第7話 外見スキルは産廃スキル?
建物の扉の前で、一旦立ち止まる。
大きな両開きの木製扉には、ギルドのエンブレムらしき獅子のような魔物が刻まれていた。
見上げると、屋根には鳥の魔物の骨を使った風見鶏が見える。
ここが冒険者ギルドか……
深呼吸をして、俺は冒険者ギルドの扉に手をかけた。
ゴゴゴゴゴ……
重厚な扉が開くと同時に、喧騒が耳に飛び込んできた。
「うおおぉ……」
思わず声が漏れる。
目の前に広がっているのは、まさに想像通りの異世界の冒険者ギルドそのものだった。
天井はゆうに6メートルはあるだろうか。太い梁が剥き出しになっており、そこからは巨大なシャンデリアが吊るされている。
石造りの壁には、何やら著名そうな冒険者の肖像画や、見たこともない魔物の剥製が飾られていた。
どれも迫力があって、思わず見入ってしまう。
「すげぇ……」
辺りを見回すと、長方形や円形の大テーブルと椅子が散在しており、そこにたむろする冒険者たちが、思い思いの時間を過ごしていた。
「おい、聞いたか? 近くで新種の魔物が出たらしいぞ」
「マジか!? ランクはどのくらいだ?」
テーブルを囲む冒険者たちの会話が耳に入る。
その隣では、「新人くん、その剣の持ち方じゃダメだよ。ほら、こうやって……」とベテランらしき冒険者が、新人に剣の扱い方を教えている。
「すげぇ……まじでゲームの世界じゃん、これ」
いやゲームなんだけれども。
少し感動すらしてしまった。
これは、モニター越しじゃなくて実際に見に行きたいな……
ふと、血のついたエプロンを着た男が横を通り過ぎた。
「うわっ!?」
思わず後ずさる。
よく見ると、その男は大きな袋を背負っている。中から獣の足のようなものが覗いていた。
エプロンの男は、ある冒険者の集団の前で立ち止まると、大声を上げた。
「おい! ガルムの解体、終わったぞ。素材はどうすんだ?」
一団は顔を見合わせる。
「要らないよね?」
「うん」
「要らなーい」
「だよね。それじゃおじさん、買取おねがい!」
おっ! ここで買取もやってくれるのか!
「はいよ。そんじゃ、500ゴールドな」
「はあ!? 安すぎでしょ!?」
「仕方ねえだろ、使い物になる牙は3本、毛皮だって傷だらけでひどいもんだ。500でも高いくらいだよ」
落胆する冒険者たち。
どうやら安く買いたたかれたようだな……
それでも、とりあえずここで換金してしまいたい。
一文無しだと色々不安だしな。
「はい、オンコックの炭火焼きで~す!」
見ると、二階から可愛い女の子が大きな盆を持って降りてきていた。
ジョッキに注がれたビールと、鶏の丸焼きが乗ったトレイを持っている。
どうやら、二階は居酒屋のようだ。
……なんだか腹が減ってきたな。
ふと、入り口近くの巨大な掲示板に目が留まる。
そこには様々な依頼書が貼られており、現在進行形で新しい依頼が追加され続けている。
そういえば、俺ってもう冒険者なんだろうか。
何か登録とか必要なのか?
ギルドの奥を見ると、L字型のカウンターがあり、その後ろでスタッフたちが忙しなく働いている。
あそこが受付だろう。
少し緊張するが、聞いてみるか。
カウンターの前まで来るが、みんな忙しいのか全然気づいてくれない。
「あのー……」
「よう、新入りか?」
カウンターの下から、男がひょこっと姿を現した。
「うおっ!? ど、ドワーフ!?」
思わず声が出る。
がっしりとした体つき、ごつごつした手。
そして、何より際立っているのは、その低い背丈だ。
まさに、ゲームによく登場するドワーフそのもの。
「なんだお前さん、ドワーフは初めてか」
慣れているのか、気を悪くした様子はない。
「いや、決して差別的な意識があるわけじゃなく、初めて見たもので……」
「そうか初めてか。だとすると地方から来たんだな? この街には様々な種族が住んでいるから、面食らわないようにな」
「様々な種族?」
「ああ。人間はもちろん、俺たちドワーフの他にも、獣の特徴を持つ獣人や、ちょっと珍しいが耳の長いエルフとかな」
それを聞いてギルド内を見回すと──1人、耳の長い冒険者が目に付いた。
「ああ、フランチェスカもエルフだな。あいつは弓使い兼魔法使いだ。確か前衛の相方を探していたな。……なんだ、お前さんエルフが気になるのか? 俺がアテンドしてやろうか」
ニヤリと笑うドワーフのおっさん。
……確かにめちゃくちゃ美人だ。
エルフって、いいよな……
ミニスカ高身長なところも、俺に刺さるわ。
これが本当にゲームだったらめっちゃ頑張ってスカートの中を拝見──しないしない。
俺は変態だが紳士なんだ。俗に言う変態紳士。
そういう低俗なことはしないぞ。
いやあ、あんな美人とご一緒できたらなぁ。
ただ、ヒキニートのゲーマーにはいきなりハードルが高すぎる件について。
女性とチャット以外で会話した記憶なんて、母ちゃんを除けば何年ぶりって感じだぞ。
そういえば、スキルツリーに【外見】ってあったよな。
……振っちゃうか?
絶対に戦闘に関係ないけど……




