第44話 【迷宮創造】
ローズマリーと別れ、やってきたのはプレリード街道。
魔物を無視して黙々と歩を進めていると、ルークが鞄から頭を出して声を上げた。
「おいおい、ご主人。風花平原は東って話だったろ?」
「なのです。ナノのデビュー戦なのです!!」
ナノも影から頭だけ出す。知らん人が見たら悲鳴を上げかねない光景だな。
まだルークとナノには、これからやることを説明していない。
口で説明するより、実際に見てもらう方が早いと判断したからだ。
「いいからいいから。……お、いたいた」
剣を構えてガルムに相対するロムラス
──のキャラクターが見えた。
まだまだキャラ操作がぎこちなく、ガルムの攻撃を上手く避けられていないな。
でも高いステータスのおかげで、ガルムの攻撃を意に介さず無理やり攻撃を命中させ、倒していた。
まあこれなら意外と戦力になるかもしれないな。
「……誰なんだ? あいつは」
ルークが怪訝そうに目を細める。
「今日一緒に行動する仲間だ。後で紹介するから」
「……ユウタ、女の人の知り合いしかいないのです?」
「いやいや、俺にだって男友達の一人や二人……いないな」
そんな寂しいやりとりをしつつ、俺は目の前のガルムを倒し終えたところのロムキャラに近づく。
「うっしゃ~☆ やっと倒せた! だいぶ慣れてきたかも」
倒せた喜びを表現したいのか、ご丁寧にガッツポーズのエモートを使っている。
「ロムラス、着いたぞ」
「あっ、おにーさんそっくりの人が☆ こんにちは~」
ロムラスのキャラがエモートを使ってこちらに手を振っている。
随分とエモートを使いこなしてるな……
「早速だけど、ほら」
俺はアルテミスの魔石を『手に持つ』。
「おぉ~、魔石ですなぁ。こんなのでもいいんですか〜?」
「こんなのって……特級の魔石なんだぞ」
「そうなんだ〜。まいっか。ところでこれ、どうやって受け取るんだろ……こうかな?」
ロムラスは手間取りながらもアルテミスの魔石を受け取った。
「おいご主人、いいのかよ? アルテミスの魔石って人間の評価基準だと特級なんだろ? とんでもない価値があるもんなんじゃないのか?」
ルークの声には明らかな警戒感が混ざっていた。
「問題ない。ロムラスにはこれからそれを使ってダンジョンを生成してもらうからな」
「迷宮を生成……? ご主人、昨日は寝れなかったのか?」
「確かに寝てないが、別にボケてるわけじゃないぞ。俺も初めてだから上手くできるか分からんが」
……とりあえず紹介が必要か。
「ロムラス、コイツがカーバンクルのルークだ。ルーク、こっちはロムラスっていう、まあ冒険者仲間みたいなもんだ」
「カーバンクル……まいっか! よろしく~☆」
ロムラスがお辞儀のエモートを披露する。
「……ああ」
ルークは渋々といった様子で返事をする。
おいおい、仲良くやってくれよ。
「で、もう一人が……ナノ、紹介させてくれ」
「……なのです」
ユウタの影から、おそるおそるナノが顔を出す。
「ナノなのです。ユウタの影に住んでいるのです。よろしくなのです」
「おっ、吸血鬼ですか~。お日様の下でも平気なんですか〜?」
「な、なのです?」
「う~ん、まあ、よろしく~☆」
……と、一通り自己紹介を済ませたところで本題に入る。
「早速だが、【迷宮】スキルを習得してほしい。スキルツリーを開いてくれ」
「スキルツリー、スキルツリー……これかな? は~い、できました~☆」
「その中に【迷宮】っていうスキルがあるだろ? それを習得できないか試してみてくれ」
「え~っと……あ、これですね~。【迷宮創造】<1/5>──『階層を初期設定することができる』だって~」
初期設定……
なるほど、ダンジョンの深さを決定できるのか。
なんにせよ、とりあえずやってみないとよくわからないな。
「それでいい、習得してみてくれ」
「はいは〜い☆ えいっ!……あっ、習得できました〜!! ふっふ~ん☆ で、次は<2/5>で『フロアサイズを初期設定することができる』みたいですねぇ」
フロアサイズか。1フロアの部屋数とかを決められるってことだろう。
狭いと次のフロアに進みやすく、部屋数が多いと色々探索できるんだろうな。
「ちなみに、スキルポイントはまだ残ってるか?」
「うーん、さっきので全部ですね~。まだレベル2なので、1ポイントしかゲットしてないんですよね~」
そう。ロムラスのキャラは全然レベルが上がらない。
確かにロムラスのぎこちないプレイで効率的に魔物を倒せてのもあるが、それでももう二、三十匹は倒しているはずだ。
にもかかわらず、まだレベルは2。
「高スペ魔族はレベルアップに必要な経験値も多いってことか」
レベル1の魔族が人間のレベル17と互角のステータスを持ってるんだ。
そりゃレベルは上がりにくいよな。
となると、スキルポイントも手に入りづらい……
めちゃくちゃ魅力的なスキルがたくさんあったので、早く習得したいところだが。
「まあいい、じゃあ早速ダンジョンを作ってもらおう。ロムラス、アイテム欄を開いて、さっきの魔石を選んでみてくれ」
おそらく、『ダンジョンを造る』的な選択肢が出るはずだ。
「分っかりました~☆ えっと……これかな? 『魔石を消費してダンジョンを生成』でいいですか~?」
「ああ、おそらくそれだ。早速頼む」
「了解で〜す! それっ!」
瞬間、ロムラスの手からアルテミスの魔石がふわりと宙に浮かび、青白い光を放ち始めた。
魔石を中心に、まるで水面に落ちた一滴が波紋を広げるように、光が円環状に揺れ動く。
その波紋は段々と複雑な幾何学模様を描きながら、地面一面に拡がっていった。
「な、なんなのです?」
ナノが影から顔を出し、興味深げに見つめている。
模様は直径5メートルほどになったところで、まるで生き物のように蠢き始めた。
そして、その中心部がゆっくりと沈み込み、地面が陥没していく。
「……おいご主人、マジで迷宮ができてるぞ。オレ、寝ぼけてんのか?」
ルークの声が震える。
陥没は美しい螺旋階段を象り、その下へと果てしなく続いていく。
周囲の空間には無数の魔法文字が瞬いては消え、また新たな文字が浮かび上がる。
陥没が止まると、螺旋階段の周囲には石壁が一段一段積み上がり始めた。
あたかも目に見えない職人が作業しているかのように、階段は瞬く間に整然とした廃墟の入口へと変わっていく。
「す、すごいのです……」
ナノが息を呑む。
完成した入口は、まるで古くから存在していた遺跡そのものだ。
苔むしたような意匠が浮かぶ石壁には微かな青白い光が宿り、神秘的な雰囲気を醸し出している。
そして、満を持して画面にメッセージが表示された。
>プレリード地下遺跡
「や〜、結構良い感じじゃないですか〜?」
ロムラスが腕を組むエモートを使って、満足げに声を上げた。
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