第30話『お、覚悟は決まったのか』
作者:前回の最後の数行を改変しています。ですのでそこだけでも読んで頂かないと話がうまく繋がらないので今パートを読んで頂く前に目を通しておいてください。申し訳ありません。
第30話『お、覚悟は決まったのか』
「へるつ……へくせん? もしかしてそれが私を助けてくれた人の名前なんですか!?」
「ええっと、ヘルツへクセンってのはその魔法少女が自分で名乗っている名前だから本名じゃなくて……」
「でも何か知ってるんですね!!」
柄にもなく前のめりになりながら問い詰めてくる栗山さん。
「お願いです。一言お礼を言いたいんです。何とか会わせてもらえませんか」
「で、でも正直俺、あの女は苦手で……」
やらかしてしまったと思いながらなんとか落ち着かせようとした時だった。
「私、Cランクなんです。もし会わせてもらえるなら平賀くん達に協力しますから!!」
「それはエスターテ杯参加メンバーに入ってくれるってことかな?」
「はい」
その目はまっすぐで真剣だ。きっとそうまでしてあの女に会いたいという事なのだろう。
彼女の目的は決して間違いでない事も、その結果がこちらの利になる事もわかっている。
だが素直に引き受けたくないのはあの女を呼ばなければならない事実だ。
どうしたものかと思案していると。
「いいじゃんか和俊。会わせてやろうぜヘルツへクセンに」
「智樹……」
「なぁ、栗山さん」
「なんですか、広田くん」
委員長との喧嘩を中断し、栗山さんに話し始めた。
「今は俺も和俊も色々忙しいからさ、今すぐにってのは無理なんだよ。だけどエスターテ杯が終わったら必ず和俊がヘルツへクセンに会わせてくれるからさ。それでどう?」
「確かにそうだな、あの女もこれから忙しくなるだろうし今すぐは無理だな。うん。」
「……それもそうですね。会えるかもしれない嬉しさに自分の都合ばかりを押し付けてしまいました。すみません」
栗山さんはそう謝罪し、頭を下げたのだった。
「正直ここでヘルツへクセンの名を聞くことになるとは思ってもみなかったな」
「ああそうだな」
いつもの帰り道。しかしいつもと違う事があるとするならばヘルツへクセンについて頭を悩ませている事だ。
放課後、さっそく俺たちは栗山さんを参加メンバーに紹介した。
正直な所、動機は不十分と言われてもおかしくないように思えたが、現状ではそこを気にするほどの余裕はない。
魔法に関してはごくありふれたものだったが、城之崎先輩も柄巻先輩も喜んでくれたわけだし何の問題も無い。
ただ問題があるとすれば、
「俺、あの女苦手なんだよな……」
この一点に尽きる事だ。
「そうか? 俺は別に苦手でも嫌いでも無いけどな」
智樹はニヤついた顔でこちらを見てくる。
「当分先の事、と言ってもきっとあっという間にその時が来る。その時に俺はあの女と会う為の覚悟が出来ているだろうか?」
自問自答。だがその答えは出ない。
俺がその女、自身をヘルツへクセンと名乗る人物に初めて出会ったのは小学二年生の時だった。
とある日の夜、その女は光の中から突然現れた。
「魔法少女ヘルツへクセン、かわいく参上!!」
桃色の長い髪をたなびかせ、その宝石の如く輝くピンクダイヤモンドの様な大きな瞳。まるでアニメに出てくる魔法少女の様な薄紅色の可愛らしい衣装にその身を包み、その手には天使の羽が付いた輪の中に入っているピンクのハートがクルクルと回る魔法のステッキを持っていた。
年齢は十二歳程度だったが、当時小学二年生の俺からすれば十分お姉さんにその当時は思えた。
しかしながらきっとその時の俺はとんでもないパニック状態だっただろう。
だがそれを感じ取ったであろうヘルツへクセンはそれを解決すべく、
「私の力を見せてあげよう!!」
そう言うと窓を開け、俺たちは星空に向かって飛んで行った。
そして俺たちは人気のない河川敷に降り立つと、ヘルツへクセンはその力を余すことなく見せてくれた。
その最中、俺は次第に冷静さを取り戻した。
そして思う。彼女の力は破格であると。攻守に優れ、他者の傷を癒す力に完全飛行能力まで備えている。
「ねえねえ、どうだった?」
無邪気に笑顔で聞いてくるヘルツへクセンに俺は、
「本当に凄いよ、こんなの見たこと無いよ。でも……」
「でも?」
その時の俺はきっと酷い顔でそれを言ったはずだ、
「君じゃあ……ダメなんだよ」
結果としてこの出来事が俺の中で密かに迷い続けていたある事に終止符を打つ結果となり、後に起こる俺と智樹の大喧嘩の発端となる出来事となった訳だがこれはまた別の機会。
「だけどまぁしょうがない」
俺は自分自身に言い聞かせるようにして、
「メンバーは増えてこれで智樹を入れれば四人。後一人で一応メンバーは揃う。そう考えればあの女に会わせるくらいの条件なんて大したことじゃない」
「お、覚悟は決まったのか」
そうは言いつつ俺はため息を吐きながら「ああ」と短い返事をする事しか出来なかった。




