ありがとう!アマテラスちゃん!
2024年9月29日より、1度目のチェックをします。
神の声が聞こえるか?
もうすぐ世界に魔王が現れる。
ヤツは欲望のままに世界を支配するだろう。
その災厄を、いや災悪を防ぐには、お前は全てを捨てなければならない。
姿を変えて、聖剣エクスカリバーを探す旅にでよ。
さすれば災悪は防がれる。
世界の平和は今、お前の行動にかかっている。
頼んだぞ‥‥。
そんな女の声が聞こえたかどうかは既にもう記憶にはないが、なにわともあれ、どうやら俺は死んだらしい。
思えば長いようで短い人生だった。
つぅか三十九歳で死ぬとか中途半端なんだよな。
一人娘はまだ反抗期の中学生だし、家のローンも返し終わっていない。
いや、俺が死んだから生命保険でなんとかなるかな。
妻は‥‥もしかしたら喜んでいるかもしれない。
俺は浮気性だから多分辛い思いもしていただろう。
一線を超えるような浮気はしたことがないけれど、結構遊び歩いていて心配もかけていたと思う。
まっ、死んで良かったのかもしれないな。
しかしまさかワクチン打って死ぬとは思わなかったなぁ。
今世界では、なんか新型コロナウイルスとかっていうのが蔓延していて、パンデミックだとか騒がれている。
その対応手段としてワクチンが開発され、国民は皆それを接種するよう政府から通達があったんだ。
そんなわけで極普通の国民だった俺は、普通に接種したんだよな。
そしたらいきなり体が重くなって、気が付いたら死んでいたんだ。
まさかそんなヤバいワクチンを国民に打たせるなんて思ってなかったよ。
いやぁ~まいったね。
「おーい!御伽さん!御伽策也さん!起きてください!転生のお時間ですよー!」
ん?誰かが俺を呼んでいる?
起きろとか言ってるけれど、一体誰だ?
起きろって事は、俺は生きているのか?
もしかして死んだのは夢っていうベタなオチだったのか?
「生きてませんが、起きてくださーい!御伽さんは転生者に選ばれたんですよー!昨日七色に光るキノコを食べましたよね?アレであなたの死と転生が確定したんですよー!」
ん?キノコだと?
そういえば昨日飲み会の帰りに山手線ゲームをして、負けたら道に生えていた七色に光る怪しいキノコを食べるっての、やった気がする。
味もなにも食った事さえほとんど忘れていたけれど、そういえば食ったな。
そうか。
俺が死んだのはワクチンじゃなくて、そのキノコが原因だったのか。
どうりで死んだのは俺だけな訳だ。
それまでワクチンで死んだとかって話、聞いた事もなかったもんな。
「いい加減起きてください!起きてくれないと悪戯しちゃいますよー!」
何!?悪戯だと!?
それはもしかして、ほっぺをつつかれたり、おでこに肉と書かれたり、或いはちゅっ、チューされたりするってヤツですか?
「もう!さっさと起きてください!後が閊えてるんですから!えいっ!」
俺は頭を何かでたたかれ、ハッと目が覚め跳び起きた。
「うおっ!なんだ!?」
「はい、おはようございます。やっと気が付いてくれましたね」
「おっ、おう‥‥おはよ‥‥」
俺の目の前には、かなり好みの可愛い女の子が立っていた。
長い黒髪が実に美しい。
その女の子の装いは、コスプレをしているのかと思うような素晴らしいものだが、あまり見ない恰好だった。
いや、アニメやゲームの世界ではよく見る、古き日本の女性が着るような‥‥。
巫女服のような、そうそう、神様が着るような豪華さのある衣装だった。
「か、可愛い!なんて俺好み!パーフェクツだ!」
「あらありがとう。嬉しいわね。転生ポイント最大までサービスしちゃうわよ!」
「転生ポイント?そんな事より、とりあえず友達から始めませんか?」
俺は見た事もないような好みの女性を前に、なんとか仲良くなろうと必死だった。
「残念だけど、あなたと私は今だけしか会う事はできないのよ。転生アニメの世界じゃ女神も一緒にっての有ったりするけど、この話でそれはないのよね」
くっ!今しか会えないだと?!
アレ?今転生アニメとか言ってたな。
それにさっきも転生ポイントがどうとか‥‥。
「あっ!‥‥俺やっぱり死んでるんだね」
俺は何か目が覚めたように、一気に現状を理解し始めた。
よく見ると、俺は雲の上のような世界で、この超絶可愛い女性と二人でいた。
「そう。御伽さんは三十九歳で死にました。それで今、転生を前に女神である私、『天照』と話をしている所なのよ」
「おお!すげぇ!あんたがアマテラスちゃんか!メッチャ会いたかった!日本の最高神で女神!俺、大好きだったんだよね!」
俺は興奮した。
アニメやゲームの世界でしか知らないけれど、アマテラスと言えば俺にとってはアイドルみたいなもんだ。
どこかのアイドルが神とか云われていたりするけれど、笑止千万。
アマテラスちゃんは本当の神だっつーの。
「もう。アマテラスちゃんなんて呼ばれたの三千年ぶりくらいかしら。御伽さんから見れば私はおばあちゃんなんだよ」
そうは言いつつも、アマテラスちゃんは照れてとても可愛かった。
もう殺人クラス。
ぶっちゃけ死んでもいいと思えるくらい可愛い。
既に死んでるんだけどね。
「歳は関係ないよ。可愛いもんは可愛いし、好きなもんは好きなの。くっそぉ~今だけしか会えないのなら、写真くらい撮っておきたいなぁ」
本当、マジで写真欲しい。
だってこんなに俺好みで可愛い子、三十九年生きてきて一人も見た事がないんだよ?
しかもそれが神様で、大好きなアマテラスちゃんって、写真の一枚くらい撮らせてくれても良いよね。
「そんなに想ってくれるのは嬉しいんだけど、そろそろ転生する時間が近づいてるのよ。早く要望を言ってくれないと、全部適当に決まっちゃうわよ」
くっ!そうなのか‥‥。
もう時間がないのか。
仕方ない。
これ以上はアマテラスちゃんにも迷惑になるだろうし、ここは模範転生者になってサクッと転生するか。
「要望ねぇ‥‥」
俺は少し考えた。
いや、一瞬考えてすぐに思いついた。
「じゃあハーレム‥‥」
そこまで言ってから俺は口をつぐんだ。
ヤバいヤバい待て待て待て。
アマテラスちゃんにそんな事言ったら引かれるだろうが。
チラッとアマテラスちゃんを見ると、少し『汗』みたいな顔をしている。
そういえば最初寝ている俺と話をしていたような。
心の中を読まれているのでは?
いや考えるな。
ハーレムは嘘!
嘘だから引かないで!
「や、やっぱり、チートな能力者でお願いします。魔法もスキルも全部使えて、ステータスもマックス?みたいな?」
ちょっと欲張りすぎかな?
アマテラスちゃんあきれてないかな?
「うん、それくらいなら大丈夫だよ。最初に言ったけど、転生ポイント大サービスしちゃうから、もっと要求があっても大丈夫だし」
なに?これでも楽勝だと?
だったらもっと言っておくか。
「容姿とかはどうなるんでしょうか?」
なんか俺、さっきから敬語になってるぞ?
「容姿は基本的には今のままよ。要望があれば言っても大丈夫よ」
おお!神だ!
神なんだけど。
「じゃ、じゃあ、歳は十八歳の男子で見た目はイケメン‥‥五体満足健康体でお願いします!」
危ない危ない。
色々要望したはいいけど超病弱とか両手がモゲてるとかだと困るもんね。
「うん。大丈夫じゃないかな。もしもポイントが足りなくても、少し何処かが削られたり、スタート時の難易度が高かったりするくらいで、酷い事にはならないと思うよ」
「そ、そうなんですか」
俺は安心した。
いやこれはちょっと待て。
これだけの能力を持っていたとしても、いきなり俺以上の敵が現れて殺される事もあり得るかもしれない。
できれば俺は自分の手でハーレムを‥‥。
嘘です嘘です。
えっと、きらびやかな楽園を創ってずっと楽しく生きていきたいから、これだけではまずい気がする。
「じゃあ、不老不死でお願いできますか?」
これはかなり大それた要求な気がする。
俺はドキドキしながら上目遣いでアマテラスちゃんの顔を窺った。
「大丈夫よ。これなら問題ないわ」
「よっしゃー!」
なんか知らんけど受け入れられまくりだわ。
「じゃあそれでいいかな?」
「オッケー‥‥いやちょっと待って、最後にやっぱりツーショット写真が撮りたいんだけどできないかな?」
俺はやっぱりアマテラスちゃんとの出会いを残しておきたかった。
「分かったわ。少しだけデメリットが増えるけどそれでも良いかな。御伽さんの希望には支障がないと思うけど」
「マジで!?いいよいいよ!写真が撮れるのならもうここで死んでもいいや」
いやマジで。
どうせ死んでるしね。
「うん。じゃあ横に来てあの少し雲に穴が開いている所を見てくれるかな」
「は、はい!ただいま!」
俺は急いで立ち上がりアマテラスちゃんの横に立つと、言われた場所を見て笑顔を作った。
「じゃあ撮るわよ。はいチーズ!」
アマテラスちゃんはそう言いながら、俺の腕に手を絡めてきた。
うは!
マジ死んでもいいわ。
俺がそう思った時、どうやら時間切れのようで転生が始まった。
俺の体は徐々に透明になっていく。
「頑張ってね!頑張ればきっとハーレムもできるわよ」
やっぱバレてるし。
でも俺の本当の願いは‥‥。
「ありがとう。また会いたいな」
「‥‥。それと不老不死はあなたの能力にあるものだったから、その願いはマイナスになったかもね‥‥。その分写真が撮れたし‥‥最後の願いも‥‥」
俺に聞こえたのはそこまでだった。
不老不死がマイナスか。
どういう意味かは分からないけれど、いよいよ俺の転生人生が始まる。
だんだんと意識が遠くなり、俺の頭は真っ白になって行った。
2024年9月29日、日本語のおかしな所をいくつか修正。