欲しかった言葉
とある日の出来事の話。
娘二人と回転寿司に行った時の会話を、皆様、聞いてもらえないだろうか。
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3月、下の娘の卒園式がある。
普段、私は化粧はするが、髪の毛には無頓着で、いつもささっと水で濡らして寝癖を直して終わりにしている。
そのため、全くヘアアレンジというものが出来ない。数年前に買ったコテも2〜3度使ったきりで、今はホコリを被っていた。
しかし、ふと来月の卒園式の事を考えたら、このままではいけないと思った。何か、フォーマルな格好に合う簡単なヘアアレンジを習得しなければ。できれば、結んだり、ねじったり、ピンで留めたりといった複雑なものではなく、ダウンスタイルがいいと思った。
お寿司屋さんに行く前の一時間、私はYoutubeで「初心者 ヘアアレンジ 簡単」とキーワードを打って、とあるプロが教える簡単なコテの使い方動画を見た。適当に選んだユーチューバーだったが、本も出版されるくらい有名な美容師さんだった。
だからか、説明がとても丁寧でわかりやすく、私は自分のコテのホコリを払い、動画を見ながら、同じ様に髪を巻いてみることにした。
何度か最初は失敗して、ガタガタなウェーブだったが、途中からコツを掴み、それなりにまとまって見えるようになった。
そんな私の奮闘する姿を発見した娘達は、
「え?ママ、何やってるの〜??すごーい!!私にもやって!!」
と次々に言って来た。
「いいよ〜。ママ、まだ下手くそだけどいい?内巻きにする?それとも、ママと同じウェーブにする?」
「内巻きっ!!」
「私はウェーブ♪♪」
わらわらと群がる子供達を順番に座らせ、一人ずつカールさせていく。下の子は髪が細かったので、コテの温度を少し下げて微調整した。
「わ〜!!可愛い!!
「私は耳にかけて、ピンで留めよっと♪♪」
各々の可愛らしい反応を見て、私はとても嬉しくなった。なんて愛しい子供達なんだろう。
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お寿司屋さんにて、それぞれが好きなものを頼み、美味しい時間が過ぎていく。
少しお腹が膨れた所で、私は、目の前に座っている子供達に向かって言った。
「◯◯と◎◎は、今日はとっても可愛いね。どこから見ても髪型がきまってるよ。ま、普段ももちろん、最高に可愛いけどね。」と。
それを聞いた上の子がぽつりと言った。
「ママはいつも◯◯の自己肯定感を上げてくれるね。」と。
「え…?」
私は少し、目を見開いた。
心の動揺を悟られないよう、出来るだけ自然に返す。
「そう?だって本当に可愛いんだもん。」
「えへへ。いつもありがと。」
「……。」
涙がうっすら膜を張る。
私は横を向き、娘に気づかれませんように、と、オーダー画面を見た。
他愛のない親子の会話。
お互いを想いやる会話。
それは、
それは、
ずっと…私が欲していたもの。
大切だよ。
あなたは私の宝物。
大好き。
産まれてくれて、本当に嬉しい。
◯◯は、こんな所が素晴らしいね。
◎◎は、今日とっても勇気を出したね。
よく頑張ってるよ。
大丈夫だよ…。
全部、全部、私が欲しかった言葉達。だけど、今更お願いして、言ってもらうことなんて、出来ない。
両親と仲が悪い訳では無い。母はいつも私の愚痴や悩みを静かに、否定せず、ただただ、聞いてくれた。父は、私達が路頭に迷わないように、一生懸命働いてくれた。
感謝している。
だけど。
だけど。
私には自信がない。
いつもいつも、これで良いのかわからない。
頑張っても…
頑張っても…
頑張っても…
認めてもらえていない様な気持ちが、
ずっと消えない。
愛されたかったな、とふと思う。
愛してない、なんて言われてないのに。
愛されてない様な、気がしてしまう。
親子である事を、行動で伝えてくれる両親に、とても感謝している。
だけど。
だけど。
私の思い過ごしだろうか。
私の気のせいなのだろうか。
子供達と過ごす日常の中、ふとよぎる。
なぜ、私はこんな言葉達をかけてもらえなかったのだろうか。
時代のせいだろうか。
土地柄のせいだろうか。
いや、違う。
小さい頃は、可愛がってもらえた筈だ。大きな暖かい愛情の記憶がある。
「愛してる。」
言ってもらった記憶も、ある。
だけど。
いつからだろうか。
私の自我が彼等と合わなくなってしまったのだろうか。
深くまで色んな角度で質問してしまう私は、いつの間にか、彼等を疲れさせてしまったのだろうか。
育て方を間違えた?
私は鬼?
ごめんね。ややこしい性格で。
もういいよ。話を聞くのも。
もうやめよう。言い争うのも。
ごめんね。融通がきかなくて…。
「そのままのあなたで…。」
あぁ、言ってもらいたかったなぁ。
全然、自信なんて持てないや。
「愛されていないかもしれない…。」
こんな想いが頭から離れない。
鬼かぁ。
そうかぁ。
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だから、私は紡ぐ。
私の言ってもらいたかった言葉達を。
愛する子供達に。
身体中に染み込んで、
もう、お腹いっぱいって思うくらい、
愛情を言葉にして渡すんだ。
将来、辛いことがあった時、
私の紡いだ言葉達が、
子供達の心を守ってくれますようにと、
願いを込めて。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。




