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第4話 他人から見たゲームのキャラクターは異常

 メニューの各項目を一通り見終えたところで、次の行動を考える。


 とりあえず、一番気になるのは()()()がどこにいて、()がどこにいるのか、ということだ。

 なので、早めにどこか街に行って場所を確認したいわけなんだが。


「操作に慣れる、ってことで……狩るか♠」


 周囲を見回すと、さっきのガルムという魔物がちらほら見える。

 さらには、粘液の塊のような生物──スライムのような魔物の姿も見えた。


 魔物図鑑を埋めたいのもあるし、レベル上げも兼ねてとりあえず戦ってみることにする。



 ◇



「はあ、はあ……」


 フロンは剣に付いた血を振り払うと、額の汗を拭った。

 そして同時に、これではダメだ、と自分を叱る。

 この程度の魔物(ザコ)を数匹倒すのに汗をかいていては、いつまでたっても姉には追いつけない、と。


「ずいぶん倒したわねー。このあたりのガルムが全滅しちゃうわよ? はい、お水」


 セリーナはフロンに歩み寄りながら、手に持った水筒に向かって一瞬だけ氷結魔法を発動させる。

 こうすることで水を一瞬で冷やすことが出来ることも、氷結魔法が人気な理由の一つだ。


「お姉ちゃん。まだまだ足りない。この倍は倒さなきゃ」


 フロンは水筒を受け取ると、水を一口飲む。

 キンキンに冷えた水が、フロンの吹き出た汗を押し戻す。


「でも、1、2、3──もう10匹は倒してるわよ? 貴女と同じブロンズ級冒険者だったら、1匹倒すのでやっとなんだから。今日はこのくらいにしたら?」


「ブロンズ級と比べないで。私は一日でも早くお姉ちゃんの横に並び立ちたい」


「あら残念。今日はこの後、一緒にお買い物でも、とおもったのだけれど」


「ぐっ……。ダメ、今日はあと最低5匹」


 フロンにとってこの上なく魅力的な誘いだったが、鋼の意思で剣を握り直す。


「ふふっ、分かったわ。──ところで、フロンはあそこにいる冒険者のことを知っているかしら?」


 セリーナの見つめる先を見ると、一人の冒険者が1匹のガルムと対峙していた。

 遠目でも分かるほど貧相な装備を身にまとった、明らかな初級冒険者だ。


「知らない。剣の手入れもまともにできていない冒険者のことなんて」


「そうよねぇ。明らかに、フロンと同じ初級冒険者なのだけれど……。あの子の周り、よく見てみて」


「……!?」


 件の冒険者の奥、そこに広がる草原には、おびただしい数の魔物の死体が横たわっていた。


「な、なに、あれ」


「うーん、あの子が倒した、とは考えにくいわよねぇ」


 (なまくら)では、ガルムに何度も斬撃を浴びせないと倒せないだろう。

 ただの薄い布を纏っていては、ガルムの攻撃を一撃受けるだけで致命傷になりかねない。


 そのような明らかにまともではない装備に身を包んだ彼が、四、五十匹の魔物を倒せる強者には到底思えない。


「……わざと装備のランクを落としている?」


 そのような奇天烈な行いをする高位冒険者は確かに存在する。

 高位の冒険者ともなると、装備も並外れたものとなり、人目を集めてしまう。

 そうなると戦闘中も衆目を集めてしまうため、人目を避けて行動したいときにおよそ相応しくない装備を身に纏うことはあった。


「流石に違うと思うけれど。あの装備だと一歩間違えれば即死よ。そんなリスクを侵すとは思えないわ」


 どれほど高位の冒険者であっても、命は一つ。

 そのようなリスクをとるとは思えない。


「それじゃあ、修行のため? わざと低ランクの装備を身にまとうことで、極限の状態で修行しているとか」


「それも考えずらいわね。このあたりの魔物と戦っても得られる経験なんて高が知れているわ」


「じゃあ──あの冒険者は確かに初級冒険者であって、装備を整える金銭はないけれど、相手からの攻撃を全て回避しつつあの数の魔物を倒した……!?」


「非現実的よね。だから、フロンにあの子を知っているか聞いたのだけれど。そんな新人がいたら嫌でも有名でしょうしね」


 類まれなる血筋と才能、そして幼少期からの修行により、初級冒険者でありつつ数段上の実力を持つフロンであっても、あの数の魔物を倒すことは難しい。


 なぜなら、人間には()()があるからだ。


 肉体的な疲労、精神的な疲労──相手がかなりの格下であっても命のやり取りが発生する限り、様々な形で人間は疲労する。

 疲労すると、人は身体機能や判断力が鈍り、思いもよらない事故で命を落とす可能性が急激に高まる。


 ”長時間の戦闘は避ける”──これは全ての冒険者、最上位冒険者であっても例外ではない冒険者の鉄則だ。


「このあたりで()()()()あの数の魔物を倒すとなると、少なくとも3時間はかかるわよねぇ」


「そんなこと……」


「普通は不可能に近いわ。疲労の概念がないアンデッドでもない限り、ね」


 アンデッドという単語を聞き、フロンは身震いした。


「姉さん、やめて」


「ふふっ、フロンは昔から怖い話が苦手だものねー。それにしても、あの子気になるわね。あとでお話してみようかしら」


「……姉さんは私の戦闘をちゃんと見てて」


 フロンは剣を握る手に、これまでより力を込めた。

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