#27 追跡
~ウルド 山賊アジト~
「待てこの変態ッ!!!」
「『待て』と言われて待つ奴なんていなぁぁいでござるッ!! このロリっ娘は拙者がペットにしてヨシヨシprprクンカクンカ[ピーーーーーーーーーーーー]して可愛がり尽くしてやるんですぞッ!!!」
「オイコラ今なんつったァッ!!!」
「そんなの絶対イヤですぅッ!!! 師匠助けてぇぇッ!!!」
泣き叫ぶ弟子娘を腰に抱えながら逃げる変態男を暗い洞窟の中、追いかけていた。
こんな現場の中、一つ疑問が浮かんでいた。
【くそっ! あいつ、なんでこんな暗い中真っ直ぐ走れるんだ!】
奴は松明も使ってないのに暗い洞窟を壁にぶつかったりもせずに迷いのない足で走っていた。
【多分あのゴーグルだね。】
「・・・チッ。」
奴は変なゴーグルを目に着けていた。
機械染みた金属的な見た目で横に切り込まれた細い溝に点のような赤い光が走っている変なデザインだ。
よく分からねぇがインチキな道具使いやがって・・・!
だがそんな物使ったって無駄だ!
「ゼへッ・・・ゼヒィッ・・・!」
奴は息を切らしながらかなり疲れ切って辛そうだった。
無理もない。
そんな太った体型で、子供とはいえ人間一人抱えて走って逃げるなんて無謀だ。
誰がどう見たって追いかけっこの勝敗は明白だった。
「観念しろこの変態ッ!!」
「うひぃ!?」
奴の白衣の裾に手が届きそうだったその瞬間・・・!
「ライラ助けてぇ!!」
「いえす・まい・ご主人様☆」
「!!?」
白衣の男が叫ぶと見知らぬ女の声が聞こえた!
上から!!
「うッ!!」
即座に身の危険を感じて半ば転ぶような形で横に転がって回避する。
すると・・・。
「いッ!!?」
すぐに俺の元いた場所に何かが叩きつけられ、派手に足元の岩肌を粉砕する。
それはドデカい刃物だった。
ワットが使うような両手剣ぐらいの大きさで、馬一体くらいなら胴体すら真っ二つに出来そうな程重厚な刃だ。
「くそッ!! 誰だッ!!」
すぐに松明を翳して襲撃してきた犯人を照らし出す。
「バトルメイド、ライラ、華麗に参上!! ご主人様の邪魔は許さないニャン☆」
左手ピースの指先を左目元に当ててあざとくポーズをキメながらそいつは俺の目の前に立っていた。
「・・・・・・・・・。」
なんだこいつ・・・!
あまりにもこの場に不釣り合いな見た目だった。
目の前にいたのはメイド服を着たルタぐらいの年頃の少女だった。
しかもそのメイド服は高貴な貴族に仕える慎ましやかな礼装とは違い、スカートの丈が短く、腕にある筈の袖口もなく腕が露出している、なんとも変な意味で男に媚びを売っているような服装だった。
しかも頭には猫の耳の着いたヘアバンドまで着けており、お尻にも猫の尻尾がついている、恐らく語尾に『ニャン』とか着けてる辺りそういうキャラ付けなんだろう。
だがそれと同等に目を引く物騒な物もあった。
右腕が義手なのか、腕の代わりに物凄くデカい重厚な剣が取り付けられている。
先程の攻撃はこれによる物だろう。
足も鎧の鉄靴にしちゃ重厚な金属的な装甲で覆われており、背中にもなにやら重々しい金属の管がついていた。
「なんだお前・・・!」
「ライラ、あとは任せるでござる!!」
「あ、おい待て!!」
変態が逃げたのでそれを追いかけようとすると・・・!
「かしこまりましたニャァン♪」
「ッ!!?」
突然ゴオォと派手な轟音が聞こえてそっちを向くとライラと呼ばれたメイド服女が襲い掛かって来ていた!
先程の背中の管から青白い炎を噴射させており、その爆風を利用してか、かなり高速で距離を詰めていた!!
「うおッ!!?」
俺の進行方向と思われる位置に右腕の大剣を振り下ろしてきたので急ブレーキで止まって地面を蹴って後方にバック転して距離を取る。
「邪魔すんじゃねぇッ!!」
「ご主人様の命令ニャン☆ 通さないニャ~ン♪」
俺が非難をぶつけるとライラはまたさっきみたいなあざといポーズで開き直る。
ったく、やり取りで大体察するがあの変態の手下か。
なんと言うか、考えて見りゃそうだが格好といい、語尾といい、あの変態の趣味丸出しだな。
【いいな~いいな~可愛いな~! あの服私も着てみたいな~!】
【いいけどそれで俺の横歩くなよ。同類と思われたくない。】
【またまた~・・・あ。】
「?」
ルタが唐突に何かに気づいたかのように変な声を出す。
【なんだ?】
【お兄ちゃん。】
「あ?」
なんだかルタの声色がおかしい。
いつもの『お兄ちゃ~ん』とか言ってるアホみたいなトーンの声とは違う。
何故かは分からんが何か冷ややかなドスの入った声だ。
【あいつぶっ殺して。ギッタギタに。】
【なんだ急・・・に・・・。】
言われながら視線をライラに向けるが奴のある部分を見て察した。
【あ~・・・あぁ、ね・・・。】
なるほど、デカいな。
【何? 何か言いたいの?】
ルタから質問を投げかけられるが強烈な殺気を感じる。
恐らく俺が不機嫌の正体を察した事に気づいてるんだろう。
睨まれてもいないのに声色から物凄い黒いオーラが出ているのが分かる。
【分かった分かった!! でもここで真面目に戦ってたらそれこそあの変態に逃げられるぞ!】
【ああ、その辺は大丈夫♪】
【あ? ッ!!?】
俺の疑問もお構いなしに腕輪が独りでに光り出す。
そしてその光は球体のような形になって俺の腕輪から離れて行き、大きくなると同時に人の形になって光が収まるとそこにルタが現れた。
「ルタ・・・!」
これ、腕輪の同化を解除した・・・ってことでいいんだよな?
「お兄ちゃん。」
ルタは冷めた流し目で声をかけてくる。
「分かるね?」
「チッ。」
ルタの一言でこれからやる作戦を察した。
「ニャニャ!!? 急にもう一人現れたニャ!! なんの手品ニャ!!?」
当然と言えば当然か、予想外の展開にライラは目を見開いて驚く。
「さぁな。」
「二対一なんて卑怯ニャン!!」
ライラは非難気味にいちゃもんを投げつける。
「んなこと知ったことか! オラァッ!!」
俺とルタは剣と杖をそれぞれ構え、体当たり気味にライラに向かっていく。
「二人だろうと通さないニャン!!」
ライラが剣をルタに向かって振り下ろすと、俺はそこに割って入って剣の鍔元を奴の剣の根元にカチ合わせて鍔迫り合いの形を取る。
「ふふ♪」
それに対しルタは狂気を込めた笑みで拳を固め、ライラに殴りかかる。
「ニャッ・・・!」
思わず攻撃を食らってしまうと思って目をギュッと閉じたライラ。
だが・・・。
「ニャア!!?」
ライラは目を見開いて間抜けな鳴き声を上げる。
ルタはライラを殴っておらず、ライラの脇を通り抜けてさっきの変態が逃げた方向に走っていた。
「逃さないニャン!!」
ライラは俺から剣を放してルタに襲いかかろうとしたが・・・。
「待てよ。」
「ニャァ!?」
俺は全体重を前方にかけ、剣を放そうとしたライラの剣に無理矢理剣を押し込み、奴との鍔迫り合いの状況を無理やり続行させる。
「一度相手したお客を無下にすんのか? メイドってのは。」
「ニャァ・・・!」
思い通りにいかない状況に苛立ってか忌々しそうな鳴き声を出すライラ。
だが俺にも少し心配なことがあった。
松明は今俺が持っている。
このままルタに行かせたら暗い洞窟の中闇雲にあの変態を探さないといけなくなる。
「炎 杖 発現 停滞」
「!!」
ルタは立ち止まると突然魔法詠唱をし始める。
「赤の灯火」
魔法の詠唱が完了するとルタの持っていた杖の先で球体のような炎が現れ、ルタとその周囲を明るく照らし出した。
どうやら灯りに関しては取り越し苦労だったようだ。
「じゃ、お兄ちゃん。後よろしく。」
軽くそう言うと、ルタは親指を首にかけ・・・。
「きっちりそいつ、天国に連れてってあげてね♪」
喉元を掻き切るように親指を横に動かした後、親指の向きを下に変えて突き落としながら威圧気味に 俺に念押しした。
「言ってる事とやってることが逆だろうが。」
「任せたからね♪」
俺が呆れる間もなくルタは颯爽と変態が逃げた方向へ走って行った。
「ニャ? 私、あの子に何かしたのニャ??」
「さぁな。自分の胸に聞いてみたら分かるんじゃないか?」
「ニャァ?」
状況を理解出来てないライラに皮肉を吐いてやった。
~ルタ 山賊アジト~
「・・・。」
走りながら薄目で米噛みに指を当て、魔覚に意識を集中する。
「・・・!」
いた。
前方に十五~六メートルくらいか、幸い奴の足が遅いお陰で魔覚の範囲外までは逃げられてなかった。
追いつける。
「・・・みぃつぅけぇた♪」
「うひぃッ!!」
魔力のもとに追いついてそこに炎の明かりをかざすと奴の姿が白日のもとにさらされる。
「もう逃さないよ!!」
「ライラは何をやっていたでござる!!」
「あのクソメイドはお兄ちゃんと今ダンスってるよ♪」
「チッキショオォッ!!」
白衣の男は悔しがりながらも必死に走る。
だが・・・。
「・・・あれ?」
白衣の男は突然止まる。
「何? 鬼ごっこは終わり?」
逃げる意志が無いようなので、すぐ後ろで私も足を止める。
「なんで拙者、野郎じゃなくて女子に追われてるでござる???」
頭にはてなマークを浮かべたかのように男は考え込む。
無理もない。
先ほどまで彼が追いかけていたのに突如追っ手が見たこともない女に代わっていたのだから。
「あ! お前、あの時の貧乳女!!」
「そんなこと言うと助けてあげないよ?」
「うぐッ・・・!」
相変わらず失礼な事を言うクソガキだが、流石に状況が状況だけに押し黙る。
「って!! 普通に考えて追っかけてる時点で奴の仲間に変わりないでござろうッ!! だったらさっさとトンズ
「ねぇおじさん。」
「へ?」
逃げようとする男に声をかけると男は止まる。
「取引があるんだけどさ。」
「何でござるか??」
「その子の代わりに私を連れて行く気はない?」
「なな、何を言ってるでござるか!? お前みたいな怪しい女、連れて行くわけが・・・ッ!?」
男は振り返ると驚いたように体をビクッと震わせる。
「その子、おじさんのところに行きたくないみたいだよ?」
私は左手で自分の太ももを上に撫で上げるようにさすりスカートの裾をショーツが見えるギリギリまで上げる。
「でも私は『逆』、おじさんのところに行ってみたいな~?」
そこからさらに自分の体を撫でるように手をずらし、腹部を下から撫であげるように服の裾を上げ、ブラの 下の布地をわずかに露出させる。
「私そういう危ないプレイ・・・好きだから♡」
体を前かがみに突き出し、首をずらして先ほどの手をまた蛇が這うようにいやらしくずらしながら襟元のボタンを外し、襟を引っ張って首筋の素肌と肩周りのブラの紐を露出させる。
「私だったらどんなプレイにも答えてあげられるよ♡」
上目遣いで男を誘惑する。
すると男は・・・。
「ッハ!!」
突如鼻で笑い出す。
「色仕掛けなんぞ片腹痛い!! 拙者はこのロリっ娘が気に入っているでござる! 手放すわけにはいかないでござる!」
そう言って踵を返して私の真逆を向く。
「だが!!」
言葉と共に男は立ち止まる。
足を前に踏み出す気配がない。
それどころか・・・。
「デュフ・・・デュフフフ・・・!」
男は振り返ると頬を赤らめながら気持ち悪い笑みを浮かべてゆっくりとこっちに歩み寄ってくる。
誰がどう見ても色仕掛けにかかった間抜けな姿だ。
「据え膳食わぬは男の、うひぃ!!?」
「ッ!!?」
その時だ!!
突如、何発にも及ぶ連続的な銃声と共に男の足元の岩肌から硬い粒状のものが何発も弾けるような音が響く。
「ご主人、相変わらず節操ない・・・にゃあ。」
白衣の男の奥の洞窟の闇から現れるように声の主は現れる。
そいつは先ほどのライラと呼ばれたメイドと同じようなメイド服を着ているが、容姿は彼女と対照的に小柄、快活そうなさっきのメイドと違い、整ったロングのストレートヘアと合わさって割と大人しい雰囲気にも見える。
「レイラ! 来てくれてたでござるか!?」
「ご主人、絶対に誘いに乗っちゃダメ・・・にゃあ。」
そう言うとレイラと呼ばれた小柄なメイドは再び私に銃を向ける。
「こいつからは、悪い女の匂いがする・・・にゃあ。」
レイラは鋭く、狙いを済ますかのように真っ直ぐに私を見る。
「・・・。」
正直誤魔化すのは容易い。
会話から察するにこのレイラと呼ばれた少女は男に対して重い愛情の念を持っており、浮気しそうな男に対する怒りで言っているんだろう。
だが・・・。
「ふふ。」
思わず笑いすぎて口元がつり上がってしまう。
「ふふふ・・・!」
目を伏せるがつり上がった口元はそのままだ。
「なかなか優秀なメイドさんだね♪ けど残念♪ ちょっと認識が甘いかな? ふふ、ふふふふ・・・!」
ついつい楽しくて笑いが隠せなくなってしまう。
自分の悪い癖だとは思っている。
だがこうも面と向かって悪党呼ばわりされると気持ちが良くて仕方がないからだ。
「私は『悪人』じゃないよ? 私は・・・。」
言葉と同時に顔を上げる。
恐らく私の顔は・・・。
「『極悪人』ですよ?」
最高にゲスな笑みを浮かべているだろう。
~ウルド 山賊アジト~
「ニャァッ!!」
「うおッ!!?」
ライラが先程の炎の噴射で加速しながら思いっきり詰めて右腕の大剣を振り下ろして来るので右に跳んで回避する。
「チッ。」
攻撃と同時に通り過ぎていて距離が開いたので仕切り直しの状態になる。
「・・・。」
速いし威力の高い攻撃だ。
だが動きが段々分かってきた。
「まだまだニャァン!!」
「・・・。」
ライラは身体ごと俺に向きを変えるとまた背中の管から青白い炎を噴射させて吹っ飛ぶように俺に向かって飛んで来る。
「ニャァッ!!」
「・・・。」
また通り過ぎ様に剣を振り下ろすので横移動で回避する。
やっぱりだ。
速度も膂力もあるが細かい動きは出来ない。
大剣の弱点とも言うべきか大振りで捌きやすい。
だったら・・・!
「もういっちょ行くニャン!!」
また奴は身体をこっちに向けて突撃してくる。
「ッ!!」
奴は剣を横向きに構えているので俺は即座に身を屈める。
「ニャァァッ!!」
予想通りライラが大振りで横に剣を振るうので俺はその下を潜るように回避する。
「へッ!」
このタイミングだ!!
奴の通り過ぎ様に身体の向きを変え、低い姿勢のまま地面を蹴って僅かに距離を詰める。
反撃だ!
大振りの攻撃を撃ったあとでこれを捌くのは不可能だ!!
奴の足は鋼鉄の装甲で覆われているし背中は管の炎の噴射で手が出せない。
だったら足先の装甲と腰の間辺りの太ももの裏だ!!
「貰っ・・・!」
むき出しの弱点に剣を突き刺そうとしたその時だ!!
「ッ!!?」
不意に少し上の風景に視線を吸われる!
短いスカートのせいでピンクと白のストライプの下着が見えてしまった!!
「うっ!! しまっ、うあぁッ!!」
一瞬の判断の遅れが命取りになり、そのまま通り過ぎたライラの背後の管の炎の噴射を掠った程度だが受けてしまい、熱気と風圧に押されて身体を後ろに転がせてしまう。
「ニャァ!! また避けたニャ!! もう避けるニャァ!!」
ライラが振り向きざまに俺に非難を投げかけるが・・・。
「ニャ?」
ライラは『なんだ?』とばかりに首を傾げる。
「くっ・・・!」
俺が立ち上がり様、松明を持った左腕で顔を覆っていたからだ。
「どうしたのニャ?」
「なんでもねぇよ!!」
「ニャァ?」
ライラは全く分かっていないようだ。
良かった・・・って思うべきか??
「チッ・・・!」
くそッ、やりづれぇ・・・!
~ルタ 山賊アジト~
「ふふ♪」
「な、なな、なんでござるか汝!! さっきと全然雰囲気が違うでござるよ!?」
目の前で不気味に笑っているであろう私を見て白衣の男は気味悪そうに私を非難してくる。
「やっぱりこの女、ご主人にふさわしくない・・・にゃあ。」
レイラは依然として見据えるように私を見ていた。
「子供の誘拐・・・ですか。あなた達は変わらないですねぇ。『ロキウスの科学者』さん♪」
男の素性には大体察しがついていた。
『ロキウス』、他の国とは全く異色の国でこの世界で普及している 上昇や魔法技術に疎い代わりに『科学』という独自の技術で発展している国だ。
だがそんな珍しい技術があるのなら技術提供をねだる国もあれば成果を奪おうとする野蛮な国もいるのが世の常だ。
だがロキウスは自衛力が強く、技術の流出が少ない代わりに他国との交流も少ない封鎖的な国だ。
だが私は仕事上ロキウスに潜入することがあったので国の技術には少し知識がある。
銃火器、メイドに取り付けられている加速装置などの機械技術、これらは明らかに ロキウスの技術だ。
しかもロキウスの研究者は目の前のこの男のように白衣を身にまとっていた。
「大方その子を連れて行く理由だって、ただの変態趣味じゃないでしょう? モルモットはいくらあっても困らないですからねぇ♪」
「ひッ!!」
男の腰に担がれていた彼の自称弟子娘は顔を真っ青にする。
「私をどうするつもりですか!!?」
「ふっふっふっふ・・・。」
弟子娘が食って掛かるように言うと男は不気味な笑みを浮かべて笑い出す。
「どうするもこうするも・・・。」
男は顔を上げ・・・。
「この幼女をグッ〔ピーー〕チョにしてア〔ピーー〕言わせて『お〔ピーー〕ん下さい』って言わせるまで教育しつくしてやるんですぞぉぉ!!」
「どっちにしてもイヤですうううううぅッ!!!」
「はぁ・・・。」
男の白々しい嘘に思わず溜め息が出る。
「そうやってとぼけるなら・・・。」
私は杖を前方に構える。
「レイラッ!! もはや奴との交渉の余地などないでござるッ!!」
「もとよりそのつもり・・・にゃあ。」
レイラが淡々と答えると、彼女の構えている銃の銃口が回転してすぐさま銃弾が連射される。
「ッ!」
すぐに物陰に隠れる。
「うひょひょひょひょ~! やはり銃こそ至高!! 一方的ですぞぉッ!!」
男は自身で戦っているわけでもないのに虎の威を借る狐の如く居丈高にレイラの戦力を誇っている。
「ふふ・・・。」
見ていて滑稽だ。
「ふふふふ。」
この程度で勝てると思っているならおめでたいものだ。
「業火 杖 分解 展開 広域 射出。」
岩陰に隠れながら左肩から背後に杖を向け、少し長めの魔法を詠唱する。
「ぬぅ!!?」
男は唖然とする。
私が隠れている岩陰から飛び散るように炎が分散し、それらは地面に落ちることなく浮遊して、一つ一つがまるで弓を引いた矢のように待機していた。
「止めるでござるレイラ!!」
「もちろん・・・にゃあ。」
レイラは銃を連射されるが岩陰に隠れているので喰らうことは無い。
そうして妨害されることなく詠唱を完成させ・・・。
「彗星矢一斉射。」
詠唱が終わると炎の礫達は鎖を外された猛獣の如く、容赦なく男とレイラに飛んでいく。
「うひぃ!!?」
「ひぃッ!!」
「危ない・・・にゃあ。」
男と弟子娘が間抜けな声を上げる中、レイラが冷静に男を抱えて背中の加速装置の噴射を利用した加速で即座に岩陰に隠れ、炎の雨をやり過ごす。
「貧乳女ッ!! 私を殺す気ですかッ!!」
「マジで当ててやろうかコラ。」
弟子娘のクソガキが非難気味に喚いてくる。
「付き合ってられんでござるッ!! レイラ!!」
「了解・・・にゃあ。」
男が呼び掛けるとレイラはそれに応えて男を再び抱え、加速装置で加速しながら奥の道へ逃げて行く。
「・・・。」
即座に岩陰から出て走り、追跡する。
「チィッ! しつこいでござるね!」
「炎 杖 放出」
男が訝しげに私を見るなか、私は走りながら杖を構え、魔法を詠唱する。
移動しながらだと集中力が散漫になる為、あまり強い魔法は撃てないので簡単な魔法を詠唱する。
「炎球」
杖を前方に向けて炎を放つ、狙いは奴らの逃走の要であるレイラの背中の加速装置だ。
だが・・・。
「にゃあ。」
レイラは逃げながら冷静に左にズレて炎を躱す。
それどころか・・・。
「鬱陶しい・・・にゃあ。」
「!!」
先程の腕の機関銃をこちらに向けてきた!
不味い!
「くッ!」
即座に近くの岩陰に隠れる。
案の定レイラは撃ってきた。
少しの間弾幕を張られたが、流石に逃げながらいつまでも撃てないようで弾丸の嵐はすぐに収まる。
「・・・。」
即座に岩陰から出てまた追跡を再開する。
少し距離が空いたせいか、奴等の姿が見えなくなった。
だがまだ手がないわけじゃない。
「・・・。」
米噛みに指を当て、魔覚に意識を集中しながら追跡する。
「・・・?」
魔力の反応があったが違和感があった。
魔力の位置が動かない。
止まってる?
「・・・。」
行き止まりに当たったのだろうか。
だとすれば好機。
すぐに追い付いて・・・!
「ッ!!?」
奴の姿が見えたが先程の希望が一気に別の物に変えられてしまう。
「デュフフフ・・・!」
男はレイラに抱えられながら此方を向き、不敵に笑っていた。
奴の背には穴があり、そこには洞窟の外の夜空が映し出されていた。
しかも森の木々の頂上が足元くらいの高さ、その風景は最悪の状況を現していた。
出口の先は崖。
しかもかなりの高さだ。
そしてこの状況が意味する物は・・・!
「ぶっひっひ!! 拙者の勝ちでござるなぁ!!」
男は高らかに勝利宣言をした。
~リメイク前との変更点~
・逃走劇にメイドのライラとレイラを追加
理由:旧版では出オチであまりに不遇だったため(マヂですまん)




