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メタモルフォーゼス  作者: 新町 東
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第5話『おのれ委員長、我が覇道の前に立ち塞がると言うか!!』

和俊:そういえば第1話であった、フルマラソン以上の距離を1時間程で走っている俺達の説明はしなくていいのか?

作者:その事だけど、いずれお話の中で解説しようと思っているから大丈夫だよ、多分。

和俊:なるほど、そこまで書き続けていればの話だな。

第5話『おのれ委員長、我が覇道の前に立ち塞がると言うか!!』


 夢を見た。


 それは昔の夢、小学生の時の夢。

「俺、大きくなったら兄ちゃんみたいなスゲー魔法師になりたい!!」


「俺だって!! 昌さんみたいな魔法師になってやる!!」


 幼き頃の夢、俺と智樹の夢。


「はっはっは!! この俺のようになるってか? でもなおまえら、俺まだ学生だぜ?」


「でも父さんから聞いたよ、すげぇ魔法使えるんだろ!!」


「いいよな~、かっけーなー!!」


 あの時の俺達は目を輝かせて兄貴を見ていた。


「でもな、魔法保有量があっても人は頑張らないと強くなれないんだぞ。 確かに俺はSランクあったがこれでも認められるためにスゲー頑張ってんだぜ」


「だったら俺、頑張るよ!!」


「俺も頑張る!!」


「そうかそうか、だったら俺と一緒に特訓するか?」


「「おうっ!!」」


 兄貴は俺達の頭を軽く叩き、


「ついてこい!!」


 そう言って走り出した。


 もしも俺があの頃に戻れるとするならば、伝えてやりたい。


 せめて自分だけにも伝えてやりたい。


『おまえ達は魔法師を目指すことを諦めることになる』


 そう伝えたい。


 


 それは小学4年になった夏休みのある日の事。


 母さんの研究所で魔力保有量の測定をすることになった俺たち二人は、自分の魔法が何なのかようやくわかる日が来たとはしゃいでいた。


 だけど、あの日の事は今でも全く色あせる事無く鮮明に覚えている。


 何度やっても測定結果がDランクを示し、嘘だ嘘だと泣きじゃくる智樹の泣き顔。


 そして俺自身の測定結果も、俺自身の魔法・・も。


 その日を境に、俺の夢は魔法師から母さんを超えるメタモルフォーゼスの研究者になることを決意した。




「嫌な夢を見たもんだ」


 目が覚める。


 夢を諦め、目標を変えたことに関しては後悔はないと言えば嘘になるかも知れないがそれも昔の話だ。


 それにせっかくのバーベキューにこんな気持ちで向かいたくない。


「そろそろ時間だし起きるか」


 いつものジャージに着替え、智樹と共に日課のランニングに赴いた。




「全員揃いましたね? それでは出発しま~す」


 校門前に止まっていた大型バスに乗り込んだ1年1組のメンバー32名は、六方台へと向かった。


 今日は校外でバーベキューという事であった為、学校でブレザーから体操着に着替えている。


 男子は紺色、女子は赤だ。


 バスの隣の席にはいつも通り智樹が座っているのだが、


「朝もそうだったが眠そうだな、智樹」


「ああ、楽しみ過ぎて眠れなかった」


「おまえは昔からそういう奴だったよな」


「全く、広田くんは子どもね!!」


 後部座席から聞こえたのは、


「委員長かよ、てか何で俺の後ろに座ってんの?」


「あなたは昔から碌な事しないからよ、どうせまた出会いがどうこう言ってんでしょ!!」


「何で知ってんだ!!」


 委員長は相変わらず智樹の生態をよく理解してらっしゃる。


「てことは委員長は智樹のお目付け役として、背後を陣取った訳?」


「そういうことよ」


「おのれ委員長、我が覇道の前に立ち塞がると言うか!!」


「何が覇道よ、この変質者」


「何を!!」


 喧嘩が始まり俺は蚊帳の外に追いやられる。


 まぁ、蚊帳の中に入りたいとも思わないが。


「えっと、平賀くんだよね? 新入生代表挨拶してた?」


 後ろから声を掛けられたので思わず振り返る。


 その少女は委員長の隣に座っている娘だ。


 ぱっと見た感じは、ショートボブの栗色髪で、その柔らかい表情からは優しそうな印象を受けた。


「そうだけど、キミは?」


「あっはい、失礼しました。 私は栗山紗百合くりやまさゆりと言います」


「よろしく、栗山さん」


「あ、俺は……」


 智樹も便乗して自己紹介をしようとしたが、


「こいつは広田智樹っていう変態よ、栗山さん。 近づかない方が身のためだからね」


「委員長、貴様ァァァァ!!」


 またしても不毛な争いが始まった。


 そしてそれは、到着するまでずっと続くのであった。


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