プロローグ
ギルド職員――矢龍凍牙は十八歳の時に大手ギルドに就職し、今年で四年目。
二十二歳になった彼だが、ある夢を諦めきれずにいた。
それはドラグノート――魔道書の捜索である。
*
「これ、そっちに置いといて」
「はい!」
「そっちの方にクエスト用の紙なかった?」
「探しておきます!」
俺――矢龍凍牙は今日も上司に命令されながらも、職員の仕事をしている。
俺にとっては長年の夢でそれが叶ったのはいいのだが――
「ねぇ、お昼休み行こうよ」
俺が仕事をしていると、金髪の女性――隣野精華が俺に話しかけてくる。
「分かったよ」
精華は俺の幼馴染だが、俺の直属の上司でもある。あまり断ることはできない。
「じゃあ、カレーうどんにしよう!」
「俺は味噌ラーメンで」
「相変わらずラーメン好きねぇ」
「当たり前だろ、精華」
仕事中は「隣野さん」と呼ぶのだが、休憩中は「精華」だ。
*
昼食を食べ終えた後、俺はカフェオレ、精華は紅茶を飲みながら他愛もないことを話す。
俺は精華とそういう話をするのが好きだった。だが、俺は今からこいつにとんでもないことを言う。
俺は精華から目線をそらし、
「精華。実はな、俺、魔道書探しの旅に出ようと思う」
その発言に精華は紅茶の缶を持ちながら、キョトンとしている。
「それって本気なの?」
「ああ。四年前――ギルドに入った時にやめようと思っていたんだ。けれど、やっぱり諦めきれなかった」
「そう」
精華は紅茶を飲み終えたのか、缶を燃えないゴミの箱へ捨てる。
そして――
「それでも職員はやめないほうがいいよ。冒険者っていつ死ぬのかも分からないから」
精華はそれを言った後、振り返ることをもせず、職場へ戻った。