#67 疾走
~ウルド アステリオン:遺跡~
あれからしばらくまた長い通路を歩いていた。
「うぅ・・・!」
メロは、ブルブルと震えていた。
「ぷぷ・・・まぁださっきのトラウマ残ってんの~?」
「うるさいのです・・・!」
ルタが茶化すとメロは言葉だけで弱々しく食ってかかる。
「はぁ・・・。」
まぁ無理もないだろう。
巨大ゴキブリの大群なんて出来ることなら一生見なくて済むならそうしたい位のトラウマ映像だ。
正直俺だって未だに鳥肌が立ってるくらい・・・いや。
あの時は戦ってる最中でそっちに頭割いてたから寧ろ後々冷静に思い返したから余計気持ち悪い。
まぁとにかくだ。
「・・・。」
俺は手に持っていた自分の剣を見る。
刃は折れているが半分残っている。
戦えない事はないがさっきみたいな長時間の激しい戦闘がこの先あったら間違いなく詰みだ。
まぁでも幸い俺たち三人はいざとなれば魔法は使える。
最悪折れた剣でも魔法の媒体に出来るから問題ない。
だが魔法も長く使えばかなり消耗は激しい。
「・・・。」
ルタの方を見る。
先程メロをからかっていたように気丈に振る舞っているが、実際かなり疲弊しているかもしれない。
こいつは妙に強かなところがある。
この遺跡に入ってすぐの水に関しては特殊だったが本来のこいつはそういう弱みを人に見せないよう、上手く隠す奴だからな。
「!!」
いや、待て待て!?
何馬鹿な事考えてんだよ俺!
こいつは普段から俺のことを小馬鹿にしたりからかったりするし、時には許容範囲を超えた愉快犯もする奴だぞ!?
何まるで心配してるみたいなこと考えてんだよ馬鹿か俺は!!
「ん~?」
「ッ!!?」
ルタがジト目でニマニマ笑いながら俺を見ていた!!
マズい、何か勘付かれたか!?
「どうしたの~、お兄ちゃ~ん?」
「何でもねぇよ!!」
「なんでもなくないでしょ~? さっきからチラチラ見ちゃ目を逸らしちゃってさ♪ エッチ~♪」
「なんでチラチラ見たくらいでそんな風に言われにゃならねぇんだよ! 自意識過剰なんじゃねぇか!?」
「もしかして何か『心配してくれてる』・・・とか?」
「ッ!!?」
「あは♪ 当たり~☆」
物の見事に図星を突かれて顔が強張ったのをルタは見逃さず、考えを見抜かれてしまう!
「う、うるせぇ!! 仮にそうだとしてもいらん心配だろ!! お前みたいな面の皮の厚い女、殺しても死なねぇだろ!!」
「ええ!? それって私が太ってるってことぉ!? お兄ちゃんいくら妹だからってレディには言っちゃいけないことと悪いことがあるんだよ!?」
「うるせぇ!! むしろそんな悪口言われたら喜ぶくせに!! 何を今更人並みに傷付くみたいなこと言ってんだよ!!」
「お兄ちゃん? Mだって言われたくない悪口だってあるんだよ? 分かってないな~!」
両手を軽く広げ、やれやれとばかりにため息をつくルタ。
「言われたくない悪口? ああ、むn
「お に い ち ゃ ん ?」
「分かった分かった悪かったってッ!!!」
胸倉を掴みながら睨み殺しそうなほどの殺気を向けてくるルタに必死に謝罪していると・・・。
「師匠!!」
「なんだよ今それどころじゃッ、お?」
メロが声を掛けてきて視線をそっちに傾けると丁度前方にあった物に気づく!
正面には迷宮の入り口のような大きな扉があった!
「・・・。」
胸倉を掴むルタを引き連れつつ俺は扉の前に立ち松明を高くかざす。
すると・・・。
「・・・やっぱりか。」
扉には動物や蜥蜴の骨のような文字があった。
獣文字だ。
「・・・。」
もう俺が何を求めているのか既に察してくれたルタはすぐに胸倉から手を放し、俺の横に立って文字を眺めると・・・。
「『数多の戦場を駆け抜けたミノス神は生きているのが奇跡と言えるほどの深い傷を負っていた。見かねた同志たちは彼の志を受け継いで戦った。戦友の勇姿を背にミノス神は、傷の痛みと燃え盛るような心の痛みを抱え、母なる土地アステリオンに走って行った。』」
「・・・つまりどういうことですか??」
よく分かってないメロは首を傾げる。
「要するに途中で戦いをリタイアして故郷に逃げ帰ったってことか。」
「みたいだね。『勇敢に戦ったミノス神様は傷を見かねたお仲間さんに止められたからお言葉に甘えて逃げさせて貰った』ってことだね♪」
「・・・。」
歯に衣抜きせぬルタの物言いに少し引っかかりつつもどこかしら安堵するものがあった。
さっきまでの試練を見る限りこの遺跡は、部屋の入り口に書かれた獣文字の物語に沿って試練が作られている。
そのルール通りに行けば、次の試練は・・・。
「『逃走』か。」
「だろうね♪」
唐突に口から出たにも関わらず、俺の言葉にルタはさも当然かのように相槌を打つ。
要するに逃げればいい。
それを確認できただけでも安心材料だった。
ただでさえ俺とメロは剣が折れて満足に戦えない。
ただ逃げればいいと言うのなら、それに越した事は無い。
「やれやれ・・・。」
俺は安心して扉の中央にある魔石に手を添えて魔力を送る。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
ゴゴゴゴと物騒な音を立てて勝手に開く扉にも言い加減みんな慣れてきてメロですら反応がなくなってきた頃だ。
だが・・・。
「は?」
「え?」
「!?」
目の前の光景に、俺を始めとして全員目を見開く!
「これは・・・!」
~グラ アステリオン:密林~
「遅ぇなぁ。」
林檎を片手に胡坐を描いて座ったまま、肘に膝を乗せた状態で頬杖をつきながら俺は待っていた。
目の前には大きなデカい口のような洞窟の出入り口遺跡の出入り口だ。
「ちょっと来るの早すぎるんじゃねぇのか?」
一緒に来ていた数人の村の男のうちの一人が俺に話しかける。
「それにあの遺跡は俺たち戦士ですら生きて帰れるか分からない試練だ。それを他所者がやるんだぜ?」
「ああ、ここに来れるかどうかも怪しいよな!」
「へっ。」
男達のボヤキを俺は鼻で笑う。
「あいつ絶対突破してくるさ。何しろ・・・。」
俺は男たちの方へ顔を向けながら自分の胸を親指で指さしながら・・・。
「俺が一目見て交尾したいと思った相手だからな!!」
「「「えぇ!!?」」」
俺の言葉に男どもはギョッとする!!
「グラが・・・あのグラが・・・!?」
「村の奴らがいくら言い寄っても『弱そうだから』って交尾を拒否しまくった挙句・・・!」
「挑んだ奴らはみんなボコボコにするグラが・・・!?」
「あんなか細い男をか?? 信じられねぇ・・・!」
周りの男共はガタイの良さに似合わずコソコソと情けにひそひそ話をし続けている。
「うるせえなぁ!! 言いたいことがあるならハッキリ言えよ!! 男らしくねぇなぁ!!」
「うっ・・・!」
俺が怒鳴り立てる男どもは黙り込む。
「なぁ、それよりあの遺跡ってやばい以前に変だったよな?」
「変? あ、ああ。確かにな。」
「?」
男共は俺に何か言うのを諦めたか、急に奴ら同士で話し始める。
「入り口に変な絵か文字かわからない模様が書いてあったよな。」
「もしあれが文字だったらなんて書いてあったんだろうな。」
「さぁな! もし文字だったとして、他所者のあいつらに読めるわけねぇだろ!」
「だな! 俺らですら読めねんだから!」
「ハハハ
「うるせぇ!! 黙って待ってろ!!」
俺が男共にキレると男と黙り込む。
「でもホントに大丈夫か?」
「ああ、最後のなんか特に
「うるせぇ!! ったく・・・。」
俺は呆れながら再び入り口に向き直った。
~ライ アステリオン:森林~
「・・・。」
登った木の上の大きな枝の上。
そこにしゃがむように乗りながら特製の電子 ゴーグルで風景を眺めていた。
視界に収めた映像を画像のデータとして読み込んで自在にズームアップさせることで遠くの風景も鮮明に見える優れ物だ。
その便利ゴーグルで監視しているのは、洞窟の出口を数人の男取り巻きを連れて眺めている女獣人だった。
「ふむ・・・。」
あいつらが穴に落とされてから女獣人が脇目も振らずに真っすぐここに来ている様子から大体の事情は 把握できている。
要するに・・・。
「獣人はあいつらを村に招き入れたは招き入れたようだけど客として認められるために試練を受けている ってところだろうな。」
[アステリオンのそれぞれの部族達の風習だね。]
「ああ、他所者は信用できない、だから 同じ部族の仲間として認められなきゃ客として招き入れられることはない蛮族らしい排他的な
考え方ッ!?」
さりげなく世間話をしていると急に腹部に激痛が走る!
何かが背中から貫通したかのように・・・!
「うげ・・・!」
あまりの痛みについ木から落ちてしまう!
[ライ兄!!]
通信機から聞こえる相方の声が響く!
「!!」
木から落ちた俺を取り囲むように数人の男がすでに立っていた!
どいつも物騒なマシンガンを持って俺に銃口を向けていた!
男たちは一斉に銃の引き金を引き、何発も、何十発も、何百発も及ぶ銃弾の雨を俺に食らわせてきやがった!!
~ウルド アステリオン:遺跡~
逃げる試練と聞いてどんなやばいものから逃げなきゃいけないのかと思って身構えていたが・・・。
「何も・・・ない?」
「何もないね♪」
「無いですね・・・。」
そう、何もないただの通路だった。
他と違わぬ石床の通路だったが、道回りに壁はなく、底の見えない大穴になっていた。
だが脆い橋と言う訳ではなく、穴の底からしっかり土台が作られており、崩れるようには見えず、道幅もしっかりしていて俺達が横並びに歩いても充分に余裕のある道幅だった。
「どう言うことだ?」
「何もないです・・・ね?」
俺達はキョロキョロと辺りを見渡しながら石橋を渡る。
だが物の見事に何もない。
なぁんだ、さっきのはハッタリか~、HAHAHA
「気をつけろよ!? 絶対何か仕掛けがあるからな!!」
なんて考えるわけねぇだろバァカ!!
さっきから色々手の込んだギミックがあったんだ!
あれだけ試練試練ってほざいて雰囲気作っといて何もしないわけがねぇだろ!!
「足元に何かあるんじゃないか!? 気を付けて渡るぞ!?」
「ハイです!!」
俺とメロは必死に足元を凝視しながら慎重に渡る!!
「あはは☆ 必死すぎぃ~♪」
それをルタは笑いながら見ていた。
・・・だが何もない。
「魔覚だ!! 見えない魔物とかが後ろから来るんじゃねぇのか!?」
「ハイです!!」
俺とメロは米かみに指を当て、辺りを探りながら中腰姿勢で歩きながら辺りを警戒する!!
「ふわぁ~ぁ。」
それを尻目にルタはあくびをして頭を描く。
・・・だが、何もない。
「魔道具とかだろ!! どっかに浮遊してて俺達を監視してる奴とかが!!」
「ハイです!!」
今度は俺たちは各々の松明で辺りを照らし回る!!
「んっん~!」
それを尻目にルタは上に伸ばした右腕を左腕で組んで伸びをしていた。
・・・だが何もない。
「あとは・・・えっと・・・。」
「は、ハイです・・・!」
「無理に返事せんでいい!」
「ハイです・・・。」
とうとう警戒するネタも尽きて勢いが止まってしまう。
「本当に何も無いんじゃない?」
「・・・。」
あくびと一緒に吐き出すルタの一言に俺はぐうの一言も出なかった。
「遺跡って言っても結局は人が作った建造物でしょ? 途中で制作終了って言うのもよくある話だよ。」
「・・・ギミックを作る前にやめたってことか?」
「じゃな~い? だから警戒するだけ損だって!」
「・・・。」
にわかに信じがたい話だがルタの言うことにはムカつくくらい筋が通る。
これだけ警戒しても何もないのならもしかすると・・・。
「ね、それよりさ♪ あれ見てよ!」
「あ?」
ルタが前方を指さすと、まだ松明の明かりの届かない遥か前方で何かが小さく光っているのが見えた。
何やら緑色の小さい光だ。
「なんだろうね♪ もしかしたら何かの仕掛けだったりして~♪」
「・・・。」
ルタに茶化されながら俺は黙って指輪を外す。
「・・・。」
俺は米かみに指をあて、前方に意識を集中する。
僅かに魔力がある、その位置に意識を集中させ・・・。
「ッ!」
目を力強く開くとそこには遥か前方の風景が見えた!
「師匠?」
メロがきょとんとして尋ねるが・・・。
「何かの魔石か?」
視界に移った光の原因は、扉の頭くらいの位置の岩壁に埋まっている小さな緑色の魔石だった。
この土地特有の魔力を受けているのか、弱々しいが魔力に反応するように光っていた。
「み、見えるのですか!?」
俺が答えを言い当てるとメロは目を丸くして声を上げる。
「へぇ、お兄ちゃん『千里眼』使えたんだ。」
ルタは驚く様子もなくにまにまとした顔で俺に聞く。
「ああ、カザに野伏の知り合いがやってるのを真似した。そいつ程使える訳じゃないがな。」
「真似しただけで出来るのですか!?」
「魔覚の仕組みをある程度理解してたら出来る。なんなら今度教えてやろうか?」
「是非です!!」
「流石太っ腹だねぇ、『お師匠様』♪」
「うるせぇ。」
ったく、こいつは隙あらば茶化しやがって。
「じゃあその魔石が遺跡のギミックかな?」
「それはねぇだろ。」
「ほぉ? どうして?」
「今魔覚で確認したが魔力が微弱すぎる。探知用の魔石ながら魔力がかなり広範囲のはずだ。」
「なるほど、じゃあただの小さな魔石ってわけ。」
「とてもじゃねぇが、あんな小さな石ころで何かが出来るとは到底思えん、恐らくはこの遺跡ができる以前の地下の洞窟に天然で埋まってたものだろ。」
「ふ~ん。」
「・・・おい。」
「んん?」
俺は思わずツッコむ。
「お前、さっきから何が言いたいんだ。」
ルタの様子がおかしいからだ。
いや、元からおかしいのは確かだが、変に根掘り葉掘り聞いてきて不自然すぎる。
まるで何か分かっていながら敢えて俺をからかってるみたいだ。
「ふふ♪」
一旦目を閉じて千里眼を解除し、ルタを見るとルタは不敵そうに気持ち悪い笑みを浮かべる。
恐らく俺が何か考えていることに勘付いた事に気づいたからだろう。
「いやね? 私があの魔石使って悪いことしようと思ったらね?」
「あ?」
悪いこと?
「まずあんなこれ見よがしな位置に置いたら見た人は絶対気になると思うんだ♪ 見えそうで見えないからね♪」
「だから何だよ?」
「そういう人の心理ってね、絶対気になって近づいて確かめようとするんだよね~♪
無防備に♪」
「ッ!!?」
冷ややかに笑うルタの言葉に寒気が走った!
確かにあの魔石の光は小さすぎる!
それこそ俺たちがこの石橋を半分渡らないと気付かないくらいに!!
だとしたら・・・!
「おいメロ!! 気を付け
「ふぎゅッ!!」
俺がメロに注意を呼びかけようとした瞬間、すぐ前方辺りから妙な声がする!!
「痛たた・・・!」
メロがちょうど前のめりにどべっと転んでいたところだった!
「お前、何転んで・・・。」
「なんなのですか・・・! 急に床が沈んで・・・!」
「床・・・?」
メロが転んだ現場の一歩分後ろの辺りを見てみると、確かに床が沈んでいた!
まるで何かスイッチを入れられたかのように・・・!
「!!!??」
急にゴゴゴと何かが動く音がした!!
明らかに遺跡の仕掛けが作動した音だ!!
「くそッ!!」
やられた!!
多分この遺跡を作った奴は相当性格が悪い!!
俺達が罠や仕掛けを警戒して渡るのを見越して敢えて途中まで一切何も仕掛けなかったんだ!!
完全に油断してる所を罠にかけて来やがった!!
「走れぇッ!!」
何が起こるか分からないがとにかく前方の出口に向かって急いで走る!!
すると案の定後ろの方で何かが起こっていた!
直接見ているわけじゃないが、ドドドドと何か液体か固形物分からないものが大量に落ちてくる音が聞こえる!
まるで滝みたいに何かが大量に降ってきているみたいだ!
しかもその音はだんだんこっちに近づいてきている!
「くそッ・・・!」
流石に気になって後ろを見ると・・・。
「マジかよ・・・!」
それは大量の虫だった!!
迷宮や沈む広間で見たような大型の虫たちが滝のように落ちてきていた!!
翅の無い虫たちはそのまま道から溢れるように脇の穴へ落ちていったが、その中で翅のある虫たちはその群れから抜け出して俺たちを追ってきていた!!
「くっそぉ!! 全力だ!! 上昇でもなんでも使って走れぇッ!!」
「ハイですぅッ!!」
俺とメロは上昇を使って全力疾走する!!
「おにいちゃぁん!! 私無理ぃ!! 運んでぇ!!」
「は!!?」
引き離されそうになっていたルタが泣き言を言い始めた!
「何言ってんだ!! こんな時にふざけてんじゃッ・・・!?」
突然ルタが俺のコートの裾を掴んで・・・。
「お・ね・が・い☆」
「・・・!」
そう頼み込んでくるルタの雰囲気が異様だった!
甘えた言葉とは裏腹にその顔はどこか冷ややかで不敵な笑みを浮かべていた!
「・・・チッ、ふざけやがってッ!!」
「あぁん☆」
全力疾走の最中で余裕もなく、その勢いで乱暴にルタの腕を掴んで引き寄せるとすぐに背中と足を持ち上げて支えながらルタを抱きかかえる!
「いやんお兄ちゃん♡ 『運んで』って言っただけなのにお姫様だっこ?♡」
「黙ってろッ!!」
案の定ルタが茶化してきたので半ばキレ気味に黙らせる!
こいつのわがままに付き合うのは癪だがこの判断が間違っているとは思っていない!
さっき俺に見せたあの顔、明らかに何か企んでる顔だ!
だったら・・・って!?
「おッ、おい!!?」
何故か抱き着くようにルタが上半身を俺の体に密着させる!
「おまッ、こんな時にふざけてんじゃッ・・・!」
「業火 杖 分解 展開 広域 射出」
「!?」
ルタは杖を後ろに向けながら魔法を詠唱していた!
すると俺たちの周りに無数の火の玉が浮かび・・・!
「彗星矢一斉射!!」
無数の火の玉達は矢の様に後ろから追いかけてくる虫たちに向かっていった!!
「・・・!」
火の矢は飛んで追いかけてくる羽虫たちを打ち落としているが、虫の雪崩には当たりはする物の圧倒的な物量の前では焼け石に水だった!
「師匠!! ヤバいですッ!!」
「あぁ!!? なんだッ、って!!?」
メロにせっつかれて前を見るともっとマズい物が見えた!!!
なんと前方の出口で大きな石壁が上からゆっくりと出口を塞ぎ始めていた!!
「急げぇッ!!」
「ハイですぅッ!!」
俺とメロは必死に上昇を使って全力疾走する!!
だが石壁はもう半分以上、俺たちの身長の半分くらいの高さまで下りていた!!
しかもまだ俺たちは出口まで数十メートル距離がある!!
「くそッ!! 間に合わねぇ!!」
どうする!?
考えろ!!
出口は諦めて戦う?
いや、この物量相手に壊れかけた武器で戦うのは無謀だ!!
だったら横の穴に落ちるか!?
だが底がどうなってるか分からない以上それも無謀だ、最悪深すぎて落ちたら死ぬ!!
どうすれば・・・!
「しょうがないなぁ。」
「え?」
ルタが何故か呆れたように言うと俺の体への密着をやめて元の体勢に戻って前に向き直る!
「お兄ちゃん、メロ掴んでて、なるべく強く。」
「え?」
「いいから。」
「?」
よく分からんが・・・!
「!? し、師匠!?」
メロの肩を強くつかむ!
「い、痛いです師匠!!」
「が、我慢しろ!!」
嫌がるメロを叱咤する!
正直なんで俺自身もこんなことしてんのか分らんがとにかくルタの言う通りにした!
すると・・・!
「?」
ルタは妙なことをしている!
目の前に突き出すように親指を立てながら真っすぐ前方を人差し指で指差す!
まるで銃口を向けるかのように・・・!
「お前、何を
「ばん。」
「は? ッ!!!?」
瞬間、何かが起こった!!
「うぉッ!!?」
「にゃぁッ!!?」
俺達の身体が急に高速で前に進む!!
「うわぁぁぁぁッ!!」
「ひぃやあぁぁぁぁッ!!!」
いや、何か引力的な何かに引っ張られてるかのようだった!!
「ッ!!」
出口が目の前に!!
けどもうかなり石壁が下がってて小柄なメロですらしゃがんで通れるかの高さだった!!
「くッ!!」
咄嗟に俺はメロを掴んだままわざと体勢を崩して転ぶ!!
「ふぎゃッ!!」
引っ張られたメロもつられて転ぶ!!
「ぐぅッ!!」
転んでも尚前方に引っ張られ、身体が激しく地面を擦りつける!!
「痛たたたたたツ!! 痛いです師匠ッ!!」
「我慢しろッ!!」
同じように地面を引きずられて悲鳴を上げるメロを叱咤する!!
「ッ!!」
岩壁が俺の身体のスレスレを通り過ぎ、引っ張られたメロも潰される寸前をすり抜けるように出口を通り抜けた!!
「うわッ!!」
「ふぎゅッ!!」
出口を抜けた先は何かの小部屋の様で、勢い余った俺達は奥の壁にぶつかって無様に床に転がる!
「ゼェ・・・ハァ・・・!」
「ふぅ・・・ふぅ・・・!」
俺とメロは息を切らす。
やってしまえばあっという間の試練だったが、一瞬の間に生死の間を彷徨って生きた心地がしなかった。
おかげで心臓がバクバク言ってて息をするのも苦しい・・・!
ってそれどころじゃねぇ!
「ルタ・・・! お前、なにやった・・・!」
「ふふ♪」
「ッ!?」
問いただすとルタが楽しそうに笑いながら顔を近づけ・・・!
「ひ・み・つ☆」
「・・・。」
ホント食えねぇ女だ。




