第42話 紅闇龍、ゲームにハマる
「あぁ~、いい朝だぜ! おはよう、ご主人!」
ルークはテーブルの上に軽やかに飛び乗ると、小さな体を思い切り伸ばした。
一方、ナノはまだベッドで寝息を立てている。
「突っ立ってどうしたんだ? ご主人」
「アイテム欄を確認してたんだよ」
俺の言葉は半分は本当で、半分は嘘だ。
実は俺にはコレクション癖がある。
ぎっしり埋まったアイテム欄を眺めて「集まったなあ」とニヤニヤするのも、
説明文を読んで世界観に浸るのも楽しい。
ただ、今は今日やる予定のアレに備えて寝ているロムラスの代わりにキャラ操作をしていたところだから、少しごまかしただけだ。
それにしても、まさかロムラスがあれほどハマるとは。
まだまだ操作は下手くそで、ガルム相手に攻撃を当てるのに苦労してるほど。
でもキャラの初期ステが高いおかげで何とかなっている。
いわばイージーモード、ってところだ。
「アイテム欄?……ああ、ご主人が言ってた、どこからともなくアイテムを出し入れできる特殊能力のことだよな」
ルークは興味深げにユウタを見上げる。
単なるゲームのシステムだが、そんな風に言われるとまるで凄い能力みたいだな……
「なあ、今日はどうするんだ? 昨日言ってた風花平原ってところで魔物でも倒すのか?」
ルークは少しワクワクした様子だ。
どうやら人間界はかなり久々らしく、どこへ行っても新鮮で楽しいらしい。
「いや、今日はちょっと別のやってみたいことがあってだな。その準備のために、まずはローズマリーに会いに行くつもりだ」
「ローズマリー? 誰なんだそいつ」
「錬金術師だよ。駆け出しの」
そう答えると、ルークは苦い顔をした。
「錬金術師か……アイツら苦手なんだ。なんでも錬金しようとするし、倫理観もおかしいしな」
確かに、ローズマリーは常識ハズレなことを平気でやるな。
何食ったら「アンデッドの素材をポーションに使おう!」とかいう発想できるようになるんだよ……
正気を疑うレベルだ。
「ん……朝からうるさいのです。朝は寝るじかんなのです」
「起きる時間だぜ!?」
ナノが目を擦りながら起き上がる。
「ユウタ……」
何やらもじもじしているが……
ああ、アレか。
「俺はアイテム欄見てるから、好きにどうぞ」
「ん……」
ナノはこそこそと近づいてくると、カプッとユウタの首筋に牙を立てる。
魔人化で吸血鬼になったナノは、こうして定期的に血を吸わないとダメらしい。
俺としてはHPが減るだけで済むから、ナノにとってはうってつけなわけだ。
それにしても、ルークからなかなかレアな魔石が出ないな……
最初に出た【アルテミスの魔石】以外は、第三級の魔石ばかりだ。
アレに使えるなら、もっと良い魔石を持っておきたい。
「ロムラス、今日こそいい魔石を出してくれよ」
「そりゃ、ご主人次第だ。もっといいもん食わせてくれりゃ、【大御石】でも【王権石】でも出してやるぜ」
「なんだその魔石。それにしても、いいもんねえ。」
アレに使えると分かった以上、宝玉創生のためだけにでも【料理】スキルを取るのもアリか?
「……ナノ、吸い過ぎじゃねえか?」
ん? HPがミリ!?
慌てて【死霊のポーション】をガブ飲みする。
「──ふぁ……」
……寝てるのかよ。寝ぼけて吸いすぎとは、危なっかしいにも程がある。
次からは吸われている間、ちゃんとHPゲージを監視しないとな……。




