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異世界でも引き籠ってゲームばっかやってたら、知らないうちに世界最強の冒険者になってました  作者: やおよろずの
第二章 モルティス旧墓地のアンデッド
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第36話 フロンの変化

 フロンは鬱屈とした気分を一人抱えながら、賑わう中心街を早足で歩いていた。


 通りには買い物帰りの住人たちが行き交い、店先には夕飯の食材を求める人々が三々五々と集まっている。


 そんな中、ふと目に入った服屋のショーウィンドウに映った自分の顔に、フロンは足を止めた。



「……はぁ」



 暗い表情を浮かべる自分の姿に、思わず呟いてしまう。


 これから久しぶりに会う姉に、こんな曇った顔を見せるわけにはいかない。


 フロンは人混みの中から抜け出すように脇道に逸れた。


 賑やかな通りから一本外れると、そこには閑静な住宅街が広がっている。


 もやもやした気持ちを少しでも晴らしたくて、普段は通らないこの道を選んで歩き始めた。


 閑散とした石畳を踏みしめる靴音だけが、静かな通りに響いていく。



「お姉ちゃん、王都でなにしてたんだろう」



 王都にレジェンド級以上の冒険者が集められてから、もう一ヶ月が経過していた。


 

「こんなに長い間お姉ちゃんと会えないなんて、あのヘイルラスタのとき以来」



 フロンの脳裏に、姉セリーナが"魔竜"と呼ばれる魔物ヘイルラスタの討伐に任命された日の光景が浮かぶ。


 五大元素を全て操り、その巨体で世界を蹂躙する災厄の具現化。


 放置すれば複数の都市が滅亡しかねない——その脅威に、セリーナは他のミルドナイト級冒険者二名と共に立ち向かった。


 幼いフロンは姉を誇りに思いながらも、死地へと向かおうとする姉の袖を握り締め、涙を流した。


 結果、セリーナは背中に深い傷を負いながらも、何とか撃退に成功した。



「もしかして、またヘイルラスタが出た……?」



 不意に浮かんだ最悪の想像に、フロンの眉間に深い影が落ちる。



「……いや、それなら私たちにも知らされているはず」



 強大な魔物が現れた際は必ず、危険を避けるための警告が各地の冒険者に届くはずだ。


 そのような連絡は一切来ていない。姉が王都に呼ばれた理由は、別にあるのだろう。



「考えていても分からない。お姉ちゃんに直接聞こう」



 フロンは力の抜けた溜め息をつく。姉との再会を思い浮かべると、自然と足取りが軽くなる。



 まずは何を話そう。


 お姉ちゃんに教わった薄桜衝(はくおうしょう)でガルーダを倒した話?


 それともやっぱり、ユウタと一緒にプラチナ級に昇格した話から?


 

 そんなことを考えていると、自然と笑みがこぼれた。


 夕暮れの石畳に伸びる影も、弾むように揺れる。



「それにしても、桜霞閃(おうかせん)薄桜衝(はくおうしょう)……どうして急に」



 フロンは自分の中の変化をはっきりと感じていた。


 成長の限界に焦りを感じていた頃の自分が、今では遠い記憶のようだ。


 今思えば随分と荒れていたものだ。口調も厳しいものだった気がする。


 それが今では、明らかな変化、急速な成長。予想をはるかに超える自分がそこにいる。


 すべては、ユウタとパーティを組んでから。


 そして、彼と共に魔物を倒す度に。


 まるで封印が解かれたように、新たな力が目覚めていく。


 その急激な変化に、フロンは喜びと共に、どこか不思議な感覚を抱いていた。



「何度やっても出来なかったのに」



 最近まで、フロンは確かな壁にぶつかっていた。


 剣の技術は確かで身体能力も優れていたのに、どれほど努力しても剣技と魔法は使えなかった。


 まるで、ここまでが自分の限界でそれ以上成長しない、そんな風に思えた。


 それが、ユウタと出会い魔物を倒した後、まるで呪縛が解けたかのように使えるようになった。


 これはユウタの異常な"狩り"に必死でついていった結果なのか。


 それとも——ユウタには、共に戦う者の成長を促す特別な何かがあるのだろうか?


 この世界には生まれながらの異能を持つ者がいる。


 セラフィナイト級冒険者の三傑がその例だ。


 彼もまた、そんな存在なのか。


 考えながら歩を進めると、心の靄が自然と晴れていくのを感じた。重たかった気分が少しずつ軽くなる。



 ユウタは今頃、街の外で魔物と戦っているのだろうか——。



 そんなフロンの目に飛び込んできたのは、知らない美少女と食事を取るユウタの姿だった。

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