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その挿絵、違法ではありませんか? (旧題:トレースと模写)

 今回トレースと模写について調べたのでまとめておこうと思います。かなりグレーなところがあるので参考レベルにしてください。

 ※同人誌(二次創作)については、また別の場所で議論をお願いします。



1)定義


 言葉の定義

 ・トレースとは (資料の上に別の紙を置き)それをなぞって写し取ることです。

 ・模写とは  (資料を横に並べて)見ながら忠実に再現することです。

 ・コラージュ バラバラの素材を組み合わせることにより作品を作ること。

 ・オマージュ 尊敬。今回の議論では省きます。

 ・パロディ  批判。風刺。今回の議論では省きます。

 著作権の基本

 ・親告罪です。(権利を持っている人が訴えない限り捕まりません(一部除く))

 ・守っているのは権利を持っている人の「利益」なので、トレースと模写に差異はありません。

 ・本件は著作権法の複製権についてのまとめです。二次創作についても著作権法に引っかる事項ですが別の場で議論してください。


 まず、言葉の定義でも書いたように、トレースと模写は著作権としては法律上同じ扱いになっています。つまり線がやや外れたトレースとそっくりな模写だと模写の方が黒に近い扱いになります。コラージュはトレースと同じ扱いになっているようです。オマージュ、パロディも後述するトレースの判断材料と同じもの(どんなけ似ているか、独創性があるか等)で判断されているようです。



2)トレース元の素材について


 トレース元(模写元)にしても大丈夫なもの

 ・版権フリーの写真や図表

 ・景色、動物、草木など自然

 ・お金やCDディスクなど誰が書いても同じになるもの

 ・著作権の侵害に当たらないと判断されるもの


  3番目については例外があります。デザイン性がないことが前提になっているからです。3枚の並んだ金貨をそのまま書くのはOKですが、「夕日と3枚の金貨を立体的に組み合わせたもの」で違法になった例があります。※お札はリアルに書くと別の犯罪で引っかかります。

  4番目はかなり特殊です。簡単に言えば裁判所が認めたものです。どんなに似てなくても裁判所が認めたら違法で、そっくりでも裁判所が認めなければ合法です。被告人がトレースを認めたケースでも無罪になったこともあります。

  

 トレース元(模写元)にしてはいけないが、あまり知られていなくて危険なもの

 ・独特な構図の模写

 ・自分で取った写真でも人物、芸術作品、TVの画面、建造物であれば違法です。

 ・引用元を書いておいても違法

 ・そうだ京都に行こう

 ・著作権を持つフリー素材

 ・GNU GPL v2.0など著作権フリーの記載がないソフトを使って作ったもの

 ・企業の名称


 1番目ですが独特なポーズ(JOJO立ちなど)は同じポーズを取った写真も対象です。

 3番目ですが許可を取らない限り違法です。

 4番目ですがフレーズが著作権の場合があります。(この時点で私違法?)

 5番目ですがフリー素材でも著作権がある場合があります。わかりにくいのがflickrなので詳細を描いておきます。写真のページのどこかに"License"と記載した項目があります。それがAll Rights Reservedと書かれている場合は著作権フリーです。Some rights reserved書かれている場合は著作権を登録者が有しています。ご注意を。

 6番目ですがGNU GPL v2.0はGNU一般公衆ライセンス(GPL)のバージョン2のことです。これが記載されていれば基本的には著作権に該当しません。ただし、作成したものもフリーと明文化されているので、第三者がばらまいても文句は言えません。一部の地図作成ソフトが該当します。

 7番目ですが、企業の名称はそのまま使うことは出来ません。一文字くらい変えておきましょう。背景の看板までトレスして引っかかることがあります。

 

 その他

 ・大企業、ディズニーの著作権はやばいそうです。特に後者はありえない検出力。



2)類似性


 無駄なあがきについて

 ・写真の角度を変えたりサイズ比を変える。(実例あり)

 ・髪型や目を変える。(実例あり)


 重要視されやすいもの

 ・独自性のある構図

 ・芸術性

 見てわかるようにかなり抽象的です。詳しくは後述してある例を見てもらったほうが良いかもです。



3)違法になる行為について

 トレースも模写もそれ自体の行為も所持も違法ではありません。

 著作権は、守っているのは権利を持っている人の「利益」なので、営利目的でない限りは捕まりません。ただし、ネットにアップロードしてアクセスを稼ぐこともこの営利に入るので注意が必要です。つまりなろう小説のアクセスを稼ぐ行為もツイッターもNGです。しかし後述するようにメジャーにならない限りは訴えられない可能性は極めて高いものと思われます。

 親告罪なので友達に売りつける程度なら捕まりません(違法は違法です)。権利を持っている人に見つかりませんから(笑)親告罪で難しいのはブログなどで人気になってきてから見つかり指摘されるケースがあることです。過去の事例ですと、アップロードした期間x○ドルという請求をされたケースもあったそうです。(日本じゃないです)トレースを本物と偽ってネット販売に上げてしまうのも駄目です。これは検挙率が高いそうです。

 善意の第三者は罪を問われません。なろう小説の例で言うと、絵師さんがトレスしても作者さんは罪には問われません。ただし、絵師さんがトレスしていることを知らないことが前提です。確認のメールくらいは保存しておいた方が確実かもしれませんね。

 フォントの使用については基本的に著作権を侵害しません。これは大企業のロゴに使われているような特殊フォントでも該当します。そのため同じフォントでも一文字変えておけば問題になりません。ただしフォントととるかデザインととるか微妙なものから持ってきた場合は引っかかるケースも考えられますので注意が必要です。※販売しているフォント自体を使う場合はNGですが著作権自体を認められなかった例もあります。(7)参照



4)私的複製について

 先の3でも違法にならない行為についても一部述べていますが、この項目だけは別にしておきます。

 私的な利用の場合は複製をしても法律違反にはなりません。(3)で冒頭に説明した行為、所持のみの場合は違法ではないと説明しましたが、これは私的複製に該当するからです。

 コピーを渡して良い範囲は簡単に言うと家族までです。TVの録画などが良く議論されます。友達と見るのはグレー扱いです。ちなみに友達からお金を取って見せたら著作権法違反です。ですが、先に説明したように権利を持つ方が声をあげて初めて有効になる法律ですから、見つからない場合も多いでしょう。

 コピーして塗り絵する人がいますが、コピーした塗り絵を他者に渡した場合は著作権法違反です。自分や家族が塗る分には合法です。

 ※録画した映像を友達に見せる場合は、厳密には著作権法の上映権というもので複製権とは別物です。



5)著作権の有効な期間

 著作権を持つ人が死亡してから50年です。共同で権利を有している場合は、最後に残った人がなくなってから50年になります。



6)裁判、罰則

  法律上の罰則は以下になります。

 10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金、著作者人格権、実演家人格権の侵害などは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金など。

 ※ただし、不当利得返還請求の項が記載されています。

  返還しなければならない額は、著作権侵害をしていることを知らなかった場合は「その利益が残っている範囲」で、知っていた場合は「利益すべてに利息を追加した額」とされています。

 よって、知らなければ最大で「残っている利益」が賠償額になります。この情報の扱いは自己責任でお願いします。

  上告してひっくり返る例が多いです。有罪にひっくり返った例も無罪になった例もあります。

 被告人がトレースを認めても無罪になるケースもあります。

 どんなけいい加減なんだと……

  少し毛色が違いますが、画像投稿サイトに投稿した作品が著作権に違反する場合でもそのサイトの運営は削除を強要することは法律上できません。これは著作権違反は親告罪だからです。権利を有している人しか強制は出来ません。ただし、「削除のお願い」くらいは来るかもしれません。



7)例

 いくつか上げておきます。例がある方がわかりやすいと思いました。簡単にまとめているので、気になった事件はググってください。


 クランプトレス事件(2000年4月)

  主に顔(漫画)のトレスです多分14件くらい。陰影まで同じなのが特徴です。画のトレスは写真から画に起こすトレスと違い全く同じものが出来上がるのが特徴です。(写真から画の例はPrismが一番わかりやすい)他にもクマのぬいぐるみのトレスもあります。可愛いです。

  聖伝9巻121Pのトレスはある意味すごいです。作者は逃亡したそうなので、実際に罪に問われそうかはわかりません。



 ニック・シモンズ ブリーチ盗作疑惑(2010年~)

  アメリカのkissというバンドの息子さんがIncarnateという漫画を漫画雑誌で連載していたのですが、日本のBLEACHという漫画からのトレースと思われる箇所が大量にありました。(検証サイトに膨大な量があります)

  ここで海外のサイトを見てみると、海外の漫画に対する著作権の問題が浮き彫りになります。実はアメリカなどではフェアユースという著作権法に対する緩和措置があり、バットマンもコピーしまくりです。ですが、あまりにも盗用量が多いということと、kissのメンバーの息子さんということもあり話題性が高かったためか、現在は販売が差し止められています。ちなみこの件で海外のサイトに書き込んだ人の「何で洗濯用洗剤をコミックの名前にしたんだ」のコメントには大爆笑しました。

  ※フェアユースですが、日本では麻生内閣のときに導入検討されましたが、検討だけで終わっています。

※フェアユースに関しては別の項に追加しました。



 末次由紀トレース事件(2005年)

  40件以上あがっているので詳細を省きますが、漫画から漫画へ主に構図のトレスを行っています。

  トレス元は『バスタード!』『SLAM DUNK』『リアル』あたりです。

  2009年に『ちはやふる』で復帰しており「過去に犯した間違いというものがあり、自分はまだこういう場に出て行けるような人間ではない。一生懸命マンガを描いていくことでしか恩返しはできない」とコメントを残しています。



 まさお盗作疑惑(2012年)

  pixivのパロディ絵師の方です。

  ジブリとネットの画像等からトレスするんですが、画像加工ソフトを使って一工夫するのが特徴です。天下のディズニーをトレスした強者です。大量のポイントを稼いでその後はどうしているのかあまり良く知られていません。ちなみに今では無断トレス容疑の対象者の蔑称になってます。

  顔のみなら海外の有名俳優の画像もトレースしています。これはPrismさんの件で後述しますが、胸像のみの場合特殊な構図になりにくく、また顔の独自性も定義が難しいことから捕まえられないのではと思いました。(個人的感想です)



 ひゃい盗作(2013年)

  こちらの方もpixivです。バイトのバックラーにちなんで、パクラーなどと一部で言われています。

  主に黒子のバスケなどのトレスです。2013年9月に謝罪しています。



 Prism休載

 ・写真から画へのトレースです。水中で体を浮かせたまま抱えてキスをするという設定が特徴的であり、水と体の組み方の表現までが一致したことが違法とされていますが、その他の例(立ったままキスシーンなど)は全て白またはグレー扱いです。このことからかなり特殊なシーンでない限り、著作権法違反にならない可能性が示唆されます。

 つまり特殊なポーズは手を出すな。(普通の画像はトレースしていいとは言ってない)



 フォントの著作権裁判否決例

 ・平成12年9月7日最高裁判所の判決で、事実上殆どのものについて、「文字フォント」の著作権の保護が否定されることになった例があります。株式会社資格デザイン研究所がテレビ朝日相手に起こした裁判です。審議の結果、著作権における物権的な保護は認められず、第三者の使用許諾契約に関する債権侵害として判決を下しています。つまりダイレクトなフォントの直剣を否定しています。文字フォントのデザインを販売する会社がその著作権を侵害されたにも関わらず、裁判所が認めなかったということからも、フォントの著作権を主張するにはかなりデザイン性のある文体である必要性があることがわかります。



8)フェアユース

 アメリカなどではフェアユースという著作権法に対する緩和措置があります。(日本では麻生内閣のときに導入検討しましたが、検討で終わっています。)

 これによると「利用と目的が営利性を持つか」「その性質が何か(学術論文や地図の場合は適応する)」「利用の量と重要性がどうなっているか(パクリの頻度が多いか少ないか)」「市場に影響を及ぼすはどうか(利用された元の利益が損なわれないか)」について記述がなされています。しかし結局のところ裁判で判断されており曖昧になっているようです。ちなみにアメリカでは「市場に影響を及ぼすはどうか(利用された元の利益が損なわれないか)」が最重要視されており、そのため漫画等における他者の流用が使われている背景があります。(それでもニック・シモンズの件は自主的に引いたようです。頻度が高いと判断されたのかもしれません)



9)みてみん事務局の回答

実際にみてみんの事務局にトレス画像がアップロードされていたらどういう対応を取るか聞いてみました。

「基本的な方針を申しますと、著作権等の各種権利の侵害が行なわれている可能性の高い画像が確認されました際には、運営対応の対象となる場合がございますので、ご注意ください。」だそうです。



 私が調べたまとめは以上になります。



 どちらかと言うと、感想欄で議論したいかなと思って書きました。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「7)例」最後の「フォントの著作権裁判否決例」ですが、平成12年9月7日最高裁の話は写研とモリサワの裁判ですね。視覚デザイン研究所とテレビ朝日・IMAGICAの話は平成26年9月26日…
[一言] えっと、フォントも著作権で保護されますよ? ただ多くのフォントは、著作者が著作権を放棄していますが。 夏に問題になった『オリンピックのロゴ』は、「既存のフォントではなく、IOCが『著作権を…
[一言] 著作権は大事ですし丸パクリは論外ですが、グレーでも多少は目をつぶらないとなにも書けませんわな こう言ってはアレですが部分的なら言い逃れはできますしね まぁ逆に完全オリジナルでも部分的にな…
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