#66 恐怖
~ネルス 王都プロテア:城下町~
「『盾』!!」
「「「はッ!!!」」」
俺が号令をかけると兵士たちは横一列に並んで盾を構える!
「「「グガアアァァ!!!」」」
その防衛網を突破しようと獣人たちがとびかかるように襲い掛かる!!
「ぐッ・・・!」
「くぅッ・・・!」
盾を殴られ、兜を殴られながらも必死に兵士たちは耐える!
だがそこへ・・・。
「足止めご苦労!!」
「グガァッ!!?」
「ゴァァッ!!?」
キリア団長の声が聞こえたかと思うと獣人達は一斉に血飛沫を上げて断末魔を上げる!!
「ふっ。」
鼻で笑いながら剣を鞘に納めたと同時に獣人たちは一斉に倒れ、その場に生きている獣人は居なかった。
「全滅確認・・・流石です、キリア団長!」
「ふふ! もっと褒めてくれ!」
素直に賞賛の言葉を贈ると気分良さそうに調子の良い言葉を返してくるが、それが嫌味に思えないのが逆に恐ろしく思える。
「さぁ! まだ獣人は残っているはずだ! 行くぞ!」
「はい!! 全隊!! 前進!!」
キリア団長が駆け出すと同時に俺は兵士たちに号令を送って団長に続く!
―――しばらく走っていると・・・。
「・・・!」
「え?」
何かに気づいたかのようにキリア団長は急に止まる!
「団長?」
「・・・。」
「?」
キリア団長が右を向いたままなのでそっちに視線を移すと・・・。
「え!?」
そこには岩で出来た大きな壁があった!
「こ、これ・・・。」
「明らかに即席の魔法で作られた人工物だな。」
驚く俺を尻目に冷静に分析しながら岩壁の方へ歩いていく。
「・・・?」
訳が分からないまま盲目的に団長の後を追うように岩壁へ歩いていくと・・・。
「あ!」
すぐに気づいた!
なんと、岩壁のすぐ手前当たりの道端に一人、女の子が倒れており、その奥で壁に寄りかかるような形でその親と思われる女性が倒れていた。
「ひ、ひどい・・・!」
どっちも惨たらしく血まみれな死体だ。
「岩壁で逃げ場を失って殺されたか。」
「酷い、こんなのあんまりだ・・・!」
本来この岩壁が無ければ逃げられたかもしれないのに・・・!
「これ・・・冒険者がやったんですかね・・・?」
「何故そう思う?」
「だ、だって・・・王宮の魔導士が戦闘中に展開した岩壁なら、戦闘が終わった後、こんな事故も加味して解除するはずでしょう! 民間人の保護も目的の筈なのに・・・!」
「・・・そうだな。」
キリア団長は返事をしながら祈るように指先で十字を切ってから死んだ親子に手を合わせた。
「・・・。」
俺もそれに倣って二人の冥福を祈っ
「オラァッ!! もっとかかって来いやぁッ!!」
「俺はもう逃げも隠れもしねぇぞコラァッ!!」
「「!!?」」
突然しんみりとした雰囲気をぶち壊すかのように大きな怒号が聞こえる!!
「副団長!!」
「どうした!!」
慌てて駆け寄ってきた兵士にすぐに確認する!
「獣人です!! 冒険者と思わしき連中が交戦中です!!」
「くそッ!!」
「行くぞ!! ネルス君!!」
「はいッ!!」
キリア団長に促されながら元来た道を戻ってさっきの曲がり角の手前まで来ると・・・!
「ッ!! いかんッ!!」
「うわッ!!」
何かが飛んできたのに気付いた頃にはキリア団長に横から突き飛ばされていた!!
「な・・・!」
飛んできたのは獣人だった!
だが・・・。
「グ・・・グゲッ!」
起き上がろうと首を上げたがすぐに力尽きて地面に寝そべった。
見たところ目立った斬撃の跡はない。
打撃で吹き飛ばされたか??
「もっと数集めて来いやぁッ!! クソ獣人共!!」
「もうお前らの好きになんかさせねぇぞッ!!」
「!」
声のする方を見ると三人の男が獣人達に囲まれていた。
一人は何も武器を持たない大柄でガラの悪い男。
一人は両手で剣を構えたチャラい雰囲気の男。
「もう嫌だぁ、ガタガタガタガタガタガタガタ」
もう一人は派手で装甲薄めな金の鎧を纏って怯える男。
「「へッ!」」
怯えている男以外は獣人に囲まれながら楽しそうな笑みを浮かべていた。
~ウルド アステリオン:遺跡~
あれから階段を降りると長い廊下のような通路を俺たちは歩いていた。
「それにしても妙だよねぇ。」
「?」
唐突にルタが話を切り出した。
「蛮族の試練の遺跡だって言うのにものすごい頭使わせてきちゃってさぁ? こんな小難しい試練とか出されたら大体の頭悪い奴らはのたれ死んじゃってんじゃないの?」
「・・・。」
確かにあり得る話だ。
昔アステリオンに入った事はあるが、国に入るなり略奪しようと襲いかかってくる獣みたいな奴らだった。
だがマカの村に入った時、奴らは待ち伏せをしていたり、襲撃のために人数を揃えていたりとそれなりに知恵は使っていた。
ただの脳金馬鹿の集まりってわけでもなさそうだ。
だがこの遺跡の目的として考えられるのは、おそらく一人前になりかけた半人前の戦士だろう。
ただ戦闘力が強いだけでは恐らくあの迷宮の時点で積んでいただろう。
「でも、そうだとしてちょっとおかしいのです!」
「あ?」
メロが疑問を投げかける。
「だったら、なんで死体が転がってないのですか!?」
「何メロ、あんた死んで放置されて腐った死体でも見たいの?」
「そ、そそ、そうじゃないのですッ!! そりゃ見ないなら、み、見ないに越した事は無いですけど・・・。」
「・・・。」
確かにメロの疑問はごもっともだろう。
だが・・・。
「はぁ・・・あんまり想像したくないけどな。」
「!」
ため息混じりに俺が切り出すとメロは俺の方を見る。
「ここにいる虫の魔物たちはみんな肉食の凶暴な奴らだ。死体だろうがお構いなしに食ってたんじゃねぇのか?」
「だろうねぇ? 骨も残さずに食べ切っちゃうなんてすごくお行儀がいいと思うけど♪」
「うぇぇ・・・。」
俺たちの会話にメロはドン引きしながら顔を青くさせる。
「ったく、そんな顔するぐらいなら聞くな。」
当たり前の感想を遠慮なしにメロにぶつける。
「!」
くだらないことを話していたら回廊の道が終わり扉が見える。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・。」
やれやれ調子で呆れつつ扉を開ける。
中に入るとそこは・・・。
「なんだ?」
妙に広い大部屋だった。
「・・・?」
一通り歩いてみたが、この先に続く道はなかった。
「どういうことだ???」
「此処が遺跡の終点ってことですか??」
「なわけねぇだろ!」
もしそれが本当だったらそれこそ『試練』とか託けて理不尽な場所に閉じ込めているようなもんだ!!
絶対にない!!
絶対にない・・・よな?
正直自信がない・・・。
「二人ともこっち!」
「!」
ルタが何か見つけたようだ。
「ルタ?」
奴は部屋の中央にいた。
「そこに何かあんの・・・か?」
疑問を投げかけようとしていたがすぐに気づく。
「炎 杖 発現 停滞・・・赤の灯火」
ルタが魔法の明かりを片手に膝立ちで座り込んでいる姿を見て、それにつられて視線が下に落ちていたせいか・・・。
「!!」
ルタの足元にあるものに気づいた!
迷宮の入り口で見たような動物の骨や蛇が貼ったような文字!
「獣文字です!!」
メロが目をキラキラさせて叫ぶ。
「なるほどな。」
しかも獣文字が書かれていた文面の中心あたりに迷宮の入り口のように丸い石が埋め込まれていおり、それにそって扉のような大きな溝があった。
おそらくは下に開く扉だろう。
だが・・・。
「それで? 次の試練の内容は何だ?」
「んもう、お兄ちゃん♡ せっかちな男は嫌われちゃうよ?」
解読をせかすとルタはいつもの調子でふざけ始める。
「うるせぇ、さっさと言え。」
「あぁん♡ そのゴミを見る目がたまんない♡」
「ッ・・・!」
付き合ってられず睨みながら解読を急かすとルタは喘ぎだした・・・!
マジこいつめんどくせぇ・・・!
「頼むからはよ読んでくれ・・・!」
「しょうがないなぁ♡」
結局折れて頼み込むとルタはわざとらしくやれやれと言った調子で再び文字に視線を移す。
「『数多の城を攻め落としたミノス神は、多くの国々から恨まれた。四方を敵が囲う戦場、絶望と恐怖を払いのけ、ミノス神は果敢に数多の敵を迎え撃った』。」
「・・・。」
「・・・。」
ルタが解読を終えると、俺とメロは黙ったまま視線を合わせる。
「恨まれてたのですか?」
「はッ。」
呆れてため息をつく。
「まぁそりゃ戦い大好きであっちこっち暴れてりゃ色んな所から恨みを買うだろうさ。」
納得しつつも呆れてしょうがない。
偉く美徳として書かれちゃいるが、要するに『戦い大好きな馬鹿な獣人があっちこっちで暴れ回った挙句、その暴れた先から恨みを買いまくって報復されまくってる』ってことだろう?
それに何が『隠せず勇敢に戦った』だ。
おそらくこいつは戦い大好きなこの国の獣人たちと同じなんだろう。
怖いどころか、むしろご褒美をもらったかのように危機として戦ってたってのも容易に想像できる。
なんとも下らん内容だ。
「ミノス神様からのありがたいお話とやらはここで終わりか?」
「みたいだね♪ 大変ありがたいお言葉でした♪」
俺が皮肉を吐きかけるとルタはそれに乗っかるように心にもない台詞を吐く。
「はぁ・・・。」
俺は溜め息を突きつつ足元にある魔石に手を添える。
するとゴゴゴと大きな音がして、下の扉が開かれる。
俺たちは開かれた扉の隙間から落ちないようにと思い、扉から広がる溝から離れていく。
「さぁて、次の部屋は・・・え?」
扉の下は予想外の光景が広がっていた。
なんとそこには下の部屋といった空間はなくむしろ落とし穴の代わりに変なものが設置されていた。
「な、なんだ? これ???」
何か網目状の仕切りの下に何か変なものがあった。
「なんだこれ・・・?」
如何にも変なものなので警戒しつつ見てみると・・・。
「脱脂綿?」
布切れを固めたような脱脂綿だ。
それが網目の鉄格子の中に固めるように入れられている。
しかも何か液体を染み込ませているみたいでどれもベタベタしている。
それになんか・・・!
「臭い・・・!」
そう、俺らが真っ先に襲われたのはその強烈な匂いだ!!
甘ったるいようなそしてそれが腐ったかのような異様な臭いだ!!
比喩とかそんなのなしに、間違いなくこれは『生ごみ』の臭いだ!!
「なんですかこれぇッ!!」
メロも一緒に鼻をつまんでぐしゃぐしゃの紙屑のように顔にシワを寄せる。
「!!」
同じように鼻をつまんでいたルタがハッと目を見開いて天を仰ぐ!
「どうした? ルタ?」
「お兄ちゃん、メロ!! 魔覚!!」
「「!!!」」
ルタに催促されるとすぐに俺達は米かみに指を当て、魔覚に意識を集中する!
「!」
何やら上の方から魔力が大量に集まっていた!!
一つ一つはたいした魔力量じゃないが寄り集まって巨大な塊になったかのような変な魔力だ!!
しかもそいつらは壁伝いに高速でこちらに向かってくる!!
「くそッ!!」
俺は即座に剣で一番最初にこちらに来たその魔力の正体を切り付ける!!
「!」
よし、良い手ごたえだ!
俺が切りつけたそいつは真っ二つになって地面に落ちる!
「!!?」
俺はその切り付けたそいつを見て思わず血の気が引く・・・!
真っ二つに切り裂かれて落ちていたそいつは、先程の迷宮で俺たちに戦いを挑んできた奴らと同じ巨大な虫だった!
だが茶色混じりの真っ黒で黒光りするその奇妙なフォルムと大きな羽根には、何か強烈に記憶に残っているものがあった!!
「おいおいマジかよ・・・!」
俺は松明を蹴っ高く掲げて高速で上から向かってくるその魔力の犯人たちに明かりを向けると・・・!
「ヒィッ!!」
メロも顔真っ青にして叫んだ!!
「ゴキブリですううううぅぅぅッ!!!!!」
~ネルス 王都プロテア:城下町~
あれから俺達が見たものは凄まじいものだった。
獣人の数はよくは見ていなかったが十数匹と言ったところだろうか。
だが俺達人間の兵士で戦えば三十人集めて勝てるかどうかって規模の相手だ。
だがそんな数は何の問題にもならなかった。
何故なら・・・。
「ヒャハハハハ!!」
「うおおおおおぉッ!!!」
「・・・。」
キリア団長と男たちの活躍が凄まじかったからだ!!
「・・・。」
キリア団長は獣人達の攻撃を軽くいなしながら一体一体余すことなく斬撃をお見舞いする!
「おらつまんねぇぞぉ!!?」
柄の悪い方の男は武器を持たず、武道家の様だが素早さで言えばキリア団長に負けず劣らず、加えて膂力もあり、見た目と合わせてか正直魔物か何かと疑ってしまう様な恐ろしさがあった!
「うおらぁぁぁッ!!」
もう一人のチャラい見た目の剣士の男は、キリア団長や柄の悪い男ほど速度や膂力があるわけではないが気迫は物凄かった!
「うああああぁぁッ!!」
まるで何かに取り憑かれたのようにがむしゃらに剣を振っては、獣人の首を跳ね落とし、攻撃を食らって血まみれになりながらも、全く怯むこと無く獣人よりも獣のように獣人に斬り掛かって行った!
「副団長・・・。」
「ああ・・・。」
兵の一人が俺に声をかけるが大体言いたい事は分かる。
俺たちはこの三人の戦いを見ながらただ立ち尽くすことしか出来なかったからだ。
『もうあの三人だけで何とかなるんじゃね?』
という言葉は、もう俺と俺の部下たちの間では完全に共通認識になっていた。
「グルルルル・・・!」
そうして取れているうちに敵の中人は残りの四体になった。
「ガァァッ!!」
「グアアァッ!!」
獣人たちは尚も本能のままに四方向から三人に向かって飛びかかってきた。
だが・・・。
「ふ。」
「ゴアッ!!?」
キリア団長は華麗に横を通り過ぎながら掠め取るように脇腹を切り裂き・・・!
「遅ぇッ!!」
「ブガッ!!」
柄の悪い男は真正面から獣人が武器を振り下ろすよりも早く獣人の顔面を殴り飛ばし・・・!
「うあああああぁぁッ!!」
「グゥッ!!?」
剣士の男は懐に飛び込んで組み付き・・・!
「このッ!! クソがぁッ!!」
「グアアァッ!!?」
脇腹を刺して獣人を殺す!!
だが・・・。
「あ!!」
「グアアァァッ!!」
その三人の中で実力の劣る剣士を一番弱いと見たか、最後の一体の獣人は殺した直後の剣士の男の背後から飛び掛かる!!
「・・・!」
思わず俺の口は開き・・・!
「あぶな
「余所見を」
「すんじゃねぇよ。」
「!!」
俺の言葉を遮られたその時、全ては終わっていた!
男が獣人の顔面を鷲掴みにして動きを封じ、キリア団長がその獣人のどてっ腹に剣を刺していた!!
「・・・。」
「ギガ・・・ゴ・・・!」
男が手を離し、団長が剣を抜くと獣人は腹から血しぶきを上げながら無様に地面に落ちて転がった。
「ったく。」
柄の悪い男がキリア団長を見ながら呆れたような顔で睨む。
「せっかくこっちで楽しんでたのに邪魔すんじゃねぇよ!」
「・・・!」
男の発言にムカッ腹が立ち―――
「ふざけるなッ!!! 一般人があんなに獣人に囲まれていたんだから助けるのは騎士として当たり前だろ!! それなのになんて言い草だお前はッ!!!」
―――「・・・。」
って思いっきり声を張り上げて言ってやりたいところだが黙った・・・。
さっきの化け物みたいな戦いを見てあまりにこの男が恐ろしく、とてもそんなことを言う勇気がなかったからだ。
「ふ。」
「あ?」
なぜかキリア団長は鼻で笑う。
「どうやら君は暴れるのが好きみたいだな。阿鼻叫喚の中で楽しみを奪って悪かった
「!!!?」
な?」
言葉を言い切ると同時にキリア団長の姿が何故か消え、男の背後に回っていた!
そして男の喉元にはその背後のキリア団長の剣が突きつけられていた!
「てめぇ、何のつもりだッ!!!」
下手に動くと殺されると分かってか、男は動かないまま団長にかなり立てる!
「ネルス君、最近バンズ団長から引き継いだ手配書があるんじゃないか?」
「ッ!!!」
団長に言われてハッと我に帰る!!
「はいッ!!」
鎧の胸元の板金の留め金の一部を外して懐から最近作った手配書の一枚を取り出す!
手配書の紙に書かれた似顔絵を見る!
人相は大きな傷跡が片目に刻まれており、それを覆うように眼帯を着けた柄の悪い男!
まさに目の前の男と特徴が一緒だった!!
「前に城下町から報告があった。民間人に暴力を働いた暴漢はお前だな?」
「確保ぉッ!!!」
キリア団長が問い詰めると同時に俺は兵達に号令をかける!!
「ちょいちょいちょいちょいちょいちょい!!!」
「おいおいおいおいおいッ!!!!」
俺たちが囲い込むと一緒にいた金鎧の男とチャラ男は一緒になって慌てだす!!
「いやいやいや、なにこれどういうこと!!?」
「どういうつもりだッ!! 俺別に何もしてねぇだろうがッ!!」
「うるさいッ!! お前たちも、どうせこいつと仲間だろッ!! 一緒に来てもらうぞッ!!」
「「待って待って待って!!!」」
「話は兵舎で聞かせてもらうッ!! 連行ッ!!」
「「「「はッ!!!」」」」
「いや嘘だろぉ!!?」
「俺は無実だぁッ!!」
慌てて弁解しようとする男達を無視して無慈悲に縄をかけた!
~ウルド アステリオン:遺跡~
「くそッ!! このッ!!!」
飛びかかってくるゴキブリを真っ二つに切る!!
一匹一匹は大した事無い奴らだ。
正直いくら数が来ようが生き残るのはたやすい!
だが・・・!!
「ヒィィィィィッ!!!」
顔を真っ青にしながらべちゃべちゃと地面に落ちるゴキブリの死体を見てメロは言葉にならない悲鳴をあげる!
いや叫びたいのは俺だって一緒なんだよ!!!
『絶望と恐怖を払いのけ、ミノス神は果敢に数多の敵を迎え撃った』
ルタが獣文字を解読して読み上げた内容を思い出す。
いやいや四方八方の敵を迎え撃つ勇敢なミノス神の戦いとやらを再現したいみたいだけどさぁ?
これはどう考えたっておかしいだろッ!!
なんか『恐怖』が別の方面の恐怖になってるんですけど!!?
「くそぉッ!!!」
バサバサと飛びながら滑空してくるゴキブリを切り裂く!!
「ふざけんじゃねぇよッ!! 扉の先が行き止まりかと思ったらなんでこんなとこで延々戦わされるんだよッ!!!」
「炎球!!」
「!」
近くに迫っていたゴキブリをルタが魔法で打ち落とした。
「ふふふ♪」
ルタはなぜか得意げな笑みを浮かべている。
「何をお前、一体倒した位でドヤ顔を・・・!」
「もう謎は解けちゃってるんだよね?」
「は? 謎???」
こいつはまた何を言って・・・!
「お兄ちゃん? とりあえずこの部屋の入り口を見てみようか♪」
「?? チッ!」
また意味の分からん事を・・・!
そう思いながらゴキブリを斬り落としつつ入り口を見てみると・・・。
「!!」
目の前の光景に目を伺う。
入り口が何故か高い所にあった!!
俺たちが来たとき、入り口は俺たちが今立っている足場とほとんど変わらない高さだったのに今じゃ俺達の丁度頭の上くらいの高さまで高くなっていた!!
まさか・・・!
「沈んで行ってるってことですか!!?」
ゴキブリを剣で斬り裂きながらメロが問いかける!
「そういうこと♪」
「なるほどな。」
演出としては三流だがギミックとしては結構よくできている。
要するに俺たちが今いる部屋は俺たちが気づかない間に徐々に沈んでいっている。
そしてあくまで推測だが、その沈んでいる原因はおそらく『重さ』だ!
要するにこの遺跡を作ったやつがやらせたい事はこのまま戦わせ続けてゴキブリどもの死体を積み上げてその重さで下まで沈んで行けってことなんだろう!
「よし!!」
これなら楽勝と思ってゴキブリの掃討に頭を切り替えたその時だ!
「・・・え?」
何体目かも分からないゴキブリを切り裂いた瞬間、ポキッと言う音と共にに僅かな振動が剣を伝って、俺の手に伝わる。
「げッ!!」
剣の刃先が折れた!!?
やっべぇ!!
迷宮の中でも敵に出会っちまったら仕方なしと思って後先考えずに使い過ぎてた!!
「くそッ!!」
こんなことなら入口にあった武器一本多くちょろまかしとくんだった!!
「師匠!!!」
「!!」
メロが剣を一本投げてきたのでそれを受け取る!
「このッ!!」
メロから貰った剣でゴキブリを一体切り裂いてから剣の刃先を確認する。
「・・・。」
メロもメロでだいぶ酷使したみたいだな。
もともと骨で作られたってことで脆いのもあるが、刃先がもうずいぶんと救いようのない所まで刃こぼれしてる!
この剣も恐らく長くは持たない!
「!」
ふと視線を移すと扉の上の淵のような部分が見えてきた!
おそらく先へ進む道だろう!
だがその入り口はかなり大きい扉のようだ!
律儀にこのまま戦ってたらその扉の入り口につけるかどうか怪しい・・・!
何か考えは・・・!
頭をフル回転させて考えろッ!!
『戦い』『遺跡』『仕掛け』『敵』『数』『味方』『武器』『魔法』
「ッ!!!」
そうだッ!!!!
「メロッ!!」
「!! 師匠!!?」
俺がメロに声をかけるとちょうど一体切り裂いていたメロが俺に視線を移す!
「『魔法』だ!!!」
「え!?」
俺の言葉にメロは訳がわからないように目を見開く!
「なんでですか師匠!? なんで魔法を!!?」
「ここのゴキブリの死体たちに魔法を撃って全部凍らせろ!!」
「死体を!? ど、どうしてですか!!?」
「いいからッ!! 詠唱中は俺が守ってやる!! 合図するまで撃つなよ!?」
「わ、分かったですッ!!」
訳が分からないようだがとりあえずメロは承諾して剣を突き出す!
そしてそれを今まで倒してきた周りのゴキブリの死体たちに向ける!
「よし・・・おいルタ!!」
「何?」
「俺がメロに合図するまで。お前はできるだけゴキブリをたくさん撃ち落とせ!!」
「!」
ルタは目を見開くと・・・。
「はーはい、了解♪」
ウィンクしながら二つ返事でオーケーした!
多分こっちは俺の作戦の意図に気づいてる!
「氷河 剣 放出 継続」
メロは魔法を詠唱する。
「業火 杖 放出」
ルタも同様に詠唱する。
「!!」
ゴキブリが三体、メロとルタに飛びかかってきた!!
「オラァッ!! 俺はやつらの前に立ちざかり、容赦なく斬撃をお見舞いして斬り落とす!!
だが・・・!
「ッ!!」
最後の一体を斬り裂いた瞬間、剣が折れてしまった!!
だが・・・。
「炸裂榴弾!!」
ルタが魔法を詠唱し終えると巨大な炎の砲弾が飛び上がる!!
その砲弾が壁にへばりついていたゴキブリたちに当たると大量のゴキブリたちが俺たちの前に降ってき死体となる!!!
よし、たぶんこれで充分だ!!!
「やれッ!! メロッ!!!」
俺がメロに合図を送ると・・・!
「凍結暴風!!」
メロが魔法発動させると、剣の刃先から凄まじい吹雪が巻き起こり、その凄まじい冷気の風はゴキブリたちの死体をあっという間に凍らせてしまった!!
そうしてできたゴキブリたちの死体の山は・・・!
「よしッ!!」
氷でできた巨大な岩となった!!
「!!?」
急に地盤が重くなったせいか、ゴゴゴと大きな音を立てると共に、地面が急に沈み始める!!
と言うことはさっき頭の淵しか見えなかった先の道への入り口は・・・!
「・・・やった。」
上から下までその姿を露わにし、今にも俺たちを出迎えんばかりにその大きな道を口のように構えていた!
「走れぇ!!!」
俺達は急いで部屋の出口に向かって行った!!
「ハァ・・・ハァ・・・!」
急いでがむしゃらに走る!!
ゴキブリたちは俺たちを追ってくるかと思ったが・・・。
「・・・?」
全く追ってくるくる気配がなかった。
おそらくは多分あの部屋の中央にあるゴミの蜜に群がっているんだろう。
「ハァ・・・ハァ・・・!」
「ふぅ・・・ふぅ・・・!」
「ハァ・・・♡ ハァ・・・♡」
「喘ぐな・・・ハァ・・・ハァ・・・!」
全員揃ってその場に崩れ落ち、俺だけルタにツッコミ入れつつ各々で息を落ち着かせる。
「ったく・・・。」
つくづく思う。
「なかなか厄介な試練受けさせてくれんじゃねぇの・・・!」




