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嘘つき英雄と嘘の妹 ~リメイク版~  作者: 野良犬タロ
カザ編
18/67

#17 旅立ち


~ウルド カザ:自宅~


 あんなことがあってからの翌朝。

「んっ・・・んん・・・!」

 目を覚まして軽く毛延びをする。

「ふあぁ・・・ぁ・・・。」

 欠伸をしながら昨日中に近くのローテーブルに置いておいた着替えを取って着替える。

「・・・。」

 おかしい。

 朝起きてから問題なく身支度を整え、今にも家を出る準備が整う。

 至って順調・・・。

 だが()()()おかしい。

 数日前の俺ならこの状況が普通のはずなのに今は寧ろこの状況がおかしいと言うのが皮肉なところだ。

 いい加減前置きはよそうか。

 うん。



 ルタの邪魔が一切入ってこない!?



 そう、こんな平和な状態を誰よりも許さないのがあいつだ。

 通常のあいつなら絶対『お兄ちゃ~ん』とか叫んで入ってきて起き抜けにしょうもないちょっかいかけてくるのが標準(デフォルト)だ。

「・・・。」

 いや、まさか部屋を出た辺りで待ち構えてイタズラか?

「ったく。」

 なんでこんなことせにゃならんのかと悲しい気持ちになりながらもベッドの近くに置いていた剣を取って出入り口に向かう。

 あいつが何か仕掛けてくる気ならおそらくは部屋を出たところを見計らって構えていることだろう。

 馬鹿にしやがって。

 そうそう何度もお前の思う通りになるかっての。

「・・・。」

 ドアのすぐ近くの壁に手を添えて魔覚に意識を集中する。

 出入り口で身構えているならあいつの魔力で居場所は筒抜けだ。

 だが・・・。

「・・・?」

 おかしい、魔力を感じない。

 魔力鎮静か?

 それか罠でも貼って遠目から見張ってるとか最大限警戒しつつ、ドアを開けて通路を見る。

「・・・。」

 何もない。

 さっき考えたみたいにルタが隠れているわけでもふざけた罠を仕掛けている形跡もない。

 本当に何もないみたいだ。

 それが逆におかしい。

「・・・どういうことだ?」

 訳も分からずだが、とりあえずリビングに向かう。

「・・・。」

 辺りを見渡したがやはりルタの姿はない。

「また何企んでんだあいつ??」

 つい独り言が漏れながら・・・。

「!」

 ふとテーブルの上にあるものに目が止まる。

 紙だ。

 何か書いてある。



[先に行ってて 後で合流する  ~あなたの愛しの妹ルタより♡~]



「・・・。」

 とりあえず用件は分かった。

 だが最後の一文だけイラッとしたのでそこだけちぎってぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に捨てた。

 とりあえず食事にする。

 すぐに出ようと思っているから軽くパンで済ませる。

 家にあった食料だが、携帯できるものだけ残して後の食材は昨日中に全て処分した。

 片手サイズのパン一個を胃に流し、少し腹が膨れたところで部屋に戻って町を出る準備を始める。

 武具の装備はもちろんのこと、持っていくものは必要最低限に抑える。

「・・・。」

 ふと本棚に目が止まる。

 商業の本だ。

 この数年で自分の背丈ほどある本棚を埋めるぐらい本が溜まってしまった。

 さすがにこれは持っていけない。

 だが・・・。

「・・・。」

 二冊ほど手に取って荷袋に詰める。

「よし!」

 もうだいたい準備は終わったな。

 ルタもあんな書き置きをした以上ちゃんと後で合流するだろうし、さっさと出よう。



~??? カザ:???~



「何故分からない!!」

「あんたが分からないだけじゃない!!」



 やめて・・・!



「この子の才能を潰す気か!!」

「そっちが潰してんのよ!!」



 やめてッ!!!!



「やめてぇッ!!!」


 ・・・・・・・・・あ。

 夢、だったのですか?

 ああ、そういえばカザで宿取って・・・ってそうです!!

 師匠です!!

 すぐに探しに行かないと!!



~ウルド カザ:自宅前~


「・・・・・・・・・!」

 家を出てすぐだった。

 言葉が出ない・・・!

 だって目の前の風景があり得ないから・・・!



「みん・・・な・・・?」



 自宅の周りを町の全員が来たかってくらい取り囲んでる!?

 何がなんだか分からん!!

「・・・・・・!」

 ・・・・・・・・・ああ、そういうことか。

 ホント、この町の人達って耳が早いよな。

 おそらくはもうみんな全部知ってる。

 俺の正体も・・・あの夜の真実も・・・。

「ウルド。」

「!」

 声がする方を見るとギーンさんが歩いて来ていた。

「・・・。」

 何も言えず、俯く事しか出来ない。

 町の住民に被害が出なかったとはいえ、酷い騒ぎを起こしたのは事実だ。

 自警団同様、非難を受けるのは当然だ。

 きっと此処にいるみんな、俺の事を・・・。

「・・・。」

 ギーンさんが俺の目の前に立つと手を伸ばして来る。

 手には拳が握られている。

 恐らくは・・・。

「・・・。」

 甘んじて受ける覚悟だ。

 俺は黙って立ったまま身を任せる。

 だが・・・。

「・・・。」

「!」

 拳が何故かほどかれて俺の頭から軌道を逸れる。

 そして・・・。

「・・・?」

 何故かギーンさんの手は俺の肩に乗った。

「今日は俺一人で来た。」

「あ、ああ・・・?」

 何言ってるんだ?

 ギーンさん?

「あいつらの中にも気持ちに整理がついてない奴がいるからな。だから代表として俺が来た。」

「ああ・・・。」

 未だに意味が飲み込めない・・・。

 何が言いたいんだ??

「あれから考えた。サンドラさんに言われた事も含めてな。」

「・・・。」

 もはや相槌すら打てない。

 ギーンさんの考えてる事が全然想像できないからだ。

「確かにお前は突然の敵襲に駆けつけ、町を救った。恐らく俺達ではどうする事も出来ずに町は最悪の状況になってただろう。」

「・・・。」

 何も言えない。

 いや、正確には()()()()()()()()

 レレの言った事を笠に着て恩着せがましく自分の罪をチャラにする気なんてないからだ。

「だがあいつらの気持ちを考えれば・・・。」

「ッ!」

 左肩から痛みが走る。

 ギーンさんが強く握るからだ。



「やはりお前を許すことは出来ない・・・!」



「・・・ああ。」

 分かり切っていたことだ。

 この件に関しては誰からも非難を受ける覚悟だ。

「だから・・・!」

「ッ!!」

 さらにギーンさんはもう一つの俺の肩を掴んで強く握る。



「部下の仇を取ってくれ・・・!」



「・・・え?」

 ギーンさんの顔を見てさらに訳が分からなくなる。

 切羽詰まった様に目を強く閉じ、苦悶の表情を浮かべて歯を食いしばっていたからだ。

「勿論お前の責任ってこともある・・・だがそれだけじゃない・・・!」

「な、なんだよ・・・!」



「俺や部下たちをかき集めても出来ないからだ・・・!」



「・・・!」

 ギーンさんの表情を見て察した。

 堪えていたような涙が目から流れ出ているからだ。

 そりゃそうだ。

 部下の事を考えたら本当は自分が仇討ちに行きたいはずだ。

 けど自分の立場、責任があって町を出る訳にもいかないし、あの化け物を倒すなんてこんな片田舎の自警団じゃ不可能だ。

 奴が憎いのにどうする事も出来なくて悔しい筈だ。

 その上元凶の俺に頭を下げて頼むのも苦渋の選択だっただろう。

 どれだけ苦しいかが握られた肩を伝って理解できる。

 それに対して俺が出来ることは・・・。

「分かったよ。」

 この話を受けることだけだった。

 当然だ。

 それしかギーンさんや自警団のみんなに償う手段がないからだ。

「・・・ッ! ふん。」

 ギーンさんは俯いたまま見えないように涙を拭うと鼻を鳴らしてそっぽを向く。

 そのまま歩き出す。

 だが・・・。

「あ・・・。」

「・・・?」

 不意に声が上がってしまい、不幸にもギーンさんに気づかれて反応されてしまう。

「なんだ。」

「いや・・・。」

 思う事があった。

 万一仇が討てたとしてもギーンさんや自警団のみんなは俺の顔なんかもう見たくも無いだろうし、かといって知らないままだといつまで経っても気が晴れない。

 どうすればいいのかと聞いてしまいたかったせいで声を掛けようとしてしまったが、今更こんなくどい質問は流石にギーンさんをイラつかせるのが目に見えたせいで自重したってのが今の状況だ。

「・・・何もないなら行くぞ。」

「ああ・・・。」

 再び歩を進めるギーンさん。

 結局聞けず仕舞いだった。

 どうしよう・・・。

「ああ、そうだ。」

「?」

 ギーンさんは再び足を止める。



「仇を討ったら絶対に報告に戻ってこい。」



「!!」

 ギーンさん・・・!

「・・・それだけは忘れるな。」

「あ・・・ああ!! 絶対!!」

 思わぬ言葉に胸の奥にあった霧のような物が晴れていくような気分だった。

「ふん。」

 再びギーンさんは歩いて行き、町のみんなの群衆の中を進んで姿を消していった。

「・・・?」

 辺りを見渡し再び頭が混乱する。

 今更だが町のみんなが俺の家の・・・いや、俺の前に現れるのはなんでだ?

 さっきのギーンさんの話を聞く限り、俺を非難しに来たようには見えない。

 だとしたら何しに来たんだ???

「ふふ、困惑しているようね。ウルド。」

 声がする方を向くと声の主は歩いて来ていてすでに俺の前に立っていた。

「サンドラさん・・・?」

 なんでサンドラさんまでここにいるんだ???

「ここのみんなは・・・一体??」

「さあ、なんでしょうね。自分で確かめて見なさい。」

「???」

 珍しく意地悪な言い方をするサンドラさん。

 いや、ホント、訳が分からん!

「えっと・・・みんな・・・?」

 言葉が纏まらないうちにみんなに声をかける。

「ぷっ!」

「?」

「くくく!」

「ふふふふ!!」

「???」

 俺の様子が何かウケたのか、一人が噴き出すと数人が笑いを漏らし始める。

「いや、なんだよ!!」

「ギクシャクしすぎだろ!」

「そうだそうだー!!」

「あははは!!」

 俺がムキになって食ってかかるとだんだんとみんなが笑い出して茶化して来る。

「なんなんだよ!! なんでみんな俺のとこ来てんだよッ!!」

「・・・!」

「うん!」

「・・・??」

 ついに踏み込んで聞くと、町のみんなは互いに目配せをして合図をし合う。

「「「せーの・・・。」」」

「???」




「「「「「「「「帰ってこいウルドォッ!!!!!!」」」」」」」」」




「!!!??」

 町のみんなは声を合わせて一斉に俺へのエールを送ってきた!!

「な・・・え・・・?」

 言葉が出なかった・・・!

「町のみんなには全て話しました。そしたらみんな、自分たちの意思で此処に来たのよ。」

「・・・!」

 サンドラさんに説明されて色々と感情がこみ上げて来る・・・だが一番に浮かんだことは・・・!

「みんなぁッ!!」

 俺はみんなの前に立ち・・・!



「ごめぇんッ!!!!!!」



 俺はみんなの前で土下座する。

『罪悪感』が一番に出てきたからだ。

「ウルド!?」

「・・・おいおい。」

 町のみんなは突然なのか、俺の行動にどよめく。

「町に狂戦士(バーサーカー)が来たのは俺のせいなんだッ!!!」

 俺はみんなの前で懺悔する。

「俺・・・町のみんなに迷惑を・・・!」

「やめろって!!」

「そうだよウルド!!」

「!!」

 町の数人の若い奴らが集まって来て土下座する俺の上半身を起こしに来た。

「サンドラさんから聞いたぞ!? お前が頑張って町守ったってな!!」

「ありがとうウルド!!」

「俺達守ってくれた奴恨めるかって!!」

「・・・ッ!!」

 俺の周りにきた奴らの言葉に、これ以上懺悔の言葉が出なかった。

 同時に涙がこみ上げて来る。

「ウルド。」

「サンドラ・・・さん・・・?」

 サンドラさんが近くまで歩み寄り、微笑みかけてきた。

「あなたはもうこの町の一員です。たとえこの町を出たとしても。」

「サンドラさん・・・!」



「此処があなたの帰る場所よ。」



 しゃがんで俺の肩に優しく手を置くサンドラさん。

「・・・うっ・・・うぅ・・・!」

 敵わねぇ・・・この人には・・・!

「・・・ッ!」

 すぐに涙を拭って立ち上がる。

「ウルド!! 俺が店畳むまでには戻って来いよ! まだお前に高い魚買わせてねぇんだ!!」

 魚屋のおっちゃんが俺に声をかける。

「はは、ごめんな! いつもケチな安物ばっか買って! 生活苦しくてさ!」

 精一杯笑って返す。

「しばらくあんたの顔が見れなくなるの寂しいね! レレちゃんに説教喰らって腑抜けたあんたの顔面白かったのにさ!」

 パン屋のおばちゃんが俺を茶化す。

「うるせぇ!! 見てんじゃねぇよ!! 好きであんな顔してたんじゃねぇ!!」

 ふざけた事言うおばちゃんを思いっきり罵倒する。

「怪我には気を付けてくださいね~!」

 リテルさんが祈るような形で手を結びながらいつもの朗らかな顔で笑いかけて来る。

「分かってるよ! けどあんたは悪い男に気を付けろよ! あんたチョロそうだからさ!」

 皮肉交じりの結構マジな心配事をリテルさんに吐きかける。

「うちの子を助けてくれてありがとう!」

「え?」

 一人の女性が声をかけてきた。

 だがその足元に甘えるように縋りついている子供を見て察した。

「ああ・・・。」

 あの夜、偶然助けてぎゃんぎゃん鳴いてたガキんちょだ!

「すげぇ泣いてたぞそいつ!! ホント手がかかるから、ちゃんと見てやれよ!!」

 笑いながら親に皮肉を吐いてやる。



「帰って来いよ!!」  「絶対だよ!」   「勝手にどっか行くんじゃねぇぞ!!」

  「土産話聞かせてよ!!」  「待ってるからな!!」



「あ・・・あぁ・・・!」

 町のみんなの暖かい言葉で胸がいっぱいになってまた泣きそうになる。

「サンドラさん・・・!」

 またサンドラさんの方へ向き直る。

「ありがとうッ!!!」

 サンドラさんの両肩を掴んで頭を深々と下げて礼を言う。

「ふふ、それはみんなに言いなさい!」

「ああ・・・!」

 すぐにみんなの方へ歩を進める。

「みんなぁッ!!」

 力の限り叫ぶ。



「行ってきまぁすッ!!!!!」



 すぐに走って町のみんなの間をすり抜けて進んで行く。

 町のみんなは背中や肩を叩いたりして茶化す奴もいれば道を快く道を開けてくれたり、途中から手を繋いでアーチを作った奴がいれば、あとの奴らがそれに乗って続いてアーチを作って俺の道を作ってくれた!

「ありがとな!」

「頑張れよ!」

「ああ!」

「泣いてんの?」

「泣いてねぇ!!」

 町のみんなと言葉を交わしながら一人一人の顔を必死に目に焼き付けた。

 しばらく旅に出て会えなくなっても忘れない為に---



---それからずいぶんと走った後、人だかりを抜けても街を走り続けた。

 ただまっすぐ、振り返らず・・・。

「ハァ・・・ハァ・・・!」

 だがだんだん疲れてきて走る足を止める。

「ハァ・・・ハァ・・・!」

 結構走ったからな。

 振り返るともうみんなの姿は見えない。

 もう、いいよな。

「あぁッ! くそッ!!」

 膝から崩れ落ちる。

 そして・・・。



「ふ・・・うぐッ・・・ふぐぅッ・・・!」




 目から涙が止まらなくなってくる。

「うっ・・・うあぁ・・・!」

 ついには地面に這いつくばって泣いてしまう。

「あんなの・・・反則だろッ!!」

 泣かない方がおかしい!!

「なんで・・・!」

 今でも思う。

 自分がどれだけ愚かだったかが・・・。

「なんで今まで・・・本当のこと・・・言えなかったんだろうな・・・!」

 ほんとバカだ、俺ってやつは!!

 あんなにいい人たちなのになんで嘘ついて騙してたんだろう・・・!

 ほんと救えないバカだ!!

「うぐっ・・・くっ・・・!」

 涙を拭って立ち上がる。

 重く鉛のように進まない足を無理矢理進める。

 今度こそみんなの想いを裏切らない為に・・・!



~??? カザ:街道~


 おかしいのです!!

 町の中をあちこち走り回って師匠を探してたけど人っ子一人いないのです!!

 なんなのですか???

「・・・!?」

 あれ?

 やっと人を見つけたと思ったらすごい人数の人が一つの場所に集まっていたのです!

「ちょっと、この人だかり、なんなのですか!?」

「ん?」

 ちょうど人だかりの端にいたおじさんに声をかけたのです!

「なんだいお嬢ちゃん?」

「なんでこんなに人が集まってるのですか??」

「ああ、あんた余所者(よそもん)かい? じゃあ知らなくて当然だな!」

「???」

 なんなのですか?

「祭りでもあるのですか?」

「祭り? ああ、確かにそうとも言えるかな、こんなめでたい日はないからな!」

「?????」

 ますます分からないのです???

「すぐそこのはずれの家から一人、冒険者の男が旅に出たんだ! 俺達の為にな!」

「一人の為にこんなに人が集まったのですか?」

「ああ、そうだ!」

「よく分かんないけど・・・・・・すごく人気者なのですか?」



「ああ、俺達カザの人間たちの『家族』だからな!!」




~ウルド カザ:北門~


「あ、ウルド!!」

「!!」

 門を出てすぐ、近くの木で出来た柵に腰掛けるように待っていた人影が声をかけて一人が手を振ってきた。

「ルッカ!! レレ!! リガード!!」

 顔馴染みの三人だ。

 因みに声をかけて来たのはルッカだ。

「お前らも見送りに来たのか!」

「うん。」

「ロンモチ!」 

「であるッ!!」

 俺が声をかけると三人とも違う反応をする。

 レレは少し照れくさそうに頷き、ルッカは力強く親指を立てた手を突き出し、その後ろの背景と言わんばかりにリガードはその巨大なガタイで力強いマッスルポーズを決める。

「ははは、リガード! 筋肉見せつけるのはいいけど、もう身体は大丈夫なのか?」

「万全であるッ!!」

「病み上がりでもマッスルポーズ欠かさないとか元気いいなお前!」

「うむ!! 筋肉とはマッスル!! マッスルとは元気の証!! うぬにもマッスルビルドの良さが分かってきたか同志よ!!」

「う~ん・・・まぁ、戦いに必要なものは何でも大事だよ。筋肉もその一つだな。」

「うむッ!!」

 煮え切らない答えでもリガードは満足げに頷いた。

 ・・・良いんだ、こんな回答でも。

 まぁいいか。

 とにかくだ!!

「ルッカ・・・。」

 すぐにルッカに視線を移してジト目で睨む。

「なぁにぃ? そんな怖い顔で睨んじゃって!」

 同じくジト目で笑い返すルッカ。

 恐らく俺の視線の意味が分かって開き直ってる顔だ。

「お前も一枚嚙んでたろ。」

「なんの話かなぁ~?」

「けっ、とぼけんな! どうせお前もサンドラさんに手ぇ貸して町のみんなに色々リークして回ってたクチだろ。あんな人数、レレが手伝ったとしてもかき集めるのなんざ無理だ。」

「バレちった?」

「余計な事しやがって。」

「サプライズは思い切ってやんなきゃでしょ? どう? 泣いた? 泣いた泣いた~?」

「泣いてねぇッ!!!」

 ごめん、大嘘ついた。

 ホントはめっちゃ泣いた。

 けどどうせ分かるんだろ?

「はい嘘~! そんな真っ赤な目で誤魔化せると思ってんの~?」

「チッ、ああやだやだ! お前と話すと絶対こう言うおちょくられる流れになるからな!」

「最後まで黒星ついちゃったね♪」

「言ってろ、戻ってきたら今までのツケに色つけて赤っ恥かかせてやる!」

「ふふ、そりゃ楽しみだね♪」

「はんッ!!」

 意地悪く笑うルッカに精一杯鼻を鳴らして悪態を吐く。

 そして・・・。

「レレ・・・。」

「何・・・?」

 レレの方を向くと言葉が詰まる。

 だって仕方ねえよ。

 いつもと雰囲気違うからさ!



「服・・・今日、私服、なんだな。」

「・・・うん。」



 そう、いつものレレはギルド職員の制服、ジャケットとスカートが黒目の深緑一色で白のブラウスに黒ネクタイといった真面目その物の服だ。

 だが今のレレは赤のカーディガンに無地の白シャツ、オレンジのスカート、いかにも本来の年頃の女の子がしそうな服だ。

 何よりインパクトが強いのが髪型だ。

 いつも後ろにまとめているポニーテールの髪を下ろしており、それが一番普段のレレとのギャップを 感じた。

「どうしても見送りたかったから・・・ギルドにお休みもらった。」

 恥ずかしそうに片手で紙を弄りながら事情を話すレレ。

「カウルさん・・・大変そうだな。はは」

「いいの! いつもギルドの裏で書類仕事ばっかりやってるんだから・・・たまには窓口に顔出して仕事するべき!」

「はは、親にも手厳しいな、ははは・・・。」



「さぁっきからさぁ!!!!」

「「!!?」」



 突然ルッカが俺とレレの肩をパンと叩いて割って入る。

「なぁんか会話が余所余所しいんじゃなぁい、お二人さ~ん?」

「なんだよ!!」

「別に余所余所しくないし!!」

 ルッカがウザいと言う認識がシンクロし、俺とレレは口を揃えて文句をつける。

「せっかくレレがいつもと違う格好してるってのに『今日、私服、なんだな』ってそれだけ!? もっと言うことあるんじゃないのぉ!??」

「うるせぇッ!!」

「あーあ! あんたやっぱモテないわ!!」

「大きなお世話だッ!!」

「あんたはまた何余計なこと言ってんのよ!!」

「そりゃ確かに可愛いと思ったけどさ、そんなの面と向かって言えるか!! 恥ずいわッ!!」

「か、可愛い・・・!!?」

 レレが何故か顔を真っ赤にして目をぐるぐるさせて両頬を掌で握るように抑えて蹲る。

「か・・・かわ、かか、かわわ・・・!」

「え、ちょ!?」

 なんか想像以上にパニックになってんですけど!?

 どうなってんだこれ!!

「はぁ!? レレ!? お前どうした!?」

 なんだよその反応!!

いつも落ち着きがない奴だと思ってるけど、今回のは流石にオーバーすぎやしないか!?

 なんでこんなちょっと褒めた位で顔真っ赤にしてんだよッ!!

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()しやがって!!

 そんな変な反応されたら、ますますルッカがおかしなこと言い出して誤解するだろうがッ!!

「・・・。」

 恐る恐るルッカの方を見ると・・・。

「あははぁん・・・!」

 ほらやっぱりッ!!!

 めちゃくちゃ小馬鹿にしたような顔で笑ってやがりますよこいつッ!!

「レレ落ち着け!! なんか知らんけど落ち着け!! ルッカがオモチャにしたそうな目でこっち見てるから!!」

「ッ!」

 俺の言葉に覚醒したかのようにハッと我に返るレレ。

 そしてすぐさま、立ち上がり、フンと鼻を鳴らしながら腕組みをして如何にも『動揺してませんよ』と言うようなポーズをとる。

「何よあんた!! 変なおべっか使っちゃって!! 褒めたって何も出ないわよ!! ・・・まぁ、その、嬉しかったけどさ。」

 悪態をつきつつ最後の一言を苦し紛れに吐き出すように言いながら照れ臭そうに視線を逸らす。

「・・・。」

「・・・。」

 お互いに気まずくなって妙な沈黙が続く。

 だが・・・。

「へへへ。」

「・・・!」

 ルッカがものすごく楽しそうにこっちを見てることに気づいた!

 くそッ、何か話題見つけないと・・・・・・あっ、そうだッ!!

「レレ!! お前に言っとかないといけないことがあるんだ!!」

「え、何、ちょ!!?」

 レレが聞き返す間もなく俺はレレの両肩をつかむ。

「ウルド!!?」

 異性にこんなことされ慣れてないせいか、レレは顔を真っ赤にして慌てる。

 けどこうでもしないと言えないことがあるんだ!!



「ありがとう!!!!」



「・・・へ?」

 俺が精一杯の感謝の言葉を送るとレレは顔から力が抜けたかのように表情が消え、呆気にとられたように俺を見る。

「な・・・な、何が?」

「お前があの時引き止めてくれなかったら俺、もうこの街に帰れなかったと思う!!」

「・・・!」

「ホント俺馬鹿だったよ!! 町のみんな、良い奴らなのに何も知らないでこの町出る所だった!! だから、お前とサンドラさんにはホントに感謝してる!!」

「・・・。」

 レレはぽかんとした顔で俺の話を聞いていたが、だんだん表情が緩んでいた。

 そして・・・。

「・・・うん。」

 泣きそうな目で笑いながら頷いた。

「お前もサンドラさんと一緒に町の人たちに頭下げて回ったんだよな!!」

「うん。」

「ごめんな・・・俺がやらないといけないことだったのに・・・!」

「うん!」

 嬉しそうにただ俺の話を聞くレレ。

 いつもだったらこんな尻拭いさせた俺に対し説教の一つでもかましてくるはずなのに、やけに素直な気がした。

 けどそんな疑問は些細な事だ!

「俺絶対帰ってくるよ、絶対!!」

「うん・・。」

 そう言うとレレは軽く拳を突き出し、俺の胸を小突く。

「絶対帰ってきなさいよ! じゃなきゃ説教の一時間なんかじゃ済まさないから!」

 精一杯笑みを向けて皮肉を吐きかけて来るレレ。

「・・・! ああ、分かったよ!! お前の説教はうんざりだからな!!」

 先程の違和感だらけの反応のレレだったが、ようやくいつものやりとりができたと思って安心する。

 だがそこへ・・・。



「ハイ!! 場が温まってきたところでぇ!!?」

「!!?」



 ルッカが突然割って入り、レレの後ろから両肩を掴み、俺の前に突き出すように押してくる。

「なんだよルッカ!!」



「ここでもう一つのサプラァイズッ!!」

「フンンッ!!」



「はぁ?」

 ルッカが俺とレレの間の横に立ち、ここぞとばかりに前かがみに額にピースを当てたポーズを決めると加勢するようにリガードが後ろで両手を広げて大空に飛び立つ巨大な鳥のようなマッスルポーズを決める。

「レレから、ウルドに話したいことがあります!!」

「ルッカッ!!?」

 レレはルッカから何も聞かされてないようで、顔真っ赤にしながら『何言ってんだこいつ!?』と言わんばかりの目をルッカに向ける。

「ちょっと何言ってんのルッカッ!!」

「おいルッカッ!! レレ何も知らないみたいだぞ!? 何言わせる気か知らんが無理強いすんなよ!!」

「あれあれ~いいの~?」

「あ?」

 ルッカは俺の後ろに回って囁きかける。



「レレがあんたにどんな言葉隠してるか・・・知りたくないの~?」



「うぐ・・・!」

 ルッカの鶴の一声が鋭く胸に刺さる。

 ふざけた状況だが、こんな言い方されたら確かに気になる。

「うぅ・・・!」

『気になってしょうがないだろ! 聞いちまえよ!』とまくし立てる悪魔と・・・

「うぐぐ・・・!」

『あれだけ世話になったレレに言いたくない事言わせるのか? さすがに最低だろ!』と俺を諭す天使が俺の頭の中で死闘を繰り広げる。

「うぐぐぐぐ・・・!!」

 頭が沸騰しそうなほど悩んだ結果、薄目を開いてレレに視線を向け・・・。



「・・・お前何か言いたいことあるのか?」



 結局天使の善戦虚しく、悪魔の導きのままにレレに聞いてしまう最低な俺であった。

「うぐぅ・・・!」

 レレは、顔を真っ赤にして目をぐるぐるさせた後、ルッカに非難全開の視線で睨み付ける。

 なんだかよく分からんが、よほど言いたくないことみたいだ。

 やっぱり聞いちゃまずかったか?

 場合によっちゃ後が怖そうだし・・・でも今更後には引けねぇよな!

 開き直れ俺!!

「ほらほらレレぇ? 観念しな? 今このタイミング逃したら一生チャンスを棒に振るかもしれないんだよ~?」

「くっ・・・!」

 すぐさまレレの後ろに回り、首に右腕を回してもう左手で頬をつつくルッカをレレは悔しそうに睨む。

 だが・・・。

「・・・。」

 何かを観念したのか、悔しそうな表情のまま数秒目を閉じた後に俺を見る。

「ウルド・・・!」

「おう。なんだ?」

「・・・一度しか言わないからよく聞いて。」

 視線を逸らしながら真っ赤な顔で念を押すレレ。

「お、おう・・・。」

「・・・。」

 俺が相槌を打ち、いかにも聞く体制が整ったところでレレはもじもじとしながら俯く。

 一体何を言い出すんだ?

 恥ずかしい秘密の暴露か?

「スウウゥ・・・ハァァァァ・・・。」

 気持ちを落ち着かせるためにレレは深呼吸を始める。

 正直いつにも増して行動がおかしい。

 ホント何を言い出すんだ?

 めっちゃ気になる。

「ッ!!」

 そして顔を上げるレレ。

 如何にも溜まっていた言葉を吐き出そうとしていたその瞬間・・・。



「・・・ッ!!」



 レレは俺と目が合うとカッ目を見開き固まる。

「・・・。」

 そしてまた俯く。

「・・・レレ?」

 さすがに様子がおかしいので、つい声をかけてしまう。

「・・・?」

「・・・。」

 よく見るとレレの口元が笑っているようにも見える。

「ッ!」

 そして顔上げたかと思うと、俺に満面の笑みを向け・・・。




「言ぃわないッ!!!」



「「ハァ!!!!?」」

「ヌンッ!!」



 あまりの衝撃に俺とルッカは同時に声を上げ、ついでに言うとリガードはそんなことどこ吹く風かとばかりに青空に向かってマッスルポーズを決めていた。

「ちょっとレレッ!! 正気!!?」

 珍しくルッカが慌てながらレレをまくし立てる。

「これからしばらく街を出るやつに行っても仕方ないことだからね!」

「いやちょっと待てよッ!!」

 流石に俺も抗議する。

「このままだと俺、意味の分からん謎のお預け食った状態で旅に出なきゃいけなくなるんだぞ!? すげえ気持ち(わり)いんだけど!!?」

「勝手に気持ち悪くなったらいいじゃん!!」

「ふざけんなッ!! 言いかけたんなら言えよッ!!」

「絶対言わないッ!! 今はッ!!」

「・・・は?」

 レレの言い方に何か引っかかった。

「『今は』?」

「そう。『今は』!」

 そう言ってレレはまた俺の胸に拳を突き出して小突き・・・。



「帰ってきたら言う!! だから早く帰ってきなさい!!」

「・・・!」



 レレの表情はいつもの苦労を隠し切れないような曇った顔と違い、晴れ晴れとした精悍な笑みだった。

 詩人じみたポエムを言う訳じゃないが、その顔はまるで思い切って人生を変える何かを始める人間のような決意に満ちた顔にも見えた。

 その顔を見ると・・・。

「あぁ!! わかったよチキショウ!! こんな気持ち悪いのごめんだからな!! ちゃっちゃと全部片付けてすぐ戻ってくるからな!!」

「ウルド早く帰ってきなさいッ!! 一秒でも早くッ!!!」

「であるッ!!」

 何故かルッカが鼻息を荒くして俺に催促してくる、と同時にリガードが謎の追い打ちマッスルポーズを向けて来る。

「分かったっつの!! んじゃ行くわ!!」

「うん!」

「いってら!!」

「うむッ!!」

 三人に最後の挨拶をして、それぞれの反応を見た後三人の間を通り過ぎて走り出した!



「・・・。」



 少し走って気持ちが晴れたせいか、今更気づく。

「・・・はッ。」

 レレに完全にしてやられた。

 あんなに何言い出すか分からない状況を作っておいて言わないとか反則だろ!!

 ほんとにすぐにでも全部終わらせて早くカザに帰りたくなってくる!!

 どんな言葉を隠してたにせよ、あの土壇場でよくもまぁ利用したもんだ。

 ホント策士だよあいつ。

 けど・・・。

「・・・チッキショォ!!」

 けどやっぱりやられっぱなしは気に食わない。

 だから・・・。



「レレェェェェェ!!!!!!!」



 振り返って思いっきり叫ぶ。

 まだ走って数秒だったから案の定、まだレレたちは街の門の前にいた。

 そして俺の叫びに気づいて全員こっちに向き直る。



「戻ってきたらさっきなんて言おうとしたか教えろよォォ!!! 絶対だかんなあぁぁぁッ!!!」



 それを聞いたレレは遠くて顔の表情までは分からないが、明らかに動揺したと分かるくらい体をびくりと震わせていた。

 そして大きく息を吸うように振りかぶると・・・。



「うるさぁぁぁぁぁいッ!!!! 大声で言うな馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!!」



 ものすごく怒りに満ちた怒号を俺に浴びせてきた!!

「おお(こえ)ぇ!」

 後が怖い恐怖の反面、いつものレレらしい反応が返ってきて安心しながら再び走りだした。

 それにしてもなんだあいつ。

 もじもじしたり深呼吸したり・・・まるで()()()()()()みたいなことして・・・。

 まさかな!!

 まぁいいさ!!



 どうせ全部終わらせて帰ったら分かる事だ!!




~レレ カザ:北門~


「フゥ・・・フゥ・・・!」

「ぷくくく・・・!」

 最後の最後でふざけた事をほざいて来たウルドへの怒りに息が落ち着かない私を面白がって笑いを堪えるルッカ。

 ホント、最後の最後までムカつく・・・!

「けどいいの?」

「何が?」

「分かってるくせにぃ♪ せっかくチャンスあげたのになぁ~?」

「いいの!」

「ホントにぃ~?」

「うっさい! あの状況で言ったらあの馬鹿、どうせお人好しだから足鈍らせてたと思うからアレが一番いいの!!」

「あらぁ~。」

「・・・。」

 ちゃんと弁解したのにルッカの茶化しの手が緩む気配が無い。

「何よ!!」

「さっすが未来の奥さんだねぇ! 旦那のことよく分かってらっしゃる♪」

「変な言い方やめなさいよッ!!」



「師匠!! 師匠ぉッ!!!」



「?」

 ルッカの茶化しに罵声を返しながら町に戻ってると前方から声が聞こえたかと思ったら小さな冒険者の風貌の女の子が走ってこっちに来ていた。

 誰かのことを呼びながらきょろきょろしている辺り、人を探しているみたいだ。

「どうしたの?」

 女の子に声をかける。

「あ! 人がいたのです!!」

 女の子も気づいてこっちに走って来る。

「って、あ! お姉さん! この前に会ったことあるのです!!」

「え?」

 女の子はルッカを指さして目を輝かせる。

「よっ♪ 数日ぶり♪」

 ルッカは楽しそうに女の子に手を振る。

「どうしたのこの子?」

「ちょっと前に相談されたことあってね♪ 話聞いてやったのよ!」

「そうなんだ。ねぇ、私に何か協力出来る事ある?」

「ありがとです!! 実は、この町に私の師匠がいるはずなのです!! だから知ってたら何か教えて欲しいのです!!」

「そっか。何か特徴とかある? もし冒険者だったら私、ギルドの職員だし分か・・・ッ?」

 女の子の悩みに協力できそうな気がした矢先に何故かルッカが私の前に手をかざして制止してくる。

「ルッカ?」



「知ってるよ?」



「「・・・へ?」」

 予想外の言葉に私と女の子の反応が被る。

「じゃ、じゃあ、師匠は何処に!?」

 居てもたっても居られず女の子はルッカを問いただす。



「ん。」

 ルッカは肩の高さまで上げた手の親指で後方の町の北門を指さしていた。



「・・・!」

 まさかこの子の師匠って・・・!

「・・・・・・・・・・・・・・・ッ!!」

 女の子はぽかんとしたが、段々状況を察して顔からあからさまに怒りの色が現れる。



「むああああああああぁぁぁぁぁッ!!!!!」

「ダーリンガードッ!!!」

「ムンッ!!」

「放せですこの筋肉ダルマぁぁぁッ!!!」



 女の子がルッカに襲い掛かろうとするとルッカはリガードの後ろに回って抱き着き、リガードが片手で女の子の顔を押さえつけて進行を封じた。

「むきぃぃぃぃッ!!! 騙しやがったですね!!? 最初から知ってたくせに教えなかったですねぇ!!!?」

「ごっめーん☆ 面白そうだったからつい☆」

「あんた・・・!」

 状況を察して呆れて物も言えない。

「あんたも運がなかったね。よりによって聞いた相手がこいつとか・・・こいつ、こういう悪い事大好きな女だから。」

「いやん褒めないで♪」

「褒めてないッ!!!」

 まったくこいつは・・・!

「とにかく早く行きなさい。もたもたしてるとお師匠さん、何処にいるか分からなくなっちゃうから。」

「うぐぅ・・・!!」

 女の子はルッカに襲い掛かるのを諦めて悔しそうに門に向かって走り出すが、すぐに振り返る。

「弓女ァ!! お前のせいですッ!!! もしこのまま師匠見つけられなかったら三代先まで呪ってやるのですッ!!!」

「いやぁん♡ 一代先確定してるから迷惑かかっちゃ~う♡」

「うっざ・・・!」

「むきぃぃぃぃッ!!!」

 負け惜しみの捨て台詞すら何処吹く風とばかりに受け流されて女の子は悔しそうに北門に走って行った。

「まったく・・・。」

 改めてルッカに呆れる。

「いやぁ、面白かった!」

「あんた今度あの子に会うようなことあったらちゃんと謝っときなさいよ?」

「忘れてるかも♪」

「そういう女よねあんたは・・・!」

 ホントあの子が不憫で仕方ないわ・・・!

「にしても・・・。」

 突然ルッカは遠い目をして笑い出したかと思うと・・・。



「にぎやかな旅になりそうね、あいつ。」



「・・・! ・・・ハァ。」

 一瞬呆気に取られたが、すぐに呆れて溜め息が出る。



「・・・そうね。」



 

~リメイク前との変更点~


・家を出る前のパート追加

理由:やっぱりルタが居ない描写不自然だと思ったww

・町のみんなの歓迎描写を大幅改良

理由:やっぱりカザ編の一番の泣きシーンですしおすし

・弟子娘パート追加

理由:リメイク前はマァジでこの辺の弟子娘の師匠追跡描写サボってたしぃ~?(過去の自分を睨むクソ犬作者)

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