第26話『一体何をした。弱みを握ったのか? 金でも握らせたか?』
第26話『一体何をした。弱みを握ったのか? 金でも握らせたか?』
「……お姉さま? いつの間に俺の背後をお取りになられたんですか?」
「遠くから見えたからね。愛する愚弟が楽しそうにお茶している所をね」
「左様で御座いますか……」
智樹の顔を冷や汗がだらだらと流れ始める。
「お姉さまから二つ、質問があるんだけどいいかな?」
笑顔で問う由樹。
「何でしょうか?」
「俊はどこ?」
「和俊は先生に呼ばれているのでここにはいません」
「そう。じゃあそこの美人さんたちは誰?」
「……生徒会の先輩方です」
「……なら何で一緒にお茶してるの?」
「聞きたい事は二つって……」
「うるさい」
智樹の頭を掴む手に力が入ったのかその口から呻き声が漏れる。
「さ、誘われたんです!! 親睦会って名目で!!」
「俊がいないのに?」
「和俊がいないのにです!!」
そうか。と由樹が呟く。そして次の瞬間その瞳に明確な殺意を宿らせて
「俊がいないのにおまえなんかにお茶の誘いが来る訳無いじゃないか!!」
「え、そこ!? グェ!!」
胸ぐらを掴まれる智樹。
「私は優しいんだ。正直に言えば半殺しで済ませてあげよう」
「半殺し確定かよ!!」
「一体何をした。弱みを握ったのか? 金でも握らせたか?」
「俺の事何だと思ってんの!!」
その発言に即答する。
「欲望に忠実で手段を選ばない下衆」
「実の姉からの評価とは思えねぇ!!」
いきなりの事で思わず呆然としていた生徒会メンバーだったが、誤解があるようなので由樹を止めに入った。
それから懸命に事の経緯を説明し…………
「そうだったのか、これは早とちりしてしまった。申し訳ない」
生徒会メンバーに頭を下げる由樹。
「翌々考えれば生徒会の事も聞いていたしね。智樹が俊に誘われてホイホイついて行ったことも。あなたたちがやろうとしている事もね」
「その、正直どう思いましたか?」
加奈子が問う。
「ああ、その事に関してだが……私は応援させてもらう」
「どうしてですか?」
「どうしてって、そんなのは単純な事だ。俊が自分でそうする事を決めたんだろう。だったらお隣のお姉さんとして応援するのは当たり前だ。個人的には優秀な人材であればCランクもSランクも関係ないと思ってるしな」
「そんな風に言って貰えるとは思ってもいませんでした」
二人が話している間、智樹は和美に佳澄と樹の紹介をしていた。
その光景を微笑ましそうに見つめる加奈子と由樹。
「そういえば自己紹介がまだだったね。私は広田由樹。智樹の姉で現役の魔法師だ」
「私は城之崎加奈子と言います。朝月高校生徒会の生徒会長をさせていただいています」
「そうか君が噂の城之崎先輩か。よし、そんな君に、一つだけお姉さんからアドバイスをあげよう」
「アドバイスですか?」
由樹はコクリと頷く。
「俊をどう思う?」
「……平賀くんはとても優秀です。足りない所だらけの私の考えでも尊重し、それを訂正し、しっかりとした道順を示してくれました。彼無くして今の生徒会は無いと言っても過言ではありません」
「そうだね。俊は昔から何でも出来る凄い奴だ。決して器用貧乏とかじゃない。どんな事柄でも高水準でこなすからね。じゃあ聞こう」
加奈子の瞳をじっと見つめ口を開く。
「うちの弟はどう思う?」
「彼はその、何と言いますか……」
「無理はしなくてもいい。精々都合の良いパシリくらいにしか思っていないのだろう」
「そ、そんなことは」
「いや、それでいいんだ。うちの弟はそれを望んでやるような奴だからな。ましてや君の様な美人さんの言う事なんて二つ返事でやってくれるだろうしね」
「……」
「だからこそのアドバイスだよ」
由樹の視線が智樹の方を向く。
「どうしても困ったらあいつを頼ってやってくれないかな。智樹は決して頭の出来がいい訳じゃ無い。直ぐに女の子の尻を追いかけるし、そう言う点で言えば無能だし、Dランクだから魔法も使えない。まぁ、体力はあるよ。典型的な脳筋だからね」
それでも、と言葉を続ける。
「うちの弟は決して無力じゃない。やるときは例えどんな逆境でも力を貸してくれるはずだ。何せあの昌の頭の悪いトレーニングについて行ける数少ない人間だ。そのおかげでそこら辺の人よりかはよっぽど頑丈だしね」
「だから頼れと?」
「そう言う事。でも本当の事を言うとそんな状況にならないのが一番だよ。だってその状態であるという事は間違いなく俊も一緒に動き出すって事だからね。正直、現役魔法師の私でも本気の俊を敵回したくなんかないよ。だからこそ忠告させてもらうよ」
指をピンと起てて加奈子の顔に由樹は顔をずいっと寄せて、
「絶対に平賀和俊を本気で敵に回さないこと。これだけは肝に銘じておいて欲しい」




