はっぴー
「おめでとうございます」
心からお祝いしたいのに、どうしてできないのだろう。
どうして貴女にとっての幸せを願えないのだろう。
貴女が好きな人と一緒に素敵な時間を過ごせる事も、貴女が貴女の夢を叶える事も、貴女が仲良しの友達と頻繁に会える事も、全て貴女にとっての幸せなのに。
一体どうして僕はこんなにも悩んでいるのだろう。貴女が幸せになる事を恐れているのだろう。
どうして僕はこんなにも心が醜いのだろう。
貴女が幸せにならなければ、僕を見てくれるなんて思ったのだろうか。
どうしてこんなにも僕は愚かなのだろう。
僕は自分を叱咤した。
何度も何度も叱咤して、それでも貴女の幸せを願えなかった。
でも、神様にこれだけはお願いしていた。こんなにも心の醜い僕の願い、叶う事なんてないだろうけど。
貴女の幸せは願えなくても、貴女が不幸になる事だけは耐えられないから。
「愚かな僕の幸せと引き換えでも、どうか貴女が不幸にはなりませんように」
そう笑ってみせると、貴女は赤い目をして頷いた。一筋の涙が頬を伝った。
「馬鹿ね、ちゃんと私の誕生日、お祝いしてくれたじゃない」
僕は飛び出してきた車から貴女を守った。
大好きな貴女と話せるのはこれが最後かも知れない。
なんてくやしいのだろう。やっぱり貴女の幸せを願えない。
だって僕は、貴女と幸せになりたかったのだから。