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異世界でも引き籠ってゲームばっかやってたら、知らないうちに世界最強の冒険者になってました  作者: やおよろずの
第二章 モルティス旧墓地のアンデッド
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第32話 白い少女

 マウル・アルカナムを後にすると、フロンは用事があるらしく、店の前で別れることになった。


「どこに向かってるんだ? ご主人」


 路地裏を歩いていると、鞄の中からルークが話しかけてくる。

 フロンに「カーバンクルは人に見せない方がいい。街中では特に」と言われたので、苦肉の策だ。


「実は──」


 その時、正面から十二、三くらいの少女が走ってくるのが見えた。


「そっちへ行ったぞ!!」


 後ろから男たちが少女を指差して叫んでいる。

 10人はいるだろうか。この少女を追っているようだ。


 鞄の口からルークが顔を覗かせた。


「おい、女が追われてるぞ。どうするんだ、ご主人」


 ……またか。


 この世界、結構こういう場面に遭遇する。

 貧しい子供が食い逃げしたとか、売られた子供が逃げ出したとか。

 魔物がいる世界だ、治安が悪いのも頷ける。


 そしてこういう場面で俺がとる行動は決まってる。


「どうもしない」


 スッと道を空ける。


 可哀想だとは思うが、一々助けてたらキリがないし、責任も取れないから。


「そうか。まあそれもアリだと思うぜ」


 ルークが少し残念そうにカバンに引っ込んだ。


 少女は擦り切れた服を纏い、必死の形相で走ってくる。


「──!」


 うっ、目が合ってしまった。


 俺は関係ないよー、ひゅー、ひゅー。


 そんな俺の壁アピールも虚しく……


「えいっ」


「……は?」


 少女はぴょんっと勢いよく、まるでプールに飛び込むかのように、俺の影に飛び込んだ。


 あまりに突然で、俺が理解する前に、もう少女の追手がすぐそこまで迫ってきていた。


「おいお前!! そこを一歩も動くなよ!!」


 ……えっ、俺!?


 そこで、俺はやっと巻き込まれたことに気付いた。


「ご主人、やるか? 早速オレの出番か?」


 ルークが好戦的な顔で追手を見据えている。


「うーん……争いごとは避けたいんだよなぁ」


 まず、追手の男たちは全員同じ制服を着ている。

 ということは、おそらく同じ組織に属している連中なのだろう。

 それが軍や警察のような国の組織であれ、犯罪組織であれ、組織を敵に回すのは得策ではない。


 カルマ値のようなものがあるとしたら、中立にしておきたいわけだ。


 じゃあ、どうするのか。


 ……とりあえずしゃがんどこ。


 サッ──


「──!?!? どこに消えた!?」


 追手の男たちはみな驚きの声を上げている。


 それもそのはず、たった今までそこにいた男が、一瞬で消えたように見えているのだから。


「……おいご主人、どうしてバレてないんだ?」


「──しーっ。もっと小さい声で話してくれ。……スキルのおかげだよ」


「スキル?」


「ああ。俺には、簡単に言うと選択式の特殊能力がある。その効果で、『しゃがんでいる間は雑魚に見つからない』んだよ」


「せ、選択式の特殊能力だって!? そんなの聞いたことねえぞ」


 そう。俺は【隠密】スキルの【隠密行動Ⅰ】を最大まで習得しているので、しゃがむだけでそこらへんの雑魚から認識されなくなる状態になっている。


 最初は【暗殺Ⅰ】と【急所の達人】との組み合わせ──未発見状態での一撃がほぼクリティカルになり、さらにでクリティカルのダメージも上昇──が強いと思って習得したのだが、こんな時に役に立つとはな。


 男たちは俺がしゃがんでいる目の前で止まると、キョロキョロと辺りを見回している。


「し、信じられん! 今の一瞬でどこに行ったんだ!?」


 目の前にいるんだよなぁ。


 今のうちに、しゃがみ移動でコソコソと距離をとる。


「さっきの男の顔をちゃんと見たやつはいるか?」


 男たちは顔を見合わせている。


 どうやらだれもちゃんと俺の顔を見ていなかったみたいだ。


 まあ、走ってるときに周りの顔なんかちゃんと見てないわな。


「くそっ、確か、あの少女は影の中に入ることが出来る化物だ。周囲の影をくまなく探せ!!」


 そう言うと、男たちは懐中電灯のような魔術具を取り出し、周囲の影を照らし出した。

 光で影を消せば飛び出てくるのだろうか?


 一方、それを持たない男たちは、剣を抜いて影に剣をぶつけていた。

 おいおい、そんなことして本当にいたら少女が大ケガするぞ……


 とりあえず、ザ・正義の集団、という感じではなさそうだな。


 そのうち一通り影を確認し、収穫が得られなかった男たちのうち、リーダー格の男が焦った表情で叫んだ。


「まだ近くに居るはずだ! 班を分けて探すぞ!」


 男たちは次々と別の路地へと散っていく。


 ……ふぅ、行ったか。


 しゃがみ状態を解除して、と。


「ス、スゲぇなご主人! 流石、オレを召喚しただけのことはあるぜ!」


 ルークが嬉しそうにカバンから顔を覗かせた。


「たまたまだよ、たまたま。それにしても役に立たなそうなスキルでも意外なところで役に立つな。やっぱり【外見】ももう少し伸ばすかなぁ」


 【外見】のスキルツリーにおいて、【ビジュアルアップⅠ】、【ビジュアルアップⅡ】、そして【影響力Ⅰ】と習得しきったので、次に習得できるのは【変装Ⅰ】。


 どういうスキルかというと、”顔を変えられる” らしい。


 流石に使いどころが思いつかなくて習得してなかったが、例えばさっきの場面でも顔を変えてしまえば戦っても良かったわけし、役に立つのかもしれんな。


「……」


 少女は影の中で無言を貫いていた。


 そもそも本当にいるんだよな? なんて思っていると。


「……」


 ついに恐る恐る影から頭だけ出して周囲を見回した。

 ……パッと見、バグって地面に潜ったNPCみたいだな。


 幼い顔立ちだが、随分と整っているな。そういう目的で売られたのだろうか。


 少女は野良犬のように警戒した目つきで辺りを伺い、大丈夫なことを確認すると、ニュッと影の中から出てきた。


 少女の姿を見て、思わず息を呑む。


 白いワンピースは今や所々が破れ、裾は擦り切れて糸がほつれている。

 長い髪は生まれつきのものだろう、見たことがないほど鮮やかなホワイトブロンドの色をしているが、手入れができていないのか伸び放題で、埃と汚れでくすんでしまっていた。


 な、何を話せば。こんな年頃の子と話すとか難易度高すぎるぞ。


「コ、コンニチハ~」


 初手、挨拶。コミュニケーションの基本デッキ。


「……」


 少女は黙ってこちらを見つめてくる。

 ……くそッ、デッキ交換だ!


「今日はいい天気デスネ~」


 サブデッキ、天気だ。


「……いや待てよ、影に入るってくらいだから天気がいいのは嫌いなのか?」


 肌も白いし、日差しとか嫌いそうだよな。


 くそッ、またデッキをミスったか!?


 次のデッキは……なにッ、もう無いだと!?


 ……俺の、負けだ。


「……」


 な、なに!? 少女が倒れ込むように俺に抱きついてくる、だと!?


 まさかの物理デッキ!?


 こ、困ります!! お嬢様困ります!! あーっ!!


「……があぁッ!!」


「──えっ?」


 少女はそのまま、俺の首筋に牙を突き立てた。

次話は明日7:10投稿予定です!

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