今日のお昼ご飯は、ロコモコ丼弁当だった
「はい♪ 今日のおかずは、旭が大好きなハンバーグでロコモコ丼にしてみたよ♪」
そう言って彼女赤坂 千早は、2段のどんぶり型のお弁当箱に入ってるご飯とハンバーグ達を合体させ、最後に小さい容器に入ったソースかけて、スプーンと一緒に俺難波 旭に渡してきた。
俺達は高校2年になってすぐに一緒になって、それからお昼休みはいつも中庭で一緒にご飯を食べるようになった。
「おっ! めっちゃ美味そう!」
俺がそう言って、受け取ろうとしたら、ヒョイっと弁当を遠ざけられてしまった……え?まさかの此処でお預けですか!?
俺が恨めしそうに千早を見つめると、小悪魔みたいな笑みで俺を見てきた。
「おかしいなぁ~♪ いつも美味しい! って言って食べてくれるのに、今日のお弁当は美味しそうなんだぁ~♪」
そう言って、ニヤニヤと俺の方を楽しそうに見てた。くっ……悔しい。
「美味しそうってのは……そう! 見た目がだよ!このジューシーなハンバーグに黄身が半熟っぽい目玉焼き。そして何より!みずみずしいキャベツの千切りがアクセントとして素晴らしいって事でして……はい、すいませんいつも美味しいお弁当食べさせてもらって、とても幸せです。どうか、ロコモコ丼を食べさせてください」
そう言った俺は、俯きそっと自分のお腹に手を当てた。ちくしょう……俺の平日のお昼のお腹はもう完全に屈服してしまってる……
そんな俺の様子を見て、満足したらしく、千早は俺にロコモコ丼を渡してきた。
「前半は聞かなかったことにしてあげる♪」
「ありがたや、ありがたや」
そう言って俺は、手を合わせてから、一気に食べ始めた。
「うまい! 最高! 身体が喜んでるのがわかる……」
俺はあまりの美味さに思わず、涙が出そうになった。
「もう~大袈裟なんだから♪ そんなに急いだら喉つまらせるよ?」
「大丈夫♪ 大丈夫♪ ……んぐっ!?」
俺は、急いで弁当を置き、自分の胸をトントンと叩いた。
「ほら、言わんこっちゃない。はいお茶!」
俺は息ができず涙目になりながら、千早があわてて手渡してるお茶を、受け取り流し込んだ。
「んっ……ごくっ……ごくっ……ぷはぁ~! マジで死ぬかと思った!」
「ロコモコ丼で死んだら、一生笑われちゃうよ?」
千早は、呆れた顔をしながら俺のお茶を受け取った。
「そういえば旭……今月の分だけど……」
そう言って、千早はオズオズと上目遣いで、俺を見つめてきた。少し目を左右に泳がせてるから、緊張してるのがすぐにわかった。
彼女が言ってる今月分とは……定額レンタルの支払いについてだ。千早は、俺の彼女だが……正しくは定額契約の雇い彼女だ。
半年前、いきなり彼女から雇って欲しいって、雇った時は流石に信じれなくて、何度か疑ったりもした。
定額……月に1万と言う破格だが、さらに俺の好意によって、値下げするとまで言ってきた。もしそれを言ったら、間違いなく8割~10割になってしまう……俺は知っていた……毎日安いスーパーを駆け回ったりしてる千早の努力を。家の財布とは別の、小さなピンクの財布を愛おしそうに抱きしめ、会計を済ませ幸せそうにしてる千早の笑顔を。
そんな一部始終を遠くから見た事があるから、俺は毎回支払いに困ってしまってた。しかし、今日は感謝を込めて素直に言うんだ。
俺は財布を取り出し、中から1万円札を1枚取り出し、千早に手渡した。千早は、一瞬寂しそうな顔をしてそのお金を受け取ろうとした。そこで俺がさっきされた仕返しとばかりにサッと1万円札を遠くへやった。
「その前に、話したいことがあるんだ」
「話したい事?」
千早は、なんの事か分からず、コテンと首を傾げた。
「そう、この1万は、支払いとは別の1万なんだ」
「えっ……?」
千早は、手をギュッと握りしめ、突然の事に驚き見開いた瞳を色んな方向へ泳がせ初め、掠れるような声で尋ねてきた。
「ど……どういう事かな? それに、その1万円はなんなのかな?」
「この1万の意味は……」
さっき喉を詰まらせた時にお茶を飲んだのに、口の中は緊張して、既にカラッカラに乾ききっていた。
「俺の、お弁当代って事なんだけど……」
「お弁当代?」
「この前偶然見かけてさ……俺が支払ってる1万円で、俺の弁当の材料買ってるのをさ……」
「あっ……」
「だから……今まで払ってた1万円は、俺が千早を好きって気持ちで0になったから……新しく弁当代って事にしたいんだけど……ダメか?」
俺は恐る恐る、右手で持ってる1万円札を、そっと千早の前に持っていった。千早は、受け取ろうと手を少し伸ばしては戻し、伸ばしては戻しと、迷ってるようだった。その様子を見て、俺は振られると思い、その様子を直視することが出来ず、目を瞑り、右手に全神経を集中させた。
どれだけの時間が経ったのか……時の流れが物凄く遅く感じる……そう思った時、俺の右手からスッと1万円が抜き取られた。それに気がついた俺は、バッと目を見開き、千早の方に視線を向けた。
「私が望んだ事なんですから、0円になっただけでも嬉しいのに……毎月……毎月1万円を渡される度に、悲しくて泣きそうになるのをグッと堪えてたのに……なんで……なんで0円なのに涙が出るのよ……」
そう言いながら、千早は受け取った1万円に胸元で握りしめながら、静かに泣いていた。俺が見た時には少し目元と鼻が赤くなってたから、ずっと泣いてたのはすぐにわかった。
俺は震える手で千早の涙を拭いとった。目元の涙を拭いとった時、千早と視線が合い少し見つめあってから、千早の唇にそっとキスをした。数秒間唇同士が触れ合うだけのソフトなキスだったけど、俺にはそれが凄く尊く長く幸せな時間に感じた。
唇を話した時には、千早はもう泣き止んでた。
そんな千早に俺は照れくさくて顔を逸らし、恥ずかしくて赤くなった頬をポリポリかきながら……
「これからも……美味いお弁当よろしくな」
初めてのキスは、とても濃厚で美味しく幸せな味だった。
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