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メタモルフォーゼス  作者: 新町 東
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第36話『ようやく笑ったなぁ』

第36話『ようやく笑ったなぁ』


「ほら、出来たぞ」


「ありがとう、くーちゃん」


 六体の編みぐるみを受け取り、感謝の言葉を伝える。


「おぉう、相変わらず可愛い。凶悪な人相の人物が作ったとは思えない出来だよ……」


「当然だぁ。おまえが無駄に買って来た編みぐるみの本を参考にこの俺が作り上げたオーダーメイドでオリジナルの一点物だぁ。そこいらの物とは格が違うぞぉ」


 腕を組み、自慢げに語る。


「それに相変わらず早いね。あと本当にその魔法便利だよね……禍々しいのに」


「そうだなぁ。これは本当に使い勝手がいい。高い所の掃除も手の届かない所の掃除も出来る、俺にとって最高の魔法だぁ」


 それに、と九条は付けたし、


「これが無かったら編みぐるみは数時間は掛かっていたんだぁ。感謝するんだなぁ」


 普通は数時間で作れる代物じゃないんだけどなぁ、と言いたい所だったが、


「(まぁそれがくーちゃんクオリティだよね!!)」


 と宇佐美は自身を納得させるように心の中で呟くのであった。




「もうこんな時間だし帰るね」


 あたかも自分の家の様にくつろいでいた宇佐美だったがこれでも一応お隣さんの家。


 時間が時間の為、帰宅することにした。


「おう、また明日な」


 いつもの様に玄関まで見送りに来ていた九条だったが、


「…………今日は本当にごめんね」


「気にすんな」


「でもアタシ、ずるくない?」


 まるで何かを訴えるように口にする。


「くーちゃんには身の回りの事やってもらってばっかりだし、不器用で手伝いも出来ない。そのくせ自分はやりたい事を、サッカーを始めたりなんかして、くーちゃんだってやりたい事の一つくらいあるはずなのにそれなのに」


「おい七海、おまえは大きな勘違いをしているぞぉ」


 自分を責め始めた宇佐美の言葉を遮るように話し始める。


「俺がいつこんな生活はうんざりだと泣きごと言ったぁ?」


「……」


「言ってねえよなぁ。だって当然だもんなぁ。俺はこの生活を、七海に振り回される生活を一度たりとも苦行だと思ったことはねぇからだ、わかるかぁ?」


「でも……」


「でもじゃねぇ!!」


 自ずと声が大きくなる。


「おまえは昔、その魔法名残りのせいで一度友達を全て失ったぁ。それでも何とかしたかったからそれを克服するために中学ではバスケ部に入ってたよなぁ」


「そんなこともあったね」


「昔は力加減が上手くいかずに多くの物を壊したおまえだが、今となってはそれ以上に多くの物を手に入れただろうがぁ。だからこそ俺は、そんなおまえの姿を見て決めたんだぁ」


 宇佐美の頭に手を置き、


「七海がこれからも多くの物を手に入れられるように俺が支えてやらなくちゃってなぁ」


「くーちゃん……」


「残念な事に俺に友人と呼べる人物はいない。その点だけで言えば七海は器用だし、俺は不器用だぁ。その証拠におまえには弁当を交換しようと言ってくれる友達がいる。その反面俺にはそんな友はいないどころか言い合いからの喧嘩からの反省文コースだぁ」


「確かにくーちゃんは昔から友達がいないよね」


「だが一つだけ言っとくぞぉ。俺に友と呼べる者がいないのは、俺の崇高な考えを理解できるやつがいないからだぁ」


「違うよ。くーちゃんは崇高なんじゃなくて意識が高すぎるんだよ」


 真顔でそんな事を言い始めた九条に思わずくすりと笑ってしまう。だがそれを見た九条は、


「ようやく笑ったなぁ」


「えっ?」


 目が点になった宇佐美に対し、ニヤリとした表情の九条。


「やっぱりおまえはそっちの方が良い。七海には、笑顔の方が似合うからなぁ」


 向かい合った状態でさらりとそんな事を言われたもので、


「あうぅ……」


 ゆでだこの様にその表情を赤くする宇佐美。


「どうしてそんな恥かしくなるような事をさらりと言っちゃうの!?」


 反論を試みるものの、


「はぁ? 七海を昔から知ってる幼馴染の俺が自信を持って太鼓判を押してるんだぁ、胸を張れぇ」


「はぅぅ……」


 キツイ反撃をもろに喰らう結果となる。


「もういいか? こんな所で長話してたらご近所さんに迷惑だろ、さっさと帰れ」


「うん、じゃあ帰るね……あっ、そういえばすっかり忘れてた」


「今度は何だぁ?」


「くーちゃんを平賀くんに紹介するって約束してたんだけど……いい?」


「ハァ!?」


 その言葉は九条の何かに触れてしまったのか、


「痛い!?」


 宇佐美の頭に手刀を落とした。


「何でそれを忘れそうになるんだぁ!! てめぇが俺だけに迷惑かけるのは構わねぇ。だが俺以外に迷惑かけるのは駄目だろうがぁ!!」


「怒る所そこなの!?」


「当然だぁ、俺にも相手側にも予定ってもんがあるだろうがぁ。それを中継役のおまえが疎かにすれば互いに迷惑が掛かる所に決まってんだろう」


「うう、ごめんなさい……」


「で、時間は?」


「お昼休みを予定していますぅ」


「わかった、昼休みになったら一組に行くと伝えておけぇ」


「了解しました!! 必ず伝えておきます!!」


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