【異世界転生〜味噌ラーメン食べてたのになんで塩ラーメンの店に〜】
味噌ラーメンを食べてたサラリーマンがいつのまにか塩ラーメンの店に異世界転生するお話。
「まさか、この俺が!?塩ラーメンを!?」と最初は受け入れられないオッサンだが…
「あー、この味噌ラーメンを食べるのが、休憩中のサラリーマンの楽しみなんだよなあ」
そう小さな声で言いながら、スギモトさんは、お箸をパチンと割りました。
湯気からたちのぼる甘い味噌の香りが鼻腔をくすぐります。少し、ニンニクの香りが気になりますが、スギモトさんの職場は、広く換気もされていますし、スープまで飲まなければ、大丈夫。
それに、昼休みにラーメンを食べる人はスギモトさんだけではなく、他にもいます。
ズズズ、とまずはスープを一口。相変わらずうまい。
黙々とラーメンに集中しているスギモトさん。
スギモトさんには、食べ方にこだわりがあります。
3枚あるチャーシューを一枚だけ残し、もやしも少し残し、麺をあとほんの少し、にしたところで、ここであえて膝に手を置いて深呼吸します。
そして、チャーシュー、もやし、麺を一度に食べて、勢いよく、会社に向かうのです。
今日も至福のこの瞬間がやってきました。
「いただきまーーーす」
あらためて二回目の“いただきます”を心の中で唱えます。
スギモトさんの体中の細胞が喜んでいます。
はむっと、チャーシューを一口、、、、。
のはずが。。。。
あれ?
なんだこれは。。。。
目の前にあった、あと少しだけだったはずのラーメンが、何やら様子がおかしいのです。
ん??
色が白くなって、、る、し。塩ラーメン!??
しかも、着丼した瞬間!?
ていうか、ここはどこだ!!!
キョロキョロとスギモトさんが見渡すと、さっきまでいた味噌ラーメンの専門店とは絶対に違います。
スギモトさんは、これは夢だ!と思って、叫びました。
「味噌ラーメン食べてたサラリーマンの俺が、異世界転生して、塩ラーメン食ってるサラリーマンになっちゃったよおおおおおおお!!!!」
なんだ、これは。
普通、異世界転生って、サラリーマンだったのに勇者になったりするんじゃないのか?
なんだ、この転生は!!!
味噌ラーメン食べてた世界から塩ラーメン食べてる世界へ異世界転生って!!!!
その時、店長が話しかけてきました。
「いやー、お客さん、サラリーマンなのに、お昼休みに、にんにく目いっぱい入ったウチの、狂い塩ラーメンを注文するなんて、勇者だねえ!!!」
勇者!?
勇者ってそういうこと!??
え、絶対おかしい!ていうか、すさまじいニンニクの匂いがします。
ここは本当にどこなんだ!!!!
スギモトさんは、走って店の外に出ました。
見慣れた風景。会社のすぐ近くにある、入ったことのない塩ラーメン専門店でした。
食い逃げと思われてはいけないので、とりあえずスギモトさんは店の中に入りました。
なんだこの異世界転生は!?
俺はラノベとか読んだことないけど、絶対おかしい!!!
味噌ラーメン専門店から、すぐ近くの塩ラーメン専門店に異世界転生なんて!!!
こんなに食えない!!!さっきのラーメンをほぼほぼ食った後だし!!!
でも、一応、転生した主人公っぽいことを、叫んでおこう。
「味噌ラーメン食べてたしがないサラリーマンだった俺が!!ニンニクが致死量入った塩ラーメンを食べる勇者だってええええ!!!?」
店主が普通にスギモトさんに注意しました。
「お客さん、他のお客さんもいるんで、ちょっとすんません」
スギモトさんは「あ、すんません」と言って、目の前の塩ラーメンに向き合いました。
よーし、食ってやる!ニンニクの匂いに女子社員たちは、ピカソのゲルニカの絵みたいに逃げ惑うがいい!!!!
スギモトさんは、ひらき直り、ニンニクが致死量入ったラーメンをズルズルと食べはじめました。
さて、ラーメンはニンニクが背徳の味を醸し出しており、異常に美味しく感じたので、結局スギモトさんは、最後の“儀式”にまで、また、たどりつきました。
チャーシューと麺をいい感じに残してあります。
さあ、ラストの一口です。多分、俺はそもそも、最初から味噌ラーメンではなく、この塩ラーメンの店に入ったんだ。
俺が何か勘違いをしていただけだ。
スギモトさんにお箸でつままれ、とろーんとうなだれたチャーシューに、スギモトさんのニンニクくさい口が迫ります。
ああ、本日二回目の至福のひととき。。。
ん?
あれれ?
ここはどこだ。
目の前には、昔ながらの醤油ラーメンがあります。
また同じ展開です!!!!
スギモトさんは、普通のそこらへんにいる味噌ラーメンを食うサラリーマンだったんですが、異世界転生をして、普通のそこらへんにいる醤油ラーメンを食うサラリーマンになったのです!!!!
そこからも、最後の一口になるたびに、異世界転生は続き、どの店もどの店も、会社の近く、という非常に冷める展開が続きました。
なんなんだ、これは。
スギモトさんは、あんまり関係ないことを思いました。
嫁をもらわねば。
嫁さえいて、お弁当を作ってくれれば、こんな変な異世界転生に巻き込まれることもなかったのだ。。。
味噌ラーメン、塩ラーメン、醤油ラーメン、博多とんこつラーメン、牛骨ラーメン、カレーライス、そして再び、最初の味噌ラーメンの店に、異世界転生しました。
異世界転生というか、元の世界というか、なんだかよくわからないんですが、とりあえずスギモトさんは、トイレに駆け込み、異世界の思い出たちを便器に流し込みました。
オエーッ。
世界で一番口がくさい男の爆誕です。
トイレから戻ってくると、ヤケクソになったスギモトさんは、ラーメンを全部食べ切りました。
もう、異世界転生しない、みたいだ。
安心して、店の外に出るスギモトさん。
しかし、何やら外の様子がおかしいのです。昼間だったはずが、空はドス黒い夜になっております。
そこに、背中に衝撃が走りました。激痛とともに、後ろを振り返ると、RPGの勇者のコスプレみたいなのをした、タレ目のオッサンが、スギモトさんに、ナイフを突きつけていたのです。
「色んなラーメンを食い逃げした、ラスボスめ!!死ね!!」
スギモトさんは、この“勇者”にナイフで滅多刺しにされながら、薄れゆく意識の中で、こう思いました。
後ろからナイフで刺すってこれが、勇者のやり方かよ、、、、、と。
望んでもない異世界転生に巻き込まれる、レジでお会計する前に、次の異世界へ飛ばされる。
そんな目に遭っただけなのに、食い逃げ扱いのレッテルを貼られたまま、スギモトさんは、とっても苦しんで死にました。
読者のみなさんが想像する苦しさの150倍マシマシの苦しさです。
もやしが天井につくぐらいのマシマシの苦しみを味わいながらスギモトさんは死にました。
“勇者”は、血まみれになって横たわっているスギモトさんの前に立ち尽くし、こう言いました。
「たこ焼きを売ってたオッサンの俺が、どうして勇者なんかに!!!」
「人殺し〜っ!」というベタなセリフがどこかから聞こえたような気がした勇者は、この一ヶ月後には、普通に刑務所にいました。
みなさん、異世界転生ものの小説、お好きですか?
そういうのを読んでるうちに、とんでもない異世界転生ものを読まされてしまいましたね。
ある意味、読者は、さつまきまで面白い異世界転生モノのラノベを読んでた人だったのに、わけわからん異世界転生モノを読まされる世界に、異世界転生しているのかもしれま、えっと、なんでもないです。
うまいこと言おうとして溺れただけです。
さようなら。おしまい。
芸人、ネタ作家、短編小説家。“理系の変な奴”は自分で髪の毛を切ります。それが私。ついでの用事が二個ないとお墓参りに行かないです。
Twitter、noteなど色々やってます。




