第45話 プレリード地下遺跡 入口
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「ど、どうなってんだ!? 魔石が迷宮に……」
ルークが鞄から飛び出し、呆然とプレリード地下遺跡の入り口を見つめている。
続いてナノも影から現れて、ルークの横にちょこんと並んだ。
「迷宮……なのです?」
「ああ、どうやらそのようだぜ」
「地下迷宮型……紫晶塚の回廊みたいなのです」
ナノは顎に手を当て、考え込むような素振りを見せる。
「なんだ、ナノはダンジョンに詳しいのか」
ルークは意外そうにナノを見上げた。
「なのです。『月刊ダンジョン踏破のススメ』はナノの愛読書なのです」
「なんだそれ」
「世界各国のダンジョン情報が載っている月刊誌なのです。最新の攻略情報や、季節ごとのダンジョンの変化、新進気鋭の攻略者がまとめられた神雑誌なのです!」
ナノの発言に耳をそばだてる。
やっぱり、この世界にも既にダンジョンが存在するようだ。
「メタリアス王国にも紫晶塚の回廊っていう有名なのがあるのです。でも、ナノはイルムザーザ公国の黄砂に沈む図書廃墟推しなのです!」
「へぇ、ナノは行ったことあるのか?」
「もちろん、ないのです。ナノは施設育ちの貧困な女の子なのです。行けるはずないのです」
「お、おぅ……」
いちいち重いのデス……
「でも、いつか世界初のダンジョン踏破者になるのがナノの夢なのです……! そのために施設でも日々トレーニングしてきたのです!」
そう言いながら、シャドーボクシングめいたポーズを取るナノ。
「世界初のダンジョン踏破者?」
「ダンジョンの最深部に辿り着いて、ちゃんと地上へ戻って来た人はいないのです。そもそも最奥があるのかどうかも分かってないのです」
「そうなのか? 最高位冒険者のセラフィナイト級でもダメなのか」
「ダンジョン攻略の難しさは、敵の強さだけじゃないのです。罠や地形、気温、さらに水や食料問題……そういうところが本当の鬼門なのです」
「なるほどな。言われてみると、ただの戦闘だけじゃ済まないサバイバルだもんな」
「なのです。奥まで進むのはいいとしても、帰りの食べ物が尽きて餓死、なんてパターンはよくあるのです……。『行きはよいよい、帰りはこわい』なのです」
ナノがおどろおどろしい声真似をする。
ただ、俺とロムラスはアイテム欄にいくらでもアイテムを持てるし、そもそも食料や喉の心配は皆無だ。
かなり有利だな。
「ナノの言う通り、迷宮はかなりキケンだぜ。挑戦するなら、しっかり準備したほうが──」
「よっし、早速行くぞ~。金目のもの集めるぞ~」
「軽っ!! ノリ軽いなご主人!?」
「なのです! ナノのデビュー戦は、誰も挑んだことのないダンジョンなのです! ステキなのです!」
「ナノまで!?」
「やった~☆ なんだかよく分からないけど楽しそうじゃないですか~☆」
「お前は何なんだよ!?」
「なんだ、ルークは外で待ってるか?」
「行くに決まってんだろ!!」
どっちなんだよ……。
……ただ、ルークとナノが一緒だと、あまり無茶はできないな。
今回は数階分だけ進んで、感覚を掴むか。
「そういえば、『階層を初期設定することができる』とか言ってたが、何階にしたんだ?」
「ん~? 特には設定してないですよ~? そんな画面も出てこなかったですし」
じゃあ、この後設定できるのか?
それともロムラスが見逃したのか?
まあいい、とりあえず階段を降りてみるか。
螺旋階段の入り口付近は相変わらず青白い紋様がうっすらと残り、苔むした石壁には不思議な光が這うように揺らめいている。
「おい、ナノ! 気をつけろよ」
ルークはやや警戒しつつも、先頭を切りそうな雰囲気だ。
しかしナノはその横からスッと前に出ると、颯爽と階段の縁に足をかけた。
「ナノもルークも、俺より先に行かないように」
トラップでもあったら危険だ。
俺とロムラスはゲームのキャラだから痛くもかゆくもないが、二人はそうはいかないからな。
螺旋階段は下へ向かって、緩やかに、しかし果てしなく続いているように見える。
階下にはかすかな闇が沈んでいて、ときどき冷たい風が吹き抜ける音が聞こえた。
「うわぁ、足場が結構狭いですね~」(ロムラス)
「よし、じゃあ行くぞ」
階段を一歩ずつ下っていく。
壁には青白い魔法陣が埋め込まれ、うっすらと通路を照らしている。
「おにーさん、落ちないでくださいね~☆」
「誰に言ってんだ、誰に」
というか、落下ダメージとかあるのか。
……今度試してみるか。
階段を降りるにつれ、外の陽光は遠ざかり、代わりに魔法陣の青白い光が周囲を支配し始める。
やがて数十段ほど進んで最後の段を踏み終えると、目の前には大広間が広がっていた。
不自然なほど整然としていて、まるで幾何学模様のタイルが敷き詰められたホールのように思える。
壁にはさっきと同じく古代の文字や紋様が刻まれ、一部は青い微光を帯びていた。
「ここが1階部分、って感じか?」
天井までは優に十メートルはありそうな巨大空間。
文様が刻まれた石造りの柱が規則正しく並び、その隙間から青白い光が漏れている。
「魔石一個でこんなもん作れるのかよ……」
ルークが唖然とした様子で辺りを見回す。
「おい、あそこに魔法陣と石碑があるぜ」
ルークの指さす方向には、緑色に光る大きな魔法陣があり、その横には石碑が立っていた。
石碑に近寄ってみると、『調べる』が可能なオブジェクトのようだ。
……あれ、キーを押しても反応しないぞ。
「ロムラス、この石碑を調べてみてくれ。なんか反応しないんだよな」
「え~っと、どのキーだぁ……あっ、何か出てきました~! これ、階層数の選択画面みたいですねぇ」
「おっ、ここで選択できるのか。選択肢はどんなものがある?」
「極浅から超深層までありますね~。デフォルトでは『中程度(11F - 29F)』になってます☆……あっ、深層以降は選べないみたい!」
なるほど、何か条件があるのだろう。
まあ中程度でとりあえずいいか。
「この魔法陣はなんなのです……?」
ナノはまるで吸い込まれるように魔法陣に近づき、そのまま足を踏み入れた
──瞬間、ナノの姿が消える。
「ナノ!!」
咄嗟にルークも魔法陣の上へ飛び込む。と同時に、ルークの姿も消えた。
「おい、ルーク! ナノ!」
呼びかけるが、返事はない。
どうやらこの魔法陣の上に乗ると、そのまま転移してしまうらしい。
おそらく転移先は、ダンジョンのどこかだろう。
「へぇ~、転移の魔法陣……。おにーさん。早く行かないとあの二人、死んじゃうかも?」
「分かってるよ! ロムラス、ちゃんとついてこいよ!」
「は~い☆」
俺とロムラスも、魔法陣の上に飛び込んだ。
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