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童貞魔法使い 異世界へ  作者: ミルノ。
第一章 現代編
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有給休暇ってなに?

いつの間にか、日課になっている娘の俺を起こす行為に幸せを感じ、今日も嘘をついて公園へ向かう。


流石に三日目になると、公園の鳩も学習するらしく、俺が来たらベンチに集まるようになった。


鳩に愛着が湧いてくる。


「仲間意識かな?」


今日も、会社へ有給休暇申請をした。


公務員は、こんなに有給休暇を使えるのかと思うと腹が立つような気がしたが、勉強しなかった自分が悪いと誰かに言われた気がしてやり場のない怒りが胸に溜まる。


感情的になると人は、判断が甘くなると言うが、この時の俺は、明らかに冷静さを失っていた。

レベルアップの為、と言う大義名分と胸のモヤモヤを打ち消す目的も相まって、俺は、女湯を覗きに行く事を決心した。


何度でも言うが俺は、本当にバカであった。


何故ならまた、壁に挟まってしまったからだ。


この後の展開は、説明するまでもないだろう。

呆れた顔をした警察官に「またお前か。」と言われ、学校へ行ったはずの娘が通行人に混じってこちらを見ていた事以外は、概ね前回と同じである。


前回「次は、絶対に捕まえるからな」と言っていた刑事さんがガッカリしていて、俺を逮捕しなかった。

と言うか、壁に挟まっていただけだから、逮捕出来ない状態らしく、見るからに残念そうにしている。


それを見かねた俺は、励まそうと肩に手を置き


「ドンマイ!次があるよ。」


と言ったら、なぜか激怒された。


警察署を出ると娘が迎えに来てくれていた。

大層ガッカリしているだろうと思って娘の顔を恐る恐る見てみると、笑顔で迎え入れてくれた。

この懐の深さは、母親譲りなのだと感心してしまった。


二人で家へ帰る途中、娘が無言で俺の手を握って来た。

その小さな手は、数は減っているが、絆創膏が何枚か貼ってあり、待ち時間が長かったからか、冷たくなっていた。


帰りつくまで、特に話す事はなかったが、手を離すこともなく仲良く手を繋いで俺らの家へ帰った。



翌日、有給休暇明けに仕事場へ休んだお詫びにちょっとしたお菓子を持ち出勤する。

学生時代以来の連休を取り色々あったが、心なしか体が軽い。


更衣室に着くと異変に気付く。


「あれ?どこ行った?」


俺のロッカーがなくなっていた。


ロッカーと共に俺の作業服と私物が丸々なくなっていた。

もっと、わかりやすく言うならば、ロッカーに書いてある名前やロッカーの中がキレイサッパリなくなっていたのではなく

俺のロッカーが本体ごと何処かへ行ったしまったのだ。


仕方がないので、来客用のロッカーを使い、来客用の作業服を着て事務所へ向かった。


そしたら、ロッカー、作業服、私物の次に俺のタイムカードもなくなっていた。


「一体、どういう事だ。訳がわからない。」


事務員のおばちゃんに聞いたら、「社長の命令でロッカーごとみんなで担いで捨てたよ。」と言われた。


更に訳がわからなくなる。

一体どんな理由があれば、そんな酷いことが出来るのか……。


理由を訪ねると


「有給休暇申請が受理されなかったから、三日間無断欠勤した事になってるよ。」


「え……。」


三代目社長の新しい方針

無断欠勤は、即クビ


本日をもって、俺は、この会社をクビになりました。


「やられっぱなしのお前が悪い。」


課長に言われた言葉が脳裏にこべりつく。

だが、所詮弱者は、叩かれイビられボコボコにされても我慢するしかないのだ。

やり返した所で現状をより悪化させるだけだ。


「我慢……。」


俺は、抗議しても意味がない事を知っている。


他の社員に後ろ指を指され、ケラケラ笑われる。


「我慢……。」


社長が来ていると言うことなので、クソみたいな思い出しかないが、社会人らしく最後に挨拶して去ろうと社長を探す。


入れ違いだったらしく、更衣室の外で焚き火をしていた。


何を燃やしてるのか良く見てみると、一人ブツブツ呟きながらついさっきまで着ていた、俺の服を燃やしていた。


「僕に逆らったらどうなるか思い知らせてやる。」


拳を強く握り締め我慢する。


俺には、守ると決めた娘がいるから。

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