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嘘つき英雄と嘘の妹 ~リメイク版~  作者: 野良犬タロ
カザ編
15/63

#14 探偵と密偵


~??? カザ:街中~


「はぁ・・・。」

 相変わらずカザの街中をトボトボ歩いていたのです・・・。

 昨日は()()()()だったのです・・・。



---前日。


「ふむふむ、なるほどなるほど・・・。」

 弓のお姉さんは私の話を興味深げに聞いてくれたのです!

「ふ。」

 お姉さんの口元が笑い始めた!?

 やっぱりです!!

 きっと何か手掛かりになる事を何か知って



「ごっめ~ん☆ やっぱ分かんな~い☆」



「・・・・・・へ?」

 え?

 え?

「えと・・・え?」

「分かんない☆」

「え?」

「だから! 分からない!!」

「でも、色々聞いて・・・。」

「聞いたよ? 『左手にボウガンを装備した灰色のコートで冒険者っぽい男』だよね? うん、考える限り思い出したけどやっぱそんなやつ見たことない♪」

「えぇ・・・!」

「ま、この町には冒険者結構いるし、探してたらそのうち見つかるかもね♪」

「そんなぁ・・・!」

「じゃ、あたし行くから! じゃね~♪」

「えぇ・・・!」

『えぇ・・・。』としか言いようがない私を他所に、お姉さんは軽い足取りでどっかに行っちゃったのです。



---「はぁ・・・。」


 あのお姉さん以外好感触の情報得られなかったのです。

 みんなどこのどいつが広めたかもわからない例のいい加減な噂を信じて全然話聞いてくれないし・・・。

「うぅ・・・。」

 やっぱり師匠・・・この町に居ないのですか・・・?

「師匠~・・・!」

 今にも泣きそうな気持ちで顔を上げると・・・。



「・・・・・・・・・え?」




~ウルド カザ:街中~


 朝の九時、ちょっと開くには早いが俺はギルドに向かっていた。

 ()()()()どうしても行かないといけなかったからだ。

 何故なら・・・。




「師ぃぃぃぃぃぃぃぃ匠ぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!!!」




「?」

 後ろから何か声が聞こえ



「ぐふぅぉッ!!!!!?」



 振り向いた拍子に何かが俺の腹部に思いっきりぶつかった!!

 なんだ!!?

 猪か!!!!?

「痛ぃってぇ!! なんだ一体!!」

 上半身を起き上がらせながらいきなりぶつかった上に未だに俺の上に伸し掛かっている何かを確認すると・・・。



「やっと・・・! やっと会えたのです・・・師匠!!」



 目の前にいたのは年端もいかないような小柄な少女だった。

 ショートボブの青い髪でマントを羽織っている感じ、冒険者みたいな格好だ。

 少女は俺に会えた事に感極まっているのか、今にも泣きそうに潤ませた目をキラキラと輝かせていた。

 だが・・・。



「誰?」



 俺の返答は非情な物だった。

 いや、仕方ないよな?

 俺()()()()()()()()()()()()もん。

「あなたの弟子ですッ!!!」

「いや誰だよッ!!!」

 マジで意味が分からん!!

 ・・・いや待て。

 こいつ()()だ。

 アレだわ、うん、アレだ。

「オーケー分かった。とりあえず話聞こうか。」

「ハイです!!」

 俺が冷静に諭すように言うと自称弟子娘は快く馬乗りの姿勢からどいてくれるのでお互いに立ち上がる。

「とりあえず質問。」

「ハイです!! なんなりと!!」

 俺が聞くと弟子娘は俺の顔を見上げながら目をキラキラさせて返事をする。

「まず、お前は何処から来たんだ?」

「出身、ですか? 私はタリスベ



「さいならッ!!!」



 弟子娘が口を開いた刹那、一瞬の隙を突いて俺はすぐに踵を返して思いっきり地面を蹴って全力ダッシュで逃げる。

「えぇッ!!!? 師匠ッ!!?」

 当然ながら弟子娘は目を丸くして驚く。

「なんで逃げるのですか!! 師匠ッ!!」

 これまた当然ながら弟子娘はそのまま追いかけてくる。

「うるせぇッ!!! 誰が『師匠』だッ!!!」

「あなたです師匠ッ!!!」

「黙れッつってんだろッ!! こちとらお前みたいないきなり意味不明な展開押し付けて来る奴の相手は色々お腹いっぱいなんだよッ!!!」

「意味がわからないのですッ!!」

「お前の存在の方が意味分からんわッ!!!」



「っていうか足遅くないですか師匠?」



「何ィッ!!?」

 話をしている間にいつの間にか弟子娘に横に追いつかれていた!!

 マジかこいつ、足早くね!?

 いや・・・よく見ると青白い神経の筋が露出している足から見える。

 上昇(ライズ) だな!?

 その年で使えんのか!!

 生意気だな・・・!

「ぬふっ♪」

 勝利を確信してか、弟子娘は不敵な笑みを浮かべる。



「観念して私を弟子にぬぁッ!!?」



 もはや勝ったも同然とばかりに弟子娘が能書きを垂れようとした瞬間、俺は奴の目の前でいきなり両手をパンと叩く。

 奴が目をギュッと閉じて怯んだ隙に・・・。

「ふぇ? ふぎゃッ!!」

 すかさず腰を落として足払いをかけて奴を転ばせる。

 すると弟子娘は間抜けに前のめりに身体を倒してどべっと地面に激突する。

「バァカ。」

 その隙に一気に走って距離を取る。

「卑怯です師匠ッ!!」

「うるせぇッ!! 逃げるのに卑怯もクソもあるかぁッ!!」

 即座に起き上がって追って来ながら非難する弟子娘に向かって皮肉交じりに罵声を浴びせる。

 とは言え・・・。

「何度逃げても無駄なのです!!」

「くっ・・・!」

 弟子娘は尚も上昇(ライズ)を使って追って来るので距離がすぐに縮まって来る。

 このままだとまた追いつかれるな。

 さっきの猫だましも不意討ちだから効いたようなもんだしもう使えないだろう。

 だったら・・・!

「ッ!!」

 路地裏の小道に入って行く。

「ぬッ!!」

 弟子娘もすぐに追って入って来る。

「へっ・・・!」

 だがすぐに俺はほくそ笑む。

 既に勝利を確信しているからだ。

 何故なら・・・。

「ちょ、ここ・・・走りづらいのです・・・!」

 そう、走りづらい。

 何故ならカザの路地裏は曲がり角が多く、迷路みたいになっていて道を知らない余所者にとっては非常に走りにくい。

 しかも・・・。

「あれ・・・?」

 二股の道で弟子娘はどっちに逃げたのかとばかりに俺を探す。

 何度も視界を遮るのでこういった追いかけっこともなれば追手は相手を見失うので撒きやすい。

「むむむ・・・! おかしいのです! 魔力も感じないのです!! 師匠どこに行ったのですか!!?」

「・・・。」

 魔覚で索敵しながら愚痴る弟子娘が通り過ぎた物置の陰で俺は目を閉じて座っていた。

 魔力鎮静で奴の感知から逃れるためだ。

「師匠ぉー! 怖くないから出ておいでですぅ!!」

 弟子娘は俺を呼びながら探すが、それで俺が出て来てくれると思ってる辺りおめでたいな。

 誰が出て来てやるもんか。

「・・・・・・・・・。」

 しばらく弟子娘の俺を呼ぶ声が聞こえたが段々遠ざかったのを確認して立ち上がる。

 誰かは知らんがこの街で俺を捕まえようなんて考えは愚策だったな。

 ここに来て数年、街の作りぐらいは熟知してる。

 この辺りは近所のガキどもが鬼ごっこでよく使ってる撒きスポットだ。

 余所者を撒くにはちょうどいい。

「やれやれ・・・。」

 なんだったんだ、アイツ?

 まあいいや。

 さっさとギルドに行こう。



~ルッカ カザ:街中~


「・・・。」

 商店街の少し離れの大通り。

 あたしはある人物の後ろを歩いていた。

 茶色のセミロングのサイドテールを下げた女の子。

 ウルドの妹だ。

 朝市の買い出しで見かけたって情報があったから商店街の周辺を張っていてたら案の定見つけた。

 何故彼女を尾行しているのか、そんなの理由は一つしかない。

「・・・。」

 彼女は急ぎもしなければのんびりもしない一定のペースで歩いており、私も彼女に気づかれないように一定の距離で同じペースを維持しながら歩いていた。

「・・・。」

 しばらくすると彼女は路地裏の小道に入る。

 だがその小道は複雑に入り組んでいる場所ではなく、まっすぐ一本道の先に行き止まりがあるだけだ。

「・・・。」

 引き続き彼女を追跡すると彼女は何の迷いもなく、同じペースで歩いていく。

 こちらに振り向く気配は一切ない。

 その理由は恐らく・・・。

「!」

 そしていよいよ行き止まりに差し掛かった時、ピタリと止まる。



「ここならゆっくり話ができますね?」



 彼女は振り返らず私に話しかけてきた。

「あーらら。尾行、バレちゃった?」

 やれやれと軽く目を閉じて両手を肩まで上げて白々しく返事をする。

 この言葉の意図もおそらく彼女は気づいている。



「まぁ、あんたなら当然だよね?」



 片目を開いて射抜くように彼女を見ながら言う。

「何を言ってるんですか?」

 そう言って彼女は振り向き・・・。

「私はただの一般人ですよ♪」

 笑みを見せながら()()()()()()()()

 その顔も仮面でもつけてるのかってぐらいの作り笑いだ。

 向こうもこうやって嘘くさい態度をとっている時点でお互い腹の内は分かっている。

 もう隠す必要はないみたいだ。

「とりあえず本題。」

「どうぞ♪」

 彼女は笑みを崩さず返事を返して来る。

 何を聞いてくるのか聞かない辺り、あたしが言わんとしている事が分かっているみたいだ。



「あんた、ウルドの妹じゃないね?」




~レレ カザ:ギルド~


「はぁ・・・。」

 冒険者への依頼の紙を掲示板に張り出している最中 、大きくため息が出る。

 理由はもちろん・・・。



「うあぁぁ・・・!」



 昨日のことだ。

 頭を抱えずにはいられずその場で蹲って項垂れる。

 完ッ全にやらかした!!

 確かに発端はウルドが思いっきり失礼なことを言ってきて腹を立ててやったことだけど、それでもあんな鬼嫁丸出しムーブかまして何やってんの私!!!

 馬鹿なの!!?

 あんなことやってたら嫌われるに決まってるじゃんバカバカバカバカ!!!!

 蹲った姿勢のまま自分の頭をポカポカと殴る。

 いつもの自己嫌悪タイムだ。

 でもこの発作が来るのが今で良かった・・・!

 ギルド空いてる時にふと思い出して発狂したら目も当てられないし、ましてやウルドの前でなんて



「レレ、ちょっといいか?」



「ひッ!!?」

 後ろからウルドの声・・・!?

 いや幻聴幻聴!!!

 無い無い無い無い無い!!!

 今ギルドが開く前だよ!?

 ウルドがいるわけ・・・!



「何無視してんだよ!」



「ひッ!!?」

 声がした!!?

 もしかして幻聴じゃなくて・・・!



「ウ・・・ウル・・・ド・・・!」

「お、おう・・・大丈夫かお前???」



 振り向くと目の前には確かにウルドの姿があった!!

 いやあり得ない!!

 なんで此処に!!?

 まだギルド開いてないのに!!

「ちょっと話があってな。カウルさんには許可取ってる、ちょっと外してくれないか?」

 あれ?

 これもしかして『処刑宣言』・・・?

 って言うか父さんッ!!

 なんでウルド通してるの!!

 馬鹿なの!!?

「あの・・・えと・・・ウルド・・・えっとね? あのね? その・・・。」

 どうにか上手く弁解しようとしたけど全然言葉が思いつかない・・・いや仕方ないよね?

 言い訳しようがないもんッ!!!

「? よく分からんが話なら外で話そう、来いよ。」

 ああもう、これ絶対あれだよ、絶対あかんやつだよ!!!!

 いよいよ終わったよもう煮るなり焼くなり好きにしてくださいいっそ殺せぇぇぇぇ!!!!!



~ルッカ カザ:路地裏~


「ふふ♪」

 彼女・・・ルタは鼻で笑いながら目を閉じ、肩にかかっていた髪を軽くかき上げ・・・。



「嫌ですねぇ、貴方のような勘のいい人は。」



 言葉と同時に目を開けた瞬間、口元は笑っていたがその眼は明らかに私を射抜くように睨みつけていた。

「とうとう隠す気もなくなっちゃったねぇ、『ルタちゃん』?」

 冷や汗を流しながらも気圧されまいと笑った口を緩めずにルタを茶化す。

「私からもちょっとした好奇心で聞いていいですか?」

「何?」

「いつから気づいてました?」



「最初に会った時から。」



「わぁお、で? その根拠は?」

 わざとらしく驚きながらルタは聞いてくる。

「あんたの『首の包帯』だよ。」

「おやおや、これ一つで?」

 またわざとらしく驚きながらルタは未だに自分の首に巻かれている包帯に視線を移しながら触れる。

「『父親に虐待された』? だったらなんで()()()なのさ。本当に虐待されたのならもっと色んな所に痣があるはずでしょ? 足とか腕とか。」

「あらあら、やはり即席の嘘じゃ誤魔化せない人もいるもんですねぇ。」

「その傷、ウルドにやられた傷でしょ?」

「・・・。」

 ルタはあたしをじっと見たまま静観している。

「最初に会った時はウルドと争ったのかと思った。でもその日の夕方、ウルドに会ったけどあんたにやられたような傷跡は見た感じ一切なかった。」

「・・・。」

 ルタは尚も静観してあたしの話を聞いている。

 恐らくはどれくらい状況を知っているのか見る為だろう。

 そんな状況でベラベラ知っている事を話すのは普通は馬鹿のやることだ。

 だがそれでいい。

 お互いに全てのカードが揃った上で話がしたいからだ。

「あくまで予想だけど、あんたは何かしらの交渉であいつに接触した。で、その途中であいつを何かしらの言葉で煽って怒らせて付けられた傷じゃない?」

「随分と想像力が働くんですね。」

 ルタは皮肉を吐いてくるが、恐らくは当たっている。

 この状況で否定しないからだ。

「恐らくはウルドはあんたに何かしらの形で脅されてあんたを近くに置いてるんでしょ?」

「酷い言われようですね、憶測だけでここまで悪人にされるなんて心外です。」 

「あとは『何故ウルドがあんたみたいな奴に狙われるのか』。まあその辺煮詰まってたから、今まであんたを問い詰めなかったけど、確信が持てたのは一昨日の夜だね。」

「一昨日の夜ですか。」

「偶然だったんだけど、例の狂戦士(バーサーカー)がウルドの事を『アルト』って呼んでてね?」

「・・・!」

『アルト』と聞いた瞬間、ルタはぴくりと動く。

 その反応であたしは自分の推測が間違ってないのを確信する。

「その時はよく分かってなかったけど、例の町の外のデカイ雷の剣が現れた時の最後に現れた、天に向かって真っ直ぐに伸びる光、あれを見てピンときた。」

 そう言ってルタを真っ直ぐ指さし・・・。



「『閃光の英雄 アルト』、それがウルド(あいつ)の正体でしょ?」



「・・・。」

 ルタは真っ直ぐにあたしを見ているが表情が消えている。

 恐らくは全て知ったあたしをどうするか考えているんだろう。

「まぁあたしも半信半疑だったよ? 『こんな片田舎にそんな大物が本当にいるのか?』って・・・でもね?」

 話しながら目を閉じていたがすぐに開いて真っ直ぐにルタを見る。

「あいつがみんなの前でついた嘘、『町の外で野営していた冒険者』、実は本当にいてね? まぁ見習いみたいなちっこい子だったけど、現場を見てたらしいよ? 『雷の剣の下にいたのはたった一人、左手にボウガンを装備したコートの男』ってね。もう、疑いようがないでしょ?」

「・・・ふふ。」

 ルタは鼻で笑いだす。

「ここまで目ざとく調べる人がこんな田舎町にいるとは思いませんでしたよ。あなた、『(こっち)側の人間』ですか?」

「一時期小遣い稼ぎに情報屋やってただけ、今はもう店畳んでるけどね。そういうあんたは英雄様を監視に来た王様の使いってとこ?」

「ええ、そんなところです。」

「あっそ、まぁあたしにはその辺は興味なし。この町は元々『流れ者の町』だからね、その中にとんでもない奴がいたとしても驚かないよ。」

「だったら何故私にこの話をするんですか? わざわざ自分の推理をひけらかす為に話したわけじゃないでしょう?」

「そうだね、お互い情報交換して素性が分かった所で本題。」



 そう言いながら瞬時に距離を取り、あたしは弓をルタに向かって構えた。



「・・・何の真似です?」

「あたしはあんたの事が信用できない。だからウルド(あいつ)の傍にあんたがいることを許さないってこと。何かあってからじゃ遅いからね。」

「随分過保護なんですね。彼に恋してるんですか? 確か別に彼氏さんが居たんでしたよね?」

「そっちのは別の奴、あんたも分かってるでしょ? あたしはそいつの泣く顔がみたくないだけ。」

「はは、彼女ですか。友達想いなんて素晴らしいですね。」

 ルタは笑いながらあたしを賛美する。

 だがその目を細めたうすら笑いは侮蔑と狂気を織り交ぜた悪魔の笑みだった。

「で? どうすんの? 返事はイエス? それとも



「お断りします♪」



「あっそ。」

 簡素な返事と共にあたしは躊躇なく矢を放つ。

 矢は真っ直ぐにルタに向かって行った。

 だが・・・。

「・・・!」

 目を疑う。

 矢がルタの脚に当たる寸前、何かに切り刻まれるかのように粉々になって地面にばら撒かれた。

「・・・。」

 だが驚きはしない。

 この手の相手だ。

 例え丸腰に見えようと油断していい訳が無い。

 明らかに何か武器を隠し持っている。

「忠告いいですか?」

「は? 何、余裕ぶっこいちゃってさ!」

 挑発的なルタの言動に皮肉を返しながら次の矢を弓につがえる。

(こっち)の人間に『足を狙う』なんて脅しにもなりませんよ?」

「はっ、当てた後に警告してやろうと思っただけ。その後に腕、肩、わき腹にでも当てて『次は心臓』ってね。」

「悪趣味ですが理にかなってますね。」

「そりゃどうも。」

「じゃああと一つ。」

「何―――

 ルタに聞こうとした瞬間だった。



「ッ!!!!??」



 目の前の光景は信じられない物だった。

 弓が独りでにバラバラになってその場に崩れ落ちた。

「・・・は?」



「相手に見える武器は使っちゃ駄目ですよ♪」



「・・・!」

 何をされたの・・・?

 だって、あいつとは間合いをちゃんと取って・・・!

 斬撃!?

 でも投擲の素振りなんてなかった!!

 どうやって!!?

「あなた、野伏(レンジャー)でしょ? だったら弓が無い時点で詰みですね♪」

「舐めんな!!」

 すぐに足のベルトに着けていたサバイバルナイフを抜いて構える。

「まだやるんですか?」

「・・・はは。」

 思わず乾いた笑いが出る。

 自分でも馬鹿な事やってると分かってるからだ。

 けどこれが一番正しい判断・・・いや、残された手段だろう。

 間合い不明の武器、こっちの弓の間合いにすら届く以上、逃げたところで自分も弓と同じ運命をたどる事になる。

 今更逃走は不可能だ。

 この手の輩は秘密を知られたら生かして帰すつもりはないだろう。

 ほぼ詰みの状態だ。

「・・・。」

 ナイフを下ろす。

「おや? 諦めたんですか?」

 ルタがあたしに哀れみの言葉を送った時だ。



「へっ・・・。」



 思わずほくそ笑む。

「何がおかしいんです?」

「あんたがどのみち敗北してるからだよ。」

「何が言いたいんです?」

「考えてもみなよ。」

 ルタを指さす。

「ここであんたにあたしが殺されたとしたら、じきにあたしの死体が発見されて大騒ぎになる。そうすれば真っ先に疑いがかかるのはつい最近ここに来たばかりのあんただよ?」

「なるほど、確かにそうですね。」

「よしんば死体を上手く隠せても同じこと、遅かれ早かれあたしは『行方不明者』となって自警団も調査に移る。結果は同じだよ?」

(したた)かですね。自分が死んだあとの保険までかけるなんて。」

「どうする? まぁどの道あんたがあいつの傍にいられなくなるのは確実だけどね!」

 あたしは勢いよく両手を広げる。

「さぁ、殺りたきゃやりなよ!! どうあがいたってあたしの勝ちだけどね!!」

「・・・。」

 ルタは俯いたまま黙り込む。

 この状況を打開しようと思考を巡らせてるんだろうけど無駄無駄!!

 何をしようとあんたの敗北は



「あははははははは!!!!」



「!!?」

 何!?

 急に笑い出した!?



「私がいつ『自分と彼の正体がバレたら困る』なんて言いました?」



「・・・は?」

 何言ってんのこいつ・・・!

()()()()()()()()()()ですね。」

「何が言いたいの!?」

「もうバレたっていいんですよ。だって




~レレ カザ:ギルド裏~


「え・・・・・・・?」

 ギルドの裏に呼び出され、ウルドから聞いた言葉は衝撃的な言葉だった。



「カザを・・・出る・・・・・・?」




~リメイク前との変更点~

・弟子娘襲来シーン追加

理由:もう前から書いてる事だから言うまでも無し(ヲイ)、ついに出会ってしまった!!

・ルタとルッカのシーン追加

理由:ルタとルッカの絡みで最も書きたかったシーン!! ついに書けた!!(感涙)

・レレとウルドの会話の半分を次回に移行

理由:文字数管理のずさんなクソ犬作者のせい(ギルティ)

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