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メタモルフォーゼス  作者: 新町 東
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第43話『ああ、そうか……』

第43話『ああ、そうか……』


「……そうか」


 呟くような声が聞こえた。


「ようやくわかってくれた?」


「ああ、ようやくわかったよ」


 それを聞いた宇佐美がほっと胸を撫でおろすが、


「宇佐美さんは九条に洗脳されてるんだ」


「そんなこと無い!!」


 クラスメイトの一人がそう言ってメタモルフォーゼスを作り上げ、


「そいつがいなくなればいんだ!!」


 そして手から光の矢を飛ばした。


 それは向けられた悪意の様に真っ直ぐ九条に飛んで行く。


「うわっ!!」


 九条に当たる瞬間、その矢を宇佐美は殴って打ち消した。


「どうなってんだよ……」


 しかも、


「何で変身もせずにそんなことが出来んだよ!!」


 変身せずに魔力名残りを使って。そしてそれを見た一人が、


「……化け物だ」


「えっ?」


 その声に呼応するように、


「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」「化け物だ」


 クラス中から無数の声が響き渡るのだった。




 そして次の日から宇佐美の扱いは変わった。


「彼女は悪魔です」


 牧園のその一言。


「魔法を使わずにあのような恐ろしい力を使えるのは悪魔にその魂を売ったからです。神の寵愛を受けれないからと言ってみなさんはあの様な事をしてはいけませんよ。そして使えない皆さんに今、チャンスが与えられたのです」


「チャンスですか?」


「そう!! なぜなら悪魔の子を倒した敬虔なる信徒に神は必ず寵愛を授けるでしょう!!」


 この一言で宇佐美は九条を除くクラス全員の敵となってしまった。




「ねぇ、くーちゃん」


「何だ」


 それはその日の帰り道。


「どうしてこうなったのかな」


「牧園先生が来てからじゃないか?」


「……どうしてなの」


 宇佐美の足が止まる。


「どうして魔法が使える使えないで差別されなきゃいけないの?」 


「……」


「どうしてアタシは悪魔の子なの?」


「……」


「頑張って練習してやっと魔力名残りをコントロール出来るようになったのに、それでも駄目なの?」


 九条は何も言えなかった。


「アタシは明日も……明日からもこんな毎日を過ごさなきゃいけないの!!」


 宇佐美はボロボロだった。そして、


「俺が守ってやるから!!」


 そう強がるものの、


「でもくーちゃんボロボロじゃん!!」


 それ以上にボロボロの九条の姿があった。


「アタシなんかを守ろうとして毎日そんなになるくーちゃんの姿を見るの……そんなの嫌だよ」


 宇佐美はその目に涙を浮かべ懇願した。




「……」


 九条は自宅のベッドで仰向けになっていた。


 そして悩む。どうすればいいのかを。


 九条の願いは元の学校に戻って欲しい。ただそれだけなのにそれが果てしなく遠い。


 今の学校は牧園先生を教祖の様に崇め、神を崇拝し、寵愛の無い者は差別される。そんな現状を無視する事は出来ない。


 そして相手は牧園先生に加えクラス全員。下手すると生徒全員の可能性まである。


 最高学年と言えど小学生一人が相手出来る戦力差ではない。ましてやこちらは使えない側。


 だが、九条は今日の帰り道の分かれ間際に聞いた宇佐美の言葉を思い出していた。


「アタシ、明日から学校行かない。だってアタシがいなければくーちゃんが辛い思いをしなくて済むもん」


 宇佐美が涙を流しながら言っていた言葉を。


 そして思い出す。クラスメイトの顔を。


 彼らの顔はまるで悪者を見つけたヒーローの様であり、何の躊躇もなく魔法を放ち攻撃して来た。


 使えない側でも寵愛欲しさに九条たちに殴る蹴るの暴行をさも当たり前の様に加えて来た。


「ああ、そうか……」


 その二つを頭の中で並べた時、きっとその答えにたどり着くのは必然だったのだろう。


 今の九条にとって、優先すべき友情は一体どちらなのか。


 切り捨てるべき友達はどちらなのか。


「やってやる」


 覚悟は決まる。九条は体を起こし、


「七海を悪魔の子と呼ぶならば、その友達である俺も悪魔で構わない」


 だけど、


「だからこそ俺は、そんな友達を救うためであれば、どこまででも悪になってやるぞ」


 そう静かに宣言するのだった。


 無意識の内に作られていた黒いメタモルフォーゼスをその手に強く握りながら。


作者:この次で過去編は終了です。

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