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見た目は一寸《チート》!中身は神《チート》!  作者: 秋華(秋山華道)
血統編
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此花策也が弱い件

『とうとう此花策也が此花の王になったみたいだな』

『完全に勘当コースかと思ったら逆に王位継承とか、一体何が起こっているのか』

『それだけ此花策也の能力が高いって事なんじゃね?』

『そういえばあの配信映像、魔法通信ニュースじゃなくてマイチューブだけだったよな』

『それってもしかして、アルカディアと繋がっている可能性無くないか?』

『十中八九なんらかの形でつながっているんだろ』

『それに神武国の領土になっていた島々を、ほとんど此花領に編入したとか』

『神武国との繋がりもほぼ間違いないな』

『謎乃王国は既に兄妹国家だってハッキリしているし、全部合わせれば五大国に匹敵する勢力になるだろ』

『それで今まで誰も気づかなかったのか?』

『もしかしたら此花麟堂のパーティーにいたのも本人だったりしてな』

『謎乃汽車がいるだろ。それに木花咲耶と浦野策也の行動を追った奴がいたけど、離れすぎていて同一人物はあり得ないって話だよ』

『瞬間移動魔法が使えれば行けるって話もあったぞ。最近だって神出鬼没だし使える可能性は高い』

『でもあの能力は織田家以外ほとんど使えないらしいけどな』

『織田の血が流れていたりして。でもマジ謎だらけだし、今後も注目だな』

注目されている。

予想通りとは言え、こりゃしばらく自粛したいな。

なんて思ったのはリンの誕生日。

今日で三十歳になるわけだが、見た目は二十一歳で止まっている。

俺が不老不死にしてやったからな。

それでもパーティーはちゃんと開催する。

俺も頭が痛い状況だし、全てを忘れて騒ぎたかったからさ。

それでこの日は酒に酔ったまま運河建設の現場で邪魔者が来ないか監視していた。

「策也さん、大丈夫ですか?」

「ん~どうしてこんな所に山女ちゃんがいるんだ?」

ヤベェ‥‥酔ってたしよく覚えてないや‥‥記憶記憶と‥‥。

俺はなんとか魔法記憶をあさるが、なかなか記憶が見つからない。

ちょっと飲み過ぎたか。

「策也さんが呼んでくれたんですよ?おかげで酔っぱらっている策也さんが見られました」

山女ちゃん、そこは喜ぶ所じゃないよ。

『このクソ酔っ払いのおっさんがぁ!』って普通なら怒る所だよね。

山女ちゃんがネガティブな発言をするの聞いた事がないかも。

「ああヤダヤダ。酔っ払いはやだねぇ~」

そうそう、那須香みたいな反応が普通だよな。

そういや転生前もこんな事、何度もあったよなぁ。

だから飲み会に行けば何時も、気が付いた時には女性の同僚はゼロになってるんだ。

「今は山女ちゃんがいてくれるだけで最強だよ‥‥」

「策也さん子供みたいです」

「子供はお酒飲んじゃダメですよぉ‥‥」

俺が死んだあの日もこんな感じだったよな。

あの日は少し雨が降ってたんだ。

帰るのが遅くなるって妻に話してなくて、だから尚更家に帰るのが嫌だった。

普段なら『夕飯どうするの?』とか色々メッセージが来るんだけど、何故かあの日は無くて『いよいよ別れ話でも切り出されるのかな』なんて思っていた。

そんな気持ちだったから山手線ゲームも集中できなくて、冗談だったキノコを食う罰ゲームも躊躇なくやっちゃったんだよ。

「策也さん、しっかりしてください。どうやら今日は邪魔者が来ちゃったみたいです」

「マジかぁ。このクソ酔っぱらっている時に‥‥敵の強さは‥‥」

クッソ、割と強いのがいるなぁ。

「夕凪?夕凪はいるか?」

「策也、いるよ‥‥」

「今日はお前が頼りだ。俺はこんなでまともには戦えない」

本当はアルコールを除去ってしまえば楽勝なんだけどさ、酔っぱらっていたい気分の日もあるよね。

それに今日は、あの時とは違って女の子ばかりに囲まれている夜なんだ。

悪い事にはならないはず。

ミケコたちもいるしな。

でも敵に神クラスがいる以上、油断はしちゃいけない。

いざとなったら何とでもできるように準備はしておこう。

「何をすればいいの‥‥」

「あの強い奴、分かるな?山女ちゃんがあいつを足止めして、夕凪がとどめを刺すんだ。アレは殺さないようにとか手が抜ける相手じゃない。マジでいけ」

「分かったよ‥‥」

「策也さんは適当に休んでてくださいね」

なんだろう。

やけに気分がいいなぁ。

酔ってても負ける気がまるでしない。

そうだよ、これからは此花策也としてやりたいようにやるんだ。

俺たちは敵に向かって行った。

俺は結構雑魚からの攻撃も食らいまくっていた。

当然こんな連中の攻撃なんてノーダメだし、むしろ目が覚めて良い感じなんだけど、周りからは心配された。

「策也さん、大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫、自分の戦いに集中して」

「兄上様!仇はミケコが打ちます!」

「ヨロシコ!」

「策也を殴った人‥‥悪いけど死んでもらう‥‥」

あちゃー‥‥。

夕凪がキレちゃったよ。

戦場の景色が一変して地獄のように変化していった。

夕凪の混沌の具現化だ。

怪物が召喚され一瞬にして辺り一面が火の海になった。

いやぁ~綺麗綺麗。

「駄目だ!今日は引くぞ!」

あらら、逃げて行っちゃうよ。

あの神クラスの魂は捕らえておきたかったけど、まあいいか。

「みんな、ご苦労!」

「兄上様、今日はお疲れのご様子。早く帰って休んでください」

「うんうん。策也さん、帰りますよー」

「じゃあなミケコ。お休み」

俺はそう言ってミケコたち以外を連れて瞬間移動して帰った。


気が付けば、俺はマイホームの自室で寝ていた。

いやなんていうか、酒を飲みまくって久しぶりに昔の事を思い出したよな。

みんな元気にしているんだろうか。

まあもうどうでもいいんだけどさ。

俺は再び眠りにつくのだった。


さて次の日には、汽車も昨日の戦闘映像をマイチューブに上げていた。

汽車には戦闘よりも記者活動をやるように言ってある。

もちろん仲間を守る事が最優先だけれど、汽車には記者活動をちゃんとやってほしいんだ。

ミケコもできればそっちの活動がメインにしてやりたい。

あの子に殺し合いは似合わないよ。

まあミケコは殺さないけどね。

どれどれ、汽車以外にも映像を上げている人がいるな。

俺は何時ものように庭に出て、そこで映像を確認する事にした。

ヤバいな俺、殴られてばっかりじゃないか。

みんなも俺を心配して動きにキレがない。

こりゃ酔っぱらって戦闘するのは今後避けた方がいいかもしれない。

本人は割と面白かったんだけどね。

普段殴られるなんてまずありえないし。

体が勝手に反応しちゃうしな。

ではコメントを読んでみるか‥‥。

『此花策也が戦っている所初めて見たけど、弱すぎないか?』

『いや、あれだけ殴られて斬られているのに、出血一つなく顔が笑っているのが不気味だと思うぞ』

『相手は別の意味で恐怖を感じたに違いない』

『でもやっぱり弱いよね。耐久力は有りそうだけどさ』

『今までなんとなく名前が売れたのは強い仲間のおかげって感じか』

『ミケコとか半端なく強いし』

『アレは強いってよりは速いだろう。同レベル以上が相手だと自分でとどめを刺せないからな』

『でも策也よりは圧倒的に強いぞ』

『そこには同意する』

『それよりも昨日ヤバかったのは、このピンクの髪のツインテールの子。メチャメチャ強いんじゃね?』

『つか策也の周り、みんな可愛い子でうらやましいぞ。なんでこんなに可愛くて強いのが集まってるんだ?』

『策也って守ってあげたい系なんじゃね?』

『そっか。俺もその線めざそうかな』

『弱くてもいいからな』

完全に俺、弱い子扱いされているな。

この映像見たら確かに弱いんだけどさ、でも敵の強さは結構なもんだぞ?

それにみんなが見て分かるように、十倍スロー再生がデフォルトじゃん。

まあでもこれくらいの反応の方が俺としてはありがたいか。

いや、弱い子扱いは流石に侮られ過ぎるから、今度はもう少し強い所を見せる事にしよう。

抑止力ってのはそれなりに強くないと駄目だからね。


ところで今日の予定だが、旅芸人の一座からショーを見に来てくれと招待状が来ていたので見に行く事にしていた。

この旅芸人の一座は時々此花領にもやってくるのだ。

それで俺が王位を継承したお祝いとして、無料で見せてくれるらしい。

子供は金魚やメイドたちに預け、俺はみゆきと一緒に観に行く事にした。

普段はサーカスの巨大テントのような所でやるのだけれど、今回は王様が見に来るという事で町の巨大会場で行う。

「別に普通の所でもいいのにな」

「でもこんな所で見るなんて、なんだかわたしたち偉くなったみたいだよ」

みゆきの言う通り、別に何も変わっていないのに偉くなったみたいなんだよね。

個室から観るとか死ぬまで無いと思っていたし。

そんなわけで居心地は悪かった。

でも旅芸人のショーは割と凄くて、気が付けば俺もみゆきも楽しんでいた。

魔力の強い奴もいるけれど、ほとんどが魔力を一切使わずに曲芸をやってのける。

綺麗な踊りを見せたり、楽器を弾く人もいた。

色々な特技を持った人たちが集まっているようだった。

俺は自分がチートだと思っていたけれど、こういう人たちもある意味チートだよな。

魔力無しでなんでこんな事ができるのか。

中には魔力を使う人もいたけれど、多くが本物の芸人だと思えた。

「みゆき、凄いな。この人たちは本物だよ」

「うん。わたしなんて魔力がなかったらでんぐり返りもできないよ」

「いや流石にそれはできるだろ‥‥えっ?」

「ん?」

みゆきはどうやらでんぐり返りもできないらしい。

魔力を使わなかったらという前提条件があるけどさ。

芸は終盤に入ってきた。

会場は暗くなり、火を使った曲芸が披露されている。

幻想的で炎だけが会場に踊っていた。

これを見ていたら目がおかしくなりそうだな。

だいたいこういうシーンに暗殺とか起こったりするんだよね。

なんて考えていたら、突然大きな殺気を感じた。

「みゆき」

「うん、大丈夫」

殺気を感じる方向から、針のようなものが飛んできた。

俺はそれを二本の指で挟むように捉え、全く同じ方向へ飛ばして返した。

手ごたえはあった。

針には強力な毒が塗ってあった気がする。

殺気は既に消失しているが、その者はその場から動いていない。

俺は邪眼で確認した。

旅芸人一座の中で一番魔力の高い者の仕業だったようだ。

旅芸人に紛れ込んでいた暗殺者か、それともこの旅芸人一座を隠れ蓑にする暗殺者集団なのか。

炎の芸が終わった時、そいつが倒れているのが発見され、この日の芸は此処で終了となった。

俺は一応死んだそいつの魂を回収しておいた。

「どうやら暗殺者が旅芸人一座に紛れ込んでいたみたいだな」

「うん。皆さんあんなに謝らなくてもいいのにね」

「そうだなぁ」

でも、普通の国王だったらあんなのでもきっと殺されていたのだ。

この世界、表向きは割と平和だけれど、こういう陰湿なのが多いよな。

「でも芸は良かったよね。今度はお金払って見にこようよ」

「今度か‥‥そうしよう」

こうやって次の約束ができるって良いよな。

未来が明るくなる。

でも俺って元々そんな事を思う奴だったかな。

基本面倒くさがりで、先の約束は全部『気が向いたら』って返事していた気がする。

この世界に来てみゆきに出会って、俺は本当に変わったんだと心より感じた。

俺はみゆきを家まで送った後、いつもの魔法実験場にやってきた。

先ほど俺を暗殺しようとして自らの針に倒れた男の魂をスマホ召喚するのだ。

全く、誰が俺を暗殺しようとしたのか。

聞いてもおそらく情報は出てこないだろうけれど、一応聞いておかないとな。

俺は魂を憑依させたスマホのカメラを自分に向けるように持った。

「おいお前、なんで俺を暗殺しようとしたんだ?誰に頼まれた?」

「ん?俺はどうなっているんだ?別に誰にも頼まれてないよ。あんたみたいな有名人を殺せば暗殺者として名が売れると思っただけだ」

「えっ?‥‥それだけで?」

「それだけ、じゃない。とても大きな理由だ、くそっ‥‥簡単に殺せると思ったのに」

まさかそんな事で人を殺そうと思うのか。

表向き割と良い世界だと思っていたけれど、闇の部分は確かにあって。

名を売る為だけに殺人をするなんて、それはかなり恐ろしい事だ。

この世界では目立つ事が思った以上にリスクなのか。

そういえば世界会議ではみんな黒塗りだし、トップが出てくる事もまずありえない。

ようやく黒死鳥王国が交流の場にはなっているけれど、おそらく世界中でそこしかないんだ。

黒死鳥王国のセキュリティは建国当時よりも更に徹底してきている。

外部から王都に入れるのは、プラチナ以上の住民カードを持った者だけだ。

町そのものが超セレブ専用のテーマパークのようになっている。

夜の遊びだけどね。

何にしてもこんな奴がいるのは悲しいよな。

場合によっては蘇生も考えていたけれど、この程度の奴を更生させるのも面倒だし成仏させてやるか。

そう思ったのだが、スマホに触れていてこいつの能力にいいモノがあるのに気が付いた。

『瞬間移動魔法』だ。

この魔法が使える者は貴重で、我が陣営にも数えるほどしかいない。

みゆきですら覚えたのはごく最近の事なのだ。

おそらくこの魔法は、生まれ持った適正が無ければほぼ覚えられないと言って良かった。

なのに『こいつ程度』と言えば語弊はあるが、魔王クラスにも満たない魔力で使えるのは何かがある。

兎白のように神だとかね。

「お前、瞬間移動魔法が使えるようだが、何故使える?何処で覚えた?」

「俺は織田家に仕える朝倉家だからな。子供の頃から訓練させられたよ」

「訓練すれば覚えられるものなのか?」

「おっとその辺りは‥‥あ‥‥」

スマホ状態だと、知っていればそれを強制的に喋るしかないんだよね。

「織田家の領内にある‥‥御伽洞窟の奥に‥‥打ち出の小槌が‥‥ある‥‥それで頭を叩くと‥‥くっ‥‥織田家のように‥‥魔法習得スキルが‥‥向上する‥‥」

「ほう。織田家ってのは魔法習得能力が高い家系なのか」

「そうだ」

それと同じ能力が得られる打ち出の小槌があるのか。

確かにこいつの持っている魔法は種類が豊富だ。

滅多にいない全属性魔法使いでもある。

「その打ち出の小槌がある御伽洞窟ってのは、織田領内の何処にあるんだ?」

「丁度中心辺りに‥‥立ち入りを禁止された区域がある‥‥そこだ‥‥」

そうか。

ちょっと行って取ってくるか。

でも洞窟内とはいえ一応織田家の持ち物って事になるのかね。

盗むのも良くない気がするし、誰かを連れて行って試すか。

「行っても無駄だぜ!きっと洞窟へは入れない」

「どうしてだ?」

「それは‥‥洞窟が‥‥小さすぎて入れない‥‥からだ‥‥」

小さい洞窟なのか。

だったら連れて行くなら子供の姿の奴がいいか。

「それに入れたとしても、打ち出の小槌は効果を発揮しないだろう」

なんかこいつ、喋らされるの拒む癖に、色々とペラペラと教えてくれるな。

アホだな。

「どうやったら効果を発揮するんだ?」

「教えるわけ‥‥う‥‥打ち出の小槌と対象になる者の‥‥大きさによって‥‥叩く強さの調整が必要だ‥‥それに‥‥打ち出の小槌は‥‥横で叩く‥‥必要が‥‥ある‥‥」

「そうか、ありがとう」

「何故俺は喋ってるんだ?」

こいつ割といい奴かもしれない。

「他に瞬間移動魔法を覚えるにあたり隠している事があったら全部教えてくれ」

「もう‥‥ねぇ‥‥瞬間移動魔法を覚えるには‥‥実際に何度も‥‥体験する‥‥必要がある‥‥」

そうなのか。

俺の仲間はみんな何度も経験していると思うけれど、それでも覚えられてないんだよな。

その打ち出の小槌が必要って事か。

「他には何かないか?」

「特には思いつかないよ」

多分こいつアホだから、ちゃんと聞かないと出てこないんだろうなぁ。

「分かった。とりあえず一旦魂に戻すぞ」

「えっ、何それ?」

俺はスマホへの憑依を解除し魂を回収した。

一度織田と会ってみるか。

盗むのも良くないしな。

そんな訳で俺は、織田の王様に会いに行く事を決めたのだった。

2024年10月9日 言葉を一部修正

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