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悪魔と青年の出逢い


 --ここは魔界 


 人間界と隣接し互いに干渉し合う世界。

 


 怒り、悲しみ、憎しみなどの人間の黒い感情が魔界に干渉し瘴気となって魔界を潤し、新たな魔界の生物が生じる。


 この魔界の生物のことを人間達は魔物と呼んでいる。


 魔物は生まれた人間の黒い感情に誘いこまれるように人間界に迷いこんでいき、その魔物がまた、人間の黒い感情を引き起こす。



このように魔界と人間界は切っても切れない関係であるが。

人間達は魔界を魔物を産み落とし人間界を侵略しようとする邪悪な者達が住まう世界と見なし、魔界の住人達は人間達を自分達の餌としかみていない。



どちらかがかけてもこの世界は成り立たないのに、だ。


 魔界が無ければ人間の黒い感情で人間界の魔力が汚染され、大地が枯れ果て、水は腐り、人間の住めるような場所ではなくなるし、人間界が無ければ、魔物は生まれることすらない。


相互依存の関係なのである。




 そんな魔界に流れる川を覗きこんでいる一人の悪魔がいる。


 その悪魔は嫌われ者でありいつも一人で川の中を眺めている。



 そこには隣接する人間界の様子が映し出されている。



 人間界の様子をたった一人で眺めつづける悪魔の近くに降り立つ一人また別の悪魔の姿があった。


 黒い漆黒の羽を背中から生やし、美しく艶のある銀髪をなびかせながら、

 地上に降り立つその姿は神々しさすら感じさせる。

 もし、ここに他の誰かがいたならば、一人として例外なくその姿に見とれていただろう。

 豊満な体は見るもの理性を蝕み、深紅の瞳は見るもの心を奪い去る。

 その美貌は美しいという言葉では表せられないほどの存在。


 彼女こそがこの魔界を統べる7人の最上級悪魔の一人。



 ----≪色欲の悪魔≫アスモデウス



 「ちょっと、あたしが折角きてあげたのに無視し続けるつもり?」


 「アスモデウスか、余になにかようか?」


  それでも悪魔は興味無さそうに川を覗き続けている。


  

 「ふんっ、ちょっとこの辺りに用事があったからよっただけよ。別にあんたに会いに来た訳じゃないんだから」

  

 アスモデウスは移動し、近くにあった岩にもたれかかりながそう話す。



 「そう言えばまたあんたを狙って命知らずな魔物達があんたのテリトリーに入って来てたわよ」



「あぁ、確かに少し前に敵意をもって近づいくる集団を探知したな。安心しろもう既に"喰った"」



 そう、実態を持たない黒い影のような姿をした悪魔は興味なさげにいった。



 その時



 赤い光が悪魔を包む。


 

「ちょっとあんた、一体なにしたのよ!?」


「余はなにもしておらんぞ。うむ、どうやら"呼ばれる"みたいだな」



「はぁ!?あんたを悪魔召喚なんてできるわけないでしょ!とっととレジストしちゃいなさいよ」


「いや、面白そうだから呼ばれることにした。」


「はぁ!?なにいって‥‥」


 ---なにいってんの


 そうアスモデウスが言い終わる前に赤い光が強く輝きそして消えた。



 その場に取り残されたのは、銀髪を風に揺らされるキョトンとした顔も美しい最上級悪魔だけであった。




  ---------------------------------



 


  俺はドラン=マルトスタチア。


 大貴族で金持ちの両親に小さい頃から甘やかされて育ち、自分でも思うがかなりの我が儘だ。



 うちのマルトスタチア家は

 ララン帝国の貴族で帝国の西側の大部分の領地を任されており、海に面しているのと、魔法産業が盛んであり、かなり豊かた領地だ。


 ただ両親は自分達のためならどんな汚いことでもするのと、自分に従順な良民には良心的だが、はむかうものは容赦なく処刑するなど、一部の者達にはよく思われていない。


 そんな両親は俺のために裏で汚いことをかなりしてきたのだろう。


 

今回なんか特に解りやすい例で、

 そうじゃなきゃ世間で『我が儘王国の王子ドラン』なんて呼ばれている俺とあの教会の美しい聖女様が結婚なんてできるわけがない。



 まあ、それでも両親には感謝している。

 経緯はどうであれ、あの聖女様と結婚できるのだ。


 今はまだ頼りない男だが、きっと彼女に相応しい男になってやる。


 そう、これからは心を入れかえて生きていくのだ。


 


 はじまりは18歳の誕生石。今から3ヶ月前だ。


   ----------------------------



 ララン帝国では18歳から成人であり、18歳になると多くの貴族の子供は教会で祝福の儀を受けるものが多い。



 最近ではその風習は古いとされ、あまり行われなくなってきているらしいが。




 そんなこともあって俺は久しぶりに領地を出て親と帝都ルワンダへと向かっていた。



「おい、まだつかないのかよ!」


「ごめんねードランちゃん、もう少しだから待っててねー。」


 そういうのは俺の母親だ。



「母さん、そうはいってももう限界だよ」



 馬車でうちの領地からルワンダまで1週間はかかるのだ。


 今日中につく予定だが、それでもなかなかつかないことに俺はいらいらしていたのだった。



       ----------------------




 そんないらいらを溜め込んだ状態で俺は宿に泊まり一泊した次の日教会に向かったのだ。



 そこに行くまでは教会の奴らにどんな嫌味でも言ってやろうかと考えていた。

 しかし、実際に儀式がはじまると俺はそんなことはすっかり忘れてしまった。




 そう、聖女様をはじめて見たのだ。



 俺が今まで抱いた女は一体なんだったのかというくらいの美しさ。

 



 優しさをという言葉をまるで再現したかのようなその雰囲気に俺は一瞬で恋におちてしまった。


 女は抱いたことはあったが俺は恋というものをしたことはなかった。


 ちょっとでも気に入った女がいれば親に頼んであてがってもらえたし、それ以前にここまで胸の中に誰かがはいるのを許したことはなかった。


 俺は重度の人間不信だったのだ。



 小さい頃から俺に近づいてくるような奴は俺なんか見てない。

 俺という存在の後ろにいる親--もっと言えば金や権力しか見ていないのだ。


 それに気づいた俺の我が儘は加速していった。

 俺なんか誰も見ていないならそもそも我慢する必要なんてない。



 今思えばその気持ちをもっと別の方向に向けられていたら、少しはましになっていたのかもしれないな。



 それから俺は全く他のことが手につかなくなった。


 いつでも聖女様のことで頭がいっぱいで胸が張り裂けそうだった。




 あの人は俺なんかに釣り合うような人じゃない。

 一緒になることさえ、望んではいけない。



 なるべく表にこの気持ちを出さないようにしていたが、親には俺の気持ちなんてまるわかりだったみたいだ。



 ある日俺と聖女様の結婚が決まったと伝えられた。



 最初は少し複雑な気分だったが、嬉しさがこみあげてきて爆発した。



     -------------------------



  そして現在。



 聖女様との顔合わせのために俺はルワンダへと向かっている最中だ。


 俺は前回とは違って両親はいなく、俺一人で馬車に乗り護衛を雇い向かっているが、特に不快感なく旅を送っている。


 これから聖女様と会えると思うとこの旅も我慢できる。


 そんなことを思いながら馬車の外を見ていると



 「てきしゅーーう、てきしゅ‥‥うわっ!!」



 護衛として雇っていた傭兵が殺された。


 俺は馬車から飛びだし、その場から逃げ出そうとすると



 「フレアランス」


敵の放った無数の炎の槍が俺の体のあちこちに突き刺さった。


俺はそのまま倒れてしまった。



遠くから声が聞こえてくる‥‥


「これ‥あい‥も死‥‥で‥‥う」


「そ‥‥な、依頼は‥‥わりだな。‥‥お方も‥‥ろこぶだ‥‥ろう」


 意識が途切れかけはっきりとは聞き取れなかった。


 そうして俺を襲ったやつらはいってしまった。


 ああ、折角、聖女様と結婚できると思ったのに


 これからは心を入れかえて、彼女を幸せにすることに人生を捧げようと思ったのに‥‥。



 涙が溢れでる。


 くそぉ、くそぉ、くそぉ‥‥


 せめて彼女だけでも幸せに-----



 その時俺の前に赤い光があわれた。


 な‥‥んだ



 その光は次第におさまっていく。


 明かりが消えた時そこにはこの世のものとは思えない禍々しい『ナニカ』がいた。



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