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小説「日本有事戦記」  作者: 島石浩司
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(18)横須賀基地

(18)横須賀基地


 山崎、藤野両隊からなる浅間山部隊の約百台の車両は一気に坂を下り、神奈川県内へと走り出した。予想通り、神奈川県内に人の姿は全くない。

 無人の街中を走行し、廃線となった東海道新幹線の高架橋を潜り抜け、相模湾を見下ろす国道を走り続け、三浦半島へと向かう。

 北の上空から、轟音を立ててC国軍機が飛来してくる。浅間山部隊の後方を走るトラックの荷台でワタルとオダは、運搬ロボットに備え付けの監視装置を作動させ、捉えた敵機をレーザー銃で撃ち落としていく。

 突然南の逆方向から二機のC国軍機が飛来し、部隊の中央に複数のミサイル弾を投下した。数台の車が大破する。飛び去って行く敵機めがけて、ワタルとオダのレーザー銃が発射され、二機が同時に爆発し墜落炎上する。


 走行を続けながらの戦闘は十数分続いた。次々飛来するC国軍機から多数のミサイルが撃ち込まれ、浅間山部隊の数十台の車両が破壊された。

 同時にワタルとオダのレーザー銃により、計九機の敵機が撃ち落とされた。

 部隊の車列は破壊された車から生存者を救助しつつ、無人の鎌倉市街を南へと走行を続け、三浦半島の東海岸にある横須賀基地まであと5キロの地点まで近づいた。


 そこへ、西方向の上空からC国軍機の大編隊が近づいてきた。ワタルとオダはレーザー銃を構えるが、バッテリーはあと数機を破壊するだけの残量しかない。浅間山部隊の車列は隠れる場所もなく、鎌倉市内を横須賀基地へ向けて走行し続けている。


 その時だった。上空に近づきつつあるC国軍機が、突然次々と爆発炎上を始めたのだ。一気に十数機が破壊され墜落していく。残存する敵機は、急旋回し北方向へ飛び去って行く。

 ワタルとオダはレーザー銃を撃っていない。浅間山部隊以外の正体不明の味方が、C国軍機を撃墜したという事になる。


 なおも横須賀基地へと走行を続ける浅間山部隊の車列の右手に、十数台の見た事のない装甲車両が見えてきた。装甲車の上から顔を出した乗員たちが手を振っている。この装甲車部隊が、C国軍機を撃ち落としてくれた味方なのか?と考えられたが、確かめるために停車して話し合いをする場面でもない。浅間山部隊の車両は止まらずに敬礼を返しながら、横須賀基地に向かって走行を続ける。


 ワタルとオダは、装甲車部隊の正体を知りたいと思い、監視スコープを最大にした。驚いたことに、その装甲車部隊からは、陽気な米兵達が降りてきて手を振っている。しかも、一台の装甲車からはアサミと宮里組と隊長と屋宜のレキオス部隊が降りてきたのだ。

 ワタルとオダは、

「レキオス部隊がいる!仲間の五人がいる!止めてくれ!」

と叫んで、トラックを止めさせ、荷台から飛び降りてレキオス部隊の五人のところへ全力で走っていく。荷台にいた苗場山の女性達は何の事か理解できずに、ただ驚いている。


 すごい勢いで走ってきたワタルとオダを見て、アサミが、

「久しぶり!元気そうね!」と言う。

「レキオス部隊、ただいま到着!」と隊長の喜屋武が言った。

 他の者も、ハアハアと息があがっているワタルとオダを見て笑っている。

 息を整えてから、オダが言った。

「何でここにいるんすか!」


 隊長によると、芸能人たちを乗せて東京湾を出るとき、横須賀基地から米軍のイージス艦が出てきて、レキオス号を守って小笠原まで送ってくれた。そこで芸能人達を下ろし、レキオス号に乗ってイージス艦とともに、横須賀基地に戻ってきた。横須賀基地には軍用車両、ロケット弾、レーザー銃が、補給艦で大量に持ち込まれている。米軍はそれを日本の自衛隊に供与したいという事だ。


 オダはその内容を、耳にかけたマイクとレシーバーで、浅間山部隊の藤野隊長に伝えた。(山崎隊長はC国軍機のミサイルにより戦死していた。)その時、藤野隊長達は横須賀基地のゲート前に到着していたが、ゲートが開いたのに驚いていたところだった。事情を了解した藤野隊長は、米兵の指示に従って、浅間山部隊の車両をゲート内に乗り入れ、米軍の中佐と固く握手をした。隊員達も、基地内の駐車場に車を誘導され、車から降りて、出迎えた米兵たちと握手する。


 米軍のレアード中佐の話によれば、現在、横須賀基地には、イージス艦と補給艦が停泊しており、米本国からの補給艦で運ばれた24台の装甲車両が用意されている。装甲車には充分な数のロケット弾とレーザー銃が搭載されている。

 C国との協定により、米軍としては横須賀基地から外へは出られない規定になっている。しかし、日本の自衛隊に軍用物資を供与する事には、何の問題もない。どうか、これらの武器を使って、C国軍と存分に戦ってもらいたいと言う。


 話の途中で、装甲車両12台が、次々と横須賀基地に帰還してくる。装甲車から米兵達が笑顔で、レアード中佐に敬礼をする。レアード中佐はそれを見て

「これは、米兵のプライベートな外出という事だな。」とニヤリと笑う。


 浅間山部隊の到着で、米軍側からは、今夜は歓迎会を開くという話になった。

しかし、藤野隊長が、浅間山が数日中にもC国軍に包囲される緊急事態であり、一刻も早く武器弾薬を確保して戻る必要がある事を米軍側に説明し、予定は変更された。

 浅間山部隊とレキオス部隊は即刻、24台の装甲車両が並ぶ巨大な倉庫へ案内され、一台について運転手2名、レーザー銃の射撃手2名の計4名、24台で計96名がそれぞれ選抜される。レキオス部隊にも先ほどの装甲車(12号)が割り当てられている。


 ワタルとオダが乗ってきた運搬ロボットを積んだ中型トラックと、その五倍以上の重量感のある装甲車を並べた横で、久しぶりに揃ったレキオス部隊の七名と苗場山の女性達四人は、まるで家族のような会話を始めた。

「これが、新潟で芸能人を救出したレキオス部隊、そしてこちらが勇敢な苗場山の女性達」と、オダが紹介する。

「しかし、生きていたとは驚いたな」宮里ヒロシがワタルとオダを見て言う。

「生きてるわ!C国軍の奴らを、日本海から信濃坂、鳥甲山、榛名山とあちこちで相手してやったわ!」とオダが何時になく陽気に答える。

「俺も、あちこちでレーザー銃、お見舞いして、テレビゲームより高得点上げたさ――!」とワタルも自慢気に答える。

「オダとワタル、でーじハバぐわー!」とアサミが言う。

「前から聞こうと思ってたけど、ハバぐわーってどういう意味?」とナイチャーのオダが聞く。

「知らなかったの?チョ―カッコ良いって事さ――!」

「オダとワタル、でーじハバぐわー!」と苗場山の女性達四人も声をそろえて叫んだ。

 みんなが大笑いしたので、案内の米兵も意味は分からなかっただろうがニッコリ笑った。

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