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小説「日本有事戦記」  作者: 島石浩司
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(16)作戦会議

(16)作戦会議


 小川の近くの山小屋風の別荘の中で、長野県本部長、群馬県本部長、浅間山部隊の主メンバー、榛名山の女性リーダー、苗場山の平井隊員、そしてオダとワタル達で協議を始める。苗場山部隊のその他の隊員は、ここに到着していない。


 本部長たちの話によれば、C国軍は富山、新潟、群馬の関越トンネルそして榛名山で、ロケット弾により大打撃を受けたが、体制を立て直し進攻してくるのは時間の問題だ。

 苗場山も榛名山も残念ながら、C国軍に制圧されたようだ。隊員達と連絡が取れないという。苗場山の隊員は黙って頷く。


 ここ浅間山には、本州奪回連盟の中心部隊が集結している。三輌の戦車、数十門の砲と、バズーカ砲をもつ三千人の戦闘部隊が集まった。我々はこの浅間山でC国軍を迎え撃つ。これ以上撤退するつもりはない。

 しかし戦闘員以外の避難民は巻き添えにしないために、さらに南アルプス、山梨方面へ移送する必要がある。戦闘部隊はその避難民を守るためにも、この浅間山でC国軍を迎え撃ち、最後まで徹底的に戦うつもりだ。


 ただ武器弾薬の補給が限られており、それを補給するために、何か方策はないか検討中だ。レキオス部隊から供給されたロケット弾はもう残っていない。

 東京湾でレキオス部隊の船から新たに供給された3発のロケット弾は、残念ながら前橋方面でC国軍に爆破された。運搬していた榛名山部隊のメンバーは、一刻も早くロケット弾を仲間のもとに届けたかったのだろう。関越自動車道を走行中にC国軍に狙い撃ちされたらしい。それを聞いた榛名山の女性リーダーは手をぎゅっと握って下を向いている。何かを祈っている様子だ。


 長野県本部長が、

「武器弾薬といえば、六日前の二十四日に、北アルプス方面の部隊が、富山のC国軍飛行場にロケット弾を撃ち込んで軍用機を多数破壊したが、その方面には、C国軍の武器弾薬の集積所がある。そこへ部隊を派遣して、武器弾薬を強奪する、あるいは破壊する事も可能だ」という作戦を提案した。


 オダは、

「神奈川方面は無人になっている。横須賀の米軍基地に二隻のC国軍の艦船が停泊していた。ここを襲って、C国軍から武器弾薬を奪い、C国軍の船も奪う事が出来るかもしれない」という提案をする。


「横須賀基地を襲撃する作戦は考えられるな、神奈川地域が完全な無人地帯になっているという情報は伝わっている。C国軍が、横須賀基地の米軍と住民との連絡を防ぐために、何らかの方法で無人化したようだ。」(その何らかの方法の内容には触れなかった)

「C国軍の艦船が横須賀基地を米軍に無断で使用しているなら、攻撃されても公表できないだろう」

「横須賀方面に、自分たちを派遣してください。レーザー銃で、C国軍の艦船を乗っ取り、武器弾薬を奪い、その船に避難民を乗せることもできます。」


 協議の結果、危険は多いがやってみる価値はあるという事で、両方の提案が採用された。

 富山方面の作戦は三百人の北アルプス部隊が担当する。

 横須賀作戦もオダとワタルだけでなく、浅間山部隊から三百人を同行させる事になった。

 本部長達からは、

「両隊とも、くれぐれも慎重を期すこと、無理と分かれば浅間山方面に引き返して、数日中にも浅間山を包囲してくると予想されるC国軍の背後をついて、攻撃してもらいたい」という指示を受けた。


 同時に本部長達は、、女性、子供、老人の避難民約五百人を、山梨、富士山近辺に移動させるために、榛名山のリーダーが同行してもらいたいという依頼をした。山梨方面の連盟のメンバー達にも、有名な榛名山の女性リーダーが出かけた方が話が通じるという事だった。

 そして、群馬の本部長は、万一の場合は、榛名山のリーダーが群馬の本部長を引き継ぐ事を真剣な顔で依頼した。榛名山のリーダーもそれを了承した。


 オダとワタルはその後、それぞれ約百五十名の隊員を持つ二つの中隊の山崎と藤野という指揮官と、移動方法、連絡方法、作戦などを協議した。

 出来る限り少人数に分かれて車に乗り、観光客のように装って移動する事。山中湖畔の富士吉田を通過ポイントとして集結し、御殿場から箱根山の北にあるC国軍の検問所を突破して、神奈川県内を南へ向かう。部隊の終結地点は、米軍横須賀基地北西三キロの山中。そこから横須賀基地への攻撃を行う事とした。


 その日は最後の大宴会という事になり、榛名山の最大洞窟(旧日本軍のコンクリート製地下壕を更に大きくしたもので、三十メートル四方はある)に、主だったメンバーがすべて集まり、いつもより豪華な食事とカラオケ大会で盛り上がった。やたらと音が反響する壕の中で、本部長達や、リーダー達も声を張り上げて歌った。軍歌をうたうものはいない。

 長野県本部長は九十を超える年齢で、

「今はハゲげているが、若い頃は髪ふさふさで沢田研二に似てるといわれたもんだ!」

と大爆笑をとった後で「勝手にしやがれ」をはりきって歌う。大盛り上がりだが、これを聞いて涙ぐんでいる女性達もいた。

 そして何故か、喜納昌吉の「花」を歌う隊員達がいた。「連盟」の人々の中では最近の定番だという。最後は浅間山部隊の大合唱となった。


花 ~すべての人の心に花を~  作詞作曲 喜納昌吉


川は流れて どこどこ行くの  人も流れて どこどこ行くの


そんな流れが つくころには  花として 花として 咲かせてあげたい


泣きなさい 笑いなさい  いつの日か いつの日か 花を咲かそうよ


涙流れて どこどこ行くの  愛も流れて どこどこ行くの


そんな流れを このうちに  花として 花として むかえてあげたい


泣きなさい 笑いなさい  いつの日か いつの日か 花を咲かそうよ

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