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童貞魔法使い 異世界へ  作者: ミルノ。
第3章 ダンジョン編
30/33

プリンは、好きですがゼリーが嫌いなんです。

―― 豆一粒に賭けた大勝負に負けた俺は、ただ笑って目の前の死を受け入れた。


「どんなに足掻いてもダメなら、初めっから頑張らなければ良かった。 どうせ失うのなら何も持たない方が……。」


ふと、パチンコ屋の前で死にたいと呟いた日を思い出す。

それが走馬灯なのかは、わからない。


俺の人生で楽しかった瞬間は、あの出会いから始まり幸せを感じさせてくれた人を助ける事も出来ずに終わってしまうのか……。



死ぬ最後の最後まで、諦めちゃダメだ。

もがき苦しみまた、幸せを手に入れよう。

目に生気が戻るが何もできないのは、変わらない。


シュッ


俺の横を何かが通りすぎたと思ったら、俺を今にも噛み砕こうとしていた口が轟音と共に閉じ、ケロベロスの頭二つが地面にめり込んでいた。


「お座りです。」


ケロベロスのめり込んでいた頭の上で腕を組みどや顔で仁王立ちしているカリンを見て驚いた。

俺が落下して直撃しただけで爆散した、ゼリー状の魔物に追い詰められていた女の子が、明らかに強者であるケロベロスを圧倒したのだ。


「お前、なんで……?」

「私プリンは、好きですがゼリーが嫌いなんです。」

「は?」


少し呆れてしまった。

カリンに、ではなく俺にだ。

確かにダンジョンの下層にか弱い女の子がいるわけがないのだから。


「何か、言うことがあるんじゃないですか?」


ニヤニヤ、モジモジしながら俺に何か言わせようとしているカリンにちょっとイラっとする。


「そうだな……。 あの犬の体勢は、お座りじゃないぞ。」

「本当、素直じゃないです。 やっぱり貴方の事、好きだけど嫌いです。」


ついさっきまで、死にかけていたと言うのに今では、談笑してしまう程安堵する。

体中の力が抜け、恐怖で忘れていた失った腕の痛みが再び俺に襲いかかる。


噛み千切られた腕からの出血が酷い。


最悪な状態だ。


いや、本当ならダンジョンから落とされた時点で死んでいた。

ゼリー状の魔物がクッションになったとは、言ってもカリンが居なければ、死んでいた。

仮に生きていたとしても、ケロベロスに呆気なく食われて死んでいた。


今、生きているのは奇跡が続いた結果だ。


最悪じゃなく、運が良かったのかもしれない。

腕を食い千切られたくらいで諦められない。

腕をキツく縛り、止血する。


「豆、食べます? 美味しいですよ?」


満面の笑みで口元に豆を近づける。


「ちょっ! お前、マジで危ないからそれを俺に近づけるな!」

「何なんですかその言い方ら、親切心で言ってるのに酷いです。」

「目の前のケロベロスを見てみろ! 俺をあんな風にしたいのか」


俺は、地面に埋まってない真ん中の白目を向いたケロベロスの頭を指差す。


「……。 えへへ。」


どこか照れたように舌を少しだし、笑顔で誤魔化そうとする。


あれ……? 可愛い?


一瞬みとれてしまい危うく可愛いさに騙される所だった。


「でも、そのままだと死んじゃいますよ?」


カリンが言うのも正論だ。

腕を失って出血が酷すぎる。

血が足りないのか頭がふらふらして来た。


命の危機を何度も乗り越えて来たせいなのか、おかげなのか、こんな状況にも関わらず、俺の頭はどこか冷静であった。

あまり、何度も頼りたくないがこの自称小悪魔に頼るしかないと考えが至る。


三分の一の確率で頭がパーになるが、上手く行けば完全回復する不思議な豆を持ち、ケロベロスを圧倒した身体能力を持つ底知れない不思議な女の子。


もしかしたら、豆以外にも回復効果のあるアイテムを所持してあたるかもしれない。


「もしかして、豆以外に……。」

「無いですよ? そんな都合良く有るわけないじゃないですか。 私は、どら○もんじゃないんですから。」


俺の言葉を遮り、小さな希望が簡単に消えた。


また、危険を犯してあの豆に頼るしかないのか。

目の前のケロベロスの惨状を見て絶望しか浮かばない。


「はは、ダメだこれ」

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