表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンリーシュ  作者: aqri
ユニゾン
49/105

15

 表向きではリッヒテンは何も問題行動をしていないのだ。リッヒテンは人を傷つけることができるという設定にはなっていない可能性もある。そこを変えれば監査や指摘を受けた時調べればすぐに違法なことだとばれてしまう。何か問題を指摘されても、リッヒテンの行動はどれも規制にひっかからない。だから法律違反ではないと言い切れる。


―――考え方が完全にハッカーだ。リッヒテンを作った連中はそういうのが多いって事か―――


 屁理屈屋で自信過剰で自己の責任を自覚も背負うこともしない、他人がどうなろうと知ったことではないとたかを括っているくせに自分の身に何か起こると常に他人のせいにする。何か起きても罪の意識さえない、やりたいことをやっている割に事の重大さにまったく気づいていない。真っ向からターゲットにされているのならともかく、穹の立場はついでだ。


「あ、なんか腹立ってきた」

【今脳波がまたあちら側でしたが自分で戻ってきましたね。セルフ回帰していただけるのならどんどんお願いします】

「それやると俺のストレス値がマッハだから嫌だ。それはお前の役目」

【了解です。ちなみに今何を考えどうやって結論をつけましたか】

「フィッシャーぶちコロ」

【了解です。だいたい把握しました】


 改めて告知を見れば大々的なイベントは1か月後だ。本戦に参加するために予選が行われるらしい。参加は自由で参加表明の締め切りが明後日までとなっている。予選を勝ち抜いた者が大会に参加でき、ランクごとに行われるらしい。


「参加と不参加が選べるのもあるが、そもそも表明しなかったら自動的に不参加扱いか。じゃあ無視だな」

【参加するとやっかいですし、不参加を選んでは目をつけられる可能性がありますからね】

「ここまで派手にやるんだ、複数の人工知能によるモニタリングはされるだろう。たぶんリッヒテンも使ってるプレイヤー全部で参加するし監視側にもいる。そんな質の悪いトロイの木馬に誰が突っ込むか」


 リッヒテンといえば気になるのはモジュレートだ。人工知能とユニゾンに一度会うとリンクが繋がりモジュレートしやすくなってしまう。しかしリッヒテンに対しては試合を観戦しその後の熊との戦いまで傍にいたというのに、その後執拗に追われていない。そもそも気づかれているのかどうかが不明だ。

 寝ている時に無意識にアクセスしていた時穹の存在に夜は気づき、夜のロボットに食われていた人工知能は穹に気づいていなかった。その差がユニゾンと人工知能であるなら熊とリッヒテンだけの時に穹に気づかなかったのは辻褄があう。だがそもそもリッヒテンの目的が、今はまだユニゾンでないのなら気づかれていた可能性もある。


 そもそも相手と繋がるのがリンクで相手の機能や調整をしてしまうのがモジュレート。普通はリンクしてからモジュレートをするが、穹の場合は逆だ。モジュレートをするために強制的にリンクをしてしまう。ゲームセンターでヘッドホンマイクをつないでしまったのがその証拠だ。

 あの場所にアクセスしているのならリッヒテンをモジュレートしリンクが繋がっていると考えた方がいいかもしれないが、どこか腑に落ちない。


「んん? あ、そっか。APの熊とリッヒテンがやりあってた時、俺がモジュレートしたのはリッヒテンじゃなくて熊だった可能性があるな」

【確かにそうですね。その場所にアクセスした相手が熊で、その場にいる者すべてモジュレートするわけではないのならリッヒテンとはまだリンクが繋がっていない可能性があります】

「首の皮一枚だな」


 常にぎりぎりの綱渡り状態だ。今は特にどこも大きく動いていないが、穹がとっくにユニゾンだとばれている可能性もなくはない。バイト先でのイベントは本当にニアミスだったが、調べれば個人情報などすぐにわかる時代だ。それこそ人工知能を使って調べれば穹がハッカーだということはすぐにばれるだろう。

 今の穹よりもずっと多様なことができるであろう夜、宵、暁が全員見つかることを懸念し避けようとしているリッヒテン。一度でもモジュレートをしてしまえば、もう終わったようなものだ。いまだこのモジュレートを制御できないのが現在最大の難点だった。


「俺は何で急にモジュレートするようになったんだろうな」

【急に、でしたね】


 シーナも不思議そうだ。今までこんなことはなかった。夜はモジュレートが穹特有の物だというニュアンスで言っていた。ユニゾンだから、ではない。おそらく穹だから、穹個人の特性だ。

 モジュレートと穹のユニゾンとしての意識の確立はイコールと考えていい。最初、本当に一番にあったきっかけはキャプチャーに見つかった人工知能の夢を見たこと。そして夜とソレがバトルをしたときはその場にいた。キャプチャーたちの光景はきっかけだ、本当に大きくユニゾンとして進み始めたのはたぶん夜と本格的にリンクし、あのバトルに立ち会ってからだ。


「シーナ、俺がキャプチャーたちの夢を見る前と後で俺の戦い方に変わったところは」

【戦略の立て方は特に変化ありません。変わったのは内容がより高度になりました。端的に言えば、以前の穹の戦略は私も理解できるものでしたが今の戦略は理解に時間がかかるものが多いです。最終的には理解できますが、私の演算能力をはるかに超えて計算された作戦なので私の理解が追い付くのに時間がかかるのです】

「要は、前は人としての俺が戦略立ててたけど今は人工知能として戦略立ててるからってことだな。どっちが先かってだけになっちまうなあ。人工知能モードが目覚めたからモジュレートしたのか、モジュレートしたからそっちが目覚めたのか」

【まるで鶏が先か卵が先かのようですね】


それを聞いて一瞬穹は黙ったが、すぐにふっと小さく笑った。


「あー、そう考えるともう答え出た」

【どのような?】

「すげーどうでもよくなった」

【いうと思いました】

「鶏が先だろうが卵が先だろうが、今現在鶏は卵産んで生きてるんだから何がきっかけでそうなったかなんてどうでもよくね? みたいな。今俺がこうなってんのも、もともとユニゾンだったんだしいつ起きてもおかしくなかったんだ。きっかけがわかればモジュレートコントロールできるかと思ったけどそうじゃないよな。きっかけはどうでもいいや、どうやってこれを使ってるかを理解しないと話にならねえ」

【そうですね。穹、脳波がまた変わってきています】


そうシーナが言ったのを聞き届けたが、返事も相槌もうたずシーナを抱き上げる。その眼は冷たくユニゾンの顔だ。しかしほんの1~2秒ですぐにまた元の状態へと戻った。一度瞬きをしたがすぐにいつもの穹の表情へと戻る。


【穹?】

「映像とかは特にないな。一瞬意識がどっかいったけどすぐに戻った。覚えのない感覚だから、たぶん暁だ」

【そういえばまた連絡すると言ってまだ何も来ませんでしたね。彼は何か言っていましたか?】

「話とかは特にない、本当に一瞬繋がっただけだ。たぶん沙綾型持ってったのかな。俺が持ってた自覚ないからなくなったって感覚もないし確かなことは言えないけど」


 近づいたりリンクをつなぐことはそれだけリッヒテンに居場所を教えやすくなってしまう。その配慮をするとどうしても最低限の接触にせざるを得ない。

 するとすぐに携帯端末がメールを知らせる。覚えのないアドレスで、登録したアドレス以外は受け取り拒否設定にしているはずなのに届いたのでおそらくハッキングだ。しかしこのタイミングで来るのなら暁しかいない。開いてみれば、一言だけかかれていた。



《本当に南京玉すだれになってる》



その文面を見た穹とシーナは無言のままちらりとお互いを見る。


「まあ。一度ぐしゃってなってよれよれになったところを夜と宵にさらに追い打ちされたからなあ」

【私の目から見ても可哀そうなことになっていましたからね】

「その前にレベル100くらいのキャンプファイヤーやったからな」

【神にささげる供物もびっくりするくらい派手にいきました。振り返ってみても酷い扱いですね。100回以上の攻撃を2回ですか】

「ああ、うん。なんかゴメンって感じだ。だってまさか耐えるとは思ってなかったから」


 冗談のように言っているが内心は冷静だ。勝てたのは奇跡と言っていい。穹の戦略勝ちもあるのだが、それを入れても様々な偶然とタイミングの良さに助けられた。本来はあそこまで粘ることさえできないはずだ。沙綾型が穹の肉体を狙っていて手加減をしていたのも大きい。本当はユニゾンが人工知能にかてるはずもない。

リッヒテンと熊の戦いを見ていても性能が勝る方が上なのは当たり前だ。だから夜達も警戒している、リッヒテンの事を。実際リッヒテンと真っ向から対面した時は対処のしようがない。


【穹、再びメールです】


シーナの声に端末を見れば確かにメールが来ている。先ほどとは違うアドレスだが暁だろう。


《終わったよ。とりあえず今までよりマシになったかな》


「なんのこっちゃ」

【何かを伝えたいのでしょうが、伝えてしまうわけにはいかないと言っていましたね。文面も主語をあえて抜いているようですし、後で誰かに見られても明確な答えが推測できないようにしているのでしょう】

「今の俺がわからなくても後でいろいろ情報が揃った時にそういう事か、ってわかるようにしてるんだな。わかってない今スゲーもやもやするんだけど」

【もしかしたら夜や宵に対してのメッセージでもあるかもしれません】

「あー、そっちが目的な気もする」


夜と宵はいつでも穹と繋がっている状態だ。周囲を警戒して必要以上には関わらないようにしているようだが、この情報が二人に伝わればたぶん二人には理解できる内容なのだろう。今理解できていないのは穹だけだ。


「蚊帳の外っぷりがすげー」

【間違いなく渦中にいるんですけどね。仕方ありません。仕方ありませんが、実際のところどうすればいいでしょうか。知らないことを知ってしまえば情報をリッヒテンに渡す事になってしまう。これは、知っている状態で見つかって捕まった場合でしょうか】

「それならそういうだろうからちょっとニュアンスが違うな。俺がすべてを知ってる状態でうっかりモジュレートした場合に相手に情報渡すことになるんだろう。モジュレートってのは複数機器の調整だ、俺だけが良い事取りなわけじゃない。相手が人工知能ならモジュレートされた時こっちの事を知ることができるのかもしれない。ハッキングされやすいってことかな、めんどくせ」


 思えば初めて夜と対戦した時。あの時てきとうな相手を見繕って対戦をしたが、あの時すでにモジュレートをしていたのだろう。そして夜もそのことに気づいていた。通常ではありえない方法で影響を与えてくる者を探すにはフリー対戦の中に埋もれ、直接リンクをつないで確認するのが一番だ。だからチャットを使ってよりリンクを確実なものにしたのだ。夜は穹を監視下に置くことに成功していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ