だった。

「この洞窟、ぶっ潰して掘るってのはアリか?」

「ナシでございます。と言うよりは、壊す事は不可能かと思われます」

壊せないねぇ。

俺が本気でやれば壊せそうだが、その場合打ち出の小槌も一緒に破壊してしまいそうだ。

「諦められますか?」

「いや、この程度なら問題ないよ」

俺がそう答えると、案内してくれた騎士は少し驚いた表情を見せた。

「愛神と杏奈は町に戻っておいてくれ。どうやら俺しか無理らしいからな」

「此処で待っててもいいけど?」

「まあ好きにしてくれ。それに杏奈は町の方が良さそうだしな」

「杏奈は町で美味しい物食べたい」

「分かった。じゃあ町に戻ってるね」

「一週間以内には戻るから」

俺がそういうと、二人は町まで飛んで行った。

「じゃあいくぞ」

俺はみゆきの能力をコピーさせてもらっているんだよね。

最近は無理だけど、昔コピーしたものは使えるのだよ。

みゆきと出会った時の事を考えれば分かるだろう。

俺は一寸くらいまでの大きさになら小さくなれるのだ。

「まさか‥‥」

驚いているようですなぁ。

俺も実際に小さくなったのは初めてだ。

しかしこれいいな。

魔力がメチャメチャ凝縮されている気がする。

相手にもよるけれど、スピードが求められる戦いならこっちのが断然速いぞ。

尤も、既に俺の移動速度は桁外れなんだけどね。

「じゃあ行ってくる」

俺はライトの魔法を点灯させて洞窟へと入っていった。

とりあえずは一本道のようで俺はただ歩いていった。

五分ほど歩くと、中に大きな川が流れていた。

自分が小さいから大きくは見えるが、実際は幅数メートルの川だな。

どうやらこの川を下って行かなければならないようだが、道はなくただ川があるだけだった。

別に泳いで行ってもいいし、飛んでいってもいい。

でも何やら用意されてあった。

茶碗と箸ね。

これに乗って行けって事なんだろうな。

だったら乗っていきましょ。

俺は茶碗を川に浮かべて、箸を持って乗り込んだ。

「ひゃっほーい!」

マジで一寸法師だな。

でも結構流れが速くて、こりゃ気を抜くと転覆するぞ。

転覆した所でどうとでもなるけど、できればゴールまでこのまま行きたいな。

スポーツを楽しむように、俺は茶碗の舟で川を下って行った。

五分ほど行くと、いつの間にか流れは穏やかになった。

そして終点と分かる場所に到着した。

湖のような所に出たのだ。

そしてそこからは何処にも水は流れていない。

おそらく地下から何処かに流れれているのだろうが、それはおそらく進行ルートではなさそうだ。

こっちに道が続いているからな。

俺は茶碗から降りた。

この辺りならもう子供くらいのサイズでも移動ができそうだが、俺はそのままの大きさで先へと進んだ。

すると更に広い場所へと出た。

ここなら普通のサイズでも広すぎるくらい広い部屋だな。

そう思った時、ライトが消えて俺の体のサイズは元の大きさへと戻って行った。

「魔力が封じられたか」

魔力を封じる方法は二通り考えられる。

一つは魔力を体の中に閉じ込める方法。

この場合は別に魔力が無くなるわけではないので、ただ単純にほとんどの魔法が使えなくなるというもの。

身体強化なんかはできるので、物理戦闘ができる人なら対応は可能だろう。

もう一つは魔力ドレインだ。

この場合、常に回復する魔力があるのでゼロにはならないけれど、ほぼゼロの状態になる。

しかし俺の場合、それ以外にも更にもう少し力が使える。

昔魔力ドレインの結界に閉じ込められた時には思いつかなかったが、俺の体内には妖精さんがいるのだ。

妖精も通常の魔力は吸い取られるが、妖精自らが作り出す妖力は残る。

そして今の俺の魔力は更にチートな磨きがかかり、回復量も半端ないから、よっぽど相手が強くない限りはなんとでもなる。

今回の場合はどうやら魔力が閉じ込められているみたいだな。

まあ問題ないだろう。

俺は自らの体を光らせ視界を確保した。

さて、おそらくここで敵が出てくると思われるが‥‥。

部屋を進むと、予想通り巨大な敵が二体現れた。

体長が十メートルはありそうな赤鬼と青鬼だった。

皆が想像する通りの姿をしている。

牛の角があって虎柄のパンツを履いた奴だ。

ちなみにどうして牛の角に虎柄のパンツかというと、丑寅の方角は鬼門とされているからなんだよね。

まあどうでもいい話だけど。

しかし強そうだな。

と言っても敵ではないだろう。

魔力を体内に閉じ込められてはいるが、別に魔法が全く使えない訳じゃないし能力も健在だ。

俺は邪眼で確認した。

伝説の魔獣といった感じか。

「でもこの程度なら普通に殴れば勝ってしまうな!っと!」

俺は一瞬にして二体の鬼を殴り飛ばした。

やり過ぎたか。

一瞬にして倒したはいいが、異次元収納魔法が使えない。

魂ボールが取り出せないではないか。

仕方ない。

魂は諦めるか。

俺は外れた二つの魔石だけを回収した。

それを影へと落とす。

俺の影の中には菜乃か妃子がいるはずだ。

「預かっておいてくれ」

「分かったのね‥‥」

眠そうな声だったな。

妃子、完全に寝ていただろう。

それはともかく、こういう時の為に影の中の梅影姉妹には魂ボールを持っておいてもらってもいいかもな。

そんな事を考えながら俺は先へと進んだ。

するとすぐに奥の部屋へと到着し、その部屋の中には小さな打ち出の小槌が置かれていた。

「ちっさ!」

十センチから二十センチくらいの大きさを想像していたが、実物は五センチといったくらいの小さなものだった。

まさしく小槌ね。

しかし何処かで見た事があるような形をしているな。

ああ、総司の持ってる大槌に似てるのか。

つか簡単に手に入っちまったな。

なんで信長はあんなに自信満々だったんだろう。

帰りも鬼の部屋の向こうまで行けば魔力は戻るわけだし、戻らなくてもこのまま天井をぶち壊して戻れるよな。

それに俺には魔法以外の能力も沢山あるのだ。

どれで帰るかな。

多分二キロも潜ってないよな。

ハスターの能力で二キロ上の空間を操作して此処に持ってきて‥‥。

行けそうだ。

持ってきた空間に入ると、そこは地上よりも一キロ上空だった。

「はい生還っと!」

俺はそこから飛んで信長の元へと戻った。


「えっ?本当に持って帰ってきたの?」

「いや、持って帰ってきたらくれるんだろ?」

そんなに難しい洞窟でもなかったよな?

小さくなる能力は珍しいかもしれないけれど、奥の部屋は割と大きかったから洞窟ぶっ壊してもたどり着けたかもしれないし。

「あの洞窟にどうやって入ったんだ?」

騎士には見られているし隠しても仕方ないよな。

「俺、小さくなる事できるしさ」

「赤鬼と青鬼が出ただろ?魔法が封じられていたはずだぞ?どうやってそこを突破したんだ?」

「えっ?普通に倒したけど?まずかったか?」

「嘘?」

「マジで」

「でもその小槌は‥‥織田家の男系しか持ちだせないはずなんだ‥‥」

織田家の男系しか持ちだせない?

「どういう事だ?」

「あの洞窟はそのように作られているんだよ。逆に言えば持ち出せたお前は織田家の男系を継承しているって事なんだ」

「はい?」

ちょっと待てよ。

俺は碓氷で作られた強化人間かホムンクルスだよな。

確実な情報じゃないけれど、だいたいあってるはずだ。

あれ?でも、そうだと汽車はやはり弟みたいなもんで、その弟みたいな汽車が信長とソックリなのはやはりそういう事なのだろうか。

「此花王は小さくなる事ができるんだよな?」

「まあな。これが何か?」

「織田の本当の能力は小さくなる事。そして誰かを小さくできる事なんだよ」

「でも俺、誰かを小さくはできないぞ?」

「えっ?」

「ああ‥‥」

少しの間、微妙な空気が流れた。

「いやいや、此花王は間違いなく織田家だ。自覚してくれ。そして小さくなる能力と小さくさせる能力が使えると自覚してみてくれ」

無茶言うな。

思い込めって言われてもな。

でも織田家ってのは割としっくりくるんだよな。

汽車と信長が似てる事を考えてもさ。

そしたら俺、小さくさせる魔法が使えるのかな。

「あっ‥‥今何かが解放された感じがしたぞ。ああ、小さくする魔法、いやそういった能力使えるみたいだ」

「そうか良かった。自覚すれば使えるんだ。我が家の能力だからな」

「あれ?でもさ、織田家って高い魔法習得能力が持ち味の家系じゃなかったっけ?」

「えっ?ああ‥‥それな。嘘だ。此花王は織田の家系で間違いなさそうだから話すけどな、その能力は本当は朝倉の能力なんだ」

こんな話、どこかで聞いた事あるな。

そういえば此花と難波津の関係と似ているのかも。

「もしかして主従入れ替わりで朝倉を守る為にか?」

「よく分かったな。でも本当は俺が王様になる為に嘘伝説で朝倉を騙したんだけどな」

「マジか?お前悪い奴だな‥‥」

「マジだぞ。自覚している‥‥」

でも何か色々おかしいぞ。

こいつ二十歳前だよな。

織田家は少なくとも泉黄歴が始まる前から王族だったはずだ。

「それ何時の話なんだ?」

「ハッキリとは覚えてないけど、三百年は前じゃないかな?」

「もしかして信長って不老不死か?」

「まあね。だから俺が盾になるから!とか言って騙した記憶があるよ!ははははは」

「じゃあこの打ち出の小槌はなんなんだ?必要ないんじゃないのか?」

朝倉家は元々魔法習得能力を持って生まれてくる。

おそらく俺を暗殺しようとした奴もそのはずだ。

なのに何故打ち出の小槌で叩く必要がある?

「それはそれで重要なアイテムなんだよ。そしてそれを守るのが織田家の本当の役割さ。横で叩くとかって使い方は朝倉たちを納得させる為の方便だけどね」

ややこしい。

一体どうなっているんだ。

「じゃあその小槌の本当の使い方は?」

「ん~‥‥実はこれだけじゃ何もできないんだよね。もう一つ大槌があってさ。この小槌で大槌を叩くと効果が発揮されるんだけどね」

おそらく大槌って、総司の持ってるヤツじゃないのか?

「その大槌は何処にあるんだ?」

「それが今は行方不明さ。御伽洞窟は大小二つあってさ、大の方に封じられていたんだ。でもかなり昔に持ち出された。持ちだしたのは洞窟を守っていた島津家の者だと思うんだけど、今の島津家は妖精魔術が使えないから違うんだよね。旧島津家の誰かって事になるね」

持ちだしたのは総司のご先祖様だろう。

総司は妖精魔術が使える。

妖精が友達契約をするのは旧島津家の男系の血を引く者のみ。

「それで、その小槌で大槌を叩くと何が起こるんだ?」

「話では確か魔力が大きくなる丸薬が出てくるんだったと思うよ。あくまで言い伝えね。そしてそれを呑んだ者は上杉の能力である魔力限界突破能力と、朝倉の魔法習得能力の両方が得られるって話さ」

「全てスッキリしたよ。俺は織田家の血を引いていたのか。どうでもいいけどな」

「そんな事言うなよ!これからは親戚同士仲良くしてよー」

信長の方が圧倒的に年上なのに、なんか出来損ないの弟が出来た感じだな。

「じゃああの朝倉の刺客も返した方がいいな」

「別にどっちでもいいぞ。あいつ女だから能力の継承は数代しか無理だからね」

「えっ?あいつ女なの?男だとずっと思ってたんだけど」

「そうだそうだ、性別逆転の呪いをかけておいたんだった!ははははは!忘れてたよ。間違いなく女だぞ。喋りも男っぽいけどね」

「そうなのか。あれ?継承は数代って、女系でも継承できるのか?」

「数代だけだけどね。男系の朝倉は何人かいるから問題ない」

ちょっとあいつが可哀想になってきたな。

蘇生はもういいかって思っていたけど、更生の余地があるなら蘇生してやるか。

「話はだいたい分かったよ。じゃあ俺は戻るわ。小槌は貰って行くぞ」

「別に構わないけど、それを守るのが此花王、いや策也の使命だからな。御伽洞窟に置いといた方が安心できると思うけどね」

「あんな洞窟、俺なら簡単にぶっ壊せる。俺が持ってるのが一番安全だよ」

俺はそう言いながら異次元収納に小槌をおさめた。

「えっ?異次元収納魔法も使えるの?」

「ああ、それが?」

「もしかしたら策也にも朝倉の血が流れているかもしれないな。不老不死と変化の魔法以外大抵使えるなら多分そうだ」

「それも使えるぞ?」

「えっ?本当に?」

「ホントホント」

俺は変化して見せた。

まあ元々は使えなかったし、信長の言う通り朝倉の血も何処かに流れているのかもしれない。

女系でも数代は継承されるらしいからね。

「たまげたねぇ‥‥こりゃ織田家も安泰だよ」

俺は姿を戻した。

「じゃあ愛神、杏奈帰るぞ」

結局こいつら出番なかったし。

「ちょっと待て!その子たち織田家の秘密を知ってるのはマズイ!記憶だけ消さないと!」

「大丈夫だよ。こいつら俺の人形(ゴーレム)だからさ。信長の後ろにいる騎士もそうなんだろ?きっと」

「やる事が似ているなぁ。血は争えないってね」

「そういう事。じゃあな!」

俺は瞬間移動魔法で愛神と杏奈を連れてマイホームへと戻ってきた。

俺はすぐに総司の大槌を借りて試してみた。

すると信長の言った通り丸薬が一つ出て来た。

さて、誰に呑ませてテストするかなぁ。

「それはなんですか?」

「信長曰く、魔力限界を突破させ、魔法習得能力を高める薬らしいぞ」

「そんなのが出てくる大槌だったんですね」

「色々まさかな話も聞いてきたから、後で話してやる。それよりもこの丸薬、誰かで試したいよな。できれば不老不死の人間がいいな」

「だったら麟堂に飲ませれば‥‥」

「私は実験の為にそんなの飲まないわよ」

聞かれていたか。

そもそもリンは飲まないと思っていたけどさ。

騙せそうなカモは‥‥。

「策也さん!大変なんだよ!ニュースを見るんだよ!」

「おお、いい所にきたな金魚、美味しい薬が手に入ったんだ。これが最後の一個だ。まあ呑み込んでみなよ。美味しいから」

「最後の一個なんですか?嬉しいんだよ。呑み込めばいいんですね?」

「そうそうごっくんと!美味しいから」

呑み込んだら味なんて分からないだろうけどね。

「ありがとうなんだよ!」

金魚は嬉しそうに丸薬を手に取って呑み込んだ。

「どうだ?」

「んー‥‥特に美味しくないんだよ。あれ?でもなんだか何かが解放された感じがするんだよ」

俺は邪眼で金魚を確認した。

能力に大きな変化はないが、何か潜在的な力が感じられた。

そしてゆっくりだけど、徐々に魔力が大きくなっているのも間違いなさそうだ。

これはきっと上手くいったな。

「どうやら大丈夫そうだ。この丸薬をドンドン出すぞ!」

俺は大槌を小槌で叩いた。

でも丸薬は出てこなかった。

「あれれ?」

「一回きりなんですかね?」

「何よ。私にも教えなさいよ」

「どうしたんだよ?金魚にも説明してほしいんだよ」

そんなわけでこの後、俺は『隠す事なく』全てを仲間に話した。

織田家の役割だかなんだか知らないけれど、別に仲間にまで隠す必要はないだろう。

俺は色々とたっぷり三十分は話した。


その後再び信長に会いにいった。

それとなく丸薬が一個しかでなかった事について理由を聞く為だ。

聞き出した話によれば、どうやら効果は一日一回だそうだ。

これから毎日一個ずつ地道に出していくか。

めんどくせぇ~!

2024年10月9日 言葉を一部修正

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