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メタモルフォーゼス  作者: 新町 東
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第25話『一体、どこの、誰が、凶暴だって?』

第25話『一体、どこの、誰が、凶暴だって?』


「『放っておいても』って、正気ですか!!」


 切羽詰まっている佳澄。魔法師を志す佳澄にとって目の前の悪は決して見逃せないのだろう。


「ねぇ、広田くん。あの人は知り合いですか?」


 加奈子の問いに、


「そうですね。二人とも俺の知り合いと言いますか……身内と言いますか……」


「身内? と言う事はあの二人は広田くんの妹さんですか。だったら尚更助けに行かなくてはいけないんじゃないですか!!」


「俺に妹はいませんよ。えっと……あの娘」


 智樹が指を指したのは黒髪の少女。


「あの娘はさっき話した和俊の妹の和美ちゃん。それでその前に立ってる青い髪の人が……俺の姉貴です」




「もう許さねぇ、少しばかり痛い目に遭わせてやる!!」


 一人の男が言い放つ。その言葉に、


「魔法を用いて他者を傷つける事は禁止されてるよね? まさか陰陽の生徒とあろう者がそれを知らない訳は無いよね?」


「う、うるさい!! これは犯罪じゃない、これは……」


 男がその手に赤いメタモルフォーゼスを作り上げる。


「お仕置きって言うんだよぉ!!」


 変身した男はその手よりバスケットボール程のサイズの火球を放つ。


「はぁ、全く。これだから最近の学生は……今日はせっかくのお休みだからみぃちゃんとお買い物にと思ったのに……」


 広田由樹は深く、深くため息を吐く。


 そのため息に含まれているものは哀れみや悲しみの類。


 その目に宿るのは彼らの身に付けるその制服に袖を通す意味を考えないことに対する憤り。


 だからこそ宣言する。


「『お仕置き』って言いたいのはこっちのセリフだよ、後輩」


 火球が衝突する。


「ざまぁ見やがれ!!」


 高笑いする五人の男。だが、


「せっかくの休日なのに仕事をしないといけないなんてね」


「「「「「!?」」」」」


 その煙、いや水蒸気の中から現れたのは無傷の二人の姿。そして由樹はポケットからそれを取り出し、


「私は魔法師だ。そして君たちを魔法の違反使用で拘束する」


 黒地に白い桜の花が刺繍された魔法師を証明する手帳を掲げる。


「おい、嘘だろ」


「こりゃ、やばいんじゃねぇか」


 動揺が走る。だがその中の一人が、


「こんなガキが魔法師な訳ないだろ、あの手帳もレプリカかなんかだろう!!」


 その言葉にそうだそうだと声が挙がる。


「本当にどうしようもない連中だ。偽物と言い張るのは勝手だが、力量の差くらいは理解して欲しいものだよ。でもまぁ、これ以上暴れられるのも面倒だ」


 片足を少し上げてから地面に叩きつけるように降ろす。


 その瞬間、男たちの真上からドーム状の氷で作られた檻が落下し、閉じ込める。


 変身して何とか脱出を試みるもその氷壁は見た目以上に頑丈であり、放たれる攻撃の悉くを受けきる。

 

「君たちと同じ学校に通っていた身としては、本当はこんな事したくなかったが致し方ない。せいぜい自らの愚行を悔いるんだな。愚か者」




「怖くなかった、みぃちゃん?」


「由樹お姉ちゃんがいてくれたから全然平気だよ」


 それから程なくして駆けつけた魔法師に彼らは引き取られた。


 彼らの処遇は普通に考えたら退学。よくて停学といったところだろうか。




「ひぇ~、流石姉貴。容赦ないな、マジで」


 一連の出来事を遠くから見ていた三人は呆気にとられていた。


 特に驚いたのは寄せられた魔法師がそろいもそろって由樹に対しへこへこと頭を下げていた所だ。


 唯一それを予測できていた智樹だけがリアクションを起こす。


「外見に惑わされては駄目ですよ。あれは日本支部でもトップクラスに凶暴な人間なんですから」


 そう言ってへらへらと笑っていると、何者かが智樹の頭を鷲掴む。そしてその手の主が笑顔で告げる。


「一体、どこの、誰が、凶暴だって?」


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