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マフィアの息子ですが、普通に学園生活を送りたい ~なぜか学園にファミリーが出来ました~  作者: 工程能力1.33


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第10話 グスタフとの決闘 後編

 決闘当日。

 会場である訓練場には、すでに多くの生徒が集まっていた。

 決闘はまだ始まっていない。


 控室では――


「ボス!」


 ローレンツが元気よくやってきた。

 手には箱を持っている。


「差し入れです!」


 テオは首を傾げた。


「差し入れ?」

「はい」


 箱を開く。

 中にはチーズケーキ。

 既に切り分けられており、ミントの葉もまばらに乗っていた。

 ブルーノが眉をひそめる。


「……誰からだ」


 ローレンツはにっこり笑った。


「グスタフからだ」


 沈黙。

 構成員全員が固まる。


「敵じゃねえか!」

「毒だろそれ!」

「絶対毒だ!」


 テオも引いた。


「いや、普通に怪しいだろ」


 ローレンツは手を振る。


「まあまあ、落ち着いてください」


 そして言った。


「貴族の間では、決闘相手にこうした差し入れをすることもある。第一、これで下剤でも入っていようものなら、卑怯者というそしりを受けるだろう」


 ローレンツは訝しむ構成員たちの顔を見回しながらそう説明した。

 しかし、賛同は得られない。


「ならば」


 一拍。


「俺が毒味しよう」


 構成員たちがざわつく。


「おお……」

「さすがコンシリエーレ」


 ローレンツは内心でほくそ笑み、ケーキを見る。


 そこには――


 ミントの葉が乗っているケーキがある。


(これが下剤入りだったな)


 ローレンツは皿を取る。


 そして――


 ミントが乗ってないケーキを取った。


「では」


 そういって、一気に口に入れた。


「うん、美味い」


 ブルーノが腕を組む。


「本当に大丈夫か?」

「ええ」


 ローレンツは笑う。


「全く問題ありません」


 そして言う。


「ボス、安心して食べてください」


 テオは少し安心した。


「じゃあ一口……」


 その時だった。

 ローレンツの顔が固まる。

 見る見るうちに青くなる顔と額に大量の脂汗。


「……ローレンツ?」


 テオが話しかけるも、ローレンツは反応しない。

 ローレンツの腹が鳴った。


 グルルルル


 ローレンツの顔が益々青くなる。


「……あ」


 次の瞬間。


「トイレ!!」


 ローレンツは猛ダッシュした。

 構成員が叫ぶ。


「ローレンツ!?」

「どうした!?」


 ブルーノが呟く。


「やっぱり毒か。下剤のようですが」


 テオがケーキを見る。


「食べない方がいいね」


 そして、数十分後。

 ローレンツはげっそりして帰ってきた。

 歩き方も怪しい。


「……大丈夫?」


 テオが心配する。

 ローレンツは弱々しく笑った。


「グスタフの奴、こんな卑怯な手を。でも、ボスのことを守れて良かったです」


 一拍。


「毒味くらい当然です」


 構成員が感動した。


「コンシリエーレ……!」

「忠義の男……!」


 ブルーノが腕を組む。


「見事だ」


 ローレンツは誇らしげに頷く。


 だがその心の中では――


(なんで俺がこんな目に。下剤入りじゃねえ方食ったはずだぞ!?)


 実は、ローレンツがチーズケーキを運んでくる途中、ミントの葉が動いてしまったのである。そして、ローレンツが食べたものは、最初はミントの葉が乗っていた。運が悪いことに、それが下剤の入っていないものに乗ってしまったのである。


(くぅぅぅ、これでは成功報酬がもらえない……)


 この状況でも金の事を考えるローレンツ。

 その時である。テオはふとローレンツの言葉を思い出した。


(あれ、みんなが毒が入っていたらって言っている時に、ローレンツだけは「第一、これで下剤でも入っていようものなら」って言っていたよな。なんで下剤って――)


 何かがつながりそうであったが、決闘をするので会場にくるようにと、係の者が呼びに来たことで、思考が中断した。

 そして、


「決闘の準備を」

「両者前へ」


 ローレンツは震える親指を立てた。


「……ボス」

「なにかな、ローレンツ」

「やっちまってください」


 そして心の中で叫ぶ。


(俺の金ええええ!!)


 リート学園の訓練場。

 決闘の会場の周囲には、すでに大勢の生徒が集まっていた。


 中央に立つのは――


 テオドール・フォン・ベルンシュタイン。

 そして。

 クレーテ侯爵家の息子、グスタフ。

 生徒会長が前に出る。


「両者、前へ」


 テオは歩み出る。

 その後ろで、ローレンツが壁にもたれながら親指を立てた。

 顔色は悪い。

 かなり悪い。

 だが笑顔だった。


「ボスのためなら、この程度」


 その言葉に、構成員たちが感動する。


「コンシリエーレ……!」

「忠義の男……!」


 ローレンツは静かに頷いた。

 だが心の中では。


(腹が……やばい……)


(早く終われ……)


 その時だった。

 テオがグスタフを睨む。


「クレーテ君」


 低い声。


「よくも下剤を」


 グスタフはにやりと笑った。


(かかったな)


 勘違いであった。しかし、気付かない。テオが怒りでプルプルと震えているのを、トイレに行きたいからと思い込んでしまった。


(やはり下痢してる)


 そして大きく笑う。


「ハハハ!」

「下痢が辛いか?」


 テオは眉をひそめる。


「辛いに決まっているだろう」


 グスタフはローレンツを見る。


 ローレンツは――


 弱々しく親指を立てていた。

 グスタフの勘違いは確信に変わった。


(成功だ!ベルンシュタインは腹を壊してる!)


 グスタフは余裕の笑みを浮かべる。


「安心しろ」

「何をだ?」

「手加減してやる」


 テオは首を傾げた。


「……?」


 その時だった。

 生徒会長が宣言する。


「決闘開始!」


 コン。


 開始の合図。

 グスタフは魔力で肉体を強化すると、木剣を振り上げる。


「はあああ!!」


 突進。

 テオは避ける。

 軽く。

 そして。


 パン――


 一撃。


「ぐっ!」


 グスタフがよろめく。

 テオは困った顔で言う。


「弱くない?」


 グスタフが怒鳴る。


「黙れ!」


 もう一度突進。

 テオは軽く剣を払う。


 ガン――


 グスタフの木剣が弾かれて、狙っていた場所を大きく外れ、空を斬った。

 さらに、勢い余ってグスタフの手から剣が抜け落ちる。

 テオはため息をつく。


「もう終わりにしようか」


 次の瞬間。

 ドムっという鈍い音がする。

 テオの拳がグスタフの腹に入る。


「げほっ!!」


 グスタフが地面に倒れた。

 沈黙。

 数秒後、グスタフの嗚咽が観衆の耳に入る。

 それを見て、生徒会長が宣言する。


「勝者」


 一拍。


「テオドール・フォン・ベルンシュタイン」


 観客がざわつく。


「弱すぎだろ……」

「一撃じゃん」


 その時だった。

 ローレンツが歩いてくる。

 ふらふらだ。

 だが笑顔。


「さすがです、ボス」


 そして倒れたままのグスタフを見る。


「愚かな。ボスに濡れ衣を着せようとして、結果決闘で無様な醜態を晒すとはな!」


 観客がざわつく。

 グスタフの顔が赤くなる。


「裏切ったな!」


 叫ぼうとした。

 だが。

 ローレンツはその顔を蹴り飛ばす。


「ブルーノ」


 ローレンツに呼ばれてブルーノが一歩出る。


「おう」


 ローレンツは続ける。


「ボスに卑劣な罠を仕掛けた」


 一拍。


「見せしめにしてやれ。お前らもだ」


 ローレンツはブルーノと構成員に命令する。

 ブルーノが笑った。


「了解」


 次の瞬間。

 構成員たちがグスタフを囲む。


「やめろ!」


「ぐあ!」


「ぎゃあ!」


 袋叩きだった。

 観客がざわつく。


「やば……」

「容赦ねえ」


 ローレンツは満足そうに頷く。


「テオドールファミリーを舐めたらどうなるかわかったか!」


 その光景を見て、生徒たちはヒソヒソ話を始めた。


「怖すぎだろ……」

「負けた相手を見せしめに……」

「ベルンシュタインのファミリーってマジでマフィアじゃないか?」


 テオはそれを聞いていた。

 そして頭を抱える。


(違うんだ)


(俺は何もしてないのに、悪評が勝手に広がっていく……)


 テオは天を仰いだ。


(ああ……俺はなぜ異世界でこんな目に……)


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